町山智浩 恩師・越智道雄明治大学名誉教授を追悼する

町山智浩 恩師・越智道雄明治大学名誉教授を追悼する たまむすび

町山智浩さんが2021年6月1日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で恩師である越智道雄明治大学名誉教授を追悼していました。

(町山智浩)ちょっと個人的な話をさせていただくんですけども。僕が編集者としてというか、アメリカの研究を今まで、ずっとしてるじゃないですか。アメリカまでわざわざ来て。そのきっかけになった師匠がいるんですよ。僕は師匠に非常に恵まれた人間だと思ってるんですけども。みうらじゅんさんとかね、いっぱいいるんですが。その中で、アメリカについてのお師匠さまが越智道雄教授という明治大学の名誉教授なんですが。その越智道雄先生が先日、亡くなったんですね。84歳でしたけれども。

で、僕は20代の時に「アメリカ映画っていうのは一体、誰が作ってるのか?」っていうことを調べる本を作ったんですよ。つまり、ハリウッドと言われてますけど、じゃあハリウッドっていうのはどういう人たちがいるのか。そうすると、いわゆるイギリス系の人とかって、ほとんどハリウッドにはいないんですね。ほとんどはユダヤ系だったり、ロシア系だったり……たとえば西部劇の音楽って、あれを作ってる人はほとんどロシア人なんですよ。

(赤江珠緒)そうか……。

(町山智浩)それはほとんど知られてないですよね?

(山里亮太)はい。

(町山智浩)西部劇の音楽って「ウエスタン調の音楽」っていうから、みんな、そういう感じだと思っているんだけども、ほとんどがロシア民謡を元にしてるんですよ。音楽をロシア人が作ってきたから。そういうことを調べる本を作って。その時に、日本で一番詳しかったのがその明治大学の教授だった越智道雄先生なんですね。で、それから本当にもうずっと師事し続けて。最終的には『オバマ・ショック』というオバマ大統領はアメリカの歴史において、どういう意味なのか?っていう本を共著で出したりとか。

越智道雄先生との共著

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)あとね、『ザ・フィフティーズ』という文庫があって。ちくま文庫から全3巻、出てるんですけど。これ、大著で。ものすごい大著なんですけど。アメリカのその現在を確定した1950年代に一体何があったのか?っていうことを徹底的に書いたノンフィクションなんですね。これ、すごい内容なんです。これ、越智道雄先生と僕が毎回、その3巻の1巻ごとの巻末で30ページ以上、対談をして解説しているんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!

(町山智浩)だから合計100ページぐらいの解説なんですけど。

(赤江珠緒)すごいですね。それだけで1冊になる対談がついているんですね。

(町山智浩)そうなんです。そういうことをやらせていただいて。僕はアメリカに住もうと思ったのは、やっぱり越智先生の薫陶と受けたからなんですね。で、もう本当にいくら感謝しても感謝しきれないので。もうここで、ちゃんと感謝をさせていただこうと思いまして。

(赤江珠緒)そうですね。それだけ人生に影響を及ぼしてくださった、まさに恩師だったんですね。

(町山智浩)そうです。本当に恩師でしたね。あと、みうらじゅんさんもそうですけどね。

(赤江珠緒)みうらさん(笑)。

(山里亮太)師匠の幅が広いですね(笑)。

師匠・みうらじゅんの教え

(町山智浩)いろんな師匠がいるんですけども(笑)。みうらさんが僕に教えてくれたのは「絶対に『仕事がない』って愚痴るな」って言われたんですよ。「誰かがやっている仕事をやろうとしてもダメなんだ。誰もやらないことをやれ。その場合は仕事が絶対ないから。求められてないわけだから」って。そういう話をして。みうらさんとか、本当に……。

(赤江珠緒)みうらさんそのものですね。なんかね。

(町山智浩)そうそう。仏像を見に行くとかね。誰もそれを仕事にしてなかったんですけども。

(山里亮太)世の中の奇才とかを取り上げたり。

(町山智浩)そう。だから「誰かが何かをやってるからって、そこを仕事にしようとするな」って言われてね。それがすごかったですね。だからいろいろと師匠に恵まれましたよ。僕は本当に人生でね。

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<書き起こしおわり>

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