堺雅人『VIVANT』「乃木憂助」と「F」を語る

堺雅人『VIVANT』「乃木憂助」と「F」を語る 安住紳一郎の日曜天国

堺雅人さんが2023年9月10日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中でドラマ『VIVANT』「乃木憂助」と「F」という2人の人格について話していました。

(安住紳一郎)堺さん、こういう作業が多いっていうことに対して「大変だ」と思わずになんか燃えちゃうタイプなんですよね?

(堺雅人)燃えるっていうか、なんでしょうね? やることがあると嬉しいですよね。

(安住紳一郎)本当に、だからもう俳優に特化してますよね。

(堺雅人)趣味なんですよね、僕(笑)。

(中澤有美子)やることをどんどんどんどん思いついちゃう?

(堺雅人)思いついちゃうというか……いや、今回はでも本当に準備しても準備しても足りなかったですね。英語もそうだし、モンゴル語もそうだし。その、2人格っていうのかな? あれ、よく考えついたなって思って。

(安住紳一郎)いや、見てる方としてはあの2人格、今ひとつ種明かしもされてないんで。

(堺雅人)何の説明もしてないんだよね。

(安住紳一郎)そうですよ。「これから説明されるんだろうな」と思って見てますから。

(堺雅人)どうなんだろうか?

(安住紳一郎)「どうなんだろうか?」じゃないですよ。これは聞かなかったことにしますよ(笑)。

(堺雅人)あれ、でもよく考えたなって思って。

(安住紳一郎)そうですよね。あれ、撮影的には、堺さんには当然、見えてないわけですもんね?

(堺雅人)そうですね。あれば1回、1人格で撮影して。で、もう1回、もう1人格を撮影するんですけど。背中の僕越しの僕っていう画を撮る時は、背中用の共演者がいて。

(安住紳一郎)ああ、代役さんがいて?

(堺雅人)そうです。その方と一緒にお芝居をして。ただ、それでテストをするんですけど。本番はその方を退けて、自分だけでやったりするので。目線だけだいたい決めておいて。覚えておいて。

(安住紳一郎)ああ、そうですか。それは、堺雅人さんの影武者的な人がきちんと用意されてるということですか?

(堺雅人)1人、いらっしゃるいるんですね。で、その方と一緒にリハーサルをして。最初は僕は1人格目でやって。その方にお芝居を見ていただいて、ニュアンスを汲んでいただいて、やって……もう何が何だか最初はよくわかんないんですけれども。やっぱり楽しかったですね。

乃木憂助とFのシーン

(安住紳一郎)「F」っていうね、もう1人格がいて。そうなんですよね。幽体離脱したみたいにね。ちょっと強気な堺さんが出てきて、いろいろと言うっていう。

(堺雅人)で、監督は元ラガーマンで。

(安住紳一郎)福澤克雄さん。

(堺雅人)そう。福澤さんがプレー中とかにやっぱり考えるんですって。そしたら、いろんな声が聞こえてくるっていう。

(安住紳一郎)自分の心から。

(堺雅人)「こうした方がいいんじゃないか」とか。それからつらくなってくると「もっと頑張れよ」とか。「堺さん、そういう声が聞こえてきませんか?」って言われて「いや、聞こえてこないんだけど……」って思ったんですけど。「ああ、そうですね」とか言っちゃって。

(安住紳一郎)聞こえてくる時、ありますよ。

(堺雅人)ある?

(安住紳一郎)だから別人格とは言わないけれど、ちょっと……「なにを弱気になってるんだ?」みたいな感じが……。

(堺雅人)ある!?

(安住紳一郎)ありますよ!

(堺雅人)そういう声が聞こえてくる?

(安住紳一郎)声は聞こえないですけど。なんかこの、モワモワとした中で。

(堺雅人)えっ、あります?

(安住紳一郎)中澤さんは?

(中澤有美子)「ここ、もうちょっと頑張らないと!」って。同じ人格で自分に言ってるかも。

(堺雅人)声、聞こえてくる?

(中澤有美子)「ここは頑張りどころなんじゃないか?」みたいな。

(堺雅人)ああ、そうですか? 僕、1回もそれ、ないな。

(安住紳一郎)ああ、そうですか?

(堺雅人)ずっと1人格だな。もう1人?

(安住紳一郎)ないですか?

(堺雅人)役者をやっておいてなんだけど、「葛藤」っていう言葉がよくわからないかもしれない。

(安住紳一郎)ああ、そうですか(笑)。本当に純粋無垢っていうか。

(堺雅人)バカなんだねえ……。

(安住紳一郎)いや、「バカ」とは言いませんけども。

(堺雅人)まっすぐというか。なんか、主旋律だけなんですよね。だからね。

(安住紳一郎)でも、言われるとなんかそんな無邪気な感じもすごくわかりますけど。

(中澤有美子)とてもピュアな感じがしますね。

「葛藤」っていう言葉がよくわからない

(堺雅人)なんか自分の薄っぺらさを今、思い知らされています。

(安住紳一郎)葛藤っていう経験がない?

(堺雅人)葛藤という言葉をわかったような顔をして演じてるんだけど……(笑)。

(安住紳一郎)それは俳優として、葛藤の経験は持った方がいいと思いますよ?(笑)。

(堺雅人)そうだよね。「葛藤……葛と藤だろう?」って思っちゃうんですよ。だから、がんじがらめなイメージで、がんじがらめになっておけばいいのかなと思うけど。今のお二人のお話を聞いたら、もっと深い葛藤が世の中にあるんだなあ。

(安住紳一郎)ありますよ。だから「これを言うべきか、言わざるべきか」とか。

(堺雅人)大抵、言っちゃうんですよね。

(安住紳一郎)フハハハハハハハハッ!

言いたいことは言ってしまう

(堺雅人)「言ったらどうなる?」ってことを考えるわけですよね。つまりはね。

(安住紳一郎)そうそう。で、「言ったらこれ、怒られるだろうけど。自分としては言ってみたい」とか。

(堺雅人)その間は時間はリアルタイムで流れてるわけ? つまり、その「待てよ? ちょっとこれ、言ったらすごく苦情がくるな?」っていう声のスピードは、だいたいこのスピードで言ってくるわけ?

(安住紳一郎)このスピードですよ。

(堺雅人)っていうことはその間、思考は止まってるわけだよね? 止まってはいない?

(安住紳一郎)思考が止まってるっていうか、その思考が止まってるのもばれたくはないから。なんか微妙に動きながらこう、考えてますね(笑)。

(堺雅人)アハハハハハハハハッ! じゃあ、安住さんがフラフラしてる時は、葛藤をしてる時なんだ?

(安住紳一郎)そうです(笑)。

(堺雅人)ああ、そうですか(笑)。

(安住紳一郎)いや、でも堺さんの……今回に限らずですけれども。ちょっと細身のスーツを着て、飄々としながらも現実の真ん中に連れてってくれるようなストレートなお芝居っていうのは本当に見てて、胸がすくような気持ちですよね。

(中澤有美子)本当にそうですね。

(安住紳一郎)もうなんか芝居をしてると思わないですもん。なんか「ああ、こういう人がいて、予定通り意見を言ってるんだな」みたいな。

(堺雅人)でも今回、難しかったのは裏のある演技じゃない? つまり、本当は知ってるのに知らない顔をするっていうシーンがあるんですけど。前半、特にあったんですけど。知ってるんだけど、知らない顔をしてるけど、「知ってますよ」っていう顔をお客さん向けにはしなきゃいけないんですよね。だから、三重になってるわけですよね。知っているんだけど知らないふりをして。でも知ってるってことはちょっと見せたいっていうのが面倒くさくて。その葛藤を知らない人間としては。

(中澤有美子)そうですね。難しい!

(安住紳一郎)だから……。

(堺雅人)キャパオーバーですよ、これ。

(安住紳一郎)放送1回目の丸美商事に勤めてるサラリーマンで、誤送金問題があった時、視聴者としては普通に「うっかりサラリーマンの奮闘記なんだな」と思って見てるわけですけれども。今、考えてみるとその時から、あれですよね。違う感情でいろいろ動いてるわけで。だからもう1回、見返した時に堺さんがもしかすると演技のプランでいろいろやってるかもしれないっていう。

(堺雅人)かもしれない。でも全部、外れてるかもしれないし。

(中澤有美子)だからもう1回、見ないとって思ってるんですよね。全部終わった後に。

(堺雅人)でも、まだご覧になってなくて。貯めていて。これからご覧になる方もいらっしゃるから、あんまり迂闊なことは言えないんだけど。

(安住紳一郎)もう結構、言ってますよ?

(堺雅人)言っている? やばい……。でも本当、今回のこのドラマは本当にいろんな楽しみ方をしてくださるので、すごく嬉しいのと。あと、なんだろうな? ビデオのこの、時短再生でドラマを見てますっていう方が増えてきてるっていうのを聞いて、ちょっとショックを受けた時があったんですね。

<書き起こしおわり>

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