宇多丸『ミッチェル家とマシンの反乱』を語る

佐久間宣行『ミッチェル家とマシンの反乱』を語る アフター6ジャンクション

宇多丸さんが2021年5月25日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でNetflixの『ミッチェル家とマシンの反乱』についてトーク。その語り口の素晴らしさについて話していました。

(宇多丸)そして念願叶ってね、『ミッチェル家とマシンの反乱』。これ、クリストファー・ミラーとフィル・ロードっていうコンビで元々は、僕らが一番最初に知ったのは『くもりときどきミートボール』という、これもソニーの3DCGアニメーションがあって。宇垣さん、ご覧になったことなければ『くもりときどきミートボール』、最高なんで。

(宇垣美里)見ます!

(宇多丸)二作目はちょっとイマイチなんですけどね。とか、『LEGOムービー』とか。あと、実写作品で『21ジャンプストリート』『22ジャンプストリート』みたいなのがあったりして。僕は現代アメリカのアニメーション作品、あるいはそのコメディ映画作家としてもこの2人っていうのはすごく、もう最先端を行っている2人だと思っていて。で、今回の『ミッチェル家とマシンの反乱』というのも、タッチとしては監督はマイク・リアンダさんという方がやってるんですけどね。さっき言った2人は製作に回っていて。

まあ、よくある話ではあるんですよ。そのマシン、ロボットたち。家電として開発されたロボットたちが反乱を起こして……みたいな話で。設定そのものはよくある感じなんだけど。で、あるデコボコ家族が……『クレヨンしんちゃん』的なものだと思ってください。野原家みたいな家族がそれを解決していくというようなファミリー向けのドタバタコメディなんだけど。

あのね、僕はこの一作、特筆すべき点があると思っていて。それは、全体のその映画の語り口なんですけど。ずっともう序盤から全編がそうなんですけどね。たとえば、主人公はお姉さんなんですけども。そのお姉さんは自分で映画というか、映像作品を作っていて。YouTubeとか、そういう動画サイトに上げたりしてるわけです。で、映像作家志望で自分はその映画を作る学校にこれから行くというようなぐらいの感じなんです。ところが、お父さんはその娘さんのそういう才能とか、目指している方向っていうのはあんまり快く認めてない。で、このお父さんにいかに自分が本当にやりたい生き方っていうのを認めてもらうか、までの話でもあるんだけど。

で、そのお姉さんとたとえば弟がちょっとふざけると、そのふざけ合った間にポヨヨヨーンって、たとえばアニメーションで……元々がアニメーションなんだけど。ふざけたことに対応して、ちょっと絵が出たりとか。ちょっと変なニュルニュルッて線が出たりとか。あるいは言葉が出たりとか。かと思えば、「お父さんは○○ザルに似ている」ってなったら、その猿の実写映像がバーンと出てきて。その実写映像と「ほら、似てるでしょう? ギャーギャーッ!」なんつって。ものすごいくだらない笑わせ方とか、すごいガチャガチャした笑わせ方をしてくるわけですよ。

で、「変わった見せ方、ガチャガチャした見せ方をするな」と思うんだけども。見ていくうちに、それはつまりはその女の子が自分で作ったオリジナル動画とかの……言っちゃえば要するにYouTubeとかに若者の皆さんが上げている動画のタッチを映画全体に使ってるんですよ。

(宇垣美里)なるほど!

映画全体がYouTube世代の映像のタッチ

(宇多丸)だから振り返ってみると、この映画全体がこの主人公の女の子が後に演出した映像作品にも見えるっていうか。だからそのYouTube世代、動画アップ世代。自分で何でも映像的にDIYできる世代のギャグ感覚とか編集感覚とか映像感覚をその本編の長編映画に入れ込んでるっていうか。しかもそれがめちゃめちゃギャグとかストーリーテリングとハマッていて。この試みって意外とないというか。YouTube的なああいう字幕が出たりとか、ボヨーンってやったりとか。

それってなんか、ちょっと安いものっていうかさ。ちょっと映画とかに対してはガチャガチャしたものっていう風に、僕とかも世代的もやっぱり捉えがちなんだけど。それを見事に最新のコメディ映画の文法に取り込んでいて。これって結構、画期的じゃないかなと思っていて。なんて小難しいことを考えるまでもなく、めちゃめちゃくだらないギャグに満ちた最高におかしい作品なので。

(宇垣美里)ケラケラ笑える系ですか?

(宇多丸)笑えるし、しかもサービス満点というか。もう中盤で普通の映画のクライマックスぐらいのとんでもない……巨大ホニャララが出るんですけども。その巨大ホニャララがくだらねえのなんの。とかね、最高なんで。『ミッチェル家とマシンの反乱』、おすすめでございます!

(宇垣美里)見ます!

(宇多丸)これでおすすめしたいやつが半分ぐらいまで行きました!(笑)。

(宇垣美里)ええっ、まだ半分あるのか(笑)。

(宇多丸)1週間分たまっているんです!(笑)。

『ミッチェル家とマシンの反乱』予告編

<書き起こしおわり>

佐久間宣行と宇多丸『ミッチェル家とマシンの反乱』を語る
佐久間宣行さんが2021年5月21日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で『ミッチェル家とマシンの反乱』について宇多丸さんと話していました。

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