町山智浩『フェイブルマンズ』を語る

町山智浩『フェイブルマンズ』を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年12月13日放送のTBSラジオ『たまむすび』でスピルバーグの若き日を描いた映画『フェイブルマンズ』を紹介していました。

(町山智浩)アカデミー賞はまた近づいてるんで、今回もその話をします。で、今日アメリカの方ではですね、ゴールデングローブ賞というアメリカの映画批評家たちが投票した賞のノミネートがありまして。で、今日紹介する映画はそれの作品賞にノミネートされています。で、たぶんアカデミー賞の作品賞にもノミネートされると思います。『フェイブルマンズ』というタイトルの映画です。で、これはですね、フェイブルマンという一家の話ですね。で、「ズ」とついているんで「サザエさんち」みたいな、「磯野家」みたいな話ですね。「フェイブルマン家」っていうタイトルなんですけども。

これはですね、スティーブン・スピルバーグ監督の子供の頃の話なんです。6歳から17歳までの約11年間を描いています。それで、今、音楽がかかってるかな?

(山里亮太)かかってます。『インディ・ジョーンズ』のテーマが。

(町山智浩)ああ、『インディ・ジョーンズ』ですね。スピルバーグというのはたぶんね、映画史上最大の監督ですねですね。

(赤江珠緒)いや、そうですよね。作品に通ってないっていう人が本当にいないような感じですよね。

(町山智浩)そうですね。で、『インディ・ジョーンズ』とか『ジュラシック・パーク』とか、そういう娯楽作品で大ヒットしてですね。しかもその一方で、『シンドラーのリスト』とか『ミュンヘン』とかの社会派の非常に厳しいテーマを描いていてですね。そちらでもアカデミー賞を取ったりしてまして。それだけじゃなくて、新しい映画技術を開発してきた人ですね。

今、みんなCGで、コンピュータグラフィックスの怪物とか建物とか、普通に見てますけど。最初にそれをやったのはスピルバーグなんですよ。

(赤江珠緒)そうか!

(町山智浩)一番最初にね、『ヤング・シャーロック』っていう映画で初めてコンピュータグラフィックスによるキャラクターを動かしたんですよ。映画の中で。それがピクサーの始まりです。で、その後『ジュラシック・パーク』でコンピュータグラフィックスによる恐竜を人間たちと絡めるということをやって。それで今、みんな当たり前に見てますけれども。それはスピルバーグが始めたことですね。

(赤江珠緒)そうか。じゃあスピルバーグ前と後では全然映画が変わってきてるんですね?

(町山智浩)全く違うんですよ。はい。で、今までいろんな映画監督は世界中にいましたけども。D・W・グリフィスっていう人が映画の基礎を作ったわけですけれども。でもスピルバーグほど成功して、たくさん作品を作って、それでもう本当に世界中のちっちゃい子供からおじいさんまでみんな見てて。しかも芸術的にも非常に評価が高くて、という人はほとんどいないんですね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)で、なんでこんな偉大な人が生まれたのかということを本人がですね、スピルバーグ本人が子供の頃の話を描いてるのがこの『フェイブルマンズ』なんですね。で、「スピルバーグ家」っていう風にすればいいのにそうしなかったのは、ひとつ理由があって。そのまんま、実名にはしたくなかった理由があるんですよ。それは、ちょっとそれで傷つける人が出てくるからということですね。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですね。

(町山智浩)で、この映画はスピルバーグが6歳の頃。1952年から映画が始まるんですが。それでですね、最初に映画を映画館で……大人の映画を見るんですよ。スピルバーグは。で、それまでも映画は見てるんですけど、ディズニーとかだったんですね。で、『バンビ』とかを見たんですけど、怖かったんですよ。

(赤江珠緒)『バンビ』で?

(町山智浩)『バンビ』ホラー映画史上、最凶の作品です。

(山里亮太)ええっ? ホラー映画? 『バンビ』ってなんか、かわいらしい……。

(町山智浩)『バンビ』はお母さんを殺されるんですよ。

(赤江珠緒)えっ、そんな話でしたっけ? そうか。

(町山智浩)そう。あれはだから子供に見せる時に非常にトラウマになるんで。ちっちゃい子には見せないように言われてる作品ですよ。『バンビ』は。

(赤江珠緒)そうか。たしかにうちの子も、ちっちゃい時は見て泣きだしたみたいなところがあって。なんか雷のシーンとかがあって。

(町山智浩)ああ、山火事になるところですね。やっぱり母親が死ぬっていうのはすごいトラウマになるんで。で、スピルバーグもそれですごく懲りて。「映画なんか、行かない。僕は怖いから、行かない」って言うんですよ。ところが、そのお父さんとお母さんが『地上最大のショウ』というサーカス映画を見に行きたいんで、6歳のスピルバーグ少年を説得するシーンから始まるんですよ。

で、お父さんは「映画っていうのは怖くないんだよ。これは科学技術で作られたものであって。光がスクリーンに投影されてるだけだから」みたいに言うんですね。で、それはね、スピルバーグのお父さんはコンピューター技術者だったんですよ。ゼネラル・エレクトリックという世界最大の電気会社の技術者で。その後はIBMに移って、今のいわゆるパーソナルコンピューターの基礎的な技術を開発した人なんですよ。

(赤江珠緒)だからそんな、ちょっとある意味、身も蓋もないような言い方になるんですね。「光を投影したものだ」って(笑)。

(町山智浩)そう。「科学だから」みたいなことを言うんですね。「映写されてるだけだから」とか言うんですけど。ところがお母さんは、このスピルバーグに「映画っていうのは夢なのよ」って言うんですよ。「芸術なのよ」って言うんですよ。で、お母さんはミュージシャンだったんですよ。スピルバーグのお母さんは実際にコンサートをやったりするようなピアニストだったんですけれども。子供ができちゃったんで、それを諦めて専業主婦になったんですね。だから、この2人はね、夫婦なんだけど、父親はゴリゴリの科学者で。お母さんはミュージシャンでアーティストなんですよ。というか、エンターテイナーなんですね。で、全然逆の夫婦なんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。ちょっとアプローチの仕方が違いそうですね。これはね。

対照的な父親と母親

(町山智浩)そうなんです。ただ、この2人に育てられたっていうのはすごい大きいんですよ。スピルバーグは。つまり、世界で最終のSFX技術で映画の技術を革新していくという科学者としての面があるんで。スピルバーグには。で、その一方ではアーティスト、エンターテイナーとしての才能があって。この2人の間で彼が生まれたというのは、ものすごく象徴的なんですね。

で、『地上最大のショウ』を見たらですね、途中で列車の転覆・衝突のすごいシーンがあるんですよ。で、スピルバーグはその頃、ものすごく怖がりで。夜、電気を消すこともできない子だったんですね。で、虫が来ると怖くて……みたいな。とにかく、なにもかもが怖いんで、その列車事故のシーンを見て怖くて眠れなくなっちゃうんですよ。これ、僕スピルバーグに一度だけ会ったことがあって。インタビューで。で、その時に聞いたことは「スピルバーグさんの映画は『ジョーズ』とか『プライベート・ライアン』とか、とにかく人体がバラバラになって、血が飛び散って脳みそが炸裂するような映画ばっかりで。『シンドラーのリスト』にしても、ものすごく怖い」と。ねえ。『ジュラシック・パーク』とかも本当、怖いですからね。

(赤江珠緒)本能的に怖いものですもんね。

(町山智浩)そう。人間をね、食いちぎったりするのをじっくり見せたりしますね。内臓が飛び散っちゃったりするのをね。で、「あなたの映画は本当に怖いんですけど。どうしてこんなに怖い映画ばっかり作るんですか?」って聞いたら、スピルバーグはこう答えたんですよ。「僕は誰よりも怖がりなんだよ。子供の頃から弱虫で、どうしようもなかったんだ。なにもかもが怖かった。だから自分でそれを映画にすることで、その怖さを克服しようとしてるんだ」って言ったんですね。

で、それは実はスピルバーグの言葉じゃなかったんですね。お母さんが言うんですよ。この映画の中で。その列車事故が怖かったので、眠れないってなっている6歳のスピルバーグにお母さんは「あれは映画だから。あれは、作ってるのよ」って言って。それで、お父さんのために買った8ミリフィルムカメラ。そういうものが昔、あったんですよ。知らない人も多いと思いますが。8ミリっていう、細いフィルムで映画を撮影するカメラがあったんですが。それをスピルバーグに渡して。「これで映画を撮りなさい。そしたら怖くなくなるわよ」って言うんですね。

で、スピルバーグもおもちゃの列車で列車事故のシーンをそれで撮って。それを撮ることによって「ああ、これは映画なんだ。作り物なんだ」っていうことで、怖さを克服したっていうシーンからこの映画は始まるんですよ。

(山里亮太)なるほど!

(赤江珠緒)すごい映画監督ならではのエピソードですね、それ!

(町山智浩)そうなんですよ。だから、僕に言ってくれたことは本当にあったんだなということですね。それともうひとつ、スピルバーグに聞いたことは「あなたはすごく怖いシーンとか、血みどろのシーンをコントのように演出して、笑わせようとするんだけど。あれはあまりにも悪趣味じゃないか?」みたいな話をしたら、「人間は怖い時は笑うんだよ。『ああ、怖かった! アハハハハハハハハッ!』って笑うでしょう? 笑いっていうのは恐怖と戦うための武器なんだ」っていう風に彼は言ったんですね。

(赤江珠緒)うんうん!

(町山智浩)で、その後、怖いものにどんどんスピルバーグが取り憑かれていって。怖い映画を妹たち……3人、妹がいるんですけども。妹たち主演で映画を撮りまくるんですよ。ミイラ映画とかね。あと、この『フェイブルマンズ』の中には出てこないんですけど、妹さんたちがインタビューで、自分たちの持ってたリカちゃん人形みたいなのとかをバラバラにして、血まみれにして遊んでたっていう風に証言してるんで。そういうことをやり始めるんですけど。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、そういうことをやってるうちに、8ミリでですね、13歳の時に戦争映画を作るんですよ。

(山里亮太)13で?

(町山智浩)13歳で。ボーイスカウトの友達を集めてですね、『ESCAPE TO NOWHERE』というタイトルの第二次大戦を舞台にした戦争映画を撮るんですね。1961年なんですけど。これはね、YouTubeで今でも見れます。誰かがそれを上げてるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? 13歳の時のものを?

『ESCAPE TO NOWHERE』

(町山智浩)13歳の時の作品をね。それがすごいのは、弾で撃たれた人の胸から血が出るシーンがあるんですよ。それって今、みんな普通に見るでしょう? バーン!って中に仕掛けてあった火薬が破裂して、服が破けて血が流れるっていう。これ、スピルバーグが13歳の時、1961年に撮ってるんですね。

(赤江珠緒)どうやって? なんか、血のりみたいなのを袋で?

(町山智浩)そうそう。で、世界で初めて映画の中で血飛沫が飛び散ったのは、1962年の黒澤明の『椿三十郎』なんですよ。これ、それより1年前なんですよ。たぶん、世界最初ですね。13歳で。

(赤江珠緒)へー! 中学生で?

(町山智浩)中学生で。これ、すごいですよ。で、その後ね、『プライベート・ライアン』という全編血みどろの戦争映画を撮るんですけど。すでに13歳でやってるんですよ。なんというかね、子供の頃からずっとやってるんですね。

(赤江珠緒)すごいですね! いや、今となっては納得のエピソードなんですけど。これ、途中、親だったら止めそうですもんね。その、人形を血まみれにとか言われたら。

(町山智浩)でもお父さんは結構ね、お金を出してあげたりして。一生懸命支援するんですね。ただ、所詮趣味だと思ってて。ちょっとお父さんはバカにしてて。自分は科学者だから、科学の方に行ってもらいたいと思ってたみたいですけども。でも、スピルバーグがどんどんどんどん映画の方にのめり込んでいくんですね。で、それにはひとつ、理由があって。これ、映画の中でははっきりと描かれてはいないんですけど。これ、スピルバーグ自身も言っていることなんて事実なんですが、彼は全く勉強できなかったんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)あのね、文章が読めない病気だったんですね。難読症と言われるものです。で、これは発達障害の一種で、結構あって。なんていうか、思春期を超えると乗り越えられたりするようなものなんですけども。で、彼は小学校、中学校で勉強できなくて、学校に居場所がなかったんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうか。そうね。文章が読めないとね、なかなか勉強ってね、追いついていかないですよね。

(町山智浩)そう。映画はやたらと見るんだけど、彼は文章が読めないんですね。で、学校で勉強できない。あとね、クラスで一番体がちっちゃくて、やせっぽっちで運動神経が鈍かったんです。これもね、あんまり強く言ってないんですけど、本当にひどかったみたいです。運動神経が悪くて。スピルバーグさん、僕より背が低いですからね。だからアメリカでは相当、かなりヤバかったと思いますよ。それで、いじめにあって。あと、お父さんが技術者の関係上ですね、アリゾナとかカリフォルニアに引っ越すんですけれども。そこは昔、1950年代、60年代はユダヤ人がほとんどいなかったんですね。で、スピルバーグ一家って、ユダヤ系なんですよ。

そうすると、ユダヤ系がたった1人だと、白人の他の生徒たちがいじめるんですよ。すごいいじめをやったみたいです。民族差別を。で、なんというかですね、お金、小銭をスピルバーグに投げたりするんですよ。「ユダヤ人は金が好きなんだろう?」って言って、投げるんです。

(赤江珠緒)うわあ……。

(町山智浩)それとか、あとは「キリストを殺したのはお前らだ!」と言ったりするんですよ。この映画の中でも。で、そういう状況だからもう本当に学校にも居場所がなくて、登校拒否みたいになって。で、学校ではね、本当に殴られて、彼は大怪我もしています。で、大問題になったりしてるんですよね。で、勉強はできない。いじめはある。民族差別もあるというね、こういう状況でさらにひどかったのはお父さんとお母さんがずっと喧嘩しているんですよ。家で。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)仲が悪くて。これね、さっき言ったみたいにお父さんは真面目な科学者で。このお父さん、家でもネクタイしてるんですよ。で、ところがね、このお母さんの方はダンサーでミュージシャンで。で、すごく自由な人で。ヒッピーの走りみたいな人なんですね。

(赤江珠緒)うわっ、タイプが全然違う!

(町山智浩)全然違うんですよ。その頃はあんまりいないんですけど、髪の毛をものすごく短く切っちゃって、男の子みたいにして。「私はピーター・パンよ!」とか言って森を駆け巡ったり、木に登ったりしてるようなお母さんだったんですよ。全然違うんですよ。なんで結婚したんだ?っていうぐらい違うんですよ。もうお母さんはお酒を飲んで、楽しいと歌って踊って……っていう人で。だから、夫婦で噛み合わないんで、ものすごく仲が悪くなっちゃって。それでだんだんお母さんの方もですね、他の男の人が好きになっっていっちゃうんですよ。

で、その他の男の人っていうのは、お父さんの親友なんですよ。だからね、実名でやりたくなかったっていうのは、そのへんがあるみたいですね。スピルバーグは。彼もこの映画を作る時に、お父さんとお母さんがね……お父さん、103歳でこの間、亡くなったんですけど。お父さんとお母さんが亡くなるまで待ってたんですって。だからお母さん不倫を描く映画なので。それでお父さんも傷ついたので。だから、2人が亡くなるまで待ってたというので、ここまで時間がかかったんですね。

で、夫婦仲が悪いでしょう? で、学校にも居場所がないでしょう? スピルバーグには、映画しか行き場がないんですよ。逃げ場なしで映画を撮ってたんですけど。映画にしか逃げ場がないので、どうしようもないんですね。他にね。

(赤江珠緒)いや、映画があってよかったよね。本当にこの子にとってはね。

映画しか、逃げ場がなかった

(町山智浩)そう。なかったら、大変なことになったと思いますよ。勉強、全くできなかったのでね。ただ、やっぱりお父さんがね、真面目な人なんで。「映画なんて趣味なんだから、ちゃんと就職しろ」みたいなことを最初、言ってるんですけど。ここにね、お母さんのおばあさんの弟っていう、お母さんにとってのおじさんが来るんですね。ボリスさんっていう人で。で、来る前に「絶対に会っちゃダメよ。話しちゃダメよ」とか言われるんですよ。周りから。「あの人は、もうとんでもない風来坊だから」って言われるんですね。この人、寅さんみたいな人なんですよ。そのボイスというおじさんは。

(赤江珠緒)そうね。親戚の中でもちょっと、つまはじき的な。

(町山智浩)いるでしょう? 親戚に不良のおじさんって。子供からは人気があるんだけど、周りからは「なんだろうね、あれ?」って言われている。で、いい歳こいて1人者だし、お金もないみたいなんですよ。で、ボロボロのそのおじさんが「泊めてくれ」とかってスピルバーグの家に来ちゃうんですよ。で、スピルバーグも「なんだ、この人? インチキくさいな」とか思うんですけど。彼はサーカスの芸人だったんですよ。

で、サーカスに憧れて。サーカスって、要するに旅芸人ですよね。流れ者ですよ。その世界に入っていって、それで映画にも関わったらしいんですけど。というのは昔、サイレント時代は映画はね、サーカスの人たちをいっぱい出してたんですよね。それで映画にも、ハリウッドにも関わったような人で。そのおじさんが来てですね、こういうことを言うんですよ。「芸術と家庭は両立しない」っていうね。「個人的な家族生活の幸せと、芸術は両立しないんだ。芸術や芸能っていうのは、それはもう全てを捨てて、そこに捧げるものなんだ」みたいなことを言うんですよ。で、それにかなり感化されてね、大変なことになってくるんですけど。

というね、この世界最大の映画監督スピルバーグができるまでというのがこの『フェイブルマンズ』なんですね。で、「フェイブル」っていうのはおとぎ話のことなんですね。だから「フェイブルマン」っていうのは「おとぎ話をする人」とかね、「作り話をする人」っていう意味があるんですよ。それを自分の映画の、偽の架空の苗字にしてるのは彼自身が自分はそういう人なんだっていう意識があるんですね。

で、スピルバーグって怖がらせるのもうまいけど、人を感動させたり、面白がらせたり、さっき言ったように笑わせたりね。そういう人の感情をコントロールする天才なんですよね。

(赤江珠緒)たしかに。ちょっとワクワクさせたりね。

(町山智浩)でも、それは実は非常に危険なものなんだっていうことまで、この映画には出てくるんですよ。彼は映画を使って人の感情をコントロールして、どうでもいいものを素晴らしく見せたりすることができるんですよ。

(赤江珠緒)そうか……。

(町山智浩)でも、それは恐ろしい才能なんだっていうことに途中で気がついていくっていうところも含めてね、本当にすごい映画がこの『フェイブルマンズ』ですね。はい。だからこんな天才、どこから出てきたか?っていうと、他に行き場がなかったっていうのがね、結構真実なんで。やっぱりね、そこまで追い詰められないとできないっていう……おじさんもそう言うんですけど。そのへんの覚悟をね、16、7で彼はやっちゃうんですよ。で、17で学校とか、やめて。映画会社に偽の身分証明書を作って、潜り込むんですよ。スピルバーグって。

(赤江珠緒)すごい。そうなんですね。

(町山智浩)とんでもない人なんですよ。この人は。

(赤江珠緒)すごい人生ですね。やっぱりね。

(町山智浩)そうなんですよ。映画しかなかったんですね。はい。という映画が『フェイブルマンズ』で、すごい映画なんで。3月3日に公開なんで、ぜひご覧ください。

<書き起こしおわり>

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