宇多丸 Saku Yanagawa『スタンダップコメディ入門 「笑い」で読み解くアメリカ文化史』を語る

宇多丸 Saku Yanagawa『スタンダップコメディ入門 「笑い」で読み解くアメリカ文化史』を語る アフター6ジャンクション

スタンダップコメディアンのSaku Yanagawaさんが2023年7月31日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。宇多丸さんがSakuさんの著書『スタンダップコメディ入門 「笑い」で読み解くアメリカ文化史』について話していました。

(宇多丸)やっぱりサクさんといえば、スタンダップコメディアン……そもそもスタンダップコメディという日本では今のところまだ馴染みがないような、でもアメリカではド主流というか。コメディといえばスタンダップコメディだというようなものをアメリカに単身渡ってやっていて。で、それをこちらにも伝える啓蒙活動も同時にされてきて。まさにその決定版といえるようなものが先月出版された本『スタンダップコメディ入門 「笑い」で読み解くアメリカ文化史』、フィルムアート社から税別2200円で出ている本で。こちら、拝読しました。

(Saku Yanagawa)ああ、すいません。ありがとうございます。

(宇多丸)で、本当にお世辞じゃなく、これはめちゃくちゃ待たれてた本だと思います。こういう本が1冊、なんでなかったのか?っていうぐらいの。本場のスタンダップコメディとは何か?っていう説明のところから、あとは歴史の部分もめちゃくちゃ勉強になりましたね。どうやったって成り立ってきたのか?っていう。これはご自身も結構、調べられたんですか?

(Saku Yanagawa)そうですね。僕、実は大学の卒業論文でこのテーマで書いてるので。

(宇多丸)ああ、なるほど、なるほど。

(Saku Yanagawa)当時、ポンコツの論文で終わったので、今回ちゃんと調べようと思って(笑)。

(宇多丸)まあ、実際に本場でやってからのそれは全く違うでしょうしね。特にすごく僕がグッと来たのは、やっぱり現場、コメディの聖地シカゴで活動されてる中で、要はレジェンドっていうかな? 歴史の中でいろんな人が積み重ねてきたっていうところにやっぱリスペクト……現場で本当にスタンダップコメディをやって。

たとえばリチャード・プライヤーがどれだけ偉大か、みたいなのって僕も頭ではわかっていても……みたいなところがあるから。これを読んで改めて「ああ、なるほど! エディ・マーフィに与えた影響、なるほど!」とか。「彼がこういうことをやってなきゃ、その後やっていない人っていっぱいいるんだ」とか。あとはジム・キャリーが登場した時の雰囲気とか。なんか、すごいやっぱり「ああ、これはサクさんしか書けないな」っていう。

あと、何と言ってもその最後の今のっていうか。いろいろ価値の変動が起こり、キャンセルカルチャーとかいろいろある中で、当然いろいろ難しい局面にあるコメディ界。でも……っていうところですごくサクさんが思考を重ねられてっていうところめちゃくちゃ読みごたえもあったし。自分も考えさせられたし。ケヴィン・ハートの話とかもすごい、「そうだよな」って。やっぱりこっちだとすごい断片的にしか伝わってこないところがあって。

(Saku Yanagawa)そうですよね。はい。

日本では断片的にしか伝わってこないスタンダップコメディの世界を解説

(宇多丸)それこそ、デイヴ・シャペル。「なんでこういうことを言うの?」みたいに思っていたんだけど、やっぱりサクさんの考えとして「デイヴ・シャペルはこういうことを意図してるんだと思う」みたいなのとか、「ああ、なるほどな!」っていうか。でも、スタンダップコメディアンっていうのは本当に基本的には自分の責任で、体を張ってやってる仕事なのだっていう。っていうか、それ以外にはないのだから……でも、だからこそリスクは大きい。でも、しょうがないっていう。

(Saku Yanagawa)そうですね。もう、やっていくしかないです。

(宇多丸)やっていくしかないし。でも、そこをちゃんと考えながらやることこそが醍醐味でもあるっていうか。どこがラインなのか? で、聞いてる側も「そこ! 際どいけど、絶妙だな!」っていう。ある時事ネタであっても。だから、そのサクさんの苦悩とか。でも、すごくちゃんと考えてらっしゃることってすごい伝わってきて。

(Saku Yanagawa)ありがとうございます!

(宇多丸)本当にスタンダップコメディの基本と歴史と現在と未来が見えるような、すげえ本だと思いました。

(Saku Yanagawa)ありがとうございます(笑)。

(宇多丸)すいません。困っちゃいますよね?(笑)。

(Saku Yanagawa)いやいや、嬉しすぎて、もう……今日はしゃべれないかもしれないです(笑)。

(熊崎風斗)ここから本題が待っていますからね(笑)。

(宇多丸)僕の悪い癖ですね(笑)。フィルムアート社から税別2200円で発売中です。これはぜひ、アメリカのエンターテイメントに興味ある人だったら絶対に……映画が好きだっていう人にもね。もはやある種、必読ですね。

(Saku Yanagawa)そうです!(笑)。

「映画が好きな人も必読の本」(宇多丸)

(宇多丸)だって、ほら。この人がどういう文脈で出てきたかとか……スタンダップコメディから出てきた人っていうのもね。それこそ、そっちのが多いのに。そうだ。すいません、もう1個いいかな? 「アダム・サンドラーはすごい映画界で成功したけど、スタンダップコメディアンとしての功績については意見はわかれるところだが……」みたいなのも「ああ、そうなんだ」っていう(笑)。

(Saku Yanagawa)そうなんですよ。意外とそういう意見が現場では多かったりするんですよね。まあ、どちらかというと俳優さんとしての資質の方が素晴らしかったっていう。

(宇多丸)そっちで成功したっていう。

(Saku Yanagawa)まあ、でもギターでスタンダップをやるので。

(宇多丸)ああ、なるほど。音楽ネタで。とか、そういう日本で映画だけ見てるとわかんないことも伝わってくるからね。

(Saku Yanagawa)いありがとうございます!

(宇多丸)ありがとうございます。すいませんね(笑)。褒めすぎると黙るしかないよね?(笑)。

(Saku Yanagawa)いや、恐縮です(笑)。

(宇多丸)我々、俺の悪い癖で(笑)。

<書き起こしおわり>

Saku Yanagawa フー・ファイターズのデイヴ・グロールを笑わせて仲良くなった話
スタンダップコメディアンのSaku Yanagawaさんが2023年7月31日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。グリーンステージの司会を務めた2023年のフジロック・フェスティバルでフー・ファイターズのデイヴ・グロールにネタを披露し笑わせることに成功。仲良くなって「お前もメンバーになれ」と言われた話をしていました。
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