(町山智浩)つまり、後見人が付くことで、彼女はやっと息子たちに面会することができるようになるからです。だから、これは一種の人質ですよね。息子に会いたいがために、自分に絶対的に不利なその成年後見人制度を承認してしまうという事態になったんですね。で、その後見人制度が成立した後、すぐにブリトニー・スピアーズは新しいCDを出して。ツアーをやって……っていうことで、もう徹底に働かされるんですよ。
(赤江珠緒)ええーっ!
(町山智浩)なぜならば、この成年後見人制度はそのツアーとかレコードとかの契約を父親がするからです。
(赤江珠緒)だってね、さっき仰ったように去年だけで60億円、稼いでいるんですもんね。それだけ働いているってことですもんね?
後見人となった父親に徹底的に働かされる
(町山智浩)12年間、毎年50億とか稼ぎ続けたんですよ。で、自分のところにはほとんど一銭も入らない状態なんですよ。
(赤江珠緒)むちゃくちゃだな。
(町山智浩)めちゃくちゃ。でね、特に彼女がきつかったのは、ラスベガスで毎日公演をするっていうので1年間、働いたことがあるんですよ。
(赤江珠緒)毎日?
(町山智浩)毎日ですよ。毎日、ライブ。それは週にギャラが1億円だったそうです。毎週1億円。でも、それも父親が勝手に契約したものなんですよ。で、こういうひどい状況が続いていて。でも、今まで彼女は黙ってたんですけど。なぜ、今回裁判に訴えたか?っていうと、今回彼女が法廷で言ったのは「結婚したいからだ」っていうことなんですよ。今の状況だと、彼女は父親の許しがないと、結婚ができないんですよ。
(赤江珠緒)それもその後見人の許可がいるんですか?
(町山智浩)いるんですよ。それだけじゃなくて、その彼氏とデートすることもできないらしいんですけど。彼女が裁判所に訴えたのは「私は結婚をして彼の子供を産みたい」って言ったんですね。27歳のイラン系のフィットネス・トレーナーの人と付き合っているんですけども。それで彼女は裁判所で「私は彼と結婚しても子供が産めない状態なんです。なぜなら、父親によって子宮内避妊具を装着させられているからです」って言ったんですよ。
(赤江珠緒)ええっ?
(町山智浩)だから「子供を勝手に産まないように」っていうことで子宮内避妊器具(IUD)を装着されてしまっていて。父親の許しなくそれを外すことができないんです。
(赤江珠緒)ええっ? なにもかも、そんなに支配しているの?
(町山智浩)これはひどいです。これ、完全な人権侵害ですよね? で、彼女は法廷で「私がされているのは人身売買とかで売られていった性的な奴隷の人が受けている虐待と全く変わらない。だから父親を訴えたい」という風に言ったので、今大変な問題になっているんですよ。
(赤江珠緒)そうですね。これが事実だとしたら、本当にひどいことですね。
(町山智浩)これはちょっとね、全然知らなかったことなので、みんなびっくりしてるんですけども。で、いろんな人たちが支援を表明していて。その中ですごく強く言っていたのはドリュー・バリモアって女優さんなんですね。彼女は『E・T』で1982年に……覚えてます? 『E・T』の子役として世界的スターになってね。
(山里亮太)あの悲鳴がすごくよかったっていう。
(町山智浩)そうそうそう。でも実際はもう母親にこき使われていて。9歳ぐらいからアルコール中毒になっていたんですね。
(赤江珠緒)ええっ!
(町山智浩)そう。で、12歳の時に精神病院に入院するんですね。1年半も。という目にあって。それで、そこから出てきて14歳から15歳にかけて、母親を訴えて。親権解除の請求をしたんですよ。普通、そのぐらいだと未成年だから親権は親にあるわけですけど。でも、彼女は本当に自分が自立した1人の人間なんだっていうことを法廷で証明して。自分には判断能力もあるということで母親の親権を解除したんですね。そういう戦いをしたドリュー・バリモアがブリトニー・スピアーズ……39歳ですけど。彼女に対して支援を表明していて。で、これは大変な芸能界を超えた事件になってきていますね。
(赤江珠緒)でもこれ、裁判になったら絶対、ブリトニー・スピアーズは勝てるでしょう?
(町山智浩)勝てるかどうかは……判例、前例がないらしいんですよ。こういった解除の。
(赤江珠緒)そもそも、アルコール中毒で入院してるような人が成年後見人になるっていうのは……。
(町山智浩)なれないですよ。だいたい、この父親はマネージメントをやっていますけども。この人ってその人生の中で商売で1回も成功したことがない人なんですよ。そういうので、最悪なんですよ。だからまあ、父親は負けるんじゃないかと言われてるんですけども。ただ、ここでその父親が無理やりな後見人制度を取ってしまった理由っていうのは、マスコミが「ブリトニーはおかしい。お騒がせセレブだ」とか言って面白がっていたことをその父親が利用したんですよね。
(赤江珠緒)そうね。もうイメージを作り上げちゃってますもんね。最初からね。
マスコミが作り上げたイメージを父親が利用した
(町山智浩)そう。だからこれ、僕も反省していて。僕もその頃から面白がって。「ブリトニーはおかしい」ってことをよく言ったり書いたりしていたんで。それが利用されたんだなと思ってるんですよ。
(赤江珠緒)なるほど。そうか。
(町山智浩)別に彼女は精神病じゃなかったんですよ。ただマスコミに怒っていただけだったんですよ。
(赤江珠緒)そうなのか。
(町山智浩)だから本当にね、僕もすごく今、罪の意識を感じている状況なんですよね。だからね、やっぱりマスコミとかみんなであおって「プッツン女優」とか言ったりするのは本当に危険なんで。考えた方がいいと思いますね。
(赤江珠緒)そうですね。
(山里亮太)その裏側にどういうことがあるか。ちゃんと両方の側面から見て答えを出していかないといけないことなんですね。
(赤江珠緒)やっぱりちゃんと事情を知っていないと言えないことってあるもんね。
(町山智浩)ということで、非常に衝撃的なのでお話をさせていただきました。
(赤江珠緒)うん。ちょっと衝撃だったね。ブリトニー・スピアーズって我々も持っているそのすごい華やかなイメージと、まさかこんな苦労をしてる人だったとは……っていうね。
(町山智浩)そうなんですね。
(山里亮太)裁判、いつ結局がつくんだろう?
(町山智浩)まだ始まったばかりなんでね。
(山里亮太)じゃあ、まだしばらくかかるでしょうね。
(赤江珠緒)今日はアメリカで話題になっているブリトニー・スピアーズの成年後見制度解除裁判について町山さんに解説してもらいました。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)どもでした。
<書き起こしおわり>