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町山智浩 アカデミー賞『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の快挙を語る

町山智浩 アカデミー賞で『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の快挙を語る たまむすび

町山智浩さんが2023年3月14日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で2023年のアカデミー賞を振り返り。映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が成し遂げた快挙や、今回受賞した作品の共通点などについて話していました。

(山里亮太)アカデミー賞、おっしゃっていた通りになりましたね。エブエブ祭といいますか。

(町山智浩)そうですね。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が7部門を取りましたね。本当にこれ、すごい歴史的な快挙ですよ。どうすごいか?っていうと、アカデミー賞史上初のカンフー映画の作品賞受賞ですね。これ、すごいことですよ。カンフー映画がアカデミー賞を受賞したっていうこと自体が。

(山里亮太)そうですね。今まで、ないんですね。

(町山智浩)なんですよ。これ、しかもSF映画なんですよ。要するに、サイエンス・フィクション映画が過去に取ったことは1回だけあって。それは『シェイプ・オブ・ウォーター』っていう半魚人の映画ですね。それに次いで、2回目ですね。で、アジア人が主要キャストの作品でアカデミー賞っていうのは、前に『パラサイト』が取ってますね。韓国映画なのにアカデミー賞を取ったっていう。だから、まあとにかくいろんな意味で……あと、コメディが作品賞を取ったことって、ほとんどないんですよ。

(赤江珠緒)やっぱり賞という意味では、外れちゃうことが多いのか。そうだよね。

(町山智浩)お笑いはバカにされてるんでね。真面目に評価されないことが多いんですけど。特にアカデミー賞って100年ぐらいの歴史があって。10本ぐらいしか、コメディは作品賞を取ってないんですね。そういう意味で、いろいろすごいんですが。今回、アジア系の人がすごくたくさんノミネートされたんですよ。これだけじゃなくてね。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は監督もそうだし、プロデューサーもアジア人なんですね。台湾系の人なんですね。

で、主演女優、助演男優。それから助演女優にもステファニー・スーっていう娘役の人がノミネートされていて。それだけじゃなくて、衣装デザインはですね、シャーリー・クラタさんっていう日系人の人なんですね。これはノミネートだけだったんですけど。あと、今回はノミネートでベトナム系の人が『ザ・ホエール』っていう映画で介護士を演じているホン・チャウさんっていう人もノミネートされていて。

あと、主題歌賞、作曲賞で『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がノミネートされてるんですが。これ、サン・ラックスっていうバンドなんですが。これに中国系の人が入っていて。まあ10を超えるノミネーションなんですね。アジア系の人が。これ、すごいんですよ。この10を超えるっていうのは『RRR』が入っているからで。あれも『Naatu Naatu』が主題歌賞を取りましたね。

(赤江珠緒)ああー、はい!

(町山智浩)これね、大変なことで。というのは、さっき言ったようにアカデミー賞って95年の歴史があるんですが。それで今までノミネートされた人の人数って合計で1800人以上なんですね。その中で、アジア人のノミネーションというのは現在まで23人しかいないんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? そんなに少なかったんだ!

(町山智浩)そうなんですよ。いきなり一気に今回、ドカンと来たんですよ。すごい事態なんですよ。これは本当にすごいことだなと思いますね。で、『パラサイト』の時もそうだったんですけど。今回の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も「アジア人だから」とか、そういうことじゃなくて。別に何人でも関係なく、みんなお客さんが入ったんでこういうことになったんでね。やっぱりね、『パラサイト』で取ったポン・ジュノ監督が言っていたんですけど。ポン・ジュノ監督は「個人的なことをとにかく徹底的に突き詰めて描くと、それが世界に通じるんだ」っていう話をしてたんですね。

で、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の監督のダニエル・クワンさんが中国系アメリカ人で。お父さんとお母さんが移民一世なんですね。その時の体験をもとにしてるんで、非常に個人的な話なんですよ。でも、それが世界に通じるものがあったということでね。今までのハリウッドは、そういう作り方をしなかったんですよ。世界中の人に受けるのに。「じゃあ、白人を入れてください。黒人も入れてください」みたいな。そうすると、いろんな人がいるから……いわゆるダイバーシティを増やすことで世界的に受けようとするという。

そうじゃなくて、徹底的に……これはアジア系アメリカ人の個人的な生活について描いているんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。そう言われてみると、変わりましたね。

(町山智浩)それでよかったんですよ。だから、そういう点でも素晴らしいな思うんですけども。とにかく授賞式でね、受賞をした俳優たちのコメントが素晴らしかったね。これ、映画の方もまだご覧なってないですよね? 授賞式もご覧になってないと思うんですけども。

キー・ホイ・クァンの助演男優賞受賞

(町山智浩)その『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァンさん。この人は昔、1984年に『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』という映画で主役のハリソン・フォードの相棒を演じていた子役だった人なんですよ。

で、前にも話したけど、その後に『グーニーズ』っていう映画で発明が得意なアジア系の少年の役をやっていたんですね。で、その後、ティーンになったらもう仕事が一切来なくなっちゃって。アジア系の男性の若者の役というものがその頃、ハリウッドにはなかったので。彼は俳優を諦めて、カンフーを習得して、格闘の振付師をずっとやっていたんですよ。で、俳優を諦めてから30年経って、今回俳優にカムバックして、いきなりアカデミー賞を受賞しましたね。

(赤江珠緒)ねえ。これは見事なカムバックですね。

(町山智浩)見事なカムバックで。しかも、授賞式の時に作品賞のトロフィーを渡したのがハリソン・フォードでしたからね。

(山里亮太)ああ、そうだ!

(町山智浩)ねえ。『インディ・ジョーンズ』の再会になっていましたね。

(町山智浩)で、会場には『インディ・ジョーンズ』の監督のスピルバーグがいて。で、スピルバーグの奥さんのケイト・キャプショーさんもその隣にいたんですが。このケイト・キャプショーさんは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』でインディとキー・ホイ・クァンと、あともう1人の女性として、この3人でものすごい大変な試練を受けていたという、そんな人なんですよ。猿の脳みそを食べたりね、していた人なんで。だから本当にもう奇跡的な再会という感じでしたね。

(赤江珠緒)ねえ。時を超えて今、その3人がね。

(町山智浩)だからね、84年ぐらいって僕は大学生だったんだけど。もう映画の記事とかを書いてたんですけど。その頃に活躍してた人たちが、みんな今回、賞を取ってるんで非常に感動的でね。ジェイミー・リー・カーティスさんがやっぱり助演女優賞を『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で取っていて。ジェイミー・リー・カーティスさんって、最初の『ハロウィン』……『ハロウィン』っていうホラー映画があるんですが。シリーズでずっと作られている作品なんですが。

その最初の『ハロウィン』のヒロインだった人なんですよ。で、そこからずっと『ハロウィン』シリーズっていうのは作られているんですけども。その当時、70年代、80年代のホラーブームでいつも、殺人鬼とかに追いかけられるような役ばっかりやっていたんですよ。ジェイミー・リー・カーティスさんって。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)その頃は完全にゲテモノ映画の女優として、はっきり言ってバカにされていた人なんですよ。それがね、今回はアカデミー賞ですからね。

(町山智浩)あと、サラ・ポーリーさんという人が『ウーマン・トーキング 私たちの選択』という作品で脚色賞を受賞しているんですね。彼女は監督もやってるんですけど。この『ウーマン・トーキング 私たちの選択』という映画は怖い映画で。2005年ぐらいにですね、アメリカの中でメノナイトという16世紀の生活をそのまま守り続けるキリスト教の保守派の人たちがいるんですが。その集落で女性たちが馬の睡眠薬で眠らされて、全員レイプされていたという事件があったんですよ。

それは、その教団の男がやってたんですね。で、その事件を元にした映画『ウーマン・トーキング 』で脚色賞を取ったサラ・ポーリーさんという人は僕、会ったことがあって。『ドーン・オブ・ザ・デッド 』っていう映画があるんですけども。これ、ゾンビ映画のリメイクなんですね。『ゾンビ』という1作目があって、それのリメイクで。その撮影現場のショッピングモールに僕、行ったことがあるんですよ。呼ばれてね。その撮影を取材するっていうことだったんですけども。

その時に、その監督のザック・スナイダーとサラ・ポーリーさんが話していて。サラ・ポーリーに「もうこんなゾンビ映画に出ちゃったんだから、ゲテモノ女優だから」って言って、ふざけていたんですね。で、「もうこういうのに出ちゃうと、その後はずっとゲテモノ女優っていうのがついて回るよ。そういう風に呼ばれるよ」っていう風に言ってケラケラ笑っていたんですけども。今、監督に転身して彼女、アカデミー賞ですよ? ゲテモノ女優って言われていたのに。で、一番すごいのはミシェル・ヨーさんで。彼女、カンフー女優ですよ? カンフー女優がアカデミー賞を取るなんて、昔の人は思います?

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)一番遠いところにいると思っていたですよね。で、彼女は1985年ぐらいにカンフー女優としてデビューしたんですけれども。特にこの人のブレークになった映画って『皇家戦士』っていう映画なんですけども。これ、真田広之さんとの共演だったんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、日本で活躍して。日本の代々木体育館の前でのカンフーバトルから始まる映画なんですよ。ミシェル・ヨーさんの。

(町山智浩)ここから彼女は出てきて。まあ、その前に1、2本あるんですけども。だから、それを見ていた頃の自分にね、「この人、将来アカデミー賞を取るよ」って言ったら「嘘だ!」って言いますよね。「カンフー女優がアカデミー賞? 取れないよ」って言ったと思うんですよ。その頃の自分は。バカですよね。取るんですよ! これはすごいことだなと。しかも、カンフー女優から演技派に転身とか、そういうことではなくて。60歳になって、カンフー映画で取ったんですよ!

(赤江珠緒)ある意味、貫いてね。

(町山智浩)これもすごいし。60でちゃんとカンフーができるところもすごいんですけどね。普通、足が上がらないですからね。

(赤江珠緒)そうですよね。

(町山智浩)本当にすごい。大変なことだったと思いますね。

(赤江珠緒)町山さんはその受賞者の方のスピーチで、印象に残ってらっしゃる言葉とか、ありますか?

(町山智浩)はい。やっぱりミシェル・ヨーさんのね、要するに「女性に対して『もう旬を過ぎた』とか絶対に言わせないよ」っていう言葉ですね。

(山里亮太)かっこいい!

(町山智浩)60歳で主役で……普通はお母さん役とかで、脇に回っちゃうんですよね。でも、そうじゃないというところが本当にすごいなと。

「旬の年齢を過ぎた」なんて言わせない(ミシェル・ヨー)

(町山智浩)あとね、ちょっと悲しかったのが、ジョン・トラボルタさんが去年亡くなった俳優さんとか、映画人たちの追悼をしたんですよ。ジョン・トラボルタさんはご存知ですよね?

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)『サタデー・ナイト・フィーバー』とかね、『パルプ・フィクション』とかの。彼が出てきて、亡くなった人たちの追悼し始めたら、泣いちゃったんですよ。というのは、彼ね、数年前に奥さん、ケリー・プレストンという女優さんなんですけど。奥さんを亡くしているんですね。で、その後にですね、『ベイビー・トーク』っていう映画で共演したカースティ・アレイさんっていう女優の友達も亡くなって。去年、『グリース』で共演した親友のオリビア・ニュートン=ジョンさんも亡くなってるんですよ。

で、身の回り人たちがみんな亡くなってしまったんで、追悼する時にね、あのジョン・トラボルタがね、もう言葉に詰まって。もう……ちょっとショックでしたね。

(町山智浩)もうね、60を過ぎてくと周りがどんどん、亡くなっていくのでね。僕も……僕は今、余命を宣告されてる友達が3人いるっていう状態ですよ。

(山里亮太)ええーっ?

(町山智浩)もう本当にこういうことになっちゃうんでね、他人事じゃない感じでしたね。

(赤江珠緒)それは本当にそうですね。

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