星野源『生命体』楽曲制作と歌詞に込めた思いを語る

星野源『生命体』楽曲制作と歌詞に込めた思いを語る 星野源のオールナイトニッポン

(中略)

(星野源)はい。そんなわけで私、星野源の1年ぶりの新曲『生命体』のメールをたくさん読んでいっております。さっき、歌詞の「無自由」について話したけども。1個、思い出した。無自由っていう感覚はもう1個あって。人間には心があって、考えがあって……みたいな話があって。それでとある実験で「脳波、脳の命令の信号と体の動き。その速さを測定する」っていう……ごめん。これ、記憶がアバウトなんで、アバウトに聞いてほしいんですけど。そういう実験があって、その実験で「こういう感情になる」っていう脳の信号、シナプスの信号の速さと、それから実際に体を動かさないといけないっていう実験で。その体が動くという実験をした時に、体の方が速かったっていう実験結果が出てるんですよ。そういうのがあったんです。

で、それはだから「人間が思ってることっていうのは後付けなんだ。その前に体がもう考えていて、脳で考えてることっていうのは実は自分で考えていないんだ」っていう考え方があって。それって、すごく無自由を感じるじゃないですか。もう自分の意思なんてないんだと思うちゃうから。そういう実験があって。でも、その感覚ってすごくわかるなって思うので。まず、そういうのがあって無自由なんだけど……でも、僕らはなにか心を示す時に胸を指差すじゃないですか。胸のあたりを指すじゃない? まあ、それは心臓なんだけど。でも心臓に脳はない。ないんだけど、でもちょっと待てよ。「体で考えている」って考えると、それは合っているんじゃないか?って思って。

「体に心がある」って。その実験結果は「体に心がある。愛はここにある」ってことなんじゃないのか?って思うと、愛と……その自分ががどう考えても、もう既に決まっているかのように考えちゃうけど。脳よりも、自分が考えてることよりも行動の方が先に出ちゃうと考えると。でも、それは実は心が先にあって。たとえば、それは胸にあるっていうので間違いがなくて。それを愛と変えていける。運命は変えていけるっていう、なんかそういう解釈にできるんじゃないかなっていうのを思ったっていう。それを今、思い出しました。CM中に思い出しました。

じゃあ、ちょっと次のメールを読んでいきたいと思います。東京都の方。「珍しくイントロもアウトロもゼロな曲ですが、あえてそうした理由は何でしょうか?」。ええと、人間は気がついたら生まれてて、死んだらその瞬間に無だからです。それだけです。はい。続いてミュージックビデオのメールが来てますね。岩手県の方。「新曲『生命体』のMV、見ました」。ありがとうございます。「動き出す生き物の息吹。そして生きる力を表現するような描写。陸上、桐生選手の走りや、齋藤飛鳥さん、若き天才ダンサーTHE D SoraKiさんのダンス。そして過去イチ激しいのではないかと思われる源さんのステップワーク。最高すぎて何度も繰り返し見ています。あとニセさんの英語力は岩田イングリッシュの上達ぶりでしたが、尺読みは鍛え直しが必要かもしれません」。ああ、いつもね。尺が間に合わないからね。

そうなんですよ。ミュージックビデオを今回も作りまして。そのミュージックビデオの最後にいつもCMをね、入れてるんですけど。そのCMを2本入れていて。2本目は変な言葉がいっぱい入ってるっていう、ふざけてるっていうのをよくやるんですけど。久しぶりに今回、やって。で、そこでニセさんが急に降臨したんですよ。で、2テイクぐらいでニセさんが終えられてですね。僕はその完成を見ずに帰ったんですよ。いわゆるミックスみたいなのを。その音に関してね。編集は最後まで全部、きっちり見て。「イエーイ! できた!」って言って帰ったんですけど。

いわゆるニセさんしゃべりのミックスまで聞いてなくて。で、家に帰って「完成品の動画を送ります」って来て、そこで見たらニセさんがマジで何を言ってるかわかんなくて。「◯✕※△◎」って言っていて。もうLAで聞いたラジオそっくりで(笑)。コンプがかけにかけまくられた、あのLAのFMのヒップホップラジオと全く同じ声がして(笑)。「これ、マジでなに言ってんの?」と思って。やっぱり当たり前だけど、レコード会社の人は曲を聞かせたいじゃないですか。で、曲を聞かせたいからCMで、しゃべりが入る時は大抵、曲を下げるんだけど。それをあんまり下げないでニセさんも突っ込んだから、コンプがかけにかけられて、ニセさんがLAのDJになってしまったんですよ(笑)。

なんで「YouTubeの字幕に何を言ってるか入れてください」って言って。なのでYouTubeはなぜか、ローマ字の字幕でそれが入ってます。なのでYouTubeを見れる方はぜひ、見てください(笑)。本当に何を言ってるかわかんなくて、面白かった。「これ、でもミックスがもうちょっと音を下げてくれたらよかったなー」って見ながら言っていたら、妻が「いや、これはニセさんが悪い」って言っていたよ。フハハハハハハハハッ! 「ニセさんがはっきりしゃべらないのが悪い」って言っていて。「そうだね」っつって(笑)。「うん、そうだね。本当にその通りだね」って。

続いて、東京都の方。「源さん、こんばんは」。こんばんは。「『生命体』のミュージックビデオ、見ました。齋藤飛鳥さんの出演に驚きました。踊っている姿、作品を素敵な形でまた見ることができてとても嬉しいです。今回のキャスティングはどんな経緯があったんでしょうか? ミュージックビデオ、たくさん見ます」。ぜひ、たくさん見てください。よろしくお願いします。あと、拡散してください。よろしくお願いします。

齋藤飛鳥、THE D SoraKiのMV参加

(星野源)そうですね。いろんな方が出ていて。今回、監督をGROUPNというユニットの方なんですけど。映像を主に作っているのはhamaibaくんっていうその中の方で。前に話した、SAKEROCKの解散ライブに来てくれていたディレクターさんっていうのはこの方です。はい。そうなんです。なので、嬉しかったですね。「嬉しいです!」なんて言っていてくれていたのとあと、その動画の最後に入れるCMのしゃべりも監督が撮るから。「本物が見れて嬉しいです! 俺、ずっと見てたから」って言っていて、すごい面白かったんですけど。

素晴らしい映像でしたね。で、今回のコンセプトはもちろんアスリートの方のきっかけがあっての曲なんですけど。いろんなメディアでちょっと話してるんですけど。だから全生命体といいますか。もう一生懸命生きている人……いろいろ、自意識とか、いろんなものに日々、がんじがらめになってると思うんで。そういうものにがんじがらめになりつつも、一生懸命生きてる人たちに向けて歌を届けられたらなと思って作ったんです。

なので、いろんな人が今、生きている瞬間っていうのをワーッと繋いでいく。その中で自分が歌っているっていう、そういうビデオをまず提案させてもらいました。で、それが映像が縦割りになって、あたかも陸上のトラックのように。そして、その映像の中には人は基本的には1人でいて。1人で自分の人生と向き合って、今を生きてる人たちが『生命体』という楽曲の中で繋がって輝いている瞬間を見れるっていう。そして歌が爆発していくっていう、そんなコンセプトだけを思って。「あとはもう、よろしく!」っていう感じで。

あと、出演者の方はですね、SoraKiくんと齋藤飛鳥さんと桐生さんだけはちょっと自分で提案させていただいて。それはもう本当にありがたいことに、こちらも快諾していただきまして、素晴らしいビデオなりましたね。ちょっと、自分で見てても非常に感動しました。で、SoraKiくんは前にラジオでもちょっと話したことあると思うんですけど。ダイアナ・ロスの『I’m Coming Out』で踊っている……もうバズりにバズり、世界中で有名になった彼ですけども。本当に彼のダンスが大好きで。

(星野源)やっぱりなんか、「生きてる!」って感じがするんですよね。僕は本当にダンスが大好きなんで。見てるだけで「ああ、生きてるな!」っていう感じがするんです。命を賛美してる感じがすごいするんですけど。特に彼の踊りには、それを感じたのと。あと、この楽曲で「踊ってる人がいたらいいな」っていうのをまず考えて、一番最初に踊っている姿が浮かんできたのが。齋藤さんで。なんていうか、生きざまが好きなんですよ。で、齋藤さんの生きざまみたいなものって……それこそダンサーの皆さんって、やっぱりダンスって生きざまが出ると思うので。

で、僕はよく生きるっていうことと踊るってことは等価であるっていうか、同じ意味みたいなことをよく言いますけど。そういうのも含めて、いろんなものがその踊りに出るんだと思うんですよね。そういう意味で、生き方みたいなものがすごく彼女のダンスを見てると感じるんですよね。なので、もうダメもとで……もう、その乃木坂46をご卒業されてから踊られていなかったので。受けてもらえるかなって思ったんですけど、受けていただけて。しかも、ずっとやられているSeishiroさんというコレオグラファーの方とまた組んでいただけて。Seishiroさんのリクエストも出させていただいたんですけど、嬉しかったですね。

で、あれですよ。卒業前のソロのミュージックビデオのSeishiroさんので踊られていて。そのディレクターは山岸聖太さんですからね。俺の大事な山岸聖太が(笑)。大好きな山岸聖太さんが撮られていますから。そちらもぜひ見ていただきたいんですけど。

(星野源)そんな経緯もあってお願いしたら、もう素晴らしいですね。めっちゃ素晴らしいダンスを2人と見せていただいて。俺、あとね、桐生選手の笑顔のところでね、ウッと来るんですよね。なんかもう胸がウッて来るっていうか。あと、いろんなそれこそ日々生活をされている方、いろんな仕事をされてる方。あと、あの機械が出てくる、マシンが出てくるのもちょっとすごい好きなんすけど。なんか、そういうのも含めて、いろんな人が今を生きているっていう瞬間を捉えたのがこのビデオだと思います。はい。そんな感じかな? じゃあ一旦、ここで楽曲を聞いていただきましょう。そんな思いをいろいろ込めました。なので、じっくり聞いていただけたらと思います。星野源で『生命体』。

星野源『生命体』

(中略)

(星野源)『生命体』の感想をちょっとたくさん届いております。ありがとうございます。大阪、20歳の方。「『生命体』リリースおめでとうございます」・ありがとうございます。「力強い詞とサウンドに言葉では表せないような何かが体の底から湧き出てくる、そんな感じがしてとにかくやばかったです。私はリリースすぐに母と車で聞いていました。母はインドネシアの人で、日本語があまりわからないのですが、そんな母が『なんかとても勇気をもらえるような曲だ』と言ってくれて、源さんの曲の持つパワーの大きさを再確認できました。今度、機会があったら母と源さんのコンサートに参加したいと思います」。嬉しいですね! なんか、インスタのコメントとかでも「Fromインドネシア」っていうメッセージとかもあって、嬉しいっすね。

意識的に歌い方を変えた

(星野源)そうそう。あとね、1個思い出した。今回、意識的にというか、歌い方がちょっと違うというか、ちょっと変えたんですよ。なんでかっていうと、いつも僕は曲を作る時に楽曲を先に作って、その後に詞をつけるんですけど。英語のフィーリングで作ったので、なんか音がいっぱいあるんですよ。今回。なので、日本語にそれをはめていくんですけど、日本語にはめた時に、言葉数が多くなるんですよね。で、言葉数が多くなった時に、なんていうのかな? ちょっとトゥーマッチっていうか、窮屈な印象にならないように、あんまり歌詞がわかんない歌おうっていうコンセプトなんですよ。

なので、今回は一聴して歌詞は別に伝わらなくてよくて。ただ、1個のワードが急に入ってきたりするっていう。で、「この歌詞、何だろう?」っていう風に思ってもらいたくて。それで歌詞を同時に公開して、歌詞を読んでもらうっていう。たとえば、なんだろうな? 歌詞の中で「笑う 何言ってんの」っていうのとか。「あれ? 『笑う 何言ってんの』っていう歌詞なんだ」みたいな。なんか、そういうこととか。あと、なんだろう? 「評価」とかも「ああ、あの評価のことか!」みたいな、なんかそういうこととか。あと「走れ」とか、「死ぬな」っていう言葉とか、そういう言葉が急にポンと入ってきて。「何、この曲?」ってなるような。

だから僕は特に……でも『創造』以降かな? 日本語で主に書くようにはしてるんです。でも日本語を、前は割と「聞いてるだけで伝わった方がいい」って思って書いてるんですけど。今は言葉が一発で伝わるより、曲の方が大事で。曲のフィーリングだったり、節だったり。で、この『生命体』っていう楽曲はフィーリングがめっちゃ大事っていうか。あと、ドラムのライドのチ-ン!っていうことのこのチーンのひずみの具合の本当に些細なことで「うわっ!」って感じる感触が違うので。で、歌の雰囲気もはっきり言葉を伝えようとするとすごく冷める曲だと思うので、フィーリングを大事に歌いました。はい。

続いて。「『生命体』を聞いていると、古いジャズコンボのライブ音源のような生々しさを感じます。ジャズが音楽のルーツでもある源さんだからこそのサウンド感だと思うんですが、どうしてこのサウンドを選ばれたのか。その理由をお聞きしたいです」。そうですね。ジャズコンボ。そのイメージもすごくあるんですけど。どちらかというとゴスペル、R&Bのイメージなんですよね。で、なんかやっぱりその頃の50年代、60年代頭ぐらいの楽曲のサウンドって、マイクの数が超少ないんですよ。マイクの数が少なくて、たとえばドラムスを取るのにも1本とか2本のマイクとかで録っていたりして。今はドラムスって、それぞれの太鼓に全部マイクがあって。それをミキサーで全部、調整できるようになっていることが多いんだけど。

そうじゃなくて、たとえばライドだけなんかでかいとか。で、フィルをした時にフロアタムっていう横にある大きい太鼓。「ドゥーン!」って音がするフロアタムだけ、そこに近いところにマイクを置いてるから、それだけがひずむとか。なんかそういう音が好きで。全部きれいに行くんじゃなくて。なんか、完全に自由が利く音楽じゃないっていう、その中で楽器が……それってなんか知らないけど、楽器が躍動してる感じがあるんですよ。生きている感じがあって。その音量を操作されてる感じじゃなくて、その幅の中で生きてるって感じがするんで。なんかそういう感じにしたかったんですよ。

なので僕のルーツは……ルーツっていうか、昔からやってきたんじゃなくて、耳にずっと残ってるっていう、そういうのもあって。でも、僕はジャズの勉強はしてないので。だから僕の中でなんか知らないけど、なんか変に発酵された、変なコードプログレションはめっちゃ出てるので。もしかしたらそれでジャズを感じてくる方もいるかもしれない。あとはドラムスとピアノとベースっていう、そのシンプルな編成。でもやっぱりジャズコンボとしてやるんだったら、ウッドベースになると思うので。だからそこでソウルなんだっていうのは、ジャズミュージシャンがソウルバンドやることなんてしょっちゅうあったと思うんですよ。なんかいろんなね、流行りがあったりしますから。

そういう、いろいなのが混ざっている時期の、なんかそういう……でもエレベで弾いているみたいな。なんかそういうバンドのイメージです。はい。それをやりたかったんですよ。それがすげえやりたくて。でも一番結果的には、それを完全再現とかじゃなくて、やっぱり今、2023年の令和に星野源にしかできない音っていうのが一番やりたいので。なんか、それをもとにしてっていう感じですかね。それをインスピレーション元として、わけのわかんない音楽になったらいいなっていうのが一番大きいです。そんな感じだね。『生命体』感想も引き続き募集してますから。ぜひ、思いついた方は送ってください。また読んでいこうと思います。

<書き起こしおわり>

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