町山智浩『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』を語る

町山智浩『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』を語る たまむすび

町山智浩さんが2020年8月25日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』を紹介していました。

(町山智浩)で、今日はですね、僕が住んでいるカリフォルニアについての映画から紹介します。2本紹介するんですけど。1本目はもうすでに公開されている映画なんですけれども。これは『ブックスマート』というタイトルで『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』というタイトルの青春映画ですけど。『ブックスマート』っていうのは本ばかり読んでいて、実際の経験がない人のことを「ブックスマート」っていう風に言うんですね。

で、これはね、宮藤官九郎さんが『ACTION』で「この映画がものすごく楽しくて、その主人公の女子高生たちになりたい気分だったんだけど。詳しいことは町山さんに……」っていう風に振られていたので(笑)。

(赤江珠緒)昨日、パスされていたんですよね(笑)。

宮藤官九郎『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』を語る
宮藤官九郎さんが2020年8月24日放送のTBSラジオ『ACTION』の中で映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』を紹介していました。 (宮藤官九郎)今日のフリートーク、もう1個。あのですね、映画を見たんですよ。で、今日はプロ...

(町山智浩)だからそれをキャッチしてやってますけど。で、これはね、カリフォルニアの女子高生2人が卒業の前の日にパーティーに行くんですけど。主人公たちはね、勉強ばっかりしていて。いい大学に入るためにガリ勉だったんで、パーティーとか、みんな友達同士でワイワイ騒いじゃうとかっていうことがないんですね。ただ、イェール大学とコロンビア大学っていう名門に入ったんで。「やった!」って思ってるんですけど。その遊んでた子たちに「あんた、どこの大学に入ったの」って聞いたら「イェールだよ」って言われちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)「えっ? あんた、ずっと遊んでいたじゃないのよ! あなたは?」「ああ、僕は大学には入らなかったけど……」って。遊んでいたやつがね。それで「やった!」って思うんですけども。「僕、グーグルに入ったから」って言われるんですよ。

(赤江珠緒)おおー!

(町山智浩)グーグルとかIT系……アップルとかもそうなんですけど。学歴も性別も年齢も一切問わないで、実力だけを見ますんで。高卒でも入れます。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)入ったら18ぐらいで年収は普通に1000万を超えます。だからそういう状態なので「なんで私、あんなに勉強ばっかりして誰とも遊ばなかったんだろう?」って思ったその主人公の2人の女の子が「もう高校最後の夜だから」っていうことでパーティーに行こうとするんですけど……今までパーティーに行かなかったから、どこでパーティーをやってるのかも分からないっていう。それで夜の街をさまようっていうコメディーなんですね。

(赤江珠緒)ああ、面白そう!

(町山智浩)これね、主役の女の子が生徒会長で「カタブツだ」って言われていた女の子をビーニー・フェルドスタインという女優さんがやってるんですが。この人のお兄さんはジョナ・ヒルという俳優さんで。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でどうしようもない役をやっていた人なんですけども。彼が高校生の役を10年ぐらい前にやった映画があって。『スーパーバッド 童貞ウォーズ』という映画があるんですよ。2007年の映画なんですけども。

(赤江珠緒)ほう(笑)。

(町山智浩)それが、高校生でずっとオタクでパーティーとはに行かなかったし、彼女もいなかった2人組が、何とか童貞を捨てようとして夜道を走り回るという映画で。それの女の子版なんですよ、今回は。

(赤江珠緒)はー!

カリフォルニアの高校の実態

(町山智浩)それを兄妹でなぜかやるという(笑)。よくわからない兄妹なんですけども。まあ、ドタバタなんでメチャクチャ面白いんですが。ただね、これを日本の人が見るとビックリすると思います。まず、そのカリフォルニアの高校というのはどういうものか?っていうことがちゃんと、しっかり描かれてるんで。ぜひ見てほしいんですけど。まず、その生徒はピアスをしてたり、タトゥーをしていたり、おへそを出したりしていますよ。学校に行く時に。で、先生もしています。

(赤江珠緒)ああ、先生も?

(町山智浩)で、トイレが男女、分かれてないですね。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)この学校は分かれてないんですよ。この映画の中に出てくる学校は。でも、そういう学校もいくつかあるんですよ。で、どうしてか?っていうと、トランスジェンダーの子がいるからです。この中でも出てくるんですけど。これ、主人公の女の子の1人はレズビアンなんですよ。でも、それは学校中の子は全員知っているの。みんな知っていて、親も知っていて。でもそれは何でもないんです。

(赤江珠緒)なるほど。

(町山智浩)それって日本だったら大変な事態でしょう?

(山里亮太)ちょっと考えられないですね。

(赤江珠緒)そうね。トイレ……そうか。そうね。

(町山智浩)こっちは普通で。別に何でもないんですね。で、うちの娘、僕は小学校の頃からずっと遠足とか行ったり、授業参観やったり、手伝ったりしているんですけども。その頃、知っていた男の子の1人は高校ぐらいで女の子になりました。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)それで、うちの娘の合気道の先輩の女の子は男の子になりました。でも、別に何でもないんですよ。

(赤江珠緒)じゃあ、本当によくある日常のことなんですね。

(町山智浩)ただ、それを差別する人もいるんですよね。で、ある男の子がバスに乗っている時にスカートを履いていて。それでなんか嫌がらせをされた事件があったんですよ。スカートに火を付けられたのかな? そういうことがあって。そしたら、このベイエリア中の男の子たちがそれに抗議するため、全ての生徒がスカートを履いて登校をしたんですよ。

(赤江珠緒)おおーっ! それはかっこいいな。へー!

(町山智浩)そういうところなんですよ。それがね、「なんで? こんな学校ってあるの?」って思う人もいると思うので、ぜひ見てほしいなと。うちの娘の高校の卒業式の時もマリファナの匂いがプンプンでしたからね。

(山里亮太)ええっ?

(町山智浩)だってお父さんもお母さんもみんな、いるんですよ。でも、別になんとも言わないですけどね。で、しかもそういう子たちがいい大学に入るわけですよ。で、こっちの大学に入るには、成績がいいだけのテスト一発じゃないので。「学生時代に何をしたか?」っていうことが非常に重要視されるんですよ。

「ボランティアをした」とかね、「小説を書いた」とか、「プログラミングをした」とか、「演劇で成功した」とか、「いいことをした」とかね。そういうことが加点されていくんで。成績はね、みんな同じぐらいだったりするんですけど。トップの子たちってね、みんなで「オールA」なんですよ。だから、そのプラスアルファが非常に重要になってくるんですよ。だから「人」で見るんですね。そういうところはもう全然、日本の受験体制とも違うし。

(赤江珠緒)たしかに。ちょっと違いすぎるぐらい違いますね。

(町山智浩)そう。それでね、就職の時に年齢、性別は一切問わないですからね。学歴も問わないんですよ。で、じゃあそういう社会がダメな社会になるのか?っていうと、全然ダメな社会になってないですからね。そういう人たちが就職してすぐ、年収は1000万とか2000万ですよ。22、3でね。だから、うちの娘なんかもインターンとかをそういうところでやってますけども。で、夏休みに1、2ヶ月働くと、100万、200万を稼いじゃうんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)大学2、3年生で。だから、本当に日本ってすごく校則とか厳しいじゃないですか。で、「ポニーテール禁止」とか言ってる変な学校もありましたよね? 「うなじを見せると欲情するから」とか、すごい理由でね。それが一体、何なのか?ってことですよ。そうすることによってすごい優秀な生徒が生まれて、それが世の中をよくしてるのか?っていうと、全くしてないので。本当にこの『ブックスマート』のアメリカの高校を見てもらったら、一体何が大事なのか?っていうことが分かってくると思うんですけど。ということで、それが1本目の『ブックスマート』でした。もう公開中です。

(赤江珠緒)はい。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』予告

<書き起こしおわり>

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