オークラさんが2021年7月30日放送のTBSラジオ『バナナマンのバナナムーンGOLD』の中で「この夏、見た方がいいバナナマンコント10選」と題して、おすすめバナナマンコントを紹介。バナナマンの1回目の単独ライブで披露されたネタ「オサムクラブ」の衝撃について話していました。
(オークラ)じゃあ、さっそく行きますよ。オークラが勧めるこの夏、見た方がいいバナナマンコント10選。まず最初のひとつ目のコントが「オサムクラブ」。知ってます? オサムクラブ。
(飯塚悟志)これね、タイトルはよく聞くんだよな。伝説なんでしょう? オサムクラブ。
(オークラ)まさしく、その1回目の単独ライブでやったネタで。
(飯塚悟志)1回目なんだ。俺、見たことないかもしれない。
(オークラ)たぶんね、1回目の単独ライブの中でも4番バッターみたいなネタなの。あのね、軽くコントの設定を説明しますが。設楽・日村が友達同士なの。で、設楽さんが1人暮らしを始めたから日村さんが遊びに行くという設定で。遊びに行ったらそこで設楽さんが日村さんに「オサムクラブっていうのを作ったから、入らない?」って。
(飯塚悟志)もう面白そうじゃん。
(オークラ)で、オサムクラブってなんなのか?っていうと、結局オサム……要するに自分自身を敬うクラブっていうか。自分自身を神と崇めて敬ってくれないか?っていう勧誘をするんだけども。
(飯塚悟志)すごい発想だね(笑)。
(オークラ)で、日村さんがそれに興味を示すの。「面白そうだね」とか言って。
(飯塚悟志)「嫌だよ、そんなの」じゃないんだ。
(オークラ)そうそう。「面白そう!」っつって。で、その儀式とか、いろいろな内容を聞くんだけど……そんなことをやってる最中、家に電話がかかってくるの。まだその当時、携帯とかがない時代。だから家電ね。家電がかかってくるんだけども、家に電話がかかってくると日村さんが真っ先にその電話に出ちゃうの。設楽さんの家なのに。で、設楽さんがそのオサムクラブの勧誘をしながら、日村さんが電話に出ることに「うん?」って思って。「えっ、なんで俺の家なのに電話に出ちゃうの?」っていう。
で、日村さんは1人暮らししたことないから、家の電話に一発目で出るっていうことで憧れたっていう(笑)。で、設楽さんがオサムクラブに勧誘するっていう縦軸と、日村さんが勝手に電話に出ちゃうという縦軸が同時進行で進んでいって。最終的に設楽さんが「なんで電話に出るんだよ!」ってキレちゃうっていう。で、日村さんが泣きながら「本当に電話に出ることが憧れなんだよっ!」とかって言うという。そういうコントなんだよね。
(飯塚悟志)すごいネタだね!
(オークラ)すごいネタでしょう?
(飯塚悟志)どっちも面白いもんね。その縦軸2本。オサムクラブも興味あるし。で、人の家なのに真っ先に電話に出ちゃうっていう、そこも面白いし。そのどっちかでいいのに、両方を走らせるんだ。
(オークラ)そう。両方走らせるの。それで俺、当時、自分で言うのもなんだけど。いろんなコントを研究してるつもりだったから、ある程度のコントのパターンは……まあ、まだ若くて。ハタチちょっとぐらいだけども。コントのパターンはわかっているつもりだったけど、バナナマンライブでそのネタを見た瞬間も「こんなの、俺の教科書に全くない!」って思って。
(飯塚悟志)いや、俺の今の教科書にもないよ。それは。
「俺の教科書に全くない!」
(オークラ)もう度肝を抜かれて。「すげえな!」って思って。で、あるあるがあるようで、ないようで。システムのコントにも見せかけて、結構人間芝居だったりもしているんで。で、設楽さんに後日、「あのネタってどうやって作ったんですか?」って聞いたら、まさしくその勧誘をするというネタと、電話に出ちゃうっていうネタ。自分の中ではまだ完全に出来上がってないであろう2つのネタをドッキングさせたんだって。
(飯塚悟志)ああ、なるほどね。設定として2つ、あったんだ。
(オークラ)それをドッキングさせることによって、今まで見たことがないネタが……全く違う設定のネタを合体させるっていう発想が。
(飯塚悟志)それ、いくつの時?
(オークラ)それね、たぶん21とか22とかじゃないかな?
(飯塚悟志)天才じゃん!
(オークラ)だからその時、天才だと思った。「ヤベえ!」って思って。だいたい、どの若手のネタを見ても「はいはい。あれが元ネタというか。あの発想から来ているんだろうな」っていうのがわかっていたのに、それだけはもう読めなくて。
(飯塚悟志)たしかに。設楽さんって本当にどこから影響を受けてネタを作ってるか、全くわかんないんだよね。
(オークラ)わからない。でもたぶん、まあビシバシステムとか、ああいう芝居系のネタをたぶん好きだったと思うんだけど。設楽さん自身はとんねるずなり、やっぱりテレビバラエティが好きな人だから。あと、こういうネタっていつも思うんだけど。だいたい若手の頃って、新しいネタをやりたいと思って。自分だけに一瞬、引っかかるあるあるとかでネタを作ろうとするんだけど。それをお客さん、客前に当てて笑わせることってなかなか難しいじゃない? それで結局、笑いが取れないから今あるフォーマットの笑いに落とし込んで、みんなが見やすいネタに落とし込んでいくでしょう? でもそれじゃなくて、一発目からそんなネタで。
(飯塚悟志)もうウケてるの?
(オークラ)ウケてる。爆笑。
(飯塚悟志)信じられない。だいたい、そういうのって結果が芳しくなかったりするよ。その若い頃にそんな冒険的なことをやったら。
(オークラ)で、だいたい2、3年ムダにして。3年目ぐらいからだいたいいいネタを作るっていう感じになってくるじゃない? もうだって、それが本当に1年目の話だから。
(飯塚悟志)出来上がってたんだ。すごいな。それをやれちゃう日村さんもすごいよね。
(オークラ)そうなんだよ。それを表現しちゃう日村さんもすごくて。しかも、そのネタの最後のところって、設楽さんが「もう電話に出るなよ!」ってキレるところで日村さんが泣き出すんだよね。「だって、出たいんだもん」って。それで「自分は1人暮らししてるから、電話に出れないから。出たかったんだよ!」って泣くことに対して、それを設楽さんが受けて、設楽さんも泣き出すの(笑)。で、その芝居はまた、そのネタの線とは違う芝居力でまた表していて。「いや、これはすごいな!」って。で、ちょうどその頃、時を同じくして俺、ビートルズがすごい好きだって言ってたでしょう?
(飯塚悟志)「ビートルズが好きだ」って言ってたよ。
(オークラ)で、ジョン・レノンとポール・マッカートニーってよくあるパターンなんだけど、お互いに未完成の曲をできて、それをドッキングさせるっていう。それで今まで聞いたことがないような名曲を生み出してきたりとかしてるわけですよ。そのエピソードと、設楽さんのエピソードがバーン!って一致して。「これ、マジで天才だな!」って俺は思って。
(飯塚悟志)ビートルズじゃん。設楽さん、発想が。
(オークラ)発想がビートルズなんだよ(笑)。
発想がビートルズ
(飯塚悟志)はー! 俺もちょっと設定1個じゃ弱いから、今まであってやってない設定を足してやってみようみたいな時はあるけども。たいだいうまくいかないよ?
(オークラ)うまくいかないよね。だってキャラクターの線とか、そういうのがずれてきちゃうしさ。
(飯塚悟志)やっぱりひとつにまとまんないんだよね。
(オークラ)粒立てたい笑いが違くなっちゃうから。
(飯塚悟志)そうそうそう。なんかどっち付かずになることが多いのよ。それをうまいこと、もうハタチぐらいでやってるっていうことだね。
(オークラ)すごいなと思って。
(飯塚悟志)まあ、でも芝居力がやっぱり本当にずば抜けてるよね。バナナマンは。
(オークラ)だから俺も当時、イッセー尾形さんとか小松政夫さんの……お芝居って、見たことある?
(飯塚悟志)イッセー尾形さんの1人芝居はなんか見たことあるよ。昔、ビデオとかで。
(オークラ)昔、ビデオでね、小松さんとイッセー尾形さんが2人でコントをやったのがあって。それは、初めて社員旅行に行くっていう。2人芝居で。たぶん、いろんな会社が集まる、なんかゴルフコンペとかってあるじゃない? あんなようなノリの旅行があって。会ったことのない会社の社員同士が相部屋になるんだ。それで、お互いに全く仲良くない2人が相部屋になって、お互いで話していくっていう。なんかそういう、会ったことのない2人が初対面の場で偶然居合わせちゃって。なんか会話を盛り上げていくコントってさ、結構あるあるだけどさ。でも意外に演じると難しかったりするじゃない?
(飯塚悟志)難しいんだよね。接点がないからさ。
(オークラ)そう。それをすごい、その2人が上手にやっていて。俺はそういうコントを見たことなかったからさ。すごいなと思って。それっぽいネタを自分が当時組んでいた芸人とやろうと思ったの。初対面で、話がなんか噛み合わず、うまくいかなくて……っていうようなのを。まあ、笑いが取れないんだよ。下手クソだから(笑)。だから結果的に、自分の笑いが取りやすいシステムに落とし込んでいくっていう。
(飯塚悟志)しかないんだよね。なんか身の丈にあったネタじゃないと、やっぱり笑いって取れないんだよね。
(オークラ)でもバナナマンは当時からそれができたんだよ。
(飯塚悟志)本当に幅が広いんだよな。やれるネタの。バナナマンって。
(オークラ)いや、すごいよ。本当にすごすぎて。初めて俺、バナナマンのことを見た瞬間に、それがたぶん……。
(飯塚悟志)ラママじゃなくて?
(オークラ)ラママじゃなくて、俺は芸人時代に自分らはちょっと『ごっつええ感じ』のコントを研究してた時期だったから。『ごっつ』のキャシー塚本の料理教室ってあったじゃない? 破綻している、あのクレージーな感じの。あんなような感じを漫才に落としこむことによって、自分らのフォーマット漫才を作ったの。細雪っていうグループを組んでいたんですけど。
(飯塚悟志)なるほど。それはそれで新しいよね?
(オークラ)で、自分の中ではそういうシステムを1個作って、新しいことをやってるなと思っている時期があって。そしたら、それを見にきていたお客さんで、お笑い大好きな女の子が「細雪さん、面白いですよね。でも最近、もっと面白い人たちがいるんですよ。ラママにバナナマンという人たちが出てきたんですけど。フローレンスを彷彿とさせる笑いなんですよ」って言ってきたの。で、フローレンスっていうのはネプチューンが名倉さんを入れる前。ダブルボケだった時代で。
(飯塚悟志)はいはい。原田泰造さんとホリケンさんの。
(オークラ)俺らが入った頃って、「フローレンスは最強に面白かった」ってみんな、先輩方が言ってたじゃない?
(飯塚悟志)そうだね。
(オークラ)でも、ちゃんと見たことある? フローレンス。
(飯塚悟志)フローレンスさんは1回、なんかのライブのネタ見せで見たことあるけど。断トツで面白かった。たしかに。
(オークラ)そう。面白かったんだよね。俺らが入った時って、もうネプチューンが無敵状態だったでしょう?
(飯塚悟志)もうだって、ダブルボケのめちゃくちゃ面白い2人に、すごくシュッとした、ちゃんとしたツッコミの名倉さんが入ったっつって。もう完成された感じが見て取れたもんね。
(オークラ)で、めちゃくちゃ面白かったんだけど、先輩方は「フローレンス時代の方がすごかった」って言う人もいたから。伝説のフローレンス。「すごかったんだろうな」と俺は思っていて。そんな時に、その笑いファンの女の子が「バナナマンはフローレンスを彷彿とさせる」って言ってきたから。
「バナナマンはフローレンスを彷彿とさせる」
(飯塚悟志)その女の子、なんなの?(笑)。
(オークラ)それは、ただのお笑いファンの子。別にそれ以降も会ってもいないし。その子が俺のところに来て。「私たち、細雪認めたよ」っていう感じで来たの(笑)。
(飯塚悟志)なんなの、その子?
(オークラ)だからお笑いファンの子。その子が「バナナマンっていうすごいのがいるよ」って言ってきたから。もうそこから意識するじゃない? で、俺はその時、でもやっぱり知らない芸人だから。もうライバル視するでしょう?
(飯塚悟志)まあ、そりゃそうだよね。同世代だしね。
(オークラ)で、知らない芸人だからライバル視していたんだけど。ある時、自分がやっているライブ……「ザッツショーライブ」っていうのが昔、あったんですよ。俺、あそこをよく手伝っていたんだけども。そこに日村さんが見学しに来てるっつって。
(飯塚悟志)あのバナナマンの。
(オークラ)そしたら、その時に……まだリハーサルの時よ? 客席、まだ誰も座っていない。その時、日村さんは椅子に座らないで、ポッケに手を入れたまま壁に寄りかかっていて(笑)。「これがバナナマンだ!」って思って(笑)。
(飯塚悟志)もう漫画みたいじゃん(笑)。
(オークラ)本当、『あしたのジョー』みたいなポーズして(笑)。
(飯塚悟志)当時、細かったしね。
(オークラ)それで日村さんって天才っぽい顔してるでしょう? だから俺、「うわっ、これがバナナマンだ」と思って。それがはじめてで。「すげえこの人、天才っぽいな」って思って。で、その後に、バナナマン曰く「サマーホリデー」という名前のコントがあって。これはね、日村さんの家に設楽さんが借りたTシャツを返しにくるの。
(飯塚悟志)あっ、俺、それ知ってる! それ、たぶん一番最初にバナナマンを見た時のネタだと思う。「赤坂お笑いDOJO」でたぶん見たんだよ、それ。
(オークラ)で、それが要するにTシャツを返しにきて。日村さんがそのTシャツを開いたら、それが血に染まっているの。たしか、人を刺しちゃったとか、そんなようなやつで。で、それを「なんで俺のTシャツでそんなことをしてるんだよ!」っていうネタで。「返すわ」っつって。
(飯塚悟志)で、それで日村さんの家に来るんだよね。それで日村さん家の窓を開けたら報道陣がすごいんだよね。いや、覚えてる、覚えてる。あれもインパクトあったな!
(オークラ)あれって俺たちの年代の人間がさ、ただのボケじゃなくてさ、報道とかで作っていたじゃない? 俺、それを見てもう度肝を抜かれて。「すげえな!」って思って。でも、さっき言ったみたいにバナナマンってすごい存在だって聞いていたからすごいライバル心があったの。
(飯塚悟志)それを見ても、ライバル視できた?
(オークラ)だけど、ある時そのまさしく赤坂お笑いDOJOの帰りに、女の子と飲み会をすることになったの。で、その女の子たちもお笑い好きな子だったの。
(飯塚悟志)さっき出てきた女の子?
(オークラ)それとは違う子。で、そのお笑い好きの女の子は当時、長井さんの大ファンだったの。
(飯塚悟志)ああ、長井秀和さん?
(オークラ)長井さん、当時はもうすごかったじゃない?
(飯塚悟志)「間違いない」でブレイクする前だもんね。
(オークラ)お笑いアングラのちょっとカリスマだったんだよね。で、その女の子が「やっぱり一番の天才は長井さんだよ。バナナマンなんてフェイクだよ」みたいなことを言っていたの。
(飯塚悟志)なんでそんな女の子とばっかり付き合うんだよ?(笑)。
(オークラ)まあ、そういうもんじゃん? 若手芸人って。で、その時に俺はバナナマンのことを敵対視していたのに「ちょっと待ってよ。お前にバナナマンの何がわかるんだよ?」っつって。それで、大喧嘩(笑)。
(飯塚悟志)フハハハハハハハハッ! なに、その飲み会?(笑)。
(オークラ)別に長井さんもバナナマンもいるわけでもないのに。それでもう大喧嘩したっていうぐらい、実はハマっていたんだなっていう。
(飯塚悟志)そうね。なんか俺ら世代でバナナマンの存在はめちゃくちゃデカかったよね。
(オークラ)めちゃくちゃデカいね。だってアンジャッシュがああいうすれ違いコントをするようになったのも、結構バナナマンの影響がデカいよね。絶対に。
(飯塚悟志)って言っていた。やっぱり児嶋さんはバナナマンさんをものすごいライバル視してたよ。
(オークラ)まあ、するでしょうね。アンジャッシュもほら、結成してすぐに爆笑を取っていたでしょう。
(飯塚悟志)いや、そうよ。もうアンジャッシュは軒並みいろんなライブで優勝してたよ。
(オークラ)で、ネタの作り方が上手だったじゃん。フォーマットに落としこむとか。その点、バナナマンはさ、独自の笑いでさ。
(飯塚悟志)方程式がわかんないんだよ。
(オークラ)わからないのに爆笑を取っているっていうのがあったから。たぶんみんな「うわっ!」ってなっていたんだよね。若手の人たちは。ライブ界に天才現わるって感じだったよね。
(飯塚悟志)なんか魅力的だったよね。あ、なんかメールが来てるよ? 「おい、オークラ! まだ1個目のコントなのにめちゃくちゃ語るじゃねえかよ! このペースだと10個も紹介できないぞ?」って来てますよ。
(オークラ)オサムクラブはそれだけ思い出深いコントなんで。
(飯塚悟志)俺も噂には聞いていた。だってDVDとか、なってないでしょう?
(オークラ)わからないけども。探せばあるかもしれない。
(飯塚悟志)オサムクラブ。
(オークラ)ちょっと本当にこれは見てほしい。探せばたぶんどこかにあると思うんで。
(飯塚悟志)うん。
「オサムクラブ」収録作品
<書き起こしおわり>