町山智浩さんが2024年4月2日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『パスト ライブス/再会』について、話していました。
(石山蓮華)そして町山さん、今日は?
(町山智浩)今日は2本、今週公開される映画を紹介するんですが。1本は『パスト ライブス/再会』という映画なんですね。
(曲が流れる)
(町山智浩)この音楽で何となく雰囲気はわかると思うんですけど。ラブストーリーです。で、これは監督が韓国系のカナダ人の女性監督で、セリーヌ・ソンさんっていう人ですね。で、この映画はアカデミー賞でもいくつかの賞にノミネートされていた映画で。これ、セリーヌ・ソンさん自身の体験をもとにした映画なんですが。24年前に彼女は韓国で12歳の少女だったんですけれども。その時に幼なじみの、同い年の12歳の男といつも仲良くて。ヘソンという男の子なんですが、「彼と結婚すると思う」とか言ってるんですね。
(石山蓮華)かわいい!
(町山智浩)かわいいんですけど。ただ、お父さんとお母さんが韓国を出てカナダに移住しようということで、引っ越すことになっちゃうんですね。で、2度とヘソンくんに会えないのかなと思ってると、今はインターネットがありますのでね。
(石山蓮華)ああ、そうですよね。
(町山智浩)それで12年ぐらいしてから、お互いにネットでお互いを見つけてですね。それで、連絡を取り合うんですけれども。その時は会えなくて。そこからですね、この彼女、主人公はノーラという女性なんですが。彼女は、結婚しちゃうんですよ。
(でか美ちゃん)まあ、それぞれの人生もあるし。
(町山智浩)そうなんですね。で、彼女はシナリオライターを目指していて。劇作家を目指していて。で、そういうアートサークル。アートの仲間たちの間で、なんていうかね、激しい恋愛をしてとか、そういうんじゃなくて。なんとなく結婚しちゃうんですよ。このノーラさんは。「なんとなく気が合うし、いつもいると楽だし……」みたいな。で、いつもいるうちになんとなく、アーサーという白人の男性と結婚してしまうんですけれども。でも、ものすごい恋愛感情があるわけじゃないんですよ。
(石山蓮華)まあね、そういうこともありますもんね。
(町山智浩)ところがその間、ヘソンくんの方はですね、韓国ですごくエリートとして……非常にイケメンのエリートに成長してるわけですよ。
(でか美ちゃん)ちょっと危うい香りがしてきたぞ?
(町山智浩)で、しかもノーラさんのことをずっと思ってるんですね。何十年も。
(石山蓮華)そんなに長くですか!?
(町山智浩)24年ですね。
(でか美ちゃん)と思いつつも、なんかあるでしょう?って思っちゃいますよね。
(石山蓮華)12歳の時の、ねえ。
(町山智浩)で、あるんですよ。いろんな女の子と付き合おうとするんですけれども。24年間、やっぱり忘れられなくて、幼なじみのノーラさんのことを。で、なんとニューヨークに会いに行くっていう話なんです。
(石山蓮華)うわー、ロマンティック!
(町山智浩)で、これは本当にその監督のセリーヌ・ソンさんにあったことらしいんですね。
(でか美ちゃん)これが……めちゃめちゃこんなの、ドラマとか漫画とかでしかないと思ったら。そうだ。最初に言ってましたね。
(町山智浩)経験談なんですよ。で、これね、『パスト ライブス』っていうタイトルはね、「前世」っていう意味ですね、で、韓国とか日本ではよく、「なんでこんなにこの人のこと、本当に会った時から好きなんだろう?」って思った時に「前世で一緒だったんじゃないか」って思うじゃないですか。
(でか美ちゃん)はいはい。ずっと繋がりがあった、縁があった気がするみたいなね。
前世や輪廻という考え方
(町山智浩)そうそうそう。前世とか輪廻転生って、仏教の考え方なんで。あんまりアメリカやヨーロッパには、ないんですね。だから中国、日本、韓国に独特の考え方なんですけども。最初はこの彼、ヘソンくんがその前世から繋がっている運命の相手だと思ってるんですけれども。でも、そういうのを忘れて、なんとなく生活の中で日常的に一緒にいる男性。白人男性のアーサーくんと結婚してしまって。そこに運命の人が帰ってくるわけですよ。で、「どうしよう?って」でも、この旦那のアーサーくんはすごくいい人なんですよ。もっさいんだけど。ものすごくセクシーな魅力はないんだけれども、とにかく優しくて。で、この事情を話しても、普通なら「なんだよ! そんな男と会うのか!」みたいな話になるじゃないですか。でも、そこまで怒らなくて。ただ寂しく「負けちゃうかもな……」みたいに思ってるんですよね。
(石山蓮華)なんていいやつ!
(でか美ちゃん)そっちの方がよくない?って私はもう、あらすじだけで揺れ動いている。
(町山智浩)で、彼女はそこで揺れ動くんですけども。で、彼の方は「もし、うちのカミさんが彼の方が運命の相手だと言うのだったら、俺は負けるから身を引くよ」ぐらいの優しい男なんですよ。その旦那さんは。
(でか美ちゃん)でも、どこにでもいるな。ラブストーリーには、そういう人は。
(町山智浩)という話なんですけども。
(石山蓮華)幸せになってほしい!
(町山智浩)でも、どっちなら幸せになれるのか?ってことなんですよね。どこに行ったらいいのか?っていう映画なんですけども。まあ本当に、ハリウッド的なラブコメみたいな感じの話はなくて。すごくドラマチックに盛り上がるっていうよりは、本当にやっぱり韓国人らしい、アジア人らしい、抑えた恋愛映画ではあるんですよね。そのへんは逆に日本の人にはね、わかりやすい感じだと思いますよ。
(でか美ちゃん)たしかに。人気が出そうですね日本でもね。
(町山智浩)と思います。
アジア人らしい、抑えた恋愛映画
(石山蓮華)見たいですね。『パスト ライブス/再会』、今週4月5日(金)公開という。デートとかにも、いいかもしれませんね。
(でか美ちゃん)でもデートで見たらさ、ねえ。お互いに「運命の人がいたら、どうしよう?」ってちょっとざわつくんじゃないですか?(笑)。
(石山蓮華)いや、でもざわついてこそ、楽しいんじゃないですか? そんなことはないかな?
(でか美ちゃん)じゃあ、付き合う直前ぐらいで見ると一番盛り上がるかもしれないですね(笑)。
(町山智浩)そうですね(笑)。でも、その運命的なものをでか美さんは、感じましたか?
(でか美ちゃん)ああ、夫のサツマカワRPGにですか?
(町山智浩)どっちでした? 「この人といると楽」っていうのか、「この人が!」っていうのか。どっちでした?
(でか美ちゃん)でも「楽」っていうのもあるし。なんか仕事に対するスタンスが好きなんで。初めて見た時は尊敬はしてましたね。でもそんな、ロマンティックな……「ビビビッ! 私、絶対にこの人と結婚するわ!」とかは全くなかったです(笑)。
(町山智浩)ああ、そうなんですか。そういう人にはまだ会ってない?
(でか美ちゃん)まだ会ってないのか……やばくな。そうなると今後、登場するのか?っていう話が(笑)。
(町山智浩)それは困るよね(笑)。
(石山蓮華)町山さんはなにを引き出そうとしてるんですか?(笑)。
(町山智浩)いやいや、いやこれだから、そういう困る話なんですよ。すごく。だからデートでは見れないの。
(石山蓮華)町山さんは今の奥様とはビビビだったんですか?
(町山智浩)うちね、僕が22の時に会っていて。彼女は19から20歳になるぐらいの頃だったんですよ。でもね、それは会った瞬間にもう「ああ、結婚するな」って思いましたね。お互いに。
(石山蓮華)ここにいた!
(でか美ちゃん)ちょっと!(拍手)。拍手しちゃった(笑)。
(石山蓮華)運命の人と、会ってる!(笑)。
(町山智浩)でもね、その時は一切、話してないんですよ。2人とも。顔を見ただけなんですよ。で、その後もね、話してないんですよ。でも会った時に「ああ、結婚するんだ」って。その、衝撃じゃなくて。「この人と結婚するんだな」って。普通に思うみたいな感じだったんですね。
(でか美ちゃん)かっけー!
(町山智浩)40年、一緒にいますけども。
(でか美ちゃん)うわっ、かっこいい!
(石山蓮華)ここに本当の運命の人が……意外と近くにあるんですね。
(でか美ちゃん)めちゃめちゃテンションが上がってきた!
(町山智浩)だからすごい不思議な感じですよ。だからお互いに恋愛をしてないの。「ああ、この人と結婚するんだな」って。その段階でもう、終わっちゃった感じなんですよね。だから全然、盛り上がらないの。
(でか美ちゃん)でも、素敵ですね。「本当にあるんだね」って思うね。
(町山智浩)でも、ねえ。逆に盛り上がらないんですよ(笑)。
(石山蓮華)でも40年、仲良く一緒にい続けられるっていう。それが一番、素敵だと思いますよ。
(でか美ちゃん)私、婚姻届出した日が2月29日なんで。「とりあえず次の2月29日まで頑張ろう」ってまず、思ってますからね(笑)。4年に1回しかない日だから(笑)。
(町山智浩)4年に1回しかない結婚記念日(笑)。
(でか美ちゃん)とりあえず、次まで頑張ろうっていう気持ちでいますけども。
(石山蓮華)運命とか、意外と近いところにあるのかもしれませんね。
(町山智浩)まあ、そういう、いろいろ考えさせられるる恋愛映画が『パスト ライブス/再会』なんですけど。
『パスト ライブス/再会』
<書き起こしおわり>