町山智浩さんが2022年10月11日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でアマゾンプライムビデオで配信中の『少女バーディ 大人への階段』を紹介していました。
(町山智浩)今日はですね、映画を2本紹介したいんですが。女の子についての映画なんですね。で、1本はですね、『少女バーディ 大人への階段』というタイトルの映画で。もう1本は『ウーマン・キング(The Woman King)』というタイトルなんですけれども。どちらもね、タイトルからはわからないですけど。歴史的な、時代劇なんですね。で、『少女バーディ 大人への階段』っていうこの日本語タイトル、これないよね?
(赤江珠緒)たしかに、そうですね。
(山里亮太)クリックしづらいっていうか。
昨日からアマプラで配信のCatherine Called Birdy(邦題「少女バーディ」)見た。
リアナ様…じゃないベラ・ラムジー主演。
13世紀イングランドが舞台だけど、とてもレナ・ダナム作品だった!コメディというかおとぎ話風オチだけど、そうでもしないと描かれている内容はだいぶ地獄…。面白かったです。 pic.twitter.com/qArpI2JBUe— Teatro dell'asino (@robasuke2015) October 8, 2022
(町山智浩)なんかH2Oのような気がしますよね。「大人の階段登る♪」ってあるじゃないですか。H2O。「君はまだシンデレラさ♪」って思い出しますけども。全然そんな話じゃなくて。13世紀の中世イギリスを舞台にした時代劇なんですよ。で、『ウーマン・キング』の方は1729年。だから18世紀のアフリカが舞台なんですね。ただ両方とも10代の少女が主人公なんですが。で、『少女バーディ 大人への階段』の主人公は14歳ぐらいの女の子のキャサリンという子なんですが。領主の娘なんですね。
で、中世イギリスの領主だから、お殿様ですよね。城を持っていて、土地を持っていて。だからお姫様になるのか。そうすると。ただ、すごくおてんばで。動物と泥んこになって遊んでいたりするんですけど。で、自分のことを「バーディ」という風に呼んでいて。友達にもバーディって呼ばせていて。バーディというのは「小鳥ちゃん」っていう意味なんですね。で、自分の部屋の中に小鳥をいっぱい飼っているんですよ。
で、友達はね、幼なじみの羊飼いの男の子で。でも男とか女とか関係なく、2人で子犬みたいにじゃれてるんですね。まだ、なんていうか思春期にもなっていないんですよ。ただ、このお父さん。領主、お殿様は無駄遣いがひどい、金遣いの荒い男なんですね。なんとね、シベリアからトラを輸入するとか、そういうバカなことをして。ものすごくお金を無駄遣いしちゃうんですね、で、酒ばっかり飲んでいて、どうしようもないお父ちゃんで。借金を抱えちゃうんですね。お殿様なんですが。
それで、これはもう自分の娘をどこかの金持ちに嫁入りさせて……要するに娘を売ろうとするんですよ。それを察したバーディちゃんは「売られるのは嫌だ」っていうことで。つまり、金持ちに売られるってことはジジイに売られるっていうことですよね。汚いジジイのところに嫁に行かされる。それが嫌だから……ただ、初潮さえ来なければ、嫁に行かされないで済むということで。だから初潮が来てもそれを隠すんですよね。
(赤江珠緒)ああー。
金持ちのところに嫁入りさせられそうになる
(町山智浩)これ、結構リアルでね。生々しい映画になってますね。で、中世のイギリスというのはどういう生活をしてたか?っていうのも、かなりリアルに描かれていて。中世イギリスって、不潔なんですよ。はっきり言って。
(赤江珠緒)まあ、そうですね。今考えたらね、いろいろと。
(町山智浩)そうなんですよ。トイレもね、室内になくてね。で、なんというか、汲み取り式だしね。いろんなことで……動物とかが部屋の中を行ったり来たりしてたりとかね。非常に不潔なんですけど。なんだけれども、それなりに非常に美しいものもあって。衣装とか、そういうのも本当にきらびやかでですね。超リアルに描かれていて、それを見てるだけでもすごいんですが。すごく時代考証をしっかりやっているみたいですね。
で、このバーディが一番嫌なのは、彼女はとにかく女の子に生まれて、つまらないんですよ。だから、おじさんが戦争に行くんですね。十字軍の遠征があったんで。で、ヨーロッパを通って、エルサレムまで行くわけですよ。そんなの、自分には一生ないことなんですよ。そんなチャンスは。で、当時の13世紀の女の子っていうのは、基本的に家事と、あとは羊の毛から糸を紡ぐこと。それとあと、刺繍をすること。あとは子育て。子供を産むこと。それ以外は基本的に何もやることを許されないんですよ。
でもこのバーディは剣を振るって誰かを殺したいとか、そんなことばっかり考えてるんですね。彼女は騎士になりたいわけなんですが、そんなのはありえないですね。で、このままだと変なジジイのところに嫁に行かされるっていうんで、羊飼いの男の子にね、「私を連れて逃げて!」って言うんですけど、羊飼いの子は領主の娘を連れて逃げれないですよね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、とうとうもうお見合いをさせられちゃうんですよ。初潮が来たのがばれちゃって。で、次々とお見合いさせられるんですけど、それを次々とぶち壊していくという話なんですね。これ。
(赤江珠緒)ほう。自分で。
(町山智浩)自分でぶち壊しちゃう。まあ、昔からよく、どうしてもその人と別れたかったらこうしろっていう話って、あるじゃないですか。聞いたこと、あります?
(赤江珠緒)ああ、はいはい。もうとにかく相手から嫌われるために、バカなふりをするとか。
(町山智浩)バカなふりっていうか、絶対に嫌われる方法って昔から、言いますよね?
(赤江珠緒)えっ?
(町山智浩)すごく有名な話で。男でも女でも使える、絶対に嫌われる方法。一緒に寝てるベッドでうんこを漏らすっていう。これは非常に、王道と言われている……どんな王道だよ?っていう。そんなのがありますが。で、彼女は汚いジジイが「嫁にくれ」って言ってきたんで、「関節炎に効く薬です」とか言ってうんこをあげたりして。そういうことをして、嫌われようとするんですが、このジジイが何をされてもめげない男で。徹底的にこの少女と結婚しようとするんですよ。変態親父が。
これ、コメディですよね。これ、『少女バーディ 大人への階段』って聞いて、うんこコメディだとは思わないですよね? 普通は(笑)。基本的にこれ、コメディです。ただ、時代考証は非常にリアルなんですけどね。で、やっぱり女の子は嫁に行くしかないんだっていう時代と戦う女の子の話ではあるんですけれども。で、この『少女バーディ』はもうね、Amazonプライムで配信が始まってるんで。日本でもう見れます。
(赤江珠緒)これ、映像が綺麗ですね。
(町山智浩)ああ、もうすごくリアルなんです。非常に綺麗です。
『少女バーディ 大人への階段』予告編
<書き起こしおわり>