安住紳一郎 東京五輪中継の舞台裏を語る

安住紳一郎 東京五輪中継の舞台裏を語る 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんが2021年8月1日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中で東京オリンピックのテレビ、ラジオ中継の舞台裏についてトーク。中継を行う体制やシステムなどについて、裏話を交えながら話していました。

(安住紳一郎)さて、オリンピックはご覧になってますでしょうか? 私がいただいたデータ、様々自分なりに解釈しますと、テレビにかじりついているという人が30パーセント。気になるのをたまにいろいろ見てますっていう人が60パーセント。全く見ないって人が30パーセントぐらいですね。皆さんはどの部類に属していらっしゃるでしょうか。

(中澤有美子)そうですね。うん。

(安住紳一郎)無観客ということで、なかなかご家族、選手関係者すら会場に行けないというような状況でね、そういった残念な環境ではありながらですけれども。また感染者は東京で4000人ですか。そういう状況の中で初めて経験するオリンピックですけれども。そういう本筋の問題をずらしまして、サイドの情報からお伝えしてまいります。今回、オリンピックをテレビでご覧になっていて、ラジオを聞いていて、気になることはなにかありますか? ありますね。オリンピックって放送権料、高いんですよね。正しく言うと、放送権料はバカ高いですよね。しかも、夏のオリンピックと冬のオリンピックの放送権料を抱き合わせで売るっていうね。うん。日本の公正取引委員会はなぜそこにクレームを入れないんだ?って気もしますけどね。

(中澤有美子)しますね。

放送権料がバカ高い

(安住紳一郎)めっちゃ高いんですよ。びっくりですから。なので、実はオリンピックをテレビで見られているっていう国民は地球上では少数派ですもんね。そのオリンピックの放送権料を払えている国、払えている放送局を持っている国しか見られないということなので。自分の国の選手団が金メダルを取ってる姿を残念ながらテレビでは見ることができず、週刊誌とか新聞とか、あるいは通信社のニュースだけで確認しているっていう人たちも多いわけですよね。そりゃそうですよね。うん。

(中澤有美子)そうなんですね。そうかー。

(安住紳一郎)なのです。日本もね、世界で2番目にお金を払っているんですけれども。で、皆さんがお金を払って見ているNHKさんが主にそのお金を出してくれるということですよね。まあ、正しくはだから、日本のNHKの受信料を払ってる皆さんが出してるってことになるんですけれども。なのでもうちょっと大きい顔をしてもいいのかもしれませんね(笑)。

で、さすがにそのお金が高いので、最近ここ何大会かは民間放送……フジテレビさん、日本テレビさん、テレビ朝日さん、テレビ東京さんなどもそのお金を一部負担しますので、いくつの種目、NHKさんが放送しないものを民放にも少し放送させてくださいっていうことで放送ができているということですね。それで、さらにはJC(ジャパンコンソーシアム)という放送局全体でそういう組織を作って国際映像に実況を付けてそれぞれの放送局で流しているということなんですよね。

なのでTBSで放送しているオリンピックの映像中継に他の局のアナウンサーの実況が付いてたり。他の局のディレクターがその仕事をしていたりとかするということなんですね。さらに映像制作はOBS(オリンピック・ブロードキャスティング・サービス)っていう世界中のカメラマンたちを雇っている巨大なオリンピック映像制作サービス組織っていうのがその映像を撮って各国の権利を持っている放送局の国に映像を分配しているんですよ。なのでTBSで流されている何かの種目のオリンピックの放送の映像が乱れたり、実況に不体裁があったりしてTBSにクレームを入れられたとしても、私たちとてもどうしようもないってことですよね(笑)。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)どうですか? この下請け感、伝わりました? あ、ごめんなさい。愚痴になっちゃった。日本選手団が活躍している裏で放送局末端人員の愚痴になっちゃった。どうですか? またね、いろいろ直前までやるかやらないか決まらなかったからOBSがね、21世紀とは思えないような映像の乱れを乱発してますよね。これがね、またちょっと伝わっちゃうと……IOCとかに伝わっちゃうと私の首がすぐに、簡単に0.2秒ぐらい飛んじゃうんで。あんまり誰も伝えないようにしていただきたいと思いますけれども。

(中澤有美子)そうなのかー!

(安住紳一郎)びっくりしちゃうもんね。たまにね。

(中澤有美子)そう。物が二重に見えた時とか、ありましたし。

(安住紳一郎)なかなか。そうなんですよ。どうですか? 裏事情。

(中澤有美子)新鮮です(笑)。

(安住紳一郎)新鮮でした? で、現場なんかにも行きますとね、当然アメリカのNBCっていうね、一番お金を出してる放送局なんかがもう、ものすごいその放送準備室みたいなところがプレハブよりももっと立派なものでできてるんですけども。どうですかね? まあ、その放送局団地みたいなのができてるんですよね。何個あるかな? まあ、そこに店子がいっぱい入ってるみたいなことなんですけれども。まあ、分譲地が200区画ぐらいあるのかな? 200区画ぐらいある中の一番お金を出しているNBCっていうアメリカの放送局が200個の分譲地の150は使ってますからね。

(中澤有美子)わあ! へー!

(安住紳一郎)で、その中の15区画ぐらいを私たちのNHK様が持ってるわけだね。で、その200区画の1区画の中に民放が……5局、入ってます! はあ……狭い! 狭うございます!

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ! キチキチですか?

(安住紳一郎)キチキチですねー。まあ、誤解があるように伝えると、またいろいろと問題ありますけれども。国立競技場前特設スタジオというところがありまして。感染拡大を抑えるために私は国立競技場にすら入ってはおりませんけれども。国立競技場の前。国立競技場が見える前の小さな区画で仕事をしておりますけれども。私が使っているトイレはテレ東さんとフジテレビさんと共同です。しかも、個室がひとつしかありません。男女共同でね、やっておりますよ! 私がだから主にやっている仕事はトイレの順番待ちです!

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ! ええっ? 朝8時から深夜2時まで出ずっぱりのあのお仕事を?

主な仕事はトイレの順番待ち

(安住紳一郎)極力、トイレの回数を減らすこと。それからトイレの順番を効率よく回すこと。あとは次の人のために匂いを残さないこと。21世紀の話ですけれどもね。

(中澤有美子)信じられない!

(安住紳一郎)信じられないことはありませんよ。どうですか? オリンピック賛成派、反対派の皆さんにも喜んで聞いていただけると嬉しいです。難しいところですね。

(中澤有美子)そうか。それを胸に、勇姿をまた拝見したいと思います。

(安住紳一郎)いいんですよ。あとはまた、NHKさんがやっぱりすごいですね。NHKさんは当然、全国にね、放送局をたくさん……30いくつ、持ってますもんね。なので全国からスポーツディレクターが集結して。だから1人のディレクターあたりのVTR制作とか、どれぐらいになるんだろう? ものすごいたくさんの人が分業してブワーッと作っているから。民放はね、やっぱりどうしても人数少ないですから。と、考えるとね、いろいろありますけれども。元々はね、お金を税金で負担しないように、そうやって商業ベースで。

税金を投入することなく、スポンサーの人たちからのお金でオリンピックが運営できたらいいなという趣旨で、ロサンゼルスオリンピックですか。1984年。なので税金を投入することなくできたということで成功ってなったんですけれども。そこから今度はちょっとね、歯止めが利かなくなったということですね。ロサンゼルスオリンピックの前の前の大会が税金を投入して大赤字になっちゃったんで。開催都市に負担にならないようにスポンサーの人にお金を出してもらって運営できたらいいですねって言って始まったのが今は少し、批判の的にされている商業主義オリンピックっていう風になっちゃったということですね。

(中澤有美子)なるほど。

(安住紳一郎)あとは放送していると気づくことは当然、NHKさんがね、お金の大半を出してますんで。NHK総合テレビでずっとやってますよね。で、さらにはサブチャンネル開きますもんね。サブチャンネルの使い方、皆さんわかります? これは地上デジタルの恩恵ですよね。ひとつのチャンネルで3つ、チャンネル開くことできるんですよね。ただ、画質が落ちるんですよね。昔のデジタルになる前のやつですからね。民放はね、スポンサーの関係がありますので、なかなかサブチャンネルを開けないんですけれども。NHKが総合でやってまして。さらには教育テレビ、今はEテレ。さらにはBSと三波でやっていますもんね。で、民放がたまにチラチラってやってますけれども。

ここで今大会から変わったのが「オールデイシステム」ですね。お気づきの方、いらっしゃいますか? なんとなく、NHKとEテレとBSでやっていて。その他に民放が1局、1日通してやっているな。さらにもう1局が種目別でポコポコボコボコやってるなっていう感じになってるんですけどね。これまでは民放は種目別にかならずポコポコポコポコやっていたんですが、今年から1日担当みたいな。ぶっ通しでどこかの局がやってるっていう。これはオールデイシステムって呼ばれるものなんですけど。

(中澤有美子)そうですね。今回からですよね。

(安住紳一郎)そうなんですよ。なので17日間あって。開会式と閉会式を除くとだいたい競技やってる日が15日あって。なので15日を民放5局で割って、それぞれ3日ずつくらいオールデイ。丸1日、朝8時から夜……次の日の朝2時まで。「26時」って言ったりしますけども。朝8時から26時までオリンピックをぶっ通し放送していいよっていう手形を出してもらってるんですよね。で、15日間を5局で割って3日ずつぐらいっていうことですね。それを抽選と希望で出して、何日目をやるかっていうのを決めたんですけどで。

で、日本テレビさんは4日かな? 大会5日目、10日目、14日目、16日目っていう日を取ったりとかして。そうするとその日は日本テレビさんが丸1日、朝8時から次の日の朝2時まで通しでやってる。しかもその時は自分の担当でもらってる種目のほかに自由にやっていいということで。他の放送局、NHKが取ってないものだと競技をオンエアーしていいってことなんですよね。なので予定通りではない番組編成になったりするんですけれども。ただ、ここで問題なのは朝8時から26時までですもんね。これをTBSは何を間違ったのか、大会の5日目、8日目、9日目って取っちゃったんですね。

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ!

(安住紳一郎)オールデイをね。もう一度、言いますよ? 朝8時から26時までですからね? それを6、8、9と取っちゃった。

(中澤有美子)近い! 密、密!(笑)。

(安住紳一郎)もう8と9は繋がってるから。ほぼ。だよね?

(中澤有美子)繋がっているよ(笑)。

(安住紳一郎)そうなんですよ。で、土曜日の朝はまた『東京ビクトリー』っていうオリンピックの紹介番組をやってるから。ほぼ8と9が繋がっているんですよ。だからここだけね、ツーデイシステムになっちゃっている。

(中澤有美子)本当だ! オールデイのツーデイかー。

オールデイのツーデイ

(安住紳一郎)オールデイツーデイになっちゃって。で、6日目も比較的近いから。もうちょっとね、15日間でばらけて取るとスタッフの疲労も少なく抑えられたんだけど。6、8、9って取っちゃったから。これは別に何を言おうとしてるかっていうことではないんですけども。

(中澤有美子)ねえ。だから安住さんも午前2時のごあいさつで「では、失礼します。それではまた、今日」ってちっちゃい声で言ってた(笑)。

(安住紳一郎)そうなんですよ(笑)。26時になると「また明日」とか「では次回」ではなくて。「もうすぐ、まもなく」って。繋がっちゃう。終電の後は始電みたいになっちゃっている。深夜2時に終電が終わったら、8時から始電が始まっちゃう。で、終電と始電の運転士が一緒になっちゃう。うん。やらせていただいております。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)一生懸命、やらせていただいております。

(中澤有美子)トイレひとつで(笑)。

(安住紳一郎)「おかしいな」と思ったんだけどね。これはね、そう。もう少しね。うーん。まあ、いろいろと思惑があってね。6日目、8日目、9日目ということだったんですけどもね。

(中澤有美子)もう本当に超人的なことで。皆さんのお疲れいかばかりと思います。

(安住紳一郎)スケジュール通り、一生懸命やらせていただいております!

(中澤有美子)本当に。本当に、本当に(笑)。

(安住紳一郎)ちょっとね。そういう放送局の裏話も面白いですよね。

(中澤有美子)そうですね。「また出てる! また出てる! まだ出てる! もう出てる!」って(笑)。

(安住紳一郎)もう私の髪の毛がね、ちょっとね、もう脂っぽくなっちゃって。最終的にはほぼほぼカツラかぶってる人が出てきたかと思って。びっくりしました。

(中澤有美子)そんなこと、ないですよ(笑)。分け目を今回、自由自在に変えていらっしゃるなという印象でしたね。

(安住紳一郎)そうですね。ちょっとね、長丁場になってくると気分転換も必要になってくるんでね。ちょっと髪の毛を右分けにしたり、左分けにしたりして。いろいろ工夫してやっておりますけども。なかなかね、オリンピックはもう競技が見られれば……ということなので。特別その真ん中のね、つなぎのスタジオはほぼいらないと個人的には思ってるんですけども。なかなか次の種目が始まらなかったりしますんでね、必要なんですよね。

(中澤有美子)そうですよね。

(安住紳一郎)さて。大会が17日で今日で10日目ということですね。8月8日、来週の日曜日までオリンピックが続くということですね。ラジオでも放送していますので、ぜひお聞きいただきたいと思います。

<書き起こしおわり>

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