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高橋芳朗 BTS『Butter』を語る

高橋芳朗 BTS『Butter』を語る アフター6ジャンクション
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(高橋芳朗)で、実際にプロデューサークレジットを確認してちょっと驚いたのは、ロン・ペリーっていう人の名前があったんですよ。ロン・ペリーって2018年にコロンビアレコードの会長兼最高経営責任者、CEOに就任したアメリカ音楽業界の超重要人物なんですね。で、このロン・ペリーがその会長兼CEOに任命されるきっかけになった大きな仕事があるんですけど。それがザ・ウイークエンドの2016年のアルバム『STARBOY』なんですね。ロン・ペリー、このアルバムでA&Rを務めているんです。ちょっと曲をかけてもらえますかね。

(高橋芳朗)これはウィークエンドとダフト・パンクがコラボをした『I Feel It Coming』です。この『STARBOY』でウィークエンドとダフト・パンクのコラボを実現させるのに尽力したのがロン・ペリーだと言われてるんですね。

(宇多丸)だからウィークエンドのスーパースター化に完全に関与したというか。

(高橋芳朗)そうですね。ちなみに全米チャートで19週連続1位、最長ナンバーワン記録を樹立したーリル・ナズ・Xの2019年の大ヒット曲『Old Town Road』。これもロン・ペリーのA&R仕事なんですね。

(宇多丸)ああ、そうなんだ!

(日比麻音子)すごい人だ。

(高橋芳朗)すごい人なんです。だから『Old Town Road』のリミックスにBTSのRMを起用したのも、『Old Town Road』のグラミー賞授賞式のパフォーマンスでリル・ナズ・XとBTSのコラボが実現したのも、このロン・ペリーのアイデアなんじゃないかな?っていう。

(宇多丸)なるほどね。

(高橋芳朗)こういう流れがあるんじゃないかなと思います。だから、BTSの『Butter』って、そういうロン・ペリーの肝いりのプロジェクトっていうことですよね。

(宇多丸)だから、やっぱりその次にどういう手を打つべきかとか、どういう組み合わせ……まさに組み合わせを提示する天才っていうか。だからそういう意味では1枚目のカード『Dynamite』で次の2枚目。俺たちがさっき狂喜したこのバランス感覚みたいなところがやっぱりロン・ペリーさんの手腕なのかもしれないですね。

(高橋芳朗)で、だから彼がプロデューサー、ソングライターとして実際に何をやっていたのかわかんないですし、それはこれから明らかにされていくと思うんですけど。まあプロジェクトの最高責任者としてのクレジットなのかなっていう感じはしますね。

(宇多丸)だからBTSの米国進出に当たって、それこそリル・ナズ・Xとの共演とか、グラミー賞での登場の仕方とか、その周到な計画、段取りみたいなところの背後にロン・ペリーありということなのかもしれないですね。

(高橋芳朗)そうですね。で、やっぱりロン・ペリーの名前が入ってるっていうのは業界的にも大きなインパクトがあると思うんですよ。

(宇多丸)もうだって超大物が激押し、後ろ盾っていう。

(高橋芳朗)で、『Butter』の記者会見でメンバーがもうすでにグラミー賞に対する意欲をのぞかせているんですけど。『Butter』ではそのCEOのロン・ペリーが直々に陣頭指揮を取って、それを後押しする体制を取ってきたのかなという印象もありますかね。

(宇多丸)なるほど。着々と。本当に。

(日比麻音子)『Dynamite』で本当に爆発したBTSがこの『Butter』で地位を確立しにきたと言っても過言ではないってことですね?

(高橋芳朗)そうですね。もう本当に勝負に来たっていう感じなのかもしれないですね。じゃあ、ちょっとこれまで話したもろもろのその音楽的背景だったトピックを踏まえて、改めて聞いてみてください。BTSで『Butter』です。

BTS『Butter』


(高橋芳朗)はい。BTSで『Butter』を聞いていただいております。

(宇多丸)Aメロのさ、主にトラックの話をしてきたけども。歌の感じはちょっとマイケル・ジャクソンみっていうか。それもある感じですよね。

(高橋芳朗)そうですね。ちょっと歌詞についても簡単に触れておくと、『Dynamite』は割とその明快さを重視したような印象があったんですけど。それに比べてもっとのBTSの活動だったり個性だったり魅力だったりに即した内容になってるなと思ったんですね。で、冒頭の「Smooth like butter Like a criminal undercover」っていうフレーズがあるんですけども。これはまさに宇多丸さんが言ったようにマイケル・ジャクソンの『Smooth Criminal』のリファレンスだと思いますし。

(高橋芳朗)あと、セカンドバースに「Don’t need no Usher To remind me you got it bad」っていうフレーズがあって。「案内役なんていらない 君が僕に夢中だってことを忘れるわけがないだろう」みたいな意味だと思うんですけども。このワードプレイですよね。R&Bシンガーのアッシャーの『U Remind Me』と『U Got It Bad』というヒット曲があることにちなんでいるんですけども。だから、マイケル・ジャクソンにしてもアッシャーにしても、メンバーが影響を受けたアーティストの引用が挟み込まれてるっていう。あと、アーミーとの絆を確認するようなフレーズも織り込まれてたりするし。全体的にそのアーミーに向けてのラブレター的な要素もすごい強い歌詞だなって印象はあると思います。

(日比麻音子)ミュージックビデオでもアーミーを作ったりとか。

(高橋芳朗)そうですね。人文字アーミーをやっていましたね。あと、もうひとつ付け加えておくと「『Butter』の歌詞については特に深いメッセージはない」ってメンバーは明言しているんですけど。リリース後の動画配信でRMが今回のコンセプトカラーが黄色であることに関して「それは僕たちがアジア人だから。黄色人種だから」とコメントしたんですね。で、それを受けて「『Butter』の黄色には今、アメリカで大きな社会問題になっているアジア人に対するヘイトクライムへの抗議のメッセージが込められてるじゃないか?」みたいな説が浮上してきているんですね。で、実際にBTSは3月30日にグループのTwitterの公式アカウントを通じて「#StopAsianHate」に賛同する声明を発表しているんですね。

(高橋芳朗)だからまあ、そういう説が出てくるのも自然な流れだなとも思えるし。あと、個人的にはアメリカにおけるアジアンパワーとイエローっていうことでは、オールアジア系キャストのハリウッド映画で『Crazy Rich Asians(邦題:クレイジー・リッチ!)』。2018年の作品ですが。あの映画でコールドプレイの『Yellow』のエピソードがあるんですけど。今、キャサリン・ホーによるカバーバージョンをちょっと後ろでかけていただきたいんですが。

(高橋芳朗)アジア人に対する蔑称でネガティブなニュアンスがある「イエロー」をその美しい言葉として歌ったコールドプレイの『Yellow』に監督が感銘を受けて「映画の主題歌として『Yellow』を使いたい」とコールドプレイに直訴したというエピソードがあって。それをちょっと思い出したりもしたんですけど。この『Butter』のイエローという色にそのヘイトクライムに反対する意図が含まれてるかどうかはわからないですけども。

(宇多丸)でも、反対とまでは行かなくても、「Yellow is beautiful」っていうか。高らかに歌うっていうようなところぐらいはね。イメージカラーとして黄色ってすごい打ち出しているし。実際に。まあ、ある意味そうやって言ってるんだからさ。

(高橋芳朗)そのへんのニュアンスはあるかなと思うんですけど。で、ローリング・ストーンのインタビューのRMのコメントにちょっとBTSのスタンスが示されているように思えたので、紹介したいんですけど。このように話しています。「私たちの考え方は私たちが行う全てのこと。そして私たちの存在自体が外国人嫌悪のようなネガティブな問題を撤廃するという望みに貢献することです。マイノリティーの人々が自分たちの存在からエネルギーや力を得ることは私たちの願いでもあります。たしかに外国人嫌悪は存在しますが、寛大に受け入れてくる人たちも大勢います。私たちがアメリカで成功を収めたことは、それだけでとても意味のあることなんです」って言ってるんですね。

要はBTSはアメリカで活躍して、アメリカの社会にアジア人である自分たちの存在や文化が浸透していけば……それこそ、バターのように溶け込んでいけば、それがやがて差別撤廃だったり、異人種間の理解につながっていくだろうっていうことだと思うんですけどね。

(宇多丸)はい。だからBlack Lives Matter的な、アメリカ系アメリカ人の人が受けている差別とはまた違う構造のアジア人差別って昔からめちゃくちゃあるし。軽んじられるし。でも、その中で割とアジア人はおとなしく社会に適合するっていうか。そういう方向でやってきたけど。それをいいことに……というかさ。今回のヘイトクライムとかもさ。なので、それに対してやっぱりアジア人アーティストでこれだけの立場に来ているBTSが、やっぱりその存在として象徴的な曲を出すっていうのは……本人たちとしてはだからすごく、そのオープンさも含めてね。アンチ・ヘイトクライムっていうところに限定しない、その「Yellow is beautiful」。「Black is beautiful」のようなメッセージ、感じを込めているのはなんとなく伝わってきますね。

(高橋芳朗)あるかもしれないですね。

(宇多丸)というか、BTSの存在自体がもうそうじゃん。すでに。

(高橋芳朗)そうですね。BTSがそこにいるだけで、そういう問題提起になるとも言えるのかもしれないですね。

(宇多丸)我々からすれば、だからもうこの立場に来てること自体が革命を起こしてるに等しいから。ねえ。すごいことですよ。しかも、そういうところもちゃんと考えてるっていうかね。

『Butter』におけるBTSのミッション

(高橋芳朗)そうですね。だからRMのさっき紹介したコメントを踏まえて考えると、『Butter』におけるBTSのミッションみたいなものは、誰をも魅了するパーフェクトなポップソングを作ることだと思うんですよね。で、それをこれからも続けていくこと。それを積み重ねていけば、自ずと道は開けていくだろうってことなんだと思うけどね。

(宇多丸)でもこれさ、1枚目のカードが『Dynamite』。アメリカ進出、本格英語曲として。そして『Butter』が2枚目。だからここから3枚目、4枚目と来て。最終的にそれを含めたアルバムがどうなっていくのかとか、そこまでの画が絶対にあるじゃん?

(高橋芳朗)もう描いているでしょうね。

(宇多丸)でしょう? だから、すごくわくわくしますよ。

(高橋芳朗)そうですね。

(日比麻音子)ロン・ペリーさんのようにね、もっとBTSとコラボしたい、プロデュースしたいという人がこれからもどんどん集まってくるんでしょうね。

(高橋芳朗)これからね、たしかにそういう現地のアーティストとのコラボとかも全然仕込んでくるでしょうから。そんな感じでしょうかね。

(宇多丸)はい。高橋芳朗さんならではのBTS『Butter』解説でございました。さすがでございます。

(高橋芳朗)ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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