ハライチ岩井 はじめて食事に行く後輩芸人にバラエティやネタについて相談された話

ハライチ岩井 第2弾エッセイ『どうやら僕の日常生活はまちがっている』取材を語る ハライチのターン

ハライチ岩井さんが2023年6月1日放送のTBSラジオ『ハライチのターン!』の中で事務所の社長の指示で後輩芸人・豆鉄砲の東さんと食事に行った際の模様を紹介。「バラエティでの立ち振る舞いとか、ネタのこととかを岩井に相談しなさい」と社長に言われた東さんに対してアドバイスしたことなどを紹介していました。

(岩井勇気)先週の土曜日の夜にですね、一通LINEが来まして。それが後輩のこゝろの荒木からだったんですよね。

(澤部佑)あら。山出谷じゃなくて?

(岩井勇気)山出谷じゃなくて。去年、漁船に乗っていたでおなじみ。カニ漁船に乗っていて、1年間帰ってこなかったでおなじみの荒木からLINEがあってね。「今日、事務所をライブだったんですけど」って。それで、なんか豆鉄砲っていうコンビがワタナベにいるじゃないですか。で、漫才コンビなんですけど。

(澤部佑)2、3年目とかだっけ?

(岩井勇気)結構やってるんじゃなかったかな? その、ボケの東っていうやつ。ちょっとヒゲを生やしたやつ。そいつがライブ終わりにワタナベの社長がね、「バラエティでの立ち振る舞いとか、ネタのこととかを岩井に相談しなさい」って東に言ったらしくて。

(澤部佑)うちの社長が?

(岩井勇気)で、社長がその場にいた荒木に「ちょっと岩井と東、つないであげて」っていう風に言って。「なので岩井さん、東とつないでもいいですか?」みたいなLINEだったの。でもさ、正直、バラエティでの立ち振る舞いなんて、聞くのは絶対に俺じゃないじゃない?(笑)。

(澤部佑)いや、別に聞くんじゃないの?

(岩井勇気)いやいや。なんか別に上手いわけでもないしさ。っていうか、でも誰がどうしたらいいとかって、わかんなくない? 自分のこと以外は。

(澤部佑)それぞれ、キャラも違うしね。

(岩井勇気)かといって、別に澤部に聞いても、やっぱりバラエティは澤部、できたとしても、そういう相談に大したアドバイスができるとは思えないわけよ(笑)。

(澤部佑)フハハハハハハハハッ! ああ、まあそうよ。言葉にできないからね。思ったことを。

(岩井勇気)小田和正みたいにな(笑)。

(澤部佑)『言葉にできない』って(笑)。

(岩井勇気)あの人は別に語彙力がないとか、そういうわけじゃないから(笑)。

(澤部佑)言語化できないんじゃないの? 小田和正も。

(岩井勇気)言語化できないわけじゃないのよ。「言葉にできないような感情なんだ」っていうことだから(笑)。

(澤部佑)ああ、そういうことなんだ。仲間だと思っていたけど(笑)。

(岩井勇気)「言語ができないんです。語彙力が僕はないんです」っていう歌では……。

(澤部佑)語彙力がないから「ラララ♪」って歌っているんじゃないの?(笑)。

(岩井勇気)違うんですよ(笑)。だったら「もっと頑張れ」っていう話になっちゃいますから。できるんです。いろんな曲を作ってるんですけども。だから、そうなんで。まあちょっと澤部でもないなって。というか、バラエティでの立ち振る舞いとかを的確に後輩にアドバイスできる人なんで俺、有吉さんぐらいしかいないと思うのよ。

(澤部佑)そうね。明確に答えは出してくれるよね。

(岩井勇気)ズバッと言ってくれるじゃん? で、それが合ってたりするからさ。あと、ネタについてアドバイスを俺がしたとしても、最終的にさ、自分がそのネタを面白いと思ってないと意味がないだろうっていうこと。

(澤部佑)はいはい。言われた通りにやってもね。

本人がネタを本当に面白いと思っていないと意味がない

(岩井勇気)そう。どれだけネタ見せに行って、作家とかにダメ出しをもらって、言われた通りに直して。それで「よくなったね」とか言われて。それで多少、受けるようになったとって、自分がそれを面白いと思って発表してるわけじゃないじゃない? で、自分の面白さを突き詰めてるわけじゃないわけね。それに何の意味があるんだ?っていうことなの。自分が面白いと思ってないもので世に出て、それをやり続けるのと、自分が面白いと思ってるものを突き詰めて、一生世に出れないんだったら、芸人だったら後者を選んだ方がいい気がするんだよね。

(澤部佑)うん、うん。つらいよね。前者はね。もう意味がわからなくなってくるもんね。

(岩井勇気)「人生、何やってるの?」っていう話になるから。最優先事項が笑いであるはずなのに、それだとお金になっちゃってるじゃん? お金、知名度とかっていうことになっちゃってるから。それだと、ちょっと違うんじゃないの? 始めた意味が違うんじゃないの? みたいに思っていたから。ネタのアドバイスなんていうのは、やっぱりあんまり必要ないのかなっていう風に俺は思っているわけ。

(澤部佑)まあね。意見を聞くのはいいけど、アドバイスはね。

(岩井勇気)そうそう。見せ方とか、わかりやすくとかだったら……。

(澤部佑)それはもう、技術だもんね。

(岩井勇気)そう。技術を言うんだったらいいんだけど。ネタのその根幹は、やっぱり変えられないよねって。あと、こんな今みたいなモードで後輩と接するべきじゃないとも思ったの。俺は。こんなので、あんまり仲良くない後輩と接したら、そいつも楽しくないって思ったわけ。でも、もう東にLINEをつないであげないわけにもいかないじゃない? 「いいわ。つながないで」って荒木に言うわけにもいかないから、つないであげてさ。そしたら早速、東からLINEが来るわけ。

(澤部佑)ああ、ちゃんと来るんだな。

(岩井勇気)で、「機会があればお話しさせていただきたいです」みたいな感じのLINEが来て。「どうするかな?」って。「そういや、明日の夜、ちょっと空いているな」って思って。だからそれに返したんだけど。「あんまり気を遣わず、普通にメシを食いに行こうぜ。明日の夜、空いてる?」みたいな感じでやったら、「明日、行けます」って返ってきて。「じゃあ20時に○○の駅ね」「わかりました!」みたいな。それで結局、メシに行ったんだけど。この、ワタナベがたぶん盛り上げたいであろう芸人とメシに行ったっていう話を『ハライチのターン!』でするっていうのも、ちょっと事務所の思うつぼだなっていう感じで……これもなんか気に入らないんだけども。

(澤部佑)いいじゃん、それは。

(岩井勇気)なんか、無理やり作られた関係性みたいな。

(澤部佑)まあ、たしかに出会いはね。でも後輩とメシに行ったっていうだけのことだから。

(岩井勇気)でも、それもちょっとなって思うわけ。俺は。気になっていれば、仲良くするし。何も言われなかった方が、逆に仲良くできたかもしれない関係だってあるじゃない?

(澤部佑)まあ、面白いやつだしね。絶対にね。

(岩井勇気)面白いと思ったし。でさ、なんか「野暮なこと、されちゃったな」なんて思いながらさ、次の日にメシに行くわけなんだけど。20時にさ、駅で待ち合わせて。「どこに着いた?」「改札、出ました」「じゃあ、改札出て左に来て」なんつったら、JRの改札と地下鉄の改札で勘違いがあったらしくて。10分ぐらい出会えなくて。「どこ、これ?」って。

(澤部佑)携帯があるのに?

(岩井勇気)なんかさ、はじめての後輩に電話をするのもあれだからって、文字でやり取りしていて。

(澤部佑)電話、しなよ。

(岩井勇気)最終的には電話をしたんだけども。

(澤部佑)するんかい!

(岩井勇気)そしたらなんか、逆の方にいた、みたいな。ちょっとごちゃごちゃしちゃって。でも別にこっちは怒るわけでもなくね、「お疲れ様です」なんて言われて。で、結局サシでメシすることにしたんだよね。なんか芸歴の間の芸人のやつを呼んでもさ、結局その仲のいい間の芸人と俺は多めにしゃべることになったら……なんかそれはさ、あんまり意味がないし。俺の仲がいいやつを連れていって2対1みたいな感じになるのもフェアじゃないじゃない? だからそれは嫌で、サシにしたんだけど。もう本当、そんなにしゃべったことないんだよ?

(澤部佑)そうだよね。芸人マッチングアプリみたいなことだろう?(笑)。

(岩井勇気)本当にそうだよ(笑)。

(澤部佑)見ず知らずの芸人と、みたいな。すごいね。

後輩芸人とサシで食事

(岩井勇気)で、「なにを食いたい?」って聞いたら「なんでもいいです」って言うから。「じゃあ、焼き肉でもいいか」みたいな感じで。気張っていない、きれいなところじゃない焼肉屋に入って。飲み物を頼んで。その時にもう、言ったわけ。「バラエティの出方なんて、俺はわからないし。ネタも自分が面白いと思ってないと意味がないから。アドバイスとか、ないけどね」みたいな。「そうすか」みたいな。「じゃあ昔、たとえば岩井さん、ネタ見せでどうしていたんですか?」みたいに言われたから、「俺はもう澤部に全部受け答えさせて。ひとつも聞いてなかったよ」って(笑)。

(澤部佑)まあ、その通りですね。

(岩井勇気)「作家の言うことなんか、何も意味がないんだから。澤部に受け答えさせて。だからみんな、澤部がネタを書いてると思ってた」っつって。でさ、「めちゃくちゃですね」みたいに言われて。「でも、そうやって作家の言うことを聞いてたとえ、テレビに出れたとしても、それはお金をもらえるだけじゃん? 自分の面白さを発表できるわけじゃなくて。お金もらえるだけだったら、あんまり意味なくない?」みたいに言ったら「そうっすかね」って。「でも自分はまだバイトをしてるから」って言っていて。

(澤部佑)そうか。そっちの欲はあるよね。

(岩井勇気)「じゃあ、なに? めっちゃ金を稼いだら、何したいの?」って聞いたら「宇宙、行きたいです」って。

(澤部佑)ああ、なんかすごいな。東もちょっと変なんだな。

(岩井勇気)「えっ、お前、宇宙に行きたいの?」「はい!」「えっ、宇宙に行くとしたらたぶん数十億、かかるよ?」「えっ、そんなにかかるんですか?」「たぶん、だとしたらお笑いじゃないよ?」「いや、お笑いをやって宇宙に行きたいんです」って。

(澤部佑)お笑いをやって、宇宙に行きたいの? それ、明確に決まっているんだ?

(岩井勇気)で、「お笑いで稼いだ金で宇宙、行けないdねすか?」って聞かれたのよ。「うーん、まあ、厳密に言うと、めちゃくちゃ頑張れば行けるかもしれない。ギリ、行けるかもしんないよ」って。

(澤部佑)トップを走り続ければな。

(岩井勇気)そう。「ただ、トップを走り続けたとしても、遊んだりとか、いいメシを食べたりとか、いい家に住んだりとかを一切しないで、宇宙の金だけを貯めていたら、行けるかもしれない」って。

(澤部佑)もう全部、移動も電車で。

(岩井勇気)「それで宇宙に行くのはかっこいいけど。多少はさ、途中途中でご褒美は欲しいじゃん? だとしたら、どっちがいいの? 貯めて宇宙に行くか、宇宙に行かなくて、地球でちょっと遊んだりとか、いいメシを食べたりとかっていうのがちょいちょいやれるっていうのと、どっちがいいの?」って聞いたら「宇宙、行きたいです」って。

(澤部佑)おおっ、強い意志!

(岩井勇気)そんなことを言うわけ。「お前さ、宇宙行きたの?「行きたいです」「めっちゃ俺と話、合うじゃん!」ってなって(笑)。

(澤部佑)意気投合した!(笑)。

宇宙で意気投合

(岩井勇気)俺、宇宙めっちゃ好きなんだよ。俺、宇宙のことについて、いつも調べているの。で、そこから焼肉屋で2時間、宇宙の話!

(澤部佑)なんで!? なんでだよ?

(岩井勇気)焼肉を食いながら、ブラックホールと地球外生命体の話ね。

(澤部佑)事務所の芸人の先輩・後輩で? 芸の話をもうちょいしろよ……。

(岩井勇気)「宇宙はいいよな。宇宙は不思議だな。わかんないことがあるからな。物理法則がさ、全く違うから。俺らが想像するようなことって、物理法則の中でしかないから。たぶん、それ以外のことなんだよ」「そうですよね!」って。

(澤部佑)東も詳しいの?

(岩井勇気)めっちゃ詳しかったね。お互いの宇宙の情報を交換したりなんかして。で、ちょうど2時間ぐらい経って。「じゃあ俺、明日早いから帰るわ」って解散したんですけれどもね。たぶん向こう的には何の収穫もなかったと思います(笑)。

(澤部佑)でも、宇宙友達ができたから(笑)。

(岩井勇気)俺も帰りにちょっと夜風に当たりながら、「はじめてメシに行く後輩と宇宙の話をしちゃったな」って思ってね。「でも、後輩じゃなくても、初めてメシ行ったやつと宇宙の話ができるって、いいな」って(笑)。

(澤部佑)宇宙ね(笑)。それは今後も定期的にね、情報を。

(岩井勇気)定期的にっていうか、宇宙の情報が入れば、落ち合うと思いますよ。

(澤部佑)宇宙会じゃん(笑)。

(中略)

(澤部佑)ちょっとなんか、特殊なやつですね。東もね。

(岩井勇気)変わったやつだな。

(澤部佑)面白いやつですね。

(岩井勇気)でも、お酒飲めないのよ。東って。で、シラフで2時間、宇宙の話をしたからね。

(澤部佑)宇宙ソフトドリンク? すごっ! ソフトドリンク宇宙ね。

(岩井勇気)あと1個だけ、なんか……全然、気を遣うあれでもないんだけど。最後の方で、そのお店はタバコを吸えたんだよね。で、お茶を飲んでる時に「岩井さん、すいません。1本だけ、タバコ吸っていいですか?」って。でもさ、俺はタバコを吸わないから、そんな気なんか回らなくてさ。吸うとか吸わないとか、聞けばよかったよ。

(澤部佑)ああ、それはわからないね。で、今はもう吸わない方が当たり前になっているからね。たしかにね。東も気を遣っていたのかな?

(岩井勇気)で、吸わないから気を遣っていることにも全く気づかないものだね。

(澤部佑)か、東もタバコ、忘れていたんじゃない? それぐらい、宇宙に夢中になっていたっていう。

(岩井勇気)宇宙って、それぐらいの……ニコチン以上の中毒性があるからね。

(澤部佑)宇宙? そういうことなのか。

<書き起こしおわり>

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