宮藤官九郎と麒麟川島 大河ドラマ『いだてん』を語る

宮藤官九郎と麒麟川島 大河ドラマ『いだてん』を語る 土曜日のエウレカ

宮藤官九郎さんが2023年8月12日放送のTOKYO FM『土曜日のエウレカ』に出演。麒麟川島さんと大河ドラマ『いだてん』について話していました。

(川島明)で、『IWGP』の1年後に公開された映画『GO』。これがもう日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞されました。これは大きかったですよね?

(宮藤官九郎)あの、ええ。びっくりしたんですけど。僕、なんかうまくいかないっていうか。この『GO』がバンバン、なんかいろんなところで、映画で脚本賞を取ってる時に『木更津キャッツアイ』をやってたんですよ。テレビでは。で、『木更津キャッツアイ』の視聴率がどんどん下がっていって(笑)。

(川島明)ええっ? そうだったんですか?

(宮藤官九郎)そうだったんですよ。で、『GO』で評価されている時は『木更津キャッツアイ』がなんか数字があんまり良くないっていうんで。「ええっ?」って思って。なんか、きっと喜ばないようにされてるんですよ。

(川島明)ああ、神様がバランスを?

(宮藤官九郎)そう。「お前、浮かれるなよ?」っていう。で、『木更津』が今度、映画化されるっていうのでバンバンバンバン『木更津』がなっていた時は今度、やっていた『マンハッタンラブストーリー』というドラマが視聴率が良くないっていうんで。「お前、調子に乗るなよ?」っていう。

(川島明)どうも浮かれられない人生なんですね(笑)。

(宮藤官九郎)そうなんですよ。だからなんかね、「いい思い出だけ」っていうのはあんまりないんですよね。

(川島明)両手離しはしてないっていう?

(宮藤官九郎)そうなんですよね。本当に……だから、どっちかにしておけばよかったんだなって(笑)。

(川島明)いやいや、そのバランスが良かったんじゃないですか? どこかで天狗になっていたら、今の宮藤さんがいないかもしれないし。

(宮藤官九郎)そうですね。天狗にさせてくれないですね(笑)。神様は。

神様が天狗にさせてくれない

(川島明)それが名作を生み出す礎になってると思うんですけども。そして、キャリアにおけるマイ大事件。もうひとつお聞きしてまして。大河ドラマ執筆。朝ドラをやられて人気に。そして毎週のドラマもやられて。大河ドラマはやっぱりちょっと特別なんでしょうか?

(宮藤官九郎)そうですね。元々、朝ドラは「やってみたらできた」って感じだったんすけど。大河はやっぱり俺、「できないんじゃないか」からスタートしたんで。とにかく、なんとなくですけど僕、時代劇はやんない方がいいなと思って。ただちょうど、戦時中の……「戦争をまたぐような戦争物みたいなの、どうですか?」って言われて。最初の発注は。で、僕は古今亭志ん生師匠の満州で終戦を迎えたのに、なかなか満州から帰ってこなくて。日本ではみんな「死んだ」って思ってて。そしたらフラッと帰ってきて。で、それからブレークしたっていうあの話がすごい好きで。「なんとか志ん生の話にできないかな?」と思って。そこから逆に「オリンピックだ」ってなって。

(川島明)ああ、なるほどね!

(宮藤官九郎)で、だから「志ん生がオリンピックの話をしてる」っていう。

(川島明)ああ、それでたけしさんを?

「志ん生がオリンピックの話をしてる」というイメージ

(宮藤官九郎)それで重ねられないかな?っつって。っていうドラマを企画してたら、「それ、大河ドラマでできませんか?」って言われて。「えっ、僕、時代劇は無理だとは言ったけど、これ、大河になりますかね?」とかっていう話をしてるうちに、いろいろと探していたら初めてオリンピックに出た日本人とか、オリンピックを東京に呼んだ時の嘉納治五郎さんと田畑政治さんの話が出てきて。「ああ、じゃあもうこのへんを同じように紡いで。主役は戦争とオリンピックにしよう。とにかくオリンピックが主役の大河ドラマをやりましょう。ちょうど、次の年にオリンピックだし」みたいな。なんか、そういう経緯なんですよね。

(川島明)大河ドラマの中でもちょっと異色のというね。時代的にも。

(宮藤官九郎)で、いろんな人とその後、話を……大河を書いたことがある人に話をしてても、「どうもなんか噛み合わないな」と思ったら、やっぱり他の大河ドラマって時代劇だから、資料がそんなにないんですよね。残ってない。

(川島明)だからこそ、独自の見解はあれども……。

(宮藤官九郎)そう。その解釈ができる。でも僕がやったやつって、ほとんど資料が残っていて。
(川島明)正解があってしまうっていう。

(宮藤官九郎)そうなんですよ。だから、答え合わせしなきゃいけないっていうのはめっちゃ……「あれ? 俺、なんでこれ、選んだんだろう」って(笑)。

(川島明)くぐらなあかんゲートが決まっちゃってるんですね。

(宮藤官九郎)そうなんですよね。

(川島明)でも、宮藤ワールドは出さないといけないっていう。この勝負はなかなかだったですね。じゃあ。

(宮藤官九郎)そうですね。でも、そこが結構楽しかったのは、キャスティングする時に写真が残ってるから「似てる人」っていう面白み……「この人とこの人、似てるから。この人をキャスティングしよう」っていうのができたんですよね。だからなんか、似せていくっていう醍醐味があったっていうか。東洋の魔女の役で安藤サクラさんがものすごい似せてくれたりとか。そういうキャスティングの面白さはありましたね。

(川島明)どうですか? 今後、また大河ドラマっていう話が来たら。

(宮藤官九郎)もう僕は絶対に戦国時代を描きます!(笑)。

(川島明)逆に(笑)。やってみてわかる?

次は絶対に戦国時代を描きたい

(宮藤官九郎)資料がないっていうか、資料が限られている。あるいは「こうだろう」っていう想像が及ぶ範囲があるっていうやつの方が……だったらまだ、できるっていうか。

(川島明)そうか。空想も入れていいよ、やし。

(宮藤官九郎)現代劇であの尺はちょっとやっぱりもう、自分の処理能力が追いつかないかもしんないですね。

(川島明)大変だったわけですね。

(宮藤官九郎)そうですね。

<書き起こしおわり>

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