R-指定さんとDJ松永さんが2021年8月10日放送のニッポン放送『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』の中でCreepy Nutsの新作アルバム『Case』収録曲『のびしろ』についてトーク。R-指定がリリックに込めた思いなどについて話していました。
(DJ松永)9月1日に我々Creepy Nutsの『Case』というフルアルバムをリリースするんですけども。そのアルバムの中から1曲、『のびしろ』という曲を聞いていただきたいんですけども。こちら、8月25日に先行でデジタル配信いたします。サブスクなりダウンロードなりするので。8月25日に先行配信なので、ぜひ聞いてください。Creepy Nutsで『のびしろ』。
Creepy Nuts『のびしろ』
(DJ松永)9月1日発売『Case』からCreepy Nuts『のびしろ』でした。
(番組終了後のミクチャ配信限定アフタートークで……)
(DJ松永)『のびしろ』、はじめてかけさせていただきましたけども。あれは……いい歌詞でした。ありがとうございます! このたびも、ありがとうございます!
(R-指定)いやいや、これはもうトラック……まず、トラックがあって。こういうイメージでっていうのがありまして。それに引っ張られたっていう感じですかね。で、かつ、俺がラップを乗せてからの方がトラックの変わりようが……マジで元のやつを。ちょっとこれ、どこかで……変わりようがすごいんですよ。
(DJ松永)だいぶ変わるよね(笑)。
(R-指定)そう。それがね、元のやつで十分すごいよかったんですけども。ラップが乗ってそれになったことでバチハマりしましたね。
(DJ松永)本当、最初はシンプルなワンループで送って。で、Rさんがそのトラックには普通は乗っけないようなさ、メロディーとか展開をつけるじゃないですか。それがめちゃくちゃいいので。そっちに追いつかせる作業っていうのを毎回やるんですよね。でも、それって本当に予想しないものをあげてくるから。昔は構成を作って。いろいろと最初に作ってから送るみたいなこともあったんだけども。それを……こっちで1回、考えるよりは本当に結構簡素なやつで送って。Rさんに自由に泳いでもらった方が結果、想像もしていなかったようないいものができるっていうことを散々経験してきたのでね。我々の必勝パターンはそっちだなって。
(R-指定)最近、よりそういう感じにね。
(DJ松永)より、そういう感じになってきていますよ。
(R-指定)これとかはホンマに結構、なんでしょうね? 30になる時の気持ちっていうか。俺も来月、そうなんですけども。その時の気持ちみたいなものをちょっと曲にしておきたいな、みたいな。節目節目を曲に……。
(DJ松永)結構前から言っていたよね。30歳みたいなところは曲にしておきたいって。やっぱり『Trust Over 30』という名曲が……。
(R-指定)RHYMESTERのね。
(DJ松永)DJ TATSUTAのね!
(R-指定)そうそう。DJ TATSUTA feat. RHYMESTERの『Trust Over 30』。30になって、30を超えてからのいろんなことが詰まった曲ですけども。それを聞いていて。で、ラジオでも1回、たしか松永さんが30になった時とかかな? 流しましたよね。
(DJ松永)流したっけ? 『Trust Over 30』を? マジで? そうそう。で、作ろうって言っていてね。でも、ああいう仕上がりになるとは最初は思わなかったね。
(R-指定)思わんかった。俺も最初はもっと違う方向というか。これも説明が難しいんだけども。「三十路はハタチ」っていうキーワードで書こうとしていて。たぶん本来、俺のオトンとかオカンの世代がハタチになる時に決めた覚悟みたいなものがもしかしたら今、俺はやっと持てたぐらいかもしれへん、みたいなのを書こうっていうか。その大人感みたいな感覚が今の俺で言うとやっとそこなのかも、みたいなぐらいの気持ちとか。
(DJ松永)でもね、現実では成人年齢引き下げみたいなことになっているけど……。
(R-指定)でも、精神年齢はもしかしたらもうちょっとスローペースで大人になっていく感じになったんかな、みたいな。まあまあ、俺はですけどね。でもホンマに……そう。始まりとかも「悪者扱いしてきた街で 悪者扱いしてきた大人へ変わりゆく俺」っていうところなんですけども。ホンマにそうやなっていうか。今回のアルバムとか、結構自分がリリックの中とかでどちらかというと敵寄りに書いていたものとか、仮想的として決めつけてきたものの側の気持ちっていうか。そいつらのこともちょっと考えられるようになったみたいなリリックがすごい多いから。「大人」なんかその最たる例で。ヒップホップの中とか歌の中でも大人というものはなにかにつけて……。
(DJ松永)たしかに。仮想敵を「大人」という言葉で表現するみたいなことをするからね。
(R-指定)そうそう。自分たちよりも大人でいろんな権力を牛耳っている何か腹黒いものみたいな。
(DJ松永)「バビロン」みたいな、そういうのの使い方に近いよね。
(R-指定)でもリリックの中でも「くくれやしなかったわ たったの三文字で」っていうのがあるんですけども。これは「大人」というものもそうやし、逆に大人の側から見た「子供」っていうのもそうやし。「男」とか「女」とか割とね、くくる時に三文字の言葉って多いんですよ。
(DJ松永)たしかに。本当だね。
「くくれやしなかったわ たったの三文字で」
(R-指定)で、まあいろんなものを……「鑑の中で 笑うてるお前 くくれやしなかったわ たったの三文字で」っていうのは俺自身のこと。「男」とか「子供」とか「大人」とか。そういうものにくくられへんなっていう。そんぐらいの、いろんなものを混ぜ合わせた……30にもなってくると混ぜ合わせたなにか、言い表し難い存在になっているな、俺はっていうのもありましてね。そういうのも書いているっていう感じですかね。この曲でいうと。で、ホンマにロケーションとしてはちょうど大阪生まれの俺がいろいろと……それこそ「東京」もね、悪者扱いしてきた街ですから。やっぱり。
(DJ松永)悪者扱いしておきながら、自分でそこに来てな、自分で住み始めたっていう。
(R-指定)そう。そこの矛盾みたいなものもね。そこにも向き合った歌詞ですね。でも、それでもやっと、この歳になっても全然ラップ、まだまだ上手なるし。松永さんもそうですけども。トラックもDJもどんどんと進歩するし。
(DJ松永)ここ最近もだいぶですからね。自分で言うのもあれだけど。
(R-指定)俺もやっぱりこのアルバムを作り終えて、またラップ上手なってるやん、みたいなところもあるから。
(DJ松永)いや、本当にまた作りたいことだらけだよね。
(R-指定)ほんでまあ、人間的にもね、学びがな。
(DJ松永)本当に。学びたいことだらけ。
(R-指定)だらけよ。こんなに余白があるとは。この歳になっても。もっとさ、想像では……こんぐらいの年齢だと付け入る隙のない感じになっているって10代の時とかは思っていたけども。全然、付け入る隙もあるし、伸びしろもあるし、みたいな。こんなにまだ、不確定な状態がいっぱいある段階の大人になるとは思っていなかったから。
(DJ松永)そうね。そっちの方がいいんだけどね。楽しいっていうか。それがむしろ生きがいみたいなのにつながってくるからな。
(R-指定)どっちかって言うと19の時とか、結構無理やり大人びようとしていたから。「もうハタチや。もう大人や。もう終わった」みたいな。なんか、そういうのがちょっとあったんですよ。10代のラッパーみたいな肩書も取れるし。というか、ちゃんとせなアカンっぽいし。でも、この30手前の今の29はなんか、どっちかっていうと「ええやん」みたいな感じの気持ちが勝っているっていう。それを歌詞にしました。いい曲が他にもいっぱい詰まっているんで、ぜひ聞いてほしいですね。
(DJ松永)本当ですよ。素晴らしいです。
Creepy Nuts『Case』
<書き起こしおわり>