Night Tempoさんと吉田豪さんが2023年9月19日配信の『猫舌SHOWROOM 豪の部屋』の中で菊池桃子さん、ラ・ムーについてトーク。かつて全然評価されていなかったラ・ムーがシティポップ文脈によって再評価された動きについて話していました。
(吉田豪)本当、だから僕、いろんな……それこそ女優さんとか昔、歌っていた方のインタビューするたびに「もう1回、歌ってほしい」って説得する作業をすごいやっているんですよ。広末さんもまさにその1人で。僕も言ったことはあったんですけど。まさかの、こんな形でちゃんと実現させてくれる人がいた!っていうことに喜んでたんですよ。
(Night Tempo)なるほど。まあ、そこは面白そうだからなんですけど。まあ、ああいうことになったから。最初は……だって、どっちかっていうとデリケートな話かもしれないんですけど。ああいうのを面白がっているのって、日本しかないんですよ。
(吉田豪)そうですね(笑)。めちゃくちゃ面白がってましたね。
(Night Tempo)「あれでつぶやいて、なにか面白いのかな?」って思ったんですけど。アメリカに行くと「それで? 何?」っていう感じなんです。逆にそれでテレビ番組に出ると……「この子はあなたの子ではありません」とか、そういう番組、普通にあるじゃないですか。だから「日本、ちょっとダルいな」と思いました。
(吉田豪)フフフ(笑)。いや、さすがですよ。そのへんの筋を通す感じ、いいなと思いました。
(Night Tempo)だからちょっと寝かして……結局、この人たちってちょっと興味を持って。その後、またすぐ別の話題があったらそっちに行くんだろうなって思って。だから、その時になったら出したらいいんじゃない?って思っていて。
(吉田豪)そうですね。実際、もうだいぶ風化してますからね。
(Night Tempo)まあ、僕はちょっといろいろ……自分で調べるのも好きで。見てみたらもう2週間経ったら結構冷めていたから。またもっとカウントを稼ぐために週刊誌の方とか、もっとそれで稼ごうと思っていて。だから「ああ、おじいちゃんたち、頑張ってるな」って思いました。でも、それを何回も何回も絞っても、もう出ないからね。ですよね。「いつまでやってるんだろう?」って思うんですけどね。
(吉田豪)「諦めたらゲーム終了ですよ」とか、つぶやいてましたね。
(Night Tempo)こっちは余裕あるから。
(吉田豪)まあ、長い目で見れば何とかなりますよ。
(Night Tempo)「長い目」っていうか、もうそろそろじゃないですか? だって、もう終わったから。
(吉田豪)頼もしい! 本当、あれなんですよ。さっきも言いましたけど、いろんな人に「音楽活動をやってほしい」って言う活動を続けている人間からすると、Night Tempoさんがやってることは本当に、そこは信用に値することをやってくれていて。最初はてっきり、昭和のね歌謡曲のリミックス的なことだけかと思ったら、きちんと新曲を作り、歌手活動の場も作るっていう。「おおっ!」ってなったんですよ。
(Night Tempo)どっちかっていうと昭和グルーヴシリーズは元々……日本の方はたぶんこれ、理解できないものなんですよ。僕がこれを作った理由っていうのは、アメリカでネットで活動する時に元々、こういったシーンはあったんです。それを僕は正式な形を通してアメリカとか、そういうところに持っていこうと思って。そしたら、なぜか日本の中でも「ああ、日本の昔の音楽がいいものだって認められている!」っていうことで勝手に盛り上がっていって。で、なんか僕にすごく押し付けられてくるんですけど。
(吉田豪)「押し付けられてくる」(笑)。
(Night Tempo)僕、どっちかっていうとダンスミュージックを作ってるのに「シティポップも……」みたいな。「あれ? そうだっけ?」って思って。
(吉田豪)でも、なんか完全に最初はシティポップ枠でくくられていた感じ、ありましたよね。
(Night Tempo)でも、どっちかっていうとシティポップをサンプルとして音楽ジャンル、フューチャーファンクっていうジャンルが元々あって。僕はそれをずっとやっていただけなんですけど。
(吉田豪)そもそも、「シティポップ」という概念が日本と国外で全然違うんですよね?
(Night Tempo)違いますよね。日本だったらはっぴいえんどとかを言うんですけど。まあ、失礼な話かもしれないけど、向こうでシティポップとして聞いてるのは、たとえばWinkとか。そういうものなんですよね。
(吉田豪)そう。だから日本で軽視されてるような音楽が海外で評価されていて。しかもそれがシティポップの文脈になっているという。
(Night Tempo)そこで……これは聞いた話で。菊池桃子さん。日本の音楽シーンとかでは……まあ、すごい近いところから聞いた話では、すごい無視されていたっていう。
(吉田豪)そうです。僕が代わりに行ってもいいですよ。かなり軽視された。
(Night Tempo)ラ・ムーとか。
(吉田豪)ラ・ムーは正直、笑いものになってました。
「ラ・ムーは正直、笑いものになってました」(吉田豪)
1988年2月26日放送(35年前)
RA MU ラ・ムー (初登場) 菊池桃子
「愛は心の仕事です」#音楽駅名シーン #1988年 pic.twitter.com/pvuf6WX0kD— 音楽駅名シーンbot ※リクエストは受け付けておりません (@Ongakueki35th) February 25, 2023
(Night Tempo)で、海外でそういう風になってから、いつの間にか「実は私たちは元々、好きだったよ。私たちはそこを音楽として評価してましたよ」っていうのをいきなり言い出して。「私たち、専門家だから。もっと詳しいよ?」みたいな。「えっ、それで何?」って思うんですけども。
(吉田豪)断言しますけど、そんな人はほぼいなかったですよ。
(Night Tempo)で、若者がいるクラブとか、そういうところで流してないんですよね。自分たちでなんか、ちょっとバーラウンジとかで昭和イベントをやっていたり。それが悪いわけじゃないんですよ。でも、自分たちで庭を作ってやっていたものが海外とか若者とかに届いた時にいきなり、「ちょっと遊んでみようかな」っていう感じになった方も結構見たし。実際に見たし。いろいろ……まあ、遊ぶ方、楽しめる形はいろんなことがあると思うんですけど。そのムーブメントっていうのをちゃんと、みんなで楽しんだらいいのに。なんか「私たちの庭だから」みたいな感じで僕を……。
(吉田豪)「あいつ、シティポップはわかってないから」みたいな?
(Night Tempo)でも僕は日本で活動しなくても、アメリカですればいいので。全然、どっちでもいいんですけど。で、さっきの話に戻るんですけど。菊池桃子さんの話。なんか、そうなってるなって。それがちょっと、面白かったです。
(吉田豪)4、5年前に上坂すみれさんが「今、好きなのはラ・ムー」って言っていて。相当、スタンスとしては早かったんですけど。その時も正直、ギャグだと思われていたんですよ。「さすが上坂さん。攻めるな!」みたいな感じで。
(Night Tempo)なるほど。でも、彼女もすごいマニアだから。
(吉田豪)マニアです。「Especiaとラ・ムーが好き」って言ってて。そのセンス、本当に早かったんですけど。
(Night Tempo)でも知る人は知るっていうことですよね。
(吉田豪)ラ・ムーはリアルタイムで見てた側からすると、その時はちょうど日本はバンドブームだったんですよね。ブルーハーツ的なバンドとかBOØWYみたいなのとかがドーンと出てきた時代に、アイドルがアーティスト宣言するっていうブームがあって。本田美奈子さんがMINAKO with WILD CATSになったりとかするような流れで、菊池桃子さんも「私もバンドやります!」って言って。「どんなバンドだろう?」と思ったら、ああいう路線だったんでみんなびっくりして。
(Night Tempo)黒人の方たちが後ろでこうやって、コーラスをやっていて。
(吉田豪)そう(笑)。当時の日本の「バンド」の概念とは違ったんですよ。正直。
(Night Tempo)でも、どっちかっていうと僕はそれを見て……後から見たんですけど。「ああ、日本のマドンナかな」と思いましたよ。最初。
(吉田豪)日本のマドンナはむしろ、本田美奈子だったんですよ。当時は。
(Night Tempo)それはたぶん、売り出しが。でも実際に実現したのはたぶん、僕的には桃子さんだと思います。一番売れた時期に、わざわざ自分の路線を変える人間ってあんまりいないんじゃないですか。それをできた時点で……彼女に実際にお会いした時もすごくホワッとした方ですけども。その、自分の路線があったってことですよね。それがすごくかっこいいなって思っていて。ずっと、一緒に作業してみたいなって思っていて。去年、テレビ番組で会った時に……。
(吉田豪)シークレットゲストでね。
(Night Tempo)その時にも「リミックスとか、そういうのじゃなくて。ラ・ムー2.0みたいなのをやってみたい」とか、そういうのをその場で言っちゃったんですけど。そういう、皆さんが見てるところで話をしたら、なんとか誰かが動いてくれるんじゃないかな?って思っていて。で、いろいろ言って、損じゃないから。とにかく言ってみているというスタンスではあります。
「ラ・ムー2.0をやってみたい」
昨日のマツコ知らない世界で登場したNight Tempoさん & 菊池桃子さん、最高でした!✨ #NightTempo #菊池桃子 #マツコ pic.twitter.com/8a4cE7Hr0V
— Estee Chan (@esteechanart) November 18, 2022
今宵の「マツコの知らない世界」80’sJapanese POPSの世界は、まさかのクライマックスに菊池桃子&ラ・ムー登場♫1988年だったか、熊本・菊池市のでの音楽フェスでラ・ムーのステージ観たことを思い出し、久しぶりに聴いたばかりだった(^.^)。 pic.twitter.com/m6MeeGHkuo
— 益田啓一郎 (@mapfan7) November 15, 2022
(吉田豪)いい状況だと思いますね。菊池桃子さんが歌手業を再開させるには、いいお膳立てができたというか。周りが変わったわけで。ちゃんと。Winkにしても正直、そんなに音楽的な評価をされてなかったんですよ。僕は好きで。いろいろ彼女たちのカバーのセンスのやばさとかは言い続けたんですけど。そんなに人は騒ぐものでもなく。
(Night Tempo)まあ、でも早かったってことですよね。今になってちゃんと評価されてるっていうのは……たとえば今、自分がすごくマニアックな曲とかをいろいろ仕込んで作って。今は皆さん、聞いてくださってるからありがたいんですけど。でも、そのくらいにならなくても、いつかそれをわかってくれる日も来るんじゃないかなって思っていて。とにかく自分が今、いろんなコネクションが作られたから。昭和グルーヴをやりながら。そのコネクションを使って「これ、面白そうなんですけど。やってみませんか?」って本人たちにお声をかけて。で、皆さん意外と「いいよ」みたいな。
(吉田豪)その結果、いろんな、知る人ぞ知る大物を引っ張り出したりすることが成功するようになってるわけですね?
(Night Tempo)はい。逆に皆さん、怖がりすぎなんですよね。大御所だからって。でも、たぶん僕はあんまり日本で「大御所」っていう言葉でどのくらいの……「雲の上の人」とか言うじゃないですか。そこの高さがあんまりわからないから。
<書き起こしおわり>