町山智浩『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』を語る

町山智浩『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年3月8日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でロシアのウクライナに対する侵攻についてトーク。ウクライナによる徹底抗戦の姿勢を理解するための映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』を紹介していました。

(町山智浩)はい。突然なんですけど、今日ちょっとまず1曲、聞いてほしいんですが。マギー・ミネンコさんの歌『燃えるブンブン』です。

町山;はい。懐かしい歌なんですけども。今でも歌えるんですけども。これ、マギー・ミネンコさんってご存知ですか?

(山里亮太)いや……。

(赤江珠緒)存じ上げないです。

(町山智浩)年齢的なあれだと思うんですけども。この人は1973年ぐらいに日本テレビで放送していたバラエティ番組の『金曜10時!うわさのチャンネル!!』という番組のレギュラーだったタレントさんなんですよ。で、『うわさのチャンネル!!』っていうの和田アキ子さんがメインで、せんだみつおさん、山城新伍さん、あのねのね、あとプロレスラーのデストロイヤーがレギュラーで。わかりますか?

(山里亮太)はい。なんか懐かし映像で。アッコさんとデストロイヤーの絡みは。あと、徳光さんとか。

(町山智浩)そうそう。アナウンサーの徳光さんにデストロイヤーが4の字固めをかけたりしていたんですけども。それで、マギー・ミネンコさんっていう人は女性タレントでそれに出ていて。持ちギャグが「乳もめー!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ! ええっ?

(町山智浩)おっぱいをこう持って「乳もめー!」って言うんですけども。そういう下品な番組がありまして。で、マギー・ミネンコさんっていう人はその当時、お父さんがロシア系アメリカ人っていう風に紹介されてたんですね。でも今考えると「ミネンコ」という名字はウクライナ系なんですよ。まあウクライナはずっとロシア帝国に占領されて、その後にソビエト、ソ連に占領されていたんで。ロシアと一緒くたにされることが多くて。ウクライナの人も「ロシア系」って言われることが結構あったんで、ミネンコさんもロシア系って言われたんですけど。おそらくはウクライナ系なんです。名字が。たとえばハリウッド女優でロシア系って言われてる人で『007 慰めの報酬』に出ていたオルガ・キュリレンコさんっていう人がいるんですが。この「キュリレンコ」っていう名前はウクライナの名字なんですよ。

(赤江珠緒)そうなんですよ。

(町山智浩)「○○ンコ」ってつく人はウクライナなんですよね。あと、たとえば1961年版の『ウエスト・サイド物語』のヒロインだったナタリー・ウッドという女優さんは本名が「ナタリー・ザカレンコ」なんですよ。だからこの人もロシア系って言われてたけど、実際はウクライナなんですね。ロシアと一緒くたにされてたからなんですけど。で、ウクライナの人って結構実はハリウッドとかアメリカとか、それこそマギー・ミネンコさんみたいに日本にもいるんですけど。みんな気がつかなくて。ロシア系やだと思ってた人が多いんですよ。

で、今日はちょっとウクライナの話をしようと思ってるんですけども。今、ウクライナがロシア軍に攻め込まれて。で、あっという間に占領されるだろうと言われてたんですけれども、予想に反して今も持ちこたえて戦い続けているわけですけども。なぜ、ウクライナがロシアにやすやすと降伏しないで本当に徹底的に戦い続けるのかということがわかる映画を今日は2本、紹介します。で、どっちもネットで配信されていて、すぐに見れますんで。300円とかそのぐらいでね。なので、ぜひ見ていただきたいんですが。

1本目はですね、『赤い闇』という映画です。副題が『スターリンの冷たい大地で』というんですが。2019年にウクライナとポーランドの合作で作られた映画なんですけども。これ、アマゾンとかYouTubeで見れます。これね、まずウクライナという国は1919年にソ連に占領されるんですね。一旦、ロシア帝国が崩壊した時に独立しようとしたんですけども、すぐにロシア帝国の後にできたソ連に占領されて、またロシアの1部にされちゃうんですけども。その頃、西側諸国、欧米諸国……イギリスとかアメリカとかはウクライナに入れなかったらしいんですよ。で、1933年にウクライナにイギリス人のジャーナリストのガレス・ジョーンズという人が潜入しまして。こっそりと。で、そのルポを元にした映画がこの『赤い闇』なんですね。で、なんでソ連がウクライナの実態を隠していたか?っていうことが暴かれるんですけど。

そのウクライナというのは非常に土地が肥沃で、農業が盛んなところなんですね。で、ウクライナの国旗は今、皆さん目にしてると思うんですけど。上が青で下が黄色なんですが。あれは上は青空を意味していて、下側の黄色は黄金に輝く麦畑を意味してるんですよ。で、ものすごく穀物が取れるところなんですね。それでロシアっていうのは非常に自然が厳しいところなんで、穀物とかはあんまり取れないんですね。ウクライナの方が取れるわけですよ。

それで、どうなったかっていうことなんですけども……ウクライナ、外国人が入れないようになっていたところにガレス・ジョーンズがこっそり入り込むと、もう人がみんな骨と皮なんですよ。それでジョーンズが持ってきたミカンかなんかの皮をぽろっと落とすと、その皮にバーッと子供たちが群がって、むさぼり食うですね。で、「じゃあ麦が取れないのかな?」って思うと、麦はいっぱい取れているんですよ。取れているんですが……それをどんどんそのソ連が持っていっちゃうんですよ。奪っていっちゃうんですよ。ロシアに持っていくために。

ウクライナの穀物をソ連が奪う

(町山智浩)で、ウクライナには食べ物が残らないんですね。で、食べ物を隠してると、そこに入ってきて奪い取っていくわけですよ。「隠すんじゃねえ!」ってことで。まあ昔の江戸時代の年貢を納めるみたいな世界ですけど。で、ジョーンズもそこに入ったものはいいものの、食べ物がないから餓死寸前になっていくわけです。で、木の皮を剥いて食べたりするんですけども。その頃、ウクライナの人たちは虫を食べたり、大変なことになっていたみたいですね。

で、とうとうやっぱり飢えで倒れるんです。ジョーンズが。そうすると、地元の農家の子供が彼を救ってくれるんですよ。で、なにかの肉をくれるんですね。で、「この肉、どうしたの?」ってその子に聞くと、その子は「お兄ちゃん」って答えるんですね。「お兄ちゃんがこの肉を取ってきてくれたの?」って聞くと、子供は黙っちゃうんですよ。それはですね、餓死したお兄ちゃんの人肉なんですよ。

(赤江珠緒)そういうことか……。

(町山智浩)で、このウクライナの1930年代のスターリンによってなされた飢餓は「ホロドモール」と呼ぶらしいんですね。それは「人為的に作り出された飢餓」という意味だそうです。これで100万人を超えるウクライナ人が餓死したと言われています。

(赤江珠緒)とんでもないですね!

(町山智浩)とんでもないんですよ。で、今回ロシアのプーチン大統領がウクライナを占領することを正当化するために演説で「歴史的に我々ロシアとウクライナ元々ひとつなんだ」っていう風に演説したんですけど……実際はウクライナから食べ物を奪って、ウクライナの人々を殺しているわけで。ひとつでもなんでもないわけですけどね。で、そういう歴史的なひどいことをロシアがウクライナに対してしていたことがわかる映画がその『赤い闇』っていう映画なんですけども。

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』予告編

それでもう1本……今の『赤い闇』の方は劇映画なんですけども。もう1本の方は『ウィンター・オン・ファイヤー』というタイトルのドキュメンタリーです。で、副題が『ウクライナ、自由への闘い』というタイトルなんですが。これはNetflixで見れます。日本語字幕がついているやつはNetflixにあるんですが、今回ウクライナへのロシアの侵攻に対してNetflixは抗議をして。YouTubeでタダでこの映画を公開しているんですが。ただ、日本語字幕がついてないんで。日本語字幕を読むためにはNetflixを見なきゃならないんですけども。これね、字幕入りのやつを日本のNetflixもタダで流すべきだと思うんですが。

町山智浩『ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い』を語る
町山智浩さんが2022年3月8日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でロシアのウクライナに対する侵攻についてトーク。ウクライナによる徹底抗戦の姿勢を理解するための映画『ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い』を紹介していました。

<書き起こしおわり>

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