高橋芳朗 BTS『Proof』とメンバーのソロ活動の展望を語る

高橋芳朗 BTSの活動休止発表とメンバーのソロ活動の展望を語る アフター6ジャンクション

(高橋芳朗)で、この流れでちょっと今後のソロ活動の展望についてもお話したいと思うんですけど。最初に話したみたいにBTSメンバーのソロ展開、もう既に始まっていて。

先週末の24日にはジョングクがチャーリー・プースとのコンビで『Left And Right』というシングルを発表してます。チャーリー・プースはニュージャージー出身のシンガーソングライターで、一般的に映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』の主題歌ですね。ラッパーのウィズ・カリファとのタッグでリリースした『See You Again』で知られているシンガーです。

で、BTSとの接点が生まれたのはその『See You Again』のヒットの後で。2018年に韓国の『MBC PLUS × genie music AWARDS』っていう式典にチャーリー・プースが出演して、彼が自分のヒット曲の『We Don’t Talk Anymore』っていう曲を歌った時にジョングクがステージに上がってデュエットしたのがきっかけになってます。

(高橋芳朗)で、実はチャーリー・プースは6月7日の時点のインタビューで、BTSとのコラボをもう既にほのめかしてたんですね。それが実は結果的には今回のジョングクとのデュエット曲だったわけなんですけど。個人的にはそのニュースを目にした時は結構興奮しまして。チャーリー・プースとBTSのコラボっていうのはステージでの共演もあったから以前からちょっと熱望されてたんですけど。もし『Dynamite』とか『Butter』に続くBTSの勝負曲というか、英語詞曲のソングライター、プロデューサーとしてチャーリー・プースが起用されたら最高のキャスティングだろうなと思っていたんですね。

彼、ポップでメロディアスなR&Bを作られたらもうブルーノ・マーズとかにも引けを取らないぐらいの才能があって。トレンドの対応力もすごい高いんですね。その証拠として、ちょっと今年1月にチャーリーがリリースしたシングルを聞いてもらいたいんですけど。これがね、ウィークエンドの『Blinding Lights』とハリー・スタイルズの『As It Was』の中間に位置するような曲で。めちゃくちゃよくできてるんで、ちょっと聞いてください。チャーリー・プースで『Light Switch』です。

(高橋芳朗)チャーリー・プースで『Light Switch』を聞いていただいております。

(宇多丸)ウィークエンドの『Dawn FM』的な……でも、あれの暗さとハリー・スタイルズの。だからサウンドはウィークエンドの流れなんだけども、明るさ的にというのかな? さっぱり感というか。そこはハリー・スタイルズのあそこにつながってくるっていうような。

(高橋芳朗)いい塩梅ですよね?

(宇多丸)いいところに……しかも、ある意味未来まで読んでるわけでしょう? だからいいところにいいあれを置いたよね?

(高橋芳朗)だからもっとヒットしてもいいはずなんですけど。

(宇多丸)いや、いい。かっこいい。すげえかっこいいよ。

(高橋芳朗)だからこのチャーリー・プースの感覚がBTSの楽曲として発揮される日がいずれ来てほしいなって思っていて。

(宇多丸)めっちゃ合いそうだよね。たしかにね。

(高橋芳朗)合いそうですよね。で、きっと今回のジョングクとのデュエットがその足がかりになるだろうという風には思ってるんですけどね。

(宇多丸)なんか話をうかがっていると、ソロ活動でいろいろと……これは真っ当な話で。どんどんどんどんお土産が増えてくばかりというか。

(高橋芳朗)そうそう。そういう予感がもうガンガンしてくるんですよね。じゃあ、ちょっとこっちの曲も素晴らしい仕上がりなので、聞いてもらいたいと思います。既にアメリカとかカナダとか、93カ国のiTunesチャートで1位になってます。チャーリー・プースとジョングクのデュエットで『Left And Right』です。

Charlie Puth『Left And Right feat. Jung Kook』

(高橋芳朗)はい。チャーリー・プースとジョングクのデュエットで『Left And Right』を聞いていただいております。

(宇多丸)なんか、まあまったり明るい感じの。

(高橋芳朗)そうですね。で、この後のBTSのソロ展開としてはですね、ラップ担当のジェイ・ホープが7月15日にソロデビューアルバム『Jack In The Box』をリリースすることがもう決まってるんですね。で、今週金曜日には早速リード曲が公開予定で、先日にはもうティーザーも発表になったんですけど。そのティーザーのビートがですね、これは実際に採用されるかどうかわかんないですけど。結構DJプレミア風というか、DJクラーク・ケント風というか。

(宇多丸)どういうことですか?

(高橋芳朗)結構ビート感的には当時のものよりはハイファイではあるんだけど。90年代のニューヨークヒップホップ風なんですよ。

(宇多丸)へー!

(高橋芳朗)で、インタビューとか過去の楽曲から伺えるジェイ・ホープのヒップホップ趣味からすると、サウンド的にそういう路線がメインになっている可能性も結構あるんじゃないかなという気がしてて。彼、割とオーセンティックなヒップホップに愛着があるんですね。かつてはジョーイ・バッドアス。90年代ヒップホップの良さを今に蘇らせたニューヨークのジョーイ・バッドアスの影響を公言してたり。あとはやっぱり、なんといってもJ・コールへのリスペクトがすごい強いんですね。

(宇多丸)うんうん。今、一番そっち方向の旗手ですよね。

(高橋芳朗)J・コールはもうケンドリック・ラマーと並ぶ、現行のヒップホップきってのリリシストですけども。今回のBTSのアルバム『Proof』の目玉として、彼らがデビュー直後の2013年7月にインターネット上で発表した『Born Singer』っていう曲の初公式音源化があるんですけど。この曲が実はほぼ同時期の2013年6月に出たJ・コールのセカンドアルバムの『Born Sinner』のタイトル曲の引用なんですね。実質的なビートジャックになってるんですけど。ちょっとこれ、聞いてもらいましょうか。BTSで『Born Singer』。

BTS『Born Singer』

(高橋芳朗)はい。BTSでJ・コールの『Born Sinner』をリメイクした『Born Singer』を聞いていただいております。

(宇多丸)ものすごいむき出しの、古き良きむき出しヒップホップっていう感じですけども。

(高橋芳朗)そうですね。で、BTSのラッパー3人のうち、RMとジェイ・ホープはやっぱりJ・コールの影響が大きいんですね。RMはミックステープなんかでJ・コールのビートを3回も引用したことがあるし。ジェイ・ホープにしてもBTSのデビューアルバムの『HIPHOP LOVERS』っていう曲でJ・コールのアルバム名とかミックステープのタイトルを読み込みながら、いかに自分が彼に刺激を受けたかを表明する歌詞があったり。

(宇多丸)良心的ヒップホップファン。

(高橋芳朗)そうそう。本当にそんな感じ。あと2018年にリリースしたのミックステープのタイトルが『Hope World』っていうんだけども。これはJ・コールのデビューアルバム『Cole World』のリファレンスなんですね。

(宇多丸)めっちゃ好きなんだね!

(高橋芳朗)そう。本当に好きみたいで。だからこの『Born Singer』も『HIPHOP LOVERS』もBTSのごく初期の曲ではあるんですけど。J・コールのリスペクトが基盤にあるたりにそのメッセージ性を重視するRMとかジェイ・ホープのラップ感、ヒップホップ感がよく表れてるんじゃないかなって思うんですね。で、ジェイ・ホープも今回のコラムが思う存分ラップする久しぶりの機会になると思うんで。結構自分の原点に忠実なアプローチで来るかもしれないなっていう風に思ってます。

(宇多丸)それがティーザーのビートに現れているわけですね。

(高橋芳朗)そういうことですね。で、ジェイ・ホープは7月31日開催のアメリカの老舗音楽フェスの『Lollapalooza』でヘッドライナーを務めることが発表されていて。これは結構、大変な重責というかね。

(宇多丸)だって、なんていうか内実はまだわからない状態っていうかね。

(高橋芳朗)しかもドージャ・キャットの代わりなんですよ。ドージャ・キャットが出れなくなってジェイ・ホープがキャスティングされたっていう。これはちょっとドキドキ、かつ楽しみですね。

(宇多丸)まあ、でもそれだけの自信があるってことでしょうからね。受けるということはね。

(高橋芳朗)あと、これはちょっと余談になるんですけど。チャーリー・プースみたいにそのBTSとのコラボをちょっと前からほのめかしてるアーティストが1人いて。それが料理本でもおなじみ、ベテランラッパーのスヌープ・ドッグなんですよ。

(宇多丸)あら、まあ。

(高橋芳朗)もうレコーディングを終わらせたみたいなんで。で、今の流れからすると誰かしらのソロ作で客演することになるのかな?っていう。

(宇多丸)まあ、はっきり言ってスヌープはどこに入っていても、驚かないけどさ(笑)。どこに入って誰とフィーチャリングしてても全然驚かないっちゃ驚かないけど。

(高橋芳朗)まあまあ、結構客演王ですからね。

(宇多丸)ありとあらゆることをやってるからね。

(高橋芳朗)それこそ、その来月のジェイ・ホープのアルバムに入っちゃう可能性もあるかもしれないですね。

(宇多丸)でも本物オールドスクールレジェンドが絡むはなかなかないからね。やっぱり面白いね。それはそれでね。

(高橋芳朗)ああ、そうですね。なので結構、そういう楽しみな要素もあるんで。今後のBTSメンバーのソロ活動についても、できる限りこのコーナーで紹介していけたらいいなと思っています。

(宇多丸)なんか本当にそういう、ヒップホップとかそういうカルチャーとか音楽とかに対して、すごくちゃんと本当に好きで。ちゃんと忠実っていうか。

(高橋芳朗)向き合っていますよね。

(宇多丸)そうそう。誠実っていうかさ。そこがすごいやっぱり、ちょっと1枚違うっていうかさ。音楽ファンも信頼があるっていうかさ。そういうところじゃないですかね。なんか話を聞いていて、すごく思いましたけどもね。

(高橋芳朗)RMのインスタのストーリーとか見てても、本当にマメに新譜とかチェックしてますよね。感心しちゃうっていうか。そんなところですね。

(宇多丸)でもなんか、今日のヨシくんの解説を聞いて、なんていうの? 先に希望が……別にきれいごとを言っているわけじゃなくて。「本当にそうなんだ」っていう感じをしてきた人、多いんじゃないですかね。

(高橋芳朗)いや、僕も「そうなったらいいな」と思って、こういう紹介の仕方を考えました。

(宇多丸)さすが、信頼が厚い。リスペクトが厚い。フックアップに次ぐフックアップ!

(高橋芳朗)いやいやいや(笑)。

(宇多丸)ということでBTS『Proof』の新曲を中心に解説いただきました。ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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