町山智浩 『カメラを止めるな!』を語る

町山智浩 『カメラを止めるな!』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で上田慎一郎監督の映画『カメラを止めるな!』を紹介していました。

(町山智浩)で、もう1本もホラー映画。『カメラを止めるな!』っていうホラー映画で、ホラー映画というか、これは本当に新人の人で上田慎一郎さんという監督の映画なんですが。これ、『カメラを止めるな!』っていうタイトル通り1シーン1カットっていうか、カットがない。ずーっとひとつながりのホラー映画になっているんですよ。まあ、ゾンビ映画なんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、なんか廃工場で主人公たち4人ぐらいがゾンビに襲われるという形で始まるんですけども、まあ見始めたら「これはダメだな」って思ったんですよ。もうタイミングが悪いし、ゾンビの演技もひどいし。で、ワンカットでずっと撮っているから時々、間が空いちゃっているんですよ。

(赤江珠緒)あら、じゃあ駄作かしら?って。

(町山智浩)「これはもうダメかな?」って思ったら、とんでもなかった!

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)それが全部トリックだったんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)その「ダメだこりゃ」って思うところに全部意味があるんですよ。

(山里亮太)なぜ、そのダメなシーンが出来上がったか?

(山里亮太)そう! それがその後、解き明かされていくんですよ。

(赤江珠緒)ああ、面白そう!

「ダメだこりゃ」に全て意味がある

(町山智浩)これは面白かったですね! で、ゾンビ映画、ホラー映画だっていうことで、結構見に行かない人もいるかもしれませんが。そうじゃなくてこれは三谷幸喜さんの映画に近いんですよ。で、三谷幸喜さんよりも映画として面白い。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)三谷幸喜さんの映画よりも面白い三谷幸喜的映画ですよ。

(山里亮太)まあ伏線を回収していくっていうのが三谷幸喜さんの作品でありますけども。その伏線回収系のやつで?

(町山智浩)三谷幸喜を真似したら、三谷幸喜よりも面白くなってしまったという事故のような……もうすっごい面白かったですよ。それだけじゃなくて、映画を作る人たち、これは安物ホラー映画をテレビ向けに作るんですけども。まあ、いろいろと条件が非常に悪かったり、いちばん問題なのは俳優さんの事務所にダメを出されるっていうのがいちばんよくあるんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)たとえば、「ここのところでヌードになってほしい。必然性があるから」って言っても、「いや、うちはそんなことさせません!」って言うんですよ。まあ、それは守るためっていうよりかは高く売るためなんですよ。ヌードを。「そんなところで安くヌードは出さないよ」っていう。もっと吊り上げて、話題性があった方がいいっていうことで。で、もうそのシチュエーションがひとつダメになったりするんですよ。あとはまあ、残酷なシーンとか血だらけになるシーンがあると、「いや、ちょっとそれは……」みたいな感じでどんどんダメが出ていって、映画ってどんどん思ったものとは違うものになっていくんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)シナリオでその通りに行くことなんてほとんどないですよ。映画は。だからたとえば原作で主人公たちは同性愛だっていう時に同性愛のまま行ける映画は少なくて。どんどん変わってきちゃうんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、ラブシーンでも女の人が下着をつけたままセックスしたりするんですよ。「おかしいだろ、お前! ブラしたままセックスしねえだろ?」っていう……そんなの、相当急いでいる時だけだよ!

(赤江珠緒)フハハハハハッ! いや、そんな注釈はいらないですよ(笑)。

(町山智浩)あ、そうか(笑)。

(山里亮太)「では、相当急いでいるっていう設定にしましょう」って変えてくるかもしれない(笑)。

(町山智浩)そうそう。どう考えてもおかしいって。あと、寝ている時にメイクしていたりね。「寝ている時にメイクはしないから、せめて少しすっぴんにしてほしい」とか言うと、「うちの女優はすっぴんでは出しません」みたいなことがあって、どんどん話が崩れていくんですよ。だからそういうこととかが盛り込んであるんですよ。この映画『カメラを止めるな!』って。

(赤江珠緒)ははー!

(山里亮太)それ、面白いなー!

(町山智浩)面白いんですよ。しかもこれも父泣き映画なんですよ。

(赤江珠緒)えっ、これが?

(町山智浩)パパ泣き映画なんですよ。娘とパパの話なんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)ちょっとホラーとかからパパ泣き映画につながるの、多いですね。

(町山智浩)たぶん俺を狙っているんだと思います。

(赤江珠緒)アハハハハハッ!

(町山智浩)狙い撃ちされている気がします。

(赤江珠緒)ピンポイントで「町山さんに届け!」って(笑)。

(町山智浩)俺がそれを弱いと思って、そこを突いてきているんだと思います。

(山里亮太)ダメ親父がね、ひょんなことから頑張るっていう。

(町山智浩)だから(『ア・クワイエット・プレイス』の)エミリー・ブラントとかもハリウッドで「ここでパパ泣きなシチュエーションにしておくと、日本のバカな映画評論家が喜ぶから入れておきましょう」とか……そんなわけはねえよ!

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(赤江珠緒)アハハハハハッ!

(山里亮太)フフフ(笑)。もしそうだったら幸せじゃないですか。

(町山智浩)まあね、そういう映画がこの上田慎一郎監督の『カメラを止めるな!』。これはもうすぐ公開かな?

(赤江珠緒)そうですね。6月23日公開ということで。

(町山智浩)これね、海外でもものすごく評価されているんですよ。最初、本当にどうなるかと思いましたよ。「ひどい映画だな。この間、なに?」みたいな。

(赤江珠緒)でもたしかにイタリアでも上映後、5分間に渡るスタンディングオベーションですって。

(町山智浩)そうなんです。最後は映画を作る人々への賛歌であり、父と娘の愛情に対する賛歌でありっていう。「えっ、ここで感動。泣かせるの?」っていう映画になっていますね。

(山里亮太)はー! 映画愛を語りたい感じの時って、なぜかゾンビを取り上げること多くないですか?

(町山智浩)そうなんです。だからゾンビ好きっていうのは映画バカが多いっていうことなんですよ。人から理解されないというところだと思います。はい。

(赤江珠緒)なるほど、なるほど。そうかー。

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