宇多丸 Creepy Nutsとの対バンライブでの『前略』サプライズ披露を語る

宇多丸 Creepy Nutsとの対バンライブでの『前略』サプライズ披露を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2022年5月2日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でCreepy NutsとRHYMESTERの対バンライブ『生業』を振り返り。Creepy Nutsの大好きな楽曲『前略』をサプライズ披露したことなどを話していました。

(宇多丸)ということで週末ね、熊崎くんはちょっとお腹痛くて休んでいたなんていうね。

(熊崎風斗)そうです。ちょっと体調が……今はもう全く問題ないんですけども。

(宇多丸)もう大丈夫ですか? 私はですね、土曜日に大阪でとあるライブに出演しておりました。RHYMESTER、ラップグループとして。何に出演していたかということ、メールもいっぱいいただいてるので代表的なところをご紹介させてください。じゃあ熊崎くん、お願いします。

(熊崎風斗)はい。「一昨日、Zepp OSAKA Baysideで行われたCreepy Nuts『生業』ツアー、RHYMESTERとのツーマンライブを見に行きました。2年前の延期から中止を経て、やっと実現したこのライブ。ヘッズとしてもこの日をずっと心待ちにしておりました。終始熱くなったりグッと来たりとバイブス沸き上がる最高のライブでしたが、その中でもRHYMESTERはCreepy Nutsの2人が大好きな曲『前略』をライブで初披露。からの『グレイゾーン』のくだりはめちゃくちゃ上がりました。この2曲はCreepy Nutsにも内緒で嘘のセットリストを見せておいて、本番でいきなりやるという粋な計らいだったそうで、さすがキングオブステージと思った次第です。最後は『ザ・グレート・アマチュアリズム』のコラボ。ワチャワチャしながらもナイスな掛け合いにしびれました。ゴールデンウィークしょっぱなから最高のライブを見られて幸せでした。ありがとうございました!」。

(宇多丸)はい。この方を初め、メールをいただいた方。そしてこれを聞いてる方で会場にいらしていただいた方がもしいらしたら、本当にありがとうございます。Creepy Nuts、もう人気がどんどんどんどん上がっております。Creepy Nutsの『生業』ツアーというのは、いわゆる対バンツアーですね。彼らがチョイスした新旧のグループ……たとえば札幌ではAwich。ちなみに札幌は松永くんがコロナ陽性になっちゃってお休みで。マネージャーの森くんがDJをやったという、恐ろしい回だったようですけども。それでもRがすごい体を張って頑張ったみたいだし。とかね。

この後、豊洲だとBADHOPがあったりとか。あと、新潟だとHilcrhyme。松永の先輩にあたるHilcrhymeがあったりとか。そんな中、私どもRHYMESTERは大阪の対バンとして出たわけです。で、2年越しだったんですね。本当に2年前、要するにコロナ禍が持ちあがっちゃって中止、延期になり……というのを重ねてのこの2年越しのやつで。なので、ちょっと話が飛びますけど、Creepy Nutsが……まず、俺らがライブをやって、その後Creepy Nutsがやって。その後、ちょっと1曲コラボでRHYMESTERの『ザ・グレート・アマチュアリズム』という曲。以前から彼らも大好きだという曲を一緒にやらせてもらったんですが。

そのCreepy Nutsのライブの中でも言ってたけど、やっぱりこの2年間でCreepy Nuts自身がめちゃくちゃ成長したし、曲も増えたしっていうことで。「2年後でよかったね」なんてことを言っていて。「本当にそうかもしれないな」っていう気もしました。なんか、まあとにかく先に言うならCreepy Nuts、やっぱり楽屋でずっとライブ、一緒に見てましたけど。まあ、もうの2人、エグいよね。ラッパーとしても、DJとしてもトップのスキルを持った2人が、しかもそれをなんかすごくクリーピーの独自なところって、もちろんUSBの今の最先端のヒップホップ、トレンドみたいなものを100も承知の上で、めちゃめちゃドメスティックなクリーピーならではのものに落とし込むっていうか。もうCreepy Nuts的な音楽像みたいなものが皆さんもはっきりと浮かぶと思うんだけど。

だからもう最先端のトレンドとか最先端のテクニックみたいなものを音面でも、ラップ面でも踏まえた上で、それをめっちゃ独自のところに溶かし込んでいるというか。それがいよいよ板についてきたというか。で、それがリスナーにも受け入れられてるわけで。なかなかすごいことやってるなっていう。あと「とにかくスキルの高さみたいものもエグいな、何なの?」みたいな。ステージ上でも言いましたけど。これ、出ました。私の最高の褒め言葉。「これ以上努力するとキモいのでやめてください」っていう。これが出ましたですね。これ、最高の褒め言葉なんですけどね。「頑張れよ」じゃないんですよね。「もういい」っていうね。「正直、キモいんで」みたいなね。

(熊崎風斗)あれだけ多忙の中でね。

(宇多丸)そうなんですよ。多忙も多忙。だってさ、彼ら、松永なんか病み上がりなのにその前日は『ARABAKI ROCK FEST』に出て。それでこの大阪の対バンライブに出て。翌日、昨日は『VIVA LA ROCK 2022』。Dragon Ash主催のフェスに出ていて。「大丈夫かい?」っていうね。若さに任せて仕事しまくっておりますけども。で、そんな中で今、後ろで流れている『前略』っていうのはね、僕らが呼ばれて。で、Creepy Nutsとの共演、前に日比谷の野音で『日本語ラップ紹介ライブ』っていうのに出たりとかして。まあ二度目と言うべきなのかな? なので、前にやってない何かをやろうというんでね。『ザ・グレート・アマチュアリズム』の共演っていうのは最後に決まってたんですけど。

なんか僕らからのお土産ということで、以前から彼らがお気に入りの1曲として挙げているRHYMESTERの『前略』。これ、2001年のアルバム『ウワサの真相』に入ってるんですね。青臭い過去の自分に大人になった自分が宛てた手紙、みたいな。でも俺らからすればもう21年前なので。それを書いてる俺らが青臭いので。俺にとってはもう二重にキツいんですよ。歌詞の内容で「お前、青いな。ブルーなケツをした……」って歌っているその内容もキツければ、という風に偉そうに言っているお前もな!っていう。

「お前が青二才なんだよ!」みたいな。だから、なんていうのかな? まだまだ30そこそこぐらいだったし、ラップのテクニック的にももちろん、今がどのぐらいか?って言われると心許ないけど。まあ、今から見るとやっぱりちょっと全然甘いな、みたいな感じがする……その「お前らが何を言うとるか?」っていう感じで二重にキツいのよ。

『前略』は二重にキツい曲

(宇多丸)でね、しかもなんとこの曲は2001年の『ウワサの真相』のRHYMESTERのライブツアーとか、そういうのも含めて1回もライブでやったことないの。で、その1回もやったことがない曲はさすがにRHYMESTERの曲の中でも珍しくって。別に嫌いなわけじゃないのよ。全然。そこまでダメだと思ってるわけじゃないんだけど、なんか入れどころがなくて、みたいな。アゲ曲でもないし、まったり聞かせる曲でもないし。で、さっき言った今となっては二重苦ですよね。もう「青いケツ×青いケツ」の二重みたいな感じでキツいのもあって。当然、俺らの中ではわざわざ掘り返す曲でもない。

で、たとえばファンの人気投票とかでも別に入ってくる曲じゃないのよ、全然。なんだけどクリーピーの2人はやっぱりなんていうの? 鬱屈した青春期を過ごしてる時にヒップホップが救いで。その中でもたとえばそのドンズバの、強がるんじゃなくて、なんか青臭い自分っていうのをある意味勇気づけるような曲というものに本当に勇気づけられてきたと思うから。あの2人、Rと松永の2人にとってはめちゃめちゃ大事な曲で。

それはいいんだよ。なんだけど、奴らがやたらと「いや、『前略』をなんでやんないんすか! 俺らがセットリスト、組みますよ。RHYMESTERの! 『前略』終わりっすよ!」みたいなことを言うから。「バカじゃねえの? 『前略』で終われるわけねえだろ? お前ら、センスねな! ライブのセットリストを組むセンス、ねえ。ダメだ。お前ら、ダメだ。お前らに聞くの、やめた」みたいなことを言って。それでいろいろワチャワチャとやっていたんですよ。

宇多丸・Creepy Nuts・サ上 RHYMESTER『前略』を語る
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(宇多丸)でも、せっかく呼んでもらったし。『生業』のあれで、お客さんもさることながらCreepy Nutsにも喜んでもらいたい。あと、松永の快気祝いもあるから、頑張ってやるか、みたいなことで。おじさんたち、スタジオに入ってヒーヒー言いながら練習した挙げ句、やっぱりおじさんたち、これはサプライズだから。もうこの曲はサプライズというところの意味が9割で。「俺たちがやりたいわけじゃねえからさ! これ、サプライズが9割だからさ!」って。

だから、セットリストでもバレちゃしょうがない。それでこれ、RHYMESTERはね、昔からやるの。昔、EAST END……後にEAST END×YURIで大ブレイクしますけど。EAST ENDとかと一緒にライブやってる時に客以上にお互いにカマし合ってるから。やっぱりセットリストとかリハとか、全然違うことをやって。で、本番でバーン!ってやって。「何、それ!?」みたいな。

(熊崎風斗)反応を見るっていう。

(宇多丸)そうそう。EAST ENDの前のライブにやった曲のアンサー曲をいきなり作ってきてそこでバーン!ってやるとか。そういうことを俺ら、よくやるの。で、久々に俺らもニセのセットリストを作って。で、わざわざマネージャーのHOTCHがそのニセのセットリストを持って。不自然極まりないんだけど、ニセのセットリストを持ってCreepy Nutsの楽屋に行って。

「ああー、ちょっとこのあたりは見ておいた方がいいんじゃない?」みたいなことを言って(笑)。「なんかやるんだろうな。臭いな」ってあいつらも思っていたんだろうけども。でも、その最中に奴らがさ、なんか「メイク直ししてて見てませんでした」とかだったら目も当てられないからさ。「見ててくれよ」っつって。

でもさ、作ってから21年ぶりにライブで初めてやるっていう。だから、なんていうか久しぶりにやる曲を思い出すどころじゃないのよ。要するに曲としての危険度がMAXなのね。この曲は。間違いやすいっていう意味では。なんなら、リハで1回も成功しなかったのよ。全然うまくいかなくて。自分たちのリハで。でも、「これ以上練習すると嫌になるからもうやめよう。あとはもう宅練だ。自分たちで練習しよう」って。

それで当日は隠してるから、リハーサルで出せないんですよ。だから、本当にもう俺ら的には超ハラハラの綱渡り状態で『前略』を投入して。ちょっと怪しいところはありましたけど、でもほぼ間違えず、99%成功の感じで。だから俺、舞台上でDに「やったー! やったねー!」みたいな(笑)。やりまくってて、みたいな。

で、案の定もちろんね、2人も喜んでくれて。Rさんはご両親と一緒に2階席から見てて。めちゃくちゃ踊りまくってたなんてのを聞きますし。松永さんはもう舞台の袖じゃねえよ。「お前、もう顔見えてんだよ!」みたいな。舞台のそこから顔だけ見えてる状態で。ねえ。喜んでもらってよかったですし。そしてもちろん素晴らしいライブ。温かいお客さん、素晴らしい『生業』だったんじゃないでしょうか。

RHYMESTER『前略』

<書き起こしおわり>

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