映画『選挙2』公開に合せて監督の想田和弘さんがライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフルに出演。映画について語りながら、空気を読んで自主規制を強いる、おかしな日本の選挙の話をしていました。
(宇多丸)まず、基本的なこと言っておいていいですか?最高ですよ!『選挙2』。
(想田和弘)ありがとうございます。マジですか?
(宇多丸)あのですね、ちなみに劇場は結構毎回毎回大入り満員・・・
(想田和弘)そうですね。3回・・・長い映画なんで、2時間29分ありますので。
(宇多丸)普通の映画よりは長いですけど、演劇2部作を経た我々からすればあっという間ですよね!すごい短いな!みたいな。
(想田和弘)(笑)短編ですよ。
(宇多丸)短編です!でもまあ、すごく入って。
(想田和弘)そうですね。3回しか回せないんですけど、3回とも満席で。お立ち見も出てですね。
(宇多丸)素晴らしいですね。やっぱり劇場の反応もビビッドな。ワーッとこう・・・
(想田和弘)そうですね。すごい熱気でした。
(宇多丸)今回は、僕いままで観察映画いろいろある中で、エンターテイメント性が一番高いのは1作目『選挙』だと思ってたんです。要は、選挙っていうハッキリ結論がでるもの。タイムリミットもありますし、そこに向けてワーッと盛り上がる構造が出来やすいっていうのもあって。たとえば『精神』とかみたいに何て言うのかな?こっちで読み取らなきゃいけない!っていう、こうずっと読み込んで読み込んでっていうのに比べると、ジェットコースター的に行っちゃうところもあるから、エンターテイメント性が高いと思ってたんですね。
(想田和弘)はい。
(宇多丸)今回、2がエンターテイメント性っていう意味ではさらに。エンターテイメントって言っていいのかな?とにかく僕は見ててですね、ちょっとサンプルでお先にいただいて拝見したんですけど、別室にいた妻がですね、『うるせー』と。
(想田和弘)(笑)
(宇多丸)とにかく何を騒いでるんだ?っていうぐらい。こんなに僕が騒いだのは『タマフル THE MOVIE』という映画のサンプルをいただいて、要するに自分の無様な様を見てギャー!って騒いでる以来の、とにかく何て言うんですかね?黙って見てられなかったですね。もう、爆笑もするし、うわー!ちょっとこれ・・・うわー!みたいな。スリリングすぎてっていう。最高でした。
(想田和弘)(笑)あ、超うれしいわ!
(宇多丸)むちゃくちゃ面白かったです。結構俺、万人に勧められる面白さだと思います。もはやこれは。
(想田和弘)本当?
(宇多丸)むずかしくない。これは。なんていうね、のがあって、すごく面白かったから『選挙2面白かったです』話で想田さんを気楽に呼ぶつもりだったんですよ。ところがその・・・ちょっとその参議院選があって、公示後だっていうんでね、まず本当なら本題に入らなきゃいけないんですけど。何かその、放送業界にいつの間にかよく分からない風習が、なんか出来た・・・出来たのかな?分かんないな。
(想田和弘)なんかありますよね。
(宇多丸)なんか定着しちゃった。要は『特定政党の名前をあげて話しちゃダメな・・・の?』みたいな感じなんですよね。
(想田和弘)『ダメな・・・の?』
(宇多丸)『の?』なんですね。ここがポイントなんですけど。要はその、公平に政党要件を満たす、今回だと9つの政党のアレを平等に名前を出さなきゃナントカって。なにそれ!?っていうような話をされてて。となるとですよ、『選挙2』はもちろん2年前の、2011年の4月の川崎市議選という選挙を描いた映画なのに、それでこう話をしてくとですね、話できないじゃん?って思って。
(想田和弘)そうですよね。出来ないんですよ。
(宇多丸)これちょっと、どうしたものかな?だからここから想田さんと相談しようと思って。どうやって話しましょうか?みたいな。これ、何なんだ?っていうところから話しなきゃと思って。
(想田和弘)いや本当、変ですよ。あの、公職選挙法に別にふれるわけじゃないと思うんですよ。たとえば今、その特定の政党の名前を出しちゃいけないっていうようなことをよく言われるんですけども。
(宇多丸)ええ。たとえば放送でね、いろんなところ出てお話される機会も多いじゃないですか。今。
(想田和弘)そうですね。で、実はね、放送に出るのがすごく難しくなってる。
(宇多丸)えっ!?だから『選挙2』を扱うことが・・・
(想田和弘)扱うこと自体が。
(宇多丸)話するなら不可能ですもんね。政党の名前出さないと。
(想田和弘)そうなんです。で、それはね、2007年に『選挙』っていう映画が出来た時にはほとんどなかったの。
(宇多丸)そんなこと言われたことはなかった。
(想田和弘)言われたことない。で、僕は普通にしゃべってたんですよ。
(宇多丸)あれもちょうど選挙の時期でしたよね。
(想田和弘)そうです。参議院選にぶつけて公開しましたから。
(宇多丸)そうですよね。僕もそれで、『おっ、なんてタイムリーなんだ』って思って見に行った覚えがありますから。
(想田和弘)だってテレビだって在京キー局全部やって、特集やってくれましたし。
(宇多丸)で、普通にその内容について話してたんですよね?
(想田和弘)そうですよ。政党の名前もバンバン言ってましたよ。
(宇多丸)じゃあこの何だ?2007年からだから、かれこれ6年後、なにやらムードが変わってるぞと。
(想田和弘)いや、すっごい変わってますよ。だっていろんなテレビ局の人とか、あるいはラジオ局の人が見てくださって、すごい面白い!って言ってくださるのに、『でも、参議院選前なんで、ちょっと取り上げにくいんですよね』って言って、取り上げてくださらない人が多くってですね。
(宇多丸)これは、要はこの6年間の間に何か、たとえば法律が変わりましたとか、ルールが変わりましたってことじゃない・・・?
(想田和弘)僕、聞いてないですよ。そんなの。
(宇多丸)僕も聞いてないから。だからこれ、『えっ、聞いてないよ!じゃあ想田さん招いて話できないじゃない!?』みたいに思ってですね。何を根拠にその話をしてるのかしら?ってことになると、一応だから日本民間放送連盟、民放連の放送基準。これ別に、選挙公示後だからこうしろって言っているアレじゃない。どうやらこれが根拠ですよ。要は『政治に関しては公正な立場を守り、一党一派に偏らないように注意する』というね、不偏不党の原則みたいなことですよね。
(想田和弘)はい。
(宇多丸)別にこれ、普段から言われてることですよね。
(想田和弘)普段から言われてますよね。
(宇多丸)で、これを根拠にって言うんだけど、これものすごく僕、おかしな話だと思うんですよね。
(想田和弘)おかしい。おかしい。
(宇多丸)あの、選挙の時こそ、バンバン名前とか話しなきゃいけない時じゃないですか。
(想田和弘)ダメ。個別の政党の個別の政策について語らなかったら、どうやって選ぶの?っていう話ですよね。
(宇多丸)はい。間違いなく。しかもその、たとえば特定政党のね、政策とかに批判的な検討を加える。たとえば政権与党の言っていることに、やっていることに批判的な検討を加えるっていうのが出来ないのなら、何のために選挙をやるんですか?
(想田和弘)本当ですよ。しかも報道機関は何のためにあるの?っていう話になりますよね。
(宇多丸)ですよね。で、おそらくですね、別にそんな決まりはないんですよ。
(想田和弘)ないんですよね(笑)。
(宇多丸)だからつまり、何となくの、ヤバイんじゃね?空気が濃くなっているっていうことを。で、勝手にこっちがヤバイんじゃね?感を内面化して、ルール化しちゃってというか、やってるだけっぽいんですよね。どうやら。
(想田和弘)そうなんですよ。で、結局そうすることによって誰も選挙についてマスメディアで語れないっていう(笑)。
(宇多丸)語れない。で、『投票率が低くなって嘆かわしい』みたいなこと言われて、知るかコノヤロー!っていうね。当たり前だろ、そんなの!っていうね。
(想田和弘)(笑)本当ですよ。もう本末転倒も甚だしい!
(宇多丸)なんかね。だから、まして『選挙2』はさ、過去の選挙の話をしてるわけで。たとえばさ、田中角栄は自民党ですって・・・あ、言っちゃいましたけど。だから何だよ!?だって、そうじゃねーか!と。だからとにかく、アホらしいにも程があるから。
(想田和弘)アホらしい。
(宇多丸)実はこれはワザとね、こんなこと気にせずに話しても全然いいんですけど。ちょっと1作目の『選挙』の上映が、中止になっちゃったりなんかっていう話も・・・
(想田和弘)そうですね。『選挙』を日比谷図書館っていうところ、これ千代田区立なんですよ。そこで上映することが決まって、チラシも刷って告知もして、さあやろう!って言ったらですね、そのチラシを見た千代田区のお役人がですね、これ参議院選の前にこういうセンシティブな内容の映画をやるのはどうか?と。選挙制度そのものに対する議論を呼んでしまうと。そういう議論を呼ぶこと自体が良くないんじゃないか?好ましくないんじゃないと。
(宇多丸)何がいけないんでしょうか?議論を呼ぶことの、何がいけないんでしょうか?
(想田和弘)(笑)いや、分かんない。
(宇多丸)別に殺し合いしようっていうわけじゃないんですよ。
(想田和弘)それで、『公職選挙法に違反しないってことは分かってる』っていうんですよ。分かっているけど、不安だって。
(宇多丸)すごいなー。
(想田和弘)っていうふうに僕に言うんじゃなくて、指定管理者っていうのがいるんですよ。つまり、民間で日比谷図書館を運営してる。で、これ小泉内閣で出来た制度なんですよ。だからまさに『選挙』で描いたものが、こうやって出てきてるんですけど。その指定管理者の担当者が、まあ彼らは弱い立場ですよね。契約、いつ切られるか分からないから。だから千代田区のそういう・・・別に中止しろと言っていないんだけども、千代田区の意向を忖度して・・・おもんばくって・・・
(宇多丸)忖度。忖度しちゃった。
(想田和弘)それで中止を決めてしまったんです。一方的に。で、『中止ですよ』って言われて。そんなの!もうチラシ刷ってるよ!
(宇多丸)っていうか、人権の侵害じゃないですか?もうほとんど。
(想田和弘)いや、だって公職選挙法に違反するから中止するなら分かるんですよ。でも、(違反)しないのに、何となく不安だから決まったことを止めるって。で、抗議したんですよ。そしたら、『じゃあ延期してもらえませんか?参議院選挙が終わった後に延期してもらえませんか?』って。
(宇多丸)何がいけないんですか?っていうね。
(想田和弘)(笑)
(宇多丸)いや、だからこの空気自体が奇妙なものだし、後ほどお話する部分にも通じますけど、『選挙2』で選挙運動されているところを、もちろんね、嫌がっている、おむずかりのご様子の理由はあるんだけど、それはそれで分かるんですが、選挙をやっている様子を撮るのはやめろと。で、『社会常識が・・・』みたいなことを言ったりとか。
(想田和弘)僕がね、社会人として常識がないって。
(宇多丸)常識がないって言うんだけど、『いやだってそれ、公的なものじゃないですか?』って言って撮ってるじゃないですか。それを嫌がるとか。それに通じる話だと思うんですよ。
(想田和弘)同じことですよね。
(宇多丸)なんかその・・・なんのための選挙なのか?ねえ?
(想田和弘)だって選挙運動・・・だから僕は今回、前の『選挙』っていう映画を作っていた、撮った時には山さんの同僚だった人ですよね。
(宇多丸)これ改めて、見てない方もいると思うんで説明しておきますと、前作、2007年の『選挙』っていうのは通称山さん、山内和彦という、元々は同級生?
(想田和弘)同級生ですね。東大の時の。
(宇多丸)という方が、いわゆる小泉チルドレンになるの?あれは。
(想田和弘)そうですね。超末端ですよ。
(宇多丸)小泉チルドレンの末端として、川崎市議選に・・・補欠選挙でしたっけ?に、ボーン!と行くというね。これは面白い!っていうんで撮りに行ったら、そこでいわゆる、僕らが普段目にしている光景なんだけど、日本的ないわゆるドブ板選挙と呼ばれるようなものの、何というか儀式性というか、形式性というか、政策のことは言わず、名前だけを言うとか、おなじみのアレですよ。それが繰り広げられて、おかしいもんだなということがすごく浮かび上がって、僕はゲラゲラ笑いながら背筋が・・・っていうようなね。
(想田和弘)そうですね。まあ、コメディーホラーですよね。
(宇多丸)コメディーホラーって感じのね、作品でございました。という『選挙』だったんですけど。
(想田和弘)その時は同僚だったわけですよ。山さんと、その自民党の方々たちはね。で、だけど今度は山さんは2011年3月11日、あの大震災が起きた時に山さんはもう自民党から完全に干されていて、主夫をやってたわけですね。あれほどの大震災が起きて、原発事故が起きたにも関わらず、その時、山さんの他に13人ぐらい候補者が出てたんですけど、1人も原発問題について話そうとしない。
(宇多丸)こういうことがあったから、こういうビジョンを描きますとすら言わないと。
(想田和弘)そう。それが山さんはおかしいんじゃないか?と思ったわけです。だってそれはそうですよね?これだけの事故が起きたわけだから、維持するにしてもですよ、あるいは止めるにしてもですよ、とにかくまずは話さないと話にならないじゃないですか。なのに、全然ふれないで、みんな無かったかのようにしているから、山さんが『これはおかしい!』っていうんで、『じゃあ、自分が話す』って言って、今度は完全無所属で出たわけですよ。
(宇多丸)それが、今回の『選挙2』ということですね。
(想田和弘)そうです。そうするとですね、山さん撮っていると他の候補者のこともだんだん目について来るわけですよね。
(宇多丸)っていうか今回山内さんは、いわゆる選挙活動・・・だから前回の真逆、反対でいわゆる選挙活動みたいなのは一切しないと。まあ、やるのはポスターの貼り直し。
(想田和弘)(笑)もうちょっとちゃんと貼れよ!みたいな。
(宇多丸)(笑)あのー、山さんに突っ込みたい部分もいっぱいあるのが、今回の素晴らしいところなんですけど。
(想田和弘)突っ込みどころ、満載でしょ?
(宇多丸)もうちょっと早く書こうか、それ。みたいな(笑)。ああいうのが最高なんですけど。まあ、それはいいや。普通のアレとかしないので、いきおい他の候補者の方にもカメラが向いていくと。
(想田和弘)でも、まんべんなくいろんな人に向いていくわけですよ。だけどその中にやっぱり、元ご同僚もいらっしゃるわけですよね。
(宇多丸)これ、やっぱり1作目の選挙で描かれて、別に今回、さっきから言ってるように観察映画っていうのはBGMも流れないしテロップも出ないし、別に何か露骨に誘導するような作品じゃなくて、本当にそのまま撮っているという形なんだけど、やはりその何か、あれ?ちょっと笑われちゃっているんじゃないの?みたいな感じはあそこから・・・
(想田和弘)やっぱり思ったんでしょうね。少なくとも。もしかしたら見てないのかもしれないんだけど。
(宇多丸)ああ、何か人から『こんななってるよ。笑われてるよ』なんて聞いて。
(想田和弘)聞いたんでしょうね。で、気分を害されてたんでしょうね。
(宇多丸)気分を害してるっていうのは何となくありますよね。
(想田和弘)で、その方がですね、その方がいらっしゃって選挙運動をやっていたんですよ。公の道路で。タスキかけてね。だから僕も、まあ他の候補者も撮っているし、平等にカメラを向けたわけですよ。
(宇多丸)まさにその、不偏不党でね!
(想田和弘)そうそう。不偏不党で(笑)。で、僕は結構近くから回すから。だいたい1メートルぐらいの距離でバンバン回したわけ。
(宇多丸)向こうは、また見覚えのあるアイツが来たぞと。山さんがまた出てるのも知っていて、撮ってるぞも伝わってますよね。またウロウロしだしてるぞと。
(想田和弘)そうですね。で、『撮るな!』と僕のところに、そのままイチャモンをつけて来たんですね。でもやっぱり選挙運動って撮れないの、おかしいじゃないですか?
(宇多丸)あの、肖像権がどうこうとかそういうもんじゃないですよね。
(想田和弘)だって、それ・・・税金も使われてますしね。選挙運動って。多額の税金が使われていて、誰を私たちの代表にするかっていうのを選ぶための期間ですから、候補者をある意味で丸裸にするための、そういう期間じゃないですか。だから、誰が撮れて誰が撮れないかっていうことを、候補者が言うことなんてあり得ないんですよ。だって・・・
(宇多丸)むしろ、主張を聞いて下さい!ならともかく。
(想田和弘)だから僕は当然のごとくカメラ向けてたわけですけど。だけど『撮るな!』と言うから、『いや、そういうことはおかしいだろ?』と押し問答になるわけですね。で、その押し問答をずーっと結局撮っている(笑)。
(宇多丸)ね。一応まあ、それなりにカメラは若干の角度はついていますけど。ずっと撮っている。
(想田和弘)っていうか、撮らないわけないじゃん!
(宇多丸)ねえ?(爆笑) あの、これですね、想田さんがね、見た目すごく柔和な方ですし、人当たりソフトでっていうのに騙されるなよっていう。これはね、今回僕、『選挙2』見てすごい思いましたね。
(想田和弘)あ、そうですか?
(宇多丸)あのね、もうウワーッ!って盛り上がったところですけど、想田さんはやっぱり悪い人なんだ!
(想田和弘)悪くない(笑)。
(宇多丸)悪くはない。ただね、ちょっとその話でちゃったからしますけど、やっぱりそこ・・・要はその、いままでの観察映画は割とその想田さんが基本的にはカメラの後ろで存在感を殺して、できるだけ。理想としては空気のようにいるっていうね。まあ、なかなかそれが上手くいかないところが観察映画の面白さだったりもしましたけど。いままで。それぞれ違う関与の仕方が出ちゃうんだけど、今回は割と積極的に想田さんが声も出してるし、山さんとやり取りもしてるし。そして、いままでの観察映画にはなかった、対立ですよね。ハッキリとした対立っていうのが登場すると。ここがやっぱりエンターテイメントとして際立っている部分だと。
(想田和弘)(笑)人間って争いごとが好きなんですよ。
(宇多丸)そういうことなんですよ。やっぱりアガっちゃうし。あの、何て言うのかな?意見の対立があって、要はそれに対して自分はどう思うのか?っていうので、ものすごく感情が高まってくるっていうか。『いや、それは違うだろ!』とか、見ながら怒鳴ってるわけですよ。こっちも。
(想田和弘)(爆笑)
(宇多丸)いやいや、おかしいから!みたいな。なんかね、すごく感情を揺さぶられる場面なんですよね。すごくポジティブな意味でも、怒っちゃうというのも含めてですね。ただ、それは何にせよ『撮るな!』って言えるようなものじゃないだろう?っていうのが。僕はその物言いをするのが、すごく不思議であると同時に、あ、やっぱり・・・その後に『公的なものなのに撮っちゃおかしいって言われちゃったよ』って山さんに若干愚痴をこぼすじゃないですか。これも観察映画としていままでのラインからすると、かなり踏み越えてるところだと思うんですけど。
(想田和弘)踏み越えてます(笑)。
(宇多丸)そしたら、それに対して山さんが『うん。だから私的なもののつもりなんじゃない?アハハ・・・』ってちょっと冗談っぽく返すんですけど、これ強烈!つまり、何て言うのかな?とにかく公的な、俺たちのしきたりであり、俺たちの縄張りとやり方に、とにかく口出さないでくれる?ほっといてくれる?って思ってるんじゃないのかって思っちゃうよ、そんなこと言われたら!っていうね。
(想田和弘)まあ、確実にそうでしょうね。だってあの、『撮るな!』っていうことはつまり、これは自分のものだから撮るな!なんですよね。たとえば富士山があってね、あれ、富士山撮っちゃダメなんて言えませんでしょ?だって自分のものじゃないから(笑)。
(宇多丸)カメラで撮ってなくてもね、たとえば道歩いている人がですよ、立ち止まって腕くんで聞いていると。批判的な目で聞いてるかもしれないじゃないですか。同じことじゃないですか。それ。スタンスとしては。
(想田和弘)同じことです。
(宇多丸)でも、それも止めてくれ!なんですよね。本音を言えばね。批判的に見ないでくれ!なんじゃん?だって思っちゃいますよ・・・
(想田和弘)(爆笑)いや、そうですよ。で、ずっと撮っててですね、もうその夜には自民党の川崎市連っていうのがあるんですけど、そこの弁護士2名から通知書というのが来ました。
(宇多丸)通知書?通知書っていうのはどういう・・・?
(想田和弘)僕のところにですね、メールが来て。その通知書には今日撮った映像を使うなと。そして消去しろという風に書いてあったわけですよ。だけど、そんなの消去するわけないじゃん(笑)。
(宇多丸)要するに、なにか法的な拘束力を持つような書面、文書というわけではない。
(想田和弘)じゃない。まあ、脅しですね。一言で言えば。はい。
(宇多丸)なるほど。そういうのが来るぐらいで、心底いやがってるのは確かっていうことですよね。それと、やっぱり今の、『公示後なんだから名前出すな!』はすっごい重なる話だなと思って。それはその、何て言うんですか?心あるね、たとえば自民党であろうと何だろうと、その政治家の方々が本意とする部分じゃないでしょうと私は思うので。みなさんも、そう思われてると思うので。
(想田和弘)そうですよね。
(宇多丸)あの、今日は少なくとも『選挙2』の話をするにあたって、そのことは気にしないで。もし、これからじゃんじゃん何かきたら、その9つの政党の名前を機械的に読み上げるっていうね。公平に機械的に全部読み上げる(笑)。謎かけみたいになったらどうしよう?と思って。『現・政権与党の、当時は野党のですね・・・』みたいな、謎かけみたいになったらどうしよう?と思っちゃってってことですよね。はい。
(想田和弘)(笑)
(宇多丸)ということで、すでにここからして、まだ本題に入る前の話からして、今回の『選挙2』に関わる、本質に関わっちゃうようなタイムリーなのが来ちゃいましたねっていう。図らずも。
<書き起こしおわり>
7/6 サタデーナイトラボ「映画『選挙2』観察ラジオfeat.想田監督」【前編】
7/6 サタデーナイトラボ「映画『選挙2』観察ラジオfeat.想田監督」【後編】