mabanua『星野源のおんがくこうろん』とJ Dillaの功績を語る

mabanua『星野源のおんがくこうろん』とJ Dillaの功績を語る ラジオ

mabanuaさんが2022年2月14日放送のFM GUNMA『mabanuaの50号より愛をこめて』の中で自身も出演したNHK Eテレ『星野源のおんがくこうろん』についてトーク。さらにJ Dillaの功績について話していました。

(mabanua)『mabanuaの50号より愛をこめて』。mabanuaがお送りしております。続いてはmabanua worksのコーナーです。本日は『星野源のおんがくこうろん』。先日、2月11日(金)、Eテレでオンエアーされました『星野源のおんがくこうろん』。なんと特集テーマはJ・ディラということで。またの名をJay Deeとも言いますけども。このEテレでJ・ディラを紹介するというのがいかに革命的かというのをお伝えしたい部分もあるんですけども。

では、ハッシュタグからご紹介。これ、すごいですね。「朝はおにぎり」さん。ありがとうございます。僕のパペットの絵を……僕はパペット出演ではなくてがっかりされたかもしれませんけども。僕は生身で出演しておりましたけども。この絵、いいですね。mabanuaパペットということで。ありがとうございます。「音楽詳しくない私が聴いても、曲の解説がすごくわかりやすい、お話し上手のmabanuaさんがEテレに出演!とても楽しみです♪」ということで。ありがとうございます。

(mabanua)このJ・ディラなんですけども。実はラッパーでもあるんですよ。これ、あまり注目しきれていない人もいると思うんですけども。プロデューサー、アーティスト、そしてラッパーでもあるJ・ディラ。この人、ヒップホップのビートメイカーっていう風に、一言で言うとそういう表現もできると思うんですけども。いろんな分野に対して影響を与えたビートメイカー、プロデューサーで。かつ、本人も幅広くやっているという。

古くはスラム・ヴィレッジという自身のグループですとか、ア・トライブ・コールド・クエストというレジェンドのラップグループ。そして、いろんなラッパーに対してビートを提供したりするという、古くはそういうキャリアからスタートしていて。サンプリングっていうスタイルはJ・ディラ以前からあったんですけども。レコードからドラムの音を抜き取ってビートを組んだり、ピアノの音を抜き取ってビートを組んだりするというサンプリング。あのスタイル自体はJ・ディラがいろいろとやる前からすでにあったものなんですけども。

そのサンプリングっていうスタイルを使っていろんな音楽のジャンル、そしていろんなアーティストとコラボレートをしていったっていうことで。一気にそのビートメイカーの幅を他ジャンルに押し広げたプロデューサーという。そこがやっぱり僕はJ・ディラの一番の功績かなっていう風に思うんですよね。音楽的なところで言うと、やっぱりリズムのバネというか、最近では「ヨレ」って言われていますけども。

でもヨレっていうと、なんか「下手な人」っていう風にはじめての人は捉えかねないので、あんまり僕はヨレって言わないんですけども。いわゆる、リズムのバネですね。メトロノーム通りにきっちりきっちり縦のラインがドラムのパーツパーツで合っているっていうのもある意味、教科書どおりで正しいんですけども。メトロノームからちょっとずれたぐらいの方が実は厚みが出るっていうね。音響的にも音楽的にも。

で、これが番組の中でVTRとして入っていたかどうかは覚えてないんですけども。そういったリズムのヨレ……あんまりきれいに整頓をさせないっていう、そういう手法を大胆にヒップホップシーンでやったのがJ・ディラなんですよね。その手法が逆に……話をちゃんと順序立てないと混乱しちゃうと思うんですけども。逆に、ミュージシャンたちに影響を与えたんですよ。J・ディラのグルーヴ、揺れたこのバネのあるグルーヴをミュージシャンも生の楽器を使ってやりたいってなって。結構ドラマーがこぞってJ・ディラのグルーヴを生楽器で体現しようとしたわけなんですよね。

で、これのなにがすごいか?っていうと、実はビートメイカーっていうのは基本的にあまり楽器が弾けない人が多いんですよ。だからサンプリングっていう、レコードから音を取るっていう技術を編み出したんですけども。いわゆるミュージシャンにあこがれて、でも楽器は弾けない。楽器を買うお金もない。だけど、楽器を操るように音楽を作りたいっていうことでサンプリングをした。ミュージシャンから影響を受けたわけなんですよ。だけど、J・ディラは今度、その反対ですよね。J・ディラが作ったビートがミュージシャンに影響を与えた、そんなビートメイカーなんですよ。

ミュージシャンたちに影響を与えたビートメイカー

(mabanua)しかもそれがヒップホップやR&Bのミュージシャンだけではなくてジャズのミュージシャンやクラシックの世界……ドラムだけじゃないですよね。鍵盤を弾く人からギタリスト、ベーシスト、他のパートもみんな、J・ディラのノリや音楽をバンドでやってみたいとか。今度はビートメイカーに影響を受けたミュージシャンというのがいっぱい、J・ディラ以降に出てきたんですよ。

それがすごく、ビートメイカーの逆襲っていうわけじゃないですけども、僕は大きなところかなという風に思いますね。リズムのズレみたいなところで言うと、地味な手法なんで聞いている人は普段、そういうのを意識しては聞かないで全然いいと思うし、気づかないところだと思うんですけども。たとえば、合唱コンクールとかで同級生とみんなでバーッと歌ったりするじゃないですか。あれってきっちりみんな……これ、人間的には不可能なんですけども。寸分違わず同じタイミングで一斉に「あー♪」って同じ音程、同じタイミングで出すと、音ってそれぞれがマスキング。かぶせ合っちゃって、逆にそんなに太くは聞こえないんですよ。合唱感は実は出ないんですよ。

その証拠に、あれってやっぱり微妙に音程がちょっとずれて歌っている子がいたり。「せーの」で歌うんだけど、ちょっと遅れて入っちゃったり。急いでメトロノームよりも早く入っちゃったりとかする子がいるのでずれるわけですよね。縦軸、横軸が。そうすると、ああやって合唱っていう音像になるんですよ。1人で歌っているのと全然違いますよね。音の太さと広がりと。もしかしたらPAスピーカーもいらないぐらいの迫力があるわけで。あれはね、やっぱりずれているからなんですよ。

あとは、ロックの評論家の方が言われていたのかな? 音楽評論家の方かな? エンジニアの方かな? ちょっと覚えていないんですけども。レッド・ツェッペリン、僕は好きなんですけど。レッド・ツェッペリンがなんであんなにかっこいいか?っていうと、それは全員がずれているからって言っていたんですよ。「ああ、なるほどな」って思って。ジョン・ボーナムの独特のリズムがあって。で、ジミー・ペイジはヘタウマと呼ばれているギターで。で、ロバート・プラントはブルージーに感情にまかせて歌うので、絶対にその音程やら縦のラインって合うはずがないんですよ。そこがお互いをマスキングしない、隙間隙間にそれぞれが出たり入ったりしてくるので、立体的に、しかも太く聞こえるというのがレッド・ツェッペリンの秘密なんだというね。

かといって全員で「今日はじゃあずらして音楽を作ろうぜ」って言っても、なかなかちょっと作為的な感じもしちゃうので。自然体でそれができるかどうか?っていうのが結構音楽を演奏する、作る上で難しいところなんですよ。そんなところをビートメイカーでやってのけてしまったというのがJ・ディラの起こした革命だと僕は思うんですよね。いっぱいベラベラとしゃべっちゃいましたけども、なんとなく言っていること、わかってくれましたかね?

番組では別曲を流したんですけども。J・ディラのソロの作品ではなくて、プロデュースですね。J・ディラが裏方となってビートを作った、僕が大好きな作品です。コモンで『Dooinit』。

Common『Dooinit』

<書き起こしおわり>

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