宇多丸さんが2021年1月11日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で番組内で自身が発するワード「エイヨー夢」の由来について説明していました。
(宇多丸)ということで、まずその惰眠を貪った割に夢もいっぱい見たんだけども。やっぱりあれだね。メモっておかないと覚えてないね。
(熊崎風斗)夢は本当にちょっと断片的だし……。
(宇多丸)それで、こんなメールをいただいています。「先週の初夢特集、益体もなさすぎて最高でした。あの面白さをラジオを聞かない友人にも共有したいのですが、全く上手くいきません。『低み』や『ババァ、ノックしろよ!』にも匹敵する鉄板コンテンツの香りがムンムンしているため、ぜひ書籍化的ななにかをご検討いただければ幸いです」。あの、そうなんですね。全然できる好企画なんだけども。
人が見た夢を聞き書きして本にするというのはこれ、特集の中でも言ったと思いますけども。元々、『タキモトの世界』というね、久住昌之さんと滝本淳助さんというカメラマンの方の対談じゃないな? まあ、お友達2人がキャッキャキャッキャいう連載から飛び出した『夢蔵』という単体の夢の話を集めた本があって。割とそこが発想としては元なんでね。まあ、あるっちゃあるんですよね。夢の話の本っていうのはね。
(宇多丸)ということで、でも書籍化ね。また『夢蔵』とは違うやり方が狙えるなら、ありかもしれないですけどもね。で、この方。「ところで、別冊アトロクでの続編も含めて頻繁に登場する『エイヨー夢』というタームですが、あれの元ネタが気になって仕方ありません」と。で、いろいろと聞いていただいたんだけども、ネタがちょっとわからなかったという。「タマフル時代からのリスナーさんの間では定番のネタだったりするのでしょうか? よろしかったら教えてください」という。ごめんなさい。これ、僕、番組の特集の中でも一応、言っているはずなんですけども。あまりにも入り組んだ特殊知識でこの方の耳に入らなかった。なのでもう1回、言っておきますね。
これはラップグループ、ネイキッド・アーツというグループがいて。RHYMESTERとほぼ同期だと思ってください。そんなネイキッド・アーツというグループの『夢』という曲があって。元は1995年かなんかにリリースした曲で。アルバム『浸透』という作品にも入っている曲です。
Naked Artz『夢 Remix』
(宇多丸)「エイヨー夢」っていうことで。これはリミックスバージョン。かっこいい曲なんですけども。これ、特集の中でも言いましたけども。ネイキッド・アーツが歌っているのは「夢を叶える」みたいな方の夢ですよね。「寝言」の方の夢ではない。で、その問題の「エイヨー夢」に関して。これ、前に言いましたけども、もう1回、言っておきます。もう言いませんよ? ラストですよ? 「エイヨー夢」っていう風にネイキッド・アーツの曲の中で言っていると僕は思い込んでいて。
「えっ、ほら。あのネイキッド・アーツの『エイヨー夢』ですよ」とか言って。構成作家の古川耕さんなんかね、ヒップホップライターとして当時のシーンも知っていますから。まあ「分かる人には分かるでしょう?」っていうつもりで「エイヨー夢」とか言っていたんですよ。そしたら、実際に古川さんが曲を聞き直してみたら「宇多丸さん、『エイヨー夢』なんて言ってませんけど?」っていう(笑)。
(熊崎風斗)そんな……(笑)。
(宇多丸)それで「ええっ? そんなはずねえよ。あれだよ。リミックスじゃね?」って言って。で、今、後ろで流している……これは1997年とかなのかな? その頃に出たリミックスバージョンなんだけども。「こっちには入っているんじゃね?」なんて聞いたらね、「いや、こっちでも言ってないですよ」って。それで俺が出した結論は、ライブの時……当時、ネイキッド・アーツは同期なんで。RHYMESTERは一緒にいろんなところでライブに出ていて。
たぶん下北沢のSLITSでやっていた伝説の『スラムダンク・ディスコ』というイベント……MICROPHONE PAGER、キミドリ、ECD、YOU THE ROCK★、我々。あとはSHAKKAZOMBIEになる前のオースミとかも来ていたし。NITROになる前のメンバーとかも来ていたし。あとはMELLOW YELLOWが出ていたり。RHYMESTERはいつもレギュラーで出ていたんですけども。そこでネイキッド・アーツが『夢』をやる時に曲の振りでラッパーのMilliあたりが「エイヨー夢」って。
で、その「エイヨー夢」って言っているのを聞いて俺らが……RHYMESTERはまたね、人のそういうのをすぐに真似してゲラゲラやっているから。タチが悪いから。「エイヨー夢」とかなんとか言って。で、なんかそういう寝言を……「昨日さ、面白い夢を見てさ」なんて話が出るたびにメンバーが口を揃えて「エイヨー夢」って言うみたいな(笑)。
(熊崎風斗)あたかも歌詞にあるかのようになっていたんですね(笑)。
(宇多丸)そのうちに俺ら、RHYMESTERの中で……だから主にRHYMESTER用語なんだね。「エイヨー夢」って。RHYMESTERの残りの2人のメンバーに「エイヨー夢」って言ったら全然なんのことかはわかるわけ。あいつらは(笑)。そうそう。ということで。一応、言っておきますけども。ネイキッド・アーツ、めちゃめちゃかっこいいグループですからね。アルバム自体はちょっと手に入れづらいかもしれないけども。これ、オリジナルは『続・悪名』っていうコンピにオリジナルが入っていて。そっちは手に入るのかな? とか、ありますしね。
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— みやーんZZ (@miyearnzz) January 16, 2021
(宇多丸)まあ、後にMilliは瘋癲っていうまた別の素晴らしいヒップホップ・バンドグループというか。そんなグループを組んで活躍していたり。ぜひネイキッド・アーツとか瘋癲、それからK-ONさんの活動とかね。K-ONさんはちなみに僕の、三浦大知くんの『No Limit feat.宇多丸』っていう曲がありますけども。あれのアルバムバージョンはK-ONがラップをしていますね。そういうつながりもあったりします。
三浦大知『No Limit Album Ver』
(宇多丸)それでネイキッド・アーツは僕らのフィーチャリングもあったりして。まあ、非常に仲のよかったグループでもありまして。
(宇多丸)ということです。おわかりでしょうか? ネイキッド・アーツの『夢』ですけども、歌の中で「エイヨー夢」とは言っていないっていうね(笑)。なんだけど、このコーナーのメール読みの時には「エイヨー夢!」って言うと投稿コーナーっぽいじゃん? 「○○さんからいただいた、エイヨー夢!」。この感じです。
<書き起こしおわり>