(Naz Chris)でも私、95年の『COMIC CUE』で漫画をカバーするっていう。短い短編だったり、1枚の漫画を書いてたりするっていう。なんか、ああいう江口先生のそのヒップホップのサンプリングみたいな、ああいうことはすごく好きでした。
(江口寿史)それもやりたいなって。
(鳥嶋和彦)外から見ると、そう言うよね。あれはセンスだから。あの仕事は。でも、僕からすると無駄遣い。そんなね、人の漫画に対して目利きしてる場合じゃないだろう? そんな時間があったら、テメエの絵コンテを見ろよ!っていうね。
(江口寿史)それはいいですね。編集者っぽいね(笑)。
(鳥嶋和彦)もうね、それって本当に無駄遣い。虫眼鏡のように1点に何かを集めなきゃいけない時に、鏡で反射して外に散らばらせてどうするの?っていう。
(Naz Chris)両方はダメなんですか?
(鳥嶋和彦)できない。無理。虫眼鏡の作業をやらなきゃいけないのに、鏡を使ってるっていう段階でね、もう……「江口寿史、お前、何やってんだよ?」って。
(Naz Chris)じゃあそれ、鳥嶋さんがやったらいいんじゃないですか? 担当を。
(鳥嶋和彦)無理。
(Naz Chris)なんで無理なんですか? そんなに言うのに。
(鳥嶋和彦)だってこの歳になって無理よ。自分のスタイルがあるから。
「江口寿史の担当編集をするのは無理」(鳥嶋)
(江口寿史)鳥嶋さんはそういう難しい漫画家とはもう組む気力がないということですか?
(鳥嶋和彦)ない。
(江口寿史)ないの?(笑)。
(Naz Chris)そんなことないです。そんなことないですよ。なんかあったら、そんなことないです。
(鳥嶋和彦)いや、ないね。これが前ね、担当編集がついて、打ち合わせをやっていて。「やっぱりいろんなことがあって、もう編集には見せたくないよ」って来たのならいいけど。最初から一切ないんだから。
(Naz Chris)「原稿を取れる漫画家だったらいい」って言ってました。
(江口寿史)だから、あれだ。ある程度、書いて見せるっていう。まっさらから勝手に書かないで(笑)。
(鳥嶋和彦)絵コンテできたら見るけど(笑)。
(江口寿史)わかりました(笑)。
(鳥嶋和彦)ただ、言っとくけどこの人の原稿を取るのは命がいくつあっても足りないから。
(Naz Chris)絵コンテ見てから決めてくださいよ。
(鳥嶋和彦)まず絵コンテ、上がってこないと思うよ。
(Naz Chris)そんなことはないですよ。
(鳥嶋和彦)話はそれたけども。だけど、その3分の1にスポットが当たりすぎちゃったのはあるけど。それはそれで僕は不満だけど。一般的に言えば、その3分の1にスポットが当たるだけ、やっぱりたしかにうまいんだよね。女の子の絵が。で、一応専門的に言うと、単なるイラストレーターのうまさじゃないんですよ。江口さんの女の子って、他にイラストレーターよりすごいところがある。臨場感。パッと……その目がいいカメラと、ダメなカメラの違いがあるわけ。一瞬を撮っていて。いわゆるアップで撮ってるんじゃないんだよね。後ろ姿とか、何気ない瞬間、仕草、日常的な風景を上手く切り取ってる。この鮮度はね、他のイラストレーターたちじゃ無理なの。
(江口寿史)そうだよね(笑)。