吉田豪 2010年代アイドル戦国時代を語る

吉田豪 2010年代アイドル戦国時代を語る ラジオ

吉田豪さんがYBS『909 Music Hourz』に出演。絵恋ちゃん、加藤響子さんと2010年代女性アイドルソングについてトーク。AKB48がブレイクし、そこにももクロなどがガチで仕掛けていたアイドル戦国時代について話していました。

行くぜっ!怪盗少女

(加藤響子)じゃあ、続いていよいよ2010年代に入ります。この時代のテーマはこちらです。

(絵恋ちゃん)「アイドル戦国時代 その栄枯盛衰」!

(加藤響子)はい。流れてきたのはAKB48の『会いたかった』です。AKBがブレイクしたのが2009年頃ですが、絵恋ちゃんがアイドルデビューしたのもこの頃なんですよね?

(絵恋ちゃん)そう……らしいですね。

(吉田豪)らしい?

(絵恋ちゃん)全然わかんないんですけども。いつデビューしたのか(笑)。

(加藤響子)アイドルの前は?

(絵恋ちゃん)メイドカフェでメイドをやっていました。

(加藤響子)メイドカフェで? ああ、そうなんですか。

(吉田豪)その頃はメイドバブルでもありますよね。メイドがCDを出したりとか。『完全メイド宣言』だのなんだの。

(絵恋ちゃん)メイドをやらなかったら地下アイドルっていう文化を知らなかったです。絵恋。

(加藤響子)そうだったんですか。

(絵恋ちゃん)ライブをやっている子とかもメイドで働いていたので。「そういうのがあるんだ」みたいな感じで。

(加藤響子)そのあたりで地下アイドルを知ったんですね。アイドル戦国時代っていうフレーズはもうすっかりメディアに浸透していますけども。豪さん、これムーブメントはどういう風に起こっていったんですか?

(吉田豪)これ、実はアイドル戦国時代についていちばん調べているのが僕なんですよ。いまだに調査し続けているっていう。アイドル戦国時代っていうのはこの2010年ぐらいのキャッチフレーズだとしか思っていない人が多いんですけど、実は本当に戦国状態でガチな戦いが行われていたんですよ。

(加藤響子)ガチな戦い?

(吉田豪)それが最高に面白くて。要は、AKBがドカンと売れました。それにモーニング娘。もいましたけど、ももいろクローバー。ももクロが喧嘩を仕掛ける。ガチで喧嘩を仕掛けていたんですよ、この時期。本当にやらかしていたんです。

(加藤響子)なんですか?

AKBにガチで喧嘩をしかけていたももクロ

(吉田豪)AKBの劇場前でビラを配ったりとかだけじゃなくて、いちばん大きな問題になったのがSKEが名古屋に劇場を作った時、SKEが他の場所でライブをやっている時は劇場が空いてるじゃないですか。で、そこを普通のライブと同じで借りれるっていうことを知って、ももクロが名古屋公演をそこを借りて『お留守のようなので“あたためて”おきました』っていうタイトルを打ったらAKB側が大激怒して……(笑)。

(加藤・絵恋)ええーっ!

(吉田豪)そこが使えなくなって……とかのバトルが全部面白くて。裏話を聞けば聞くほど最高で。それの証言を全部取って。だからこの頃から対バンイベントが行われ始めて。SKEとももクロとか、あとスマイレージとか。それの舞台裏がどれぐらいガチだったのかとかを全て確認しているんですよ、僕(笑)。

(絵恋ちゃん)へー!

(吉田豪)「お前ら、やっちまえ!」みたいなことをいろんなところがやって。で、そんな中で呑気なモードで行ったSKEが完全に潰されて……みたいな。面白かったんですよ。その時、いろんなモーニング娘。にハマッたヲタの連中とかと終わった後に飲んで。即それを座談会としてテープ録って雑誌に載せたりして。要はSKEのヲタがボロ泣きしていたんですよ。「悔しいですっ!」みたいな(笑)。

(加藤・絵恋)フハハハハハッ!

(絵恋ちゃん)泣いたんだ(笑)。

(吉田豪)「俺たちの希望がっ!」みたいな感じですごかったんですよ。みんな本気だったんですよ。最高に面白くて。

(加藤響子)ファンも命がけっていう。

(吉田豪)命がけですよ。「あいつら、なんでこんな時にちゃんとやらねえんだよっ!
」みたいな(笑)。面白かったっすねー。

(加藤響子)みんなもう、全部をかけて?

(吉田豪)本気で戦っていたんです。ファンだけじゃなくて運営、アイドル側も。それが、ところがいろんなバトルをやっている時に震災が来て、「戦っている場合じゃない」みたいな感じで団結する流れになってこの戦国の流れも終わっていくんですけど。その裏で実は秋元康さんサイドが「アイドル戦国時代」っていう言葉に対して圧力をかけてきた説っていうのも当時流れたりして。「この言葉を使わないように」みたいに言っていたとか。それを僕らが水面下で聞いて「秋元康、許さねえ!」とか燃え上がったりとか(笑)。そういう謎の会議をずっと僕ら、行っていたんですよ。居酒屋に集まっては、「なんとかこの火を消さないために俺たちが頑張らなければ!」とか。

(加藤響子)じゃあ、豪さん的には戦国時代の方が楽しい?

(吉田豪)楽しかったですね。超燃えましたよ。だから実はその震災の前日……翌日がももクロのシングル発売のインストアイベントだったんですけど、その前日もみんなで集まってそういう話をしていたんですよ。「俺たちでなんとかしなければ!」みたいな(笑)。

(加藤響子)フフフ(笑)。でも、逆にこの戦国時代を終わらせたくないぐらいの?

(吉田豪)そうだったんですよ。だから雑誌とかでもわざと「アイドル戦国時代」っていう言葉を使ったりして、戦いを繰り広げていたんですよ。ひっそりと。

(加藤響子)へー! そんな中、豪さんはももクロ推しとか?

(吉田豪)まあだから明らかにそういうやらかす部分も面白いし、曲も異常。『行くぜっ!怪盗少女』は歴史的な曲ですよね。

(加藤響子)うん。そのももクロと親しい関係だったという……。

(吉田豪)「親しい」と言っていいかどうかわからないですけどね。

(加藤響子)ブレイクした理由って何なんですかね?

(吉田豪)うーん。まあ、面白がれるポイントもいっぱいあったし。でも、いちばん大きいのは応援して恥ずかしくないような空気をあの時に作れたっていうことですよね。だからサブカル的な人たちが流れやすい状況っていうか。これはでも、僕は批判的によく言っていたんですけども。「俺、アイドルは好きじゃないよ。ももクロは好きだけど」って言う人がすごい増えた時期で。

(加藤響子)へー!

(吉田豪)僕はそういう人たちをもっと地下に掘り下げるためにコンピとかを作って出していたんですよ。「そこだけじゃないよ。もっと面白いの、いっぱいあるよ!」って言って。

(加藤響子)これ、いま流れてきた曲は?

(吉田豪)『ミライボウル』。僕がももクロでいちばん好きな曲ですね。

(加藤響子)はい。

ももいろクローバー『ミライボウル』の謎

(吉田豪)これもまた僕が「『ミライボウル』の謎」っていうのをずっと追求していて。いまだに調査を続けている……。

(加藤響子)これはどんな曲なんですか?

(吉田豪)まあ、『行くぜっ!怪盗少女』がヒャダインさんの曲でドカンと売れて、ヒャダインさんの評価も上がって。

(加藤響子)作詞作曲を担当されていたのがヒャダインさん。

(吉田豪)それでセカンドがNARASAKIさんっていう人が作って。そういう流れになってからの3枚目なんですけども『ミライボウル』がちょっと異常な作りなんですよ。ヒャダインさんがまず作って、そしたらその曲がいまいち盛り上がりがないとレコード会社が判断をして、ヒャダインさんに内緒で勝手に他の曲と合体させるということをやって……。

(加藤響子)えっ、勝手に?

(吉田豪)で、ヒャダインさんが起こってももクロとの関係が一時期切れて。で、その勝手に合体した曲をなんとなく後で均すっていうのをNARASAKIさんっていう人がやって……っていう、すごいデリケートな流れで作られた曲で。だからこの後ぐらいに中野サンプラザでワンマンがあったんですけど、その時にNARASAKIさんとヒャダインさん……僕も関係者席で2階の最前だったんですけど、その2人をなるべく離していたんですよ。「会わせちゃいけない」ぐらいのデリケートな時期。ややこしかったんですよ、いろいろと。

(加藤響子)はー!

(吉田豪)ただ、でもその結果、謎のおかしな曲ができて。合体させたから無理な展開なんですよ。その無理な展開をNARASAKIさんがうまくつないで、普通だったらありえないおかしな曲なんだけど、でもなんか泣けるっていうか……すごい不思議。

(加藤響子)いろんな方の思いが入り混じっている曲なですね。

(吉田豪)だから僕、『怪盗少女』のデモとかをヒャダインさんからもらったりとか、いろんなアイドルのいい曲のデモを集めるのが僕の趣味の一つで。この『ミライボウル』のデモを聞くのが僕の生涯のテーマなんですよ。最初にどういう曲だったのか?っていう。

(絵恋ちゃん)ああー。たしかに気になる。

(加藤響子)それは気になりますね。そしてこのアイドル戦国時代に登場し、いまも活躍するのが地下アイドルという存在ですね。地下アイドルっていうのは?

(吉田豪)それ以前からも存在していたんですけど、このぐらいでアイドルバブルでドカンと来て。ももクロでアイドルに目覚めた人が地下に流れたりして活性化していったっていう流れですね。っていうかまず「地下」の概念を説明しなきゃいけないですね。

(加藤響子)それを教えてほしいですね。

地下アイドルの定義

(吉田豪)僕がよく言っているのは、90年代頭のアイドル冬の時代の頃からアイドルがそもそも地上。それこそデパートの屋上とかコンサートのホール会場とかでやっていたのが、規模がすごい小さくなってライブハウスとかでやるようになって。で、ライブハウスが基本、地下にあるから「地下アイドル」って呼ばれるようになったという風に僕はよく説明しているんですけども。

(加藤響子)へー!

(吉田豪)僕の定義ではライブハウスとかで複数の対バンイベントとかに出ているグループっていうのが地下アイドルっていう。どうですか、絵恋ちゃん? 現場の人としては。

(絵恋ちゃん)えっ、でも「そうなんだー」って思いました。自分で地下アイドルやっておきながら、どうして「地下アイドル」って呼ばれているのかあんまり知らなかったんで。なるほどっていう感じですね。たしかにライブハウスでみんなやっているので。

(吉田豪)対バンをしなくなったら「地上に行ったかな」ぐらいの。単独で大きめの箱でやれるようになって。

(絵恋ちゃん)ああ、たしかに。

(加藤響子)絵恋ちゃんも地下アイドルに属するわけですよね?

(絵恋ちゃん)はい、そうですね。

(加藤響子)こういった地下アイドルの現場ってどういう感じなんですか?

(絵恋ちゃん)どういう感じ?

(加藤響子)やっぱりファンの方とかもすごく多いと思うんですけども。ファンの方との距離感も近いですか?

(絵恋ちゃん)そうですね。やっぱりテレビに出ている人たちとは違って、チェキというツーショット写真が撮れたりとか。あと握手とか……物販が毎回あって。そこでお話もするし。

(吉田豪)地上は物販に本人が出てこないですからね。

(絵恋ちゃん)そうですね。スタッフが普通はやってますからね。

(加藤響子)地下アイドルの場合は自らが携わる?

(絵恋ちゃん)そうですね。スタッフがいない場合もあるので、アイドルだけが立って物販をしているっていう。

(吉田豪)あの、ヲタがチェキを撮るとか普通ですからね。「次の人が撮ってください」とか(笑)。

(加藤響子)へー!

(絵恋ちゃん)そうです。絵恋もそのシステムなんですけども。スタッフがいない時は後ろに並んでいる人に写真を撮ってもらうっていう、そういう感じでやっています。

(加藤響子)より身近に関わっていけるんですね。でも、この地下アイドルになりたいなっていう時はどうやったらなれるんですか?

(絵恋ちゃん)えっ、誰でもなれますよ。

(加藤響子)いやいやいや!

(吉田豪)地下は本当、そうですよ。基準がないです。

(絵恋ちゃん)本当に。Twitterとか作って「地下アイドルやってます」って言って、「こちらにオファーください」って言ってGメールのアドレスとかをつけておけば全然オファー来ますよ。

(吉田豪)うん。オリジナル曲とか何もなくたってできるんですよ。

(絵恋ちゃん)カバーとかね。

(加藤響子)いきなり、じゃあ私が「明日から地下アイドルやります」って言ったらいけるってことですか?

(吉田豪)できますよ(キッパリ)。

(加藤響子)アハハハハハッ!

(絵恋ちゃん)絵恋も最初、そんな感じでした。

(吉田豪)よく、だから「地下」と「地底」って言うんですけど。「地底」って呼ばれるさらに底の層があって。そこはソロでカバー……カバーでもないですよ。コピーと言うかカラオケなんですよ。要は。カラオケ音源をただ使って歌っているだけの何のアレンジも加えていない、そういう志の低い層があって。

(加藤響子)地底アイドルっていうのがいらっしゃるんですか?

(絵恋ちゃん)地底アイドルっていうのがいるんですよ。

(吉田豪)絵恋ちゃんは地底から地下に這い上がってきたと言われていて。

(絵恋ちゃん)結構詳しいですよ。はい。地底はいま、リサさんいるじゃないですか。リサさんの真似をしている人が多いですね。

(吉田豪)「リサさん」っていうのはアルファベットのLiSAさん?

(絵恋ちゃん)そうです。いまめちゃめちゃ多いです。

(吉田豪)ちょっとアニソンロックみたいな感じの?

(絵恋ちゃん)そうですね。煽り方とか髪型とかまでみんな一緒だったりして。

(吉田豪)アニソンロックっぽいのはたしかに多いよね。

(絵恋ちゃん)そうですね。アニソンっぽいのが。

(加藤響子)そうなんですね。

<書き起こしおわり>

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