R-指定さんが2022年3月15日放送のニッポン放送『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』の中でふぁんくさんのアルバム『Balance』についてトーク。『戯言』や『ライムザップ』などを例に出しながら、そのすごさについて話していました。
(R-指定)じゃあ、曲を流しますか。ちょっとだいぶね、曲紹介できてなかったんで。梅田サイファーのふぁんくさんが……梅田サイファーは今、抜けたんですけども。ふぁんくさんがソロで『Balance』っていうアルバムを出しまして。これがまたね……。
(DJ松永)来てる?
(R-指定)来てる。職人!
(DJ松永)職人?
(R-指定)こんなにスムーズなのに……やっぱりふぁんくさん、すごいわ。その、ZORNさんになるんよ。堅い韻を踏もうとしたらだいたい。今っぽいビートでそれをやろうとしたら、全員がなるんやけど、そこを……。
(DJ松永)なっている人、よく見るもん。
(R-指定)見るやろ?
(DJ松永)ZORNさん……今、俺ちょっとその「ZORNさんになっているな」っていう有名なラッパーの名前がここまで出かけていた(笑)。
(R-指定)ダメダメダメ(笑)。いや、わかるよ? わかるけど……ふぁんくさんはそこが、こんだけしかも長い韻でも、まだ踏まれていなかった「そんな踏み方があるの?」みたいなのとか。
(DJ松永)ああ、すごいね。
(R-指定)まあ、細かいことは後で言うんで。MVにもなっている曲を聞いてもらおうと思います。アルバム『Balance』からふぁんくで『戯言』。
ふぁんく『戯言』
(R-指定)というね、この『戯言』なんですけども。サビとかも最高ですけども。バースで言うと「俺は教祖でもなけりゃ 立派な学校の教師 でもないただのお調子者 見たままこの通り」って「iaaao」っていう音がずっと続くんですよね。「堕落した日常に 力がもっとほしい と救いをこうなら他所の方が ちっとはマトモな教えもあるんじゃね?」みたいな。その、単語とか体言止めだけで踏むんじゃなくて、文章の間にその韻が隠れている。で、その大きな「立派な学校の教師」から始まった韻をずっとやっていくんやけどもその間にも「ただのお調子者」とか「堕落した日常に」とか「救いをこうなら」「他所の方が」みたいな別の韻を挟んでいっているからただのスラッとしたスムーズな文章に聞こえるんやけども、紐解いたらA-B-B-A-A-A-Aみたいな、すごい踏み方をしていて。
(DJ松永)職人さん!
(R-指定)超職人。で、その後とかも「なにか役立つ教訓の類はきっとここにはない いや、あるかも それは見てのお楽しみ ピエロの顔した切れ者遊び人」っていうこの「見てのお楽しみ」「ピエロの顔した切れ者遊び人」っていう。で、しかも「真意たしかめな 再生ボタンがのぞき穴」って、その前の「きっとここにはない」っていうところからまたここに韻で帰ってくるっていうね。こんなことをやりだしたら止まらんぐらい、全曲そうなっているようなアルバムで。「韻ってこうやん!」っていうぐらいの。
(DJ松永)すごいね! どんだけ難しいパズルなんだよ……。
(R-指定)そう。マジで難しい。でも、サラッとやっているんですよ。
(DJ松永)すごいねー。むしろそれのおかげでサーッと聞けるようになっているんだよね。
(R-指定)そうなんですよね。
放送終了後のミクチャ配信限定アフタートークで……
(R-指定)そう。ふぁんくさん、『Balance』っていうアルバムを出したんですよね。
(DJ松永)何曲入り?
(R-指定)12曲っすね。
(DJ松永)ああ、ボリューミー。
(R-指定)そう。ボリューミーやのに、しかも客演なし。ワンマイクで12曲。
(DJ松永)ああ、ストイック作品ですね!
(R-指定)でもやっぱりね、聞き心地が結構ふぁんくさん、メロディーとかも大事にしているし。さっき松永さんが言った通り、サラッと聞けるためにめちゃめちゃ緻密な韻のパズルがあるから。
(DJ松永)っていうか韻って聞き心地のためのものだからね。
(R-指定)基本、ホンマはそうなんよね。で、なんかそれをちょっとあえて引っかかるようにしてパンチラインにしたりとかやったりもするから。
(DJ松永)それのね、発音の仕方というか、フロウでね、そうなるんだよね。本来はね。
(R-指定)で、特にふぁんくさんはそのスムーズでサッと入ってくる……だからこのアルバムの全曲がそうなんですけども。なんか最初は普通にメッセージとして受け取るんですよ。曲として。で、「なんか気持ちいい曲っすね」みたいな。でも「あれ? よう考えたらこことここ……踏んではるよな?」みたいな。だから斬られてから気づくみたいな。気持ちよすぎて最初は気づかない。で、後で何回か、歌詞を覚えて自分で口ずさんだり、ふぁんくさんの思い出して。ええと、のぞき穴……ああ、なるほど!」みたいな感じで後から気づくみたいな。
(DJ松永)Rがそうなるっていうことは、相当だね。
(R-指定)相当なんですよ。ふぁんくさんは。だからなかなか一聴しただけでは気づかない。
(DJ松永)普通、だってラップって、特にRレベルでラップをやっている人からしたらさ、1回聞いたラップだと「ああ、ここを踏んで、ここをこう踏んで……」って一聴してわかることが多いでしょう?
(R-指定)ふぁんくさんはドヤらないんですよ。
(DJ松永)ああ、ドヤらないよね!
(R-指定)ふぁんくさんの美学なんですよね! そこがまた渋い。
(DJ松永)本当にドヤらない。バトルでも曲でもドヤらないよね。
(R-指定)そう。ドヤらない。もちろん、ドヤるライブも最高やし、ケレン味たっぷりにやって「うわーっ!」って盛り上がるのもあるねんけども。ふぁんくさんは1個、ふぁんくというラッパーの美学としてドヤらない。で、そういうのを詰め込んだ『ライムザップ』っていう曲がありまして。ふぁんくさんがちょうどダイエット中に作った曲で。そのライザップとかけて『ライザップ』なんですけども。結局今はリバウンドをしてふぁんくさん、ゴツなったんですけども。そんなことじゃない。「俺はラップの中でムダな韻、贅肉のような韻は踏まない」っていう。削ぎ落として、リズムに確実なライムだけをしているから、ムダな韻は削ぎ落としていくっていう意味で『ライムザップ』っていう。そういうコンセプトの曲で。だから韻を雑に扱う……よくない扱い方をしているんじゃないかっていうようなラッパーに釘を刺すような、そんな韻の使い手としての曲とかもあったり。
ふぁんく『ライムザップ』
(R-指定)だからそういうスキルを全出しやけど、内容的にもそうなんですよね。あんまり説教くさくなくてあくまでも「俺は……」みたいな。内容もラップ自体もドヤらないっていうふぁんくさんのあくまでも自然な感じというかね。
(DJ松永)なんか仙人っぽいよね。韻に対して。
(R-指定)そうそう。仙人やし、バランス的にも全部のメーターがすごい高いレベルの人やけども、やっぱり特にそこに関してはなかなか日本のラッパーであそこまで、緻密な韻というところにこだわっている人はなかなか……。
(DJ松永)めちゃめちゃ高度で。超踏んでいるのに力んでいないというか。これは、なに? 合気道みたいな?
(R-指定)そうそう。だからやられてから「おい……」みたいな。
(DJ松永)全然力を入れてない感じに聞こえるんだよね。でも気づいたら「あっ、踏まれている?」みたいな。
(R-指定)だから、危ないです。ふぁんくさんのバースとか聞いたら「あれ? 今回のふぁんく、全然踏んでなくね?」みたいな時こそ要注意ですから。もう体、穴だらけになっていますから。
(DJ松永)でもさ、リスナーってそういう時、言うよね。俺らのミュージックビデオでもさ、「最近のR、踏んでねえな」って……(笑)。
(R-指定)フハハハハハハハハッ!
(DJ松永)「バカどもめが!」っていう(笑)。
(R-指定)俺もそう言われているっていうことはある種、ふぁんく師範の域に片足は突っ込めたかな?っていうのはあるっすけどね(笑)。
(DJ松永)気づいてねえだけだからな(笑)。
ふぁんく『Balance』
<書き起こしおわり>