安住紳一郎 東京五輪・テレビ字幕制作を語る

安住紳一郎 東京五輪・テレビ字幕制作を語る 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんが2021年8月8日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中で東京オリンピックのテレビ字幕制作についてトーク。字幕制作室の仕事や、字幕制作の方から嫌われる人などについても話していました。

(安住紳一郎)そしてオリンピックが今日、閉会式ですね。17日間で行われました。8月24日、火曜日から今度はパラリンピックが9月5日までということです。今日、閉会式は何時からですか? 8時からかな? またちょっと都内は警戒が厳になりますけれども。オリンピックのことに関して、メールを一通いただいています。「こんにちは。私は放送業界に従事しており、生放送の字幕入力をしています」っていう方ですね。字幕入力の方。字幕、ご覧になる時、ありますか?

(中澤有美子)音を消して、でもつけておきたい時は頼りにしてますね。

(安住紳一郎)そうですよね。この方はどこの放送局にお勤めなんでしょうかね? 気になりますね。そこはさすがに書いてくれてませんけども。TBSテレビもですね、14階かな? 字幕制作室っていうね、大きな部屋がありますよ。「……字幕入力とは放送音声を一言一句正確に聞き起こすというものです」。ドラマとかね、出てますよね。ドラマも出てますし、生放送も出てますよね。そう。あれ、生放送で付けるの、大変なようですけどね。

「……病院や飲食店など、テレビの音声を聞きづらい環境で字幕が表示されているのを目にしたことがあるのではないでしょうか」。

(中澤有美子)そうそうそう。

(安住紳一郎)元々は聴覚障害の方とかのために作られているんですよね、あれ。違いますか? 「……先週の放送で安住氏もお話ししていましたが、丸1日ぶっ通しでオリンピックをやるオールデイシステム。私も携わりましたが、大変でした。何時間もぶっ通しで対応するため、トイレは2分で済ませる。もしくは水分は取らない。集中力を維持するためラムネやチョコなど糖分を常に摂取。一番大変なのは番組編成が急に変わるため、いきなり全く知らない競技の対応したことです。突然朝、『この後、知らない競技を急にやります』と言われた時はもう絶望に近いです。腹をくくり、なんとか乗り切りました。

正確な字幕を届けたいので、もちろん選手名やルールなど最大限準備と予習をした上で本番に臨むよう努めていますが、どうしても分からない言葉が出てきた時は上手くうっすらごまかしています。もし視聴者の方で『今の言葉、なんて言ったかわからなかったのに、字幕にも書いてないな』と不満をお持ちの方々、申し訳ありません。私たちもできないんです(涙)。その代わり、調べて次からはちゃんと字幕見出せるよう努力しています。緊急事態宣言で外出の自粛が呼びかけられていますが、皆さんがテレビを通じてオリンピックを楽しんでいただけたら嬉しいです」ということですね。

(中澤有美子)ありがたいですね。

(安住紳一郎)不思議ですね。身内が出てきてこれをマイクの前で言うと「うるせえよ」っていう気持ちになりますけど。なんかちょっとね、匿名でこのまた違う放送局の人からのお便りになると、なんかありがたく押しいただくみたいな感じは、何なんですか? やっぱり、不思議な感じ、ありますよね。あ、ごめんなさい。「うるせえよ」とまでは思いませんけども。ちょっとね、なんかいきなりね、自分の言い訳から始めるなよっていう気持ちになりますけどね。急にね、あれですよね。第三者になると、うん。

(中澤有美子)リスナーの方からだと思うと。

(安住紳一郎)リスナーの方からってなると、あれですね。うん。押しいただいちゃうよね。「頑張ってくださいね」っていう気持ちになりますね。不思議ですね(笑)。字幕制作も大変でしょうね。そうですよね。急にね、競技が変わったりしますもんね。そしたらやっぱり、通訳の方と一緒で事前準備みたいなのが必要ですよね。急にだって解説の人がね、「今のゲシてるね!」「えっ、ゲシてる? ええっ?」とかね。

(中澤有美子)ねえ(笑)。「ゲシてる」?

(安住紳一郎)「ゲシてる」ってタイヤが擦れてスピードが落ちること。「ゲシる」とか言うんでしょう? そんなの、だって初耳中の初耳だもんね。「ゲシる」ってね。

(中澤有美子)そうそう。「ゴン攻め」とかね。

(安住紳一郎)「ゴン攻め」とかね。そうだよね。「グーフィースタイルから飛んでファイブフォーティー」とか。「えっ? 今、なんて言った?」なんて。「全然わかんないじゃん! ええっ、わかんない! これ、カタカナで起こせばいいのかしら?」みたいな。で、カタカタカタカタッて起こしてね。大変ですよね。

(中澤有美子)すごい難しい!

「ゲシる」「ゴン攻め」を字幕に起こす

(安住紳一郎)はじめて「ゴン攻め」って聞かれた方、びっくりされたでしょうね。「うん? ご……うん?」って。

(中澤有美子)「そう聞こえたけど、いいのかな?」って。

(安住紳一郎)でもそんな、同じところで立ち止まるわけにはいかないからね。なんかグッとやっちゃうけどね。面白いですね。字幕制作室っていうところには台本とか、想定される進行表とかを事前にやっぱり送るんですよね。それで、そこを見ながらだいたい、そういう風に字幕をタイピングする方も想定されてやってるってことなんですけれど。だから台本と違う進行をしたり、台本と違うことを読みたがるようなアナウンサーとかは猛烈に嫌われてますからね。

(中澤有美子)ああ、そこで。

(安住紳一郎)うん。「14階の前は通るな」って言ってますね。

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ!

(安住紳一郎)「(舌打ちで)チッチッ、うーん! チチチチッ! うーん! この、やりたがりめ! 台本外したがり野郎だな!」っていうことでしょう? まあ、皆さんも想像ついていると思いますが、私ですけどね(笑)。「最初ぐらい、やれ! 台本通り、やれ!」っていうことだよね。でも、自分が字幕を打つ係になったらそう思うよね。事前にさ、来て。「ああ、こういう風にやるんだ。ああ、こういうことね」なんて。心づもりしてね。「まずは『おはようございます』から来るのかな?」みたいなね。定型文とかあると、だから楽でしょね。きっとね。「ああ、はいはいはい」なんて。ペペペペッと打てるもんね。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)「いきなり違うこと言いやがった、あいつ! 許さねえぞ!」なんていうことでしょうね。いろいろとあるでしょう? 私も戦っているのよ。

(中澤有美子)本当ですね(笑)。

(安住紳一郎)今の話だけでも私がようやってるっていう気持ちになるでしょう? どう?

(中澤有美子)そうですね(笑)。そこにはまだ、思いが至ってなかった。

(安住紳一郎)思いが至ってなかった? 私と字幕制作室の戦いがあるのよ。

(中澤有美子)知らなかった(笑)。

(安住紳一郎)知らなかった? そうよ。そうでしょう。そうなんだよ。

(中澤有美子)本当だ(笑)。いつでも想像以上だ(笑)。

(安住紳一郎)また、過度な持ち上げは嫌味になりますから、やめてくださいよ。本当にやめてくださいよ。今、私キレッキレですから。触るもの皆傷つけますよ。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)本当ですよ。そうなのよ。わかった、みんな? そうなんだよ。「ちょっとこの人って変わったスタイルでやってるな」と思う人は戦ってるんだから。私、社内で通れない廊下、たくさんあるんだからね。

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ!

社内で通れない廊下がたくさんある

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