町山智浩『PIGGY ピギー』を語る

町山智浩『PIGGY ピギー』を語る こねくと

町山智浩さんが2023年9月5日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『PIGGY ピギー』を紹介していました。

(でか美ちゃん)そして今日は2本立てで。もう1本、紹介していただけるんですね?

(町山智浩)結構その流れ(イ・チャンドン『オアシス』)の映画なんですけど。

(でか美ちゃん)その流れ?

(町山智浩)ホラー映画です。スプラッターです。

(でか美ちゃん)全然その流れではないですよ(笑)。

(町山智浩)いや、結構その流れなんですよ。実は。眉村さん、ホラー映画がお好きなんですよね?

(眉村ちあき)はい。好きです。

(でか美ちゃん)さっきも、最近見た映画っていうのでね。

(眉村ちあき)はい。最近『エスター ファースト・キル』を見て。ちょっと、人間の怖さみたいなものが好きです。

(町山智浩)怖いですね。『エスター』1作目、びっくりしたよね?

(眉村ちあき)びっくりした。「ギャーッ!」って言いました。

(町山智浩)ねえ。言えないですけどもね。あれも……解説しにくいんだよな。ホラー映画って。びっくりさせるのを。

(でか美ちゃん)ネタバレになっちゃうんですね。

(町山智浩)ネタバレになっちゃうから。でか美さんはホラー映画、全然ダメなんでしょう?

(でか美ちゃん)私はホラーがすごい苦手なんですけど、お化けが苦手なんですよ。とにかく。だから、人間の恐ろしさとか、スプラッター的なのだったら、人と一緒になら見れます。

(町山智浩)ああ、そうなんですね。

(でか美ちゃん)お化けは何誰と見ても無理です(笑)。怖がりなんで。

(町山智浩)じゃあ、『リング』とかはダメ?

(でか美ちゃん)『リング』とかは今、タイトルを聞いただけで「はーっ!」ってなる(笑)。もうすごい怖がりで。

(町山智浩)じゃあ夜、電気を消さない感じ? 寝る時は。

(でか美ちゃん)もうめちゃめちゃ、煌々とした光の中で寝ています(笑)。

(眉村ちあき)意外ですね。

(町山智浩)部屋に暗がりとかがあると、そこになんか髪の長い女の人が座っているとか、想像するとダメ?

(でか美ちゃん)その「たとえば」で言われるだけでも「うわっ!」ってなるぐらいなんですけども。

(町山智浩)お風呂に入る時……自分のお風呂にお風呂、ありますよね? その時、怖くない?

(でか美ちゃん)だからフタ、ずっと開けています。頭を洗う時もシャワーを下を向いて浴びるんじゃなくて、上を向いてシャワーを浴びています。

(町山智浩)目を開けて?

(でか美ちゃん)目を開けてやっています。

(町山智浩)髪の毛とかを目をつぶって洗っていると……。

(でか美ちゃん)怖いから。

(町山智浩)頭をシャカシャカッてやっていて。手が止まっているのになぜか誰かがシャカシャカやっていたりしたら……。

(眉村ちあき)キャーッ!(笑)。

(でか美ちゃん)やめてください! でも私、目が開いているんで大丈夫(笑)。今日は、実は本番前に2人で予告編を見たんですけども。どうやら、お化け系ではなさそうなそうですね。

(町山智浩)違いますね。これね、殺人鬼系ですね。『PIGGY ピギー』という映画で。ただね、ちょっと普通のそういうスプラッター映画とはちょっと違うんですよ。これね、スペイン映画なんですけども。監督は女性なんですね。女性的視点で描かれているというところが違うんですけれども。これ、主人公はですね、サラという女の子で。高校生ぐらいなんですけども。「ピギー」というあだ名なんです。

(でか美ちゃん)悪口ですね。完全に。

(町山智浩)そう。「ブタちゃん」っていう意味なんですね。で、近所の美人の同級生たちから「ブタちゃん」とか呼ばれて、写メを撮られて、また意地悪なコメントを書かれてね。「子ブタの親子」と書かれて、ネットでいじめとかされてるんですよ。普段から。でもね、お父さんもお母さんもね、あんまり彼女に優しくなくて。

(でか美ちゃん)そうか。家でもちょっと居場所が。

(町山智浩)そう。居場所がないんです。お母さんとかはね、「あんたが太ってるのは、そうやって甘いものばっかり食べてるからよ! もう肉とか、甘いものとか食べちゃダメ!」っつって、強制ダイエットしようとしたりするんですね。で、弟がまたこまっしゃくれた意地悪な弟でね。「お姉ちゃんね、デブだからいじめられてるんだよ」とか家でも言ったりして。彼女は居場所がどこにもないんですよ。で、また夏なのにプールとか行かないで、家にずっと引きこもりしていて。ヘッドホンでずっとね、サラが他のものを遮断してるんで。お母さんが「そういうことしてないで、早く外に出て。みんな泳ぎに行ってるんだから、プールとこ行きなさい」とか言ったりしてるんですね。

(でか美ちゃん)ああ、そうか。あんまり苦しみに気づけてないというか。

(町山智浩)そう。このサラのつらさに誰も気づいてくれなくて、1人ぼっちなんですよ。その街でね。で、彼女はこう思ってるわけですよ。そういう状況の人が思うのは「みんな死んじまえばいいんだ!」って思ってるんですよ。

(でか美ちゃん)そうですよね。さすがにそんな状況だったら、思っちゃう。

(町山智浩)そうなんです。で、その夢を叶えてくれる人が現れるんです。

(でか美ちゃん)ええっ? 何? どんなこと?

(町山智浩)あのね、誰もいない田舎道を歩いてると、そこに自分をいじめた子たちがいるわけですよ。で、その子たちね、サラが嫌々プールに行ったら、その彼女のことをいじめて溺れさせようとしてね。

(眉村ちあき)ひどい!

(町山智浩)あと、彼女の荷物とか服を持って逃げちゃうんですよ。スマホとか、全部持って。

(でか美ちゃん)ええっ? めちゃめちゃいじめというか、全然犯罪ですね。暴力。

(町山智浩)そう。めちゃめちゃひどいことをするんですが。その子たちがね、いるんですよ。その田舎道に。で、1台のバンがあって、そのバンに彼女たちが詰め込まれて拉致されるのを見ちゃうんですよ。で、そのバンに拉致されながらそのいじめっ子たちがね、「サラ! 助けて!」って言うんですけど。

(でか美ちゃん)そうか。そのバンからサラの姿を見つけるんですね。

(町山智浩)そうそう。「助け、ようかな……?」っていう感じですよね。

(でか美ちゃん)そうですよね。正直、普通に……「普段、あんだけやっといてよく『助けて』って言うな?」とはまずは、思いますよね。

(眉村ちあき)たしかに。

いじめっ子たちが拉致されるのを目撃してしまう

(町山智浩)まあね。でも、殺されるかもしれないからね。それで「ううっ、どうしよう?」って思って。で、その時にサラのスマホは彼女たちが持っていっちゃってるしね。

(でか美ちゃん)そうか。持ち物も取られちゃった後だから。

(町山智浩)通報もできない状態なんですけど。それだけじゃなくて、その拉致犯人、殺人鬼がサラの方を見ちゃうんですよ。

(眉村ちあき)怖い……。

(町山智浩)怖いんですけども、彼は何もしないでサラをそのままにして、その女の子3人を連れてバンで去っていくんですよ。で、そこからサラが悩むわけですよ。「どうしよう?」と。

(眉村ちあき)目撃したけれども。

(町山智浩)そう。まあ、はっきり言って「ざまあみろ」っていう気持ちもいっぱいあるわけですよ。ずっといじめられてきたわけだから。でも、彼女は犯人に顔を見られてるっていうのがあって。あと、携帯も犯人が持っていっちゃっているわけですよ。

(でか美ちゃん)そうか。なんか単純な「助けてあげようか、助けてあげないか、どうしようかな」だけじゃないというか。

(町山智浩)だけじゃないんですよ。

(でか美ちゃん)自分にとってもデメリットがあるままで。

(町山智浩)そうなんですよ。で、さらに……街中でも騒ぎになっていくわけですよね。で、死体も発見されるわけですよ。惨殺死体が。そしたら今度、サラが責められ始めるわけですよ。「あんた、知っているんじゃないか?」って。で、ますます言えなくなってくるんですよ。

(でか美ちゃん)ああーっ! 「早めに言っておけばよかった」とかもあるし。

(町山智浩)そうそう。そういうね、ホラーというか、すごい複雑な心理を描いたサスペンス映画でもあって。これはやっぱりね、アメリカからはなかなか出てこない……スペインから出てきたんだなというね。しかも女性監督なんでね。

(でか美ちゃん)なんか、面白そうですね。物語自体がめちゃめちゃ。

(眉村ちあき)ねえ。

(町山智浩)「どっちに行くんだろう?」って感じですよ。

(眉村ちあき)えっ、どうなるんだろう?

(でか美ちゃん)予告編を見て、ちあきちゃんはどんな印象だった?

(眉村ちあき)「ワクワク!」っていう感じでした(笑)。

(でか美ちゃん)結構刺激が強い予告編で。なかなか見るのに覚悟がいりそうな描写もありそうだったんで。こういうので、しっかり人間の心とか、人間関係とかが描かれているのって、結構珍しいですよね?

(町山智浩)これね、また意外……もう言えないですけど。

(眉村ちあき)めっちゃ見たい!

(町山智浩)意外なことになっていくんですよね。

(でか美ちゃん)でも女性監督だから、そういう女性が「ううっ……」ってなる気持ちとかも描いて。

(町山智浩)そう。僕はすごく見ていて怪獣映画のことを考えたんですよ。

(でか美ちゃん)怪獣映画? なんでですか?

(町山智浩)男の子だから、僕は世代的にはゴジラとかウルトラマンの世代なんですけど。やっぱり親に叱られたりね、学校で先生に叱られたり。叱られたりばっかりしていた人生だったわけですけども。そのたびにやっぱりね、怪獣が出てきて。ゴジラが出てきて、全部を踏みつぶせばいいんだと思っていたんですね。ちっちゃい頃にね。でも、その時に本当にゴジラが出てきて、街中を火の海にしちゃう感じですよ。この映画は。

(でか美ちゃん)そうか。なんか、よくない妄想が、自分に都合のいい妄想が現実になったらどうする? みたいな。

(町山智浩)そうなんですよ。「どうしよう?」っていうね。そういう非常に奇妙な映画この『PIGGY ピギー』なんですけども。これ、もうすぐ公開ですね。9月22日に日本公開なんで。あんまり言えないので。これ以上は。ただ一言、言っておきます。結構、クライマックスはすごいんで。覚悟して、見てください。

(眉村ちあき)見たい!

(でか美ちゃん)ありがとうございます。今日は韓国映画『オアシス』。そして9月22日に公開になるホラー映画『PIGGY ピギー』をご紹介いただきました。町山さん、ありがとうございました。

(眉村ちあき)ありがとうございました。

(町山智浩)どうでした!

『PIGGY ピギー』予告編

<書き起こしおわり>

石山蓮華と町山智浩『PIGGY ピギー』を語る
石山蓮華さんが2023年9月26日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で『PIGGY ピギー』を見た感想を町山智浩さんと話していました。
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