渡辺志保さんとDJ YANATAKEさんが2021年3月15日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中で2021年グラミー賞について話していました。
(渡辺志保)今日は朝から皆さん、ご覧に……普通に働いている人は見てないと見てないと思うので。朝から燃えていた方は何をしてるんだかっていう感じの人が多いかなと思うんですけれども。第63回グラミー賞授賞式が執り行われました。
(DJ YANATAKE)やっと見終わりましたよ。長かったー。
(渡辺志保)お疲れ様でした。コロナ禍におけるグラミー賞ということで。司会はトレバー・ノアさんが担当でしたけども。本当に創意工夫にあふれたというか。屋内の会場をうまく使いながら、そして本当に名だたるアーティストの方たちのパフォーマンスが並んでいましたけれども。パフォーマンス自体も元々、収録したものを流したものもあれば、実際にリアルタイムでセットを組んでお届けしたものもある。そして、BTSなんかはLAに来ることができなかったので、LAと全く同じセットを韓国の方に組んで。
(DJ YANATAKE)でもBTS、かっこよかったよ。
(渡辺志保)見入っちゃいましたね。本当に。
(DJ YANATAKE)ダンスの揃い方とか、すげえなと思って。
(渡辺志保)歌声も高音のブレなさとかね。「これが世界基準か」とか思いながら見ていました。
(DJ YANATAKE)なんか、だからあれはすごいよかったですよ。BTS。
(渡辺志保)よかったですね。皆さん、いろんなご感想、ご意見があるかなって思うんですけれども。
(渡辺志保)私的なハイライトは、去年もねそうだったと思うんですけど。あ、その前に、待って。私、いつもWOWOWさんで生放送を見ているんですよ。本当に1年間、そのためだけに月会費を払ってグラミー賞を見るためだけにWOWOWさんに入っているんだけども。何も知らずに朝、テレビをつけたらさ、コメンテーター席にあの高橋芳朗さんがいらっしゃって! 「ええっ! ヨシさん!」って。
(DJ YANATAKE)あのTBSラジオの女子アナとLINEを交換する音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんですか?(笑)。
(渡辺志保)音楽ジャーナリストの独占禁止法に引っかかるくらい、引き手数多の音楽ジャーナリスト、高橋芳朗さんが座っていらっしゃって。
(DJ YANATAKE)素晴らしいですね!
(渡辺志保)もう本当に、いい意味でびっくりして。というのも、WOWOWさんで毎年、見ていてすごい助かっているし、素晴らしい生中継をしてくださっているんだけども。やっぱりさ、コメンテーターというか、日本側からの意見みたいなものがどうしてもロック……言ったら白人男性ロック寄りみたいな感じの意見が多いなと思って見ていたの。たとえばちょっと前も「今年はクイーンが再結成します!」みたいなノリだったりして。なんかちょっと……っていう。
(DJ YANATAKE)アメリカのリアルタイムの流れとのギャップがね。
(渡辺志保)そうそう。でも、やっぱりヨシさんが当たり前だけど、そういうところをスッと埋めてくださいましたし。ひとつひとつ、コメントも非常に的確だなって。「うん、うん!」って頷きながら見てましたし。だって、これまでも「ジェイ・Zが最多ノミネート」とか「ケンドリック・ラマーが……」みたいな、いくらアメリカがそういう話題で騒いでいても、日本の生中継では全然、そういうところが出てこなくて。それがすごく歯がゆいなって思ってたんですね。だから「ヨシさん、さすが!」と思いながら。
(DJ YANATAKE)ヨシくんならね、リル・ベイビーとダベイビーは間違えないですからね。
(渡辺志保)絶対に間違えない!
(DJ YANATAKE)はじめての人が見たら「なんだ、このベイビーは?」ってなりますよ(笑)。
(渡辺志保)「打ち間違いかな?」みたいなね。思っちゃうからね。あと、クリエイティブマンの清水社長も出ていらっしゃって。メーガン・ザ・スタリオンの話題になった時に、メーガンちゃんが日本のアニメ好きみたいなネタがパッと出て。清水社長が「これだけ日本が好きなんだから、ちょっと呼べば来てくれるんじゃないですか?」みたいな感じでおっしゃっていて。「呼んでくださいよ! 2年後ぐらいのサマソニにぜひ、ぜひお願いします!」と思いながら今年もWOWOWさんの生中期を見ていたんですけど。
で、ちょっと話を戻しますけど。私としてはやっぱり今年も女性が活躍したグラミー賞になったかなという風に思いました。昨年はですね、本当にビリー・アイリッシュが大きい賞は全部総ナメっていう形になりましたけれども。今年もビリー・アイリッシュはトロフィーを獲得したっていうところももちろん……レコードオブ・ザ・イヤーはビリー・アイリッシュだったんですけれども。そのほか、アルバム・オブ・ザ・イヤーはテイラー・スウィフトで。ソング・オブ・ザ・イヤーはH.E.R.の『I Can’t Breathe』。そしてベスト・ニューアーティスト、最優秀新人賞はメーガン・ザ・スタリオンっていうことで。なんかバランスいいなって思った。喧嘩しないっていう(笑)。
(DJ YANATAKE)そうね。バランスがいい受賞のされ方みたいなのは結構、他でも言っている人、いたな。
(渡辺志保)でも、レコードオブ・ザ・イヤーの時にね、ビリー・アイリッシュさんがスピーチでまず、「メーガンさんじゃないんですか……」みたいな感じでスピーチしていて。そんなことを言われたらメーガンさんもね、なかなか……。
(DJ YANATAKE)なんて返していいか、わからないよね。
(渡辺志保)「えっ、じゃあドージャ・キャットやデュア・リパさんはスルーしていいんですか?」みたいな感じがしますし。そういう瞬間もあったのと、あと、ビヨンセさんがね、結構スポットライトを浴びる瞬間がたくさんあったなと思いまして。ブルー・アイビーちゃんも『BROWN SKIN GIRL』のミュージックビデオで最年少のグラミー受賞者になったりとか。で、ビヨンセが史上最多のグラミーを受賞したアーティストになった。最多タイを塗り替えて、もうひとつ取って。全部で28部門。リアルタイムでその場に塗り替えたっていう。
(DJ YANATAKE)そうか。俺、飛ばして見ちゃっていたのかも。メーガンと『Savage』のリミックスでさ、ベスト・ラップソングかなんかを取った時にメーガンが「隣にビヨンセがいるのよ?」みたいな、あのメーガンの顔芸がなかなかいい感じでしたけども。受賞の瞬間もすまし顔で「えっ、私ですか?」みたいなのとか。で、メーガンをひとしきりやった後に……。
(渡辺志保)「ここで嬉しいお知らせがあります!」みたいな感じで(笑)。
(DJ YANATAKE)「ビヨンセさんが!」みたいな。「あ、こんな発表の仕方、あるんだ?」みたいな。
Megan Thee Stallion & Beyoncé
(渡辺志保)トレバー・ノアが滑り込みで発表しましたけど。そこでタイになって27部門。で、その後にもう1個、『BLACK PARADE』で受賞して。「今、ここで歴史が塗り替えられました!」みたいな。「28部門で女性の最多受賞アーティストになりました」みたいな感じになって。かつ、ジェイ・Zさんも一緒にテーブルに座っていらっしゃって。「あっ、おるんや……」みたいな(笑)。
(DJ YANATAKE)もうミーム化されていたけども。あの2人のマスクの似合わなさね。
(渡辺志保)すごい貫禄でしたね。あと、いつ来ていつ帰ってもいいように、一番出口に近い席に座っているとかね。そういうことがまことしやかにTwitter上でワッとなったりもしていましたけれども。
#Beyonce = 28 GRAMMY wins. #GRAMMYs pic.twitter.com/iwL6nf7z40
— Recording Academy / GRAMMYs (@RecordingAcad) March 15, 2021
(渡辺志保)そんなこともあってビヨンセにスポットライトが……「主要部門を受賞しました」のスポットライトじゃなくて、ちょっとサブのスポットライトが当たる回数が多くて。嬉しいは嬉しいけど、なんか微妙……みたいな。ビヨンセさんがほしいのは、そんなスポットライトじゃないと思うって思いながら。
(DJ YANATAKE)だから大きい賞をあげれないかわりに、その歴代の数とかでバランスを取った感じ。
(渡辺志保)あと娘さんにも受賞させて……みたいなね。それがまたちょっといやらしいなって。それがまたちょっとビヨンセをイラつかせているんじゃないかとか思ってしまいましたね。
(DJ YANATAKE)だからメーガンのパフォーマンス、しなかったんですね。
(渡辺志保)そうですね。「私はちょっと、歌いはしませんよ? そんなんじゃ、歌いはしませんよ。カーディさん、どうぞ」みたいな感じだったのかもしれない。わかんないけど。で、まあそういったちょっと期待外れというか。そういうとこで言うと、そもそもね、今年はザ・ウィークエンドが1部門もノミネートされず、ザ・ウィークエンドさんも「今後、一切自分の楽曲をグラミー賞の委員会であるレコーディングアカデミーには送らない」っていう風にも言っていて。
(DJ YANATAKE)ねえ。「自分のレーベル」って言ってましたからね。今後、ザ・ウィークエンドの下についた人たちはもうグラミー賞に一生ノミネートされないっていう。
(渡辺志保)グラミー断ちをしているという。で、今年はその最多ノミネートアーティストがビヨンセだったんだけど、そのビヨンセもパフォーマンスはしないっていうことになりましたし。その前々年、ジェイ・Zが最多ノミネートアーティストだった時もジェイ・Zさんもパフォーマンはされませんでしたし。あと、今年はすごい縮小版だったのでいろいろしょうがないところもあると思うけども。やっぱりヒップホップアーティストの出席者、参加者、参列者っていうのがやっぱり……「いや、誰もいない。ビッグ・ショーンさんはいるかな?」みたいな。なんかね、やっぱり少ないかなという風にも感じましたし。
ここははずっと言われていることですけれども、やっぱりヒップホップミュージック、R&Bミュージック、ブラックミュージックとの断絶具合みたいなものがますますひどくなっているのかなという風にも感じたその一方で、ダベイビーとリル・ベイビーのパフォーマンスは本当すごいよかったですね。ダベイビーに関しては本当にね、2020年を代表する1曲ですけども。『Rockstar』をすごいソウルフルにラップをしていらっしゃいましたけれど。まさかのルース・ベイダー・ギンズバーグレペゼンっていうかね。亡くなった最高裁判事のRBGことルース・ベイダー・ギンズバーグさんを模した聖歌隊というか、クワイヤの方たちも参加していたし。
(渡辺志保)あと、私がやっぱり涙を流したのはリル・ベイビーのパフォーマンスですよ。『The Bigger Picture』。私、もしかしたら『On Me』とかをやるのかな?って思ったんだよね。『My Turn』からの曲とかね。
(DJ YANATAKE)「もう『The Bigger Picture』みたいな曲は書かない」みたいに言っていたからね。
(渡辺志保)そうそう。「そんなコンシャスなラップはしない」みたいな。だから42 Duggとかが出てくるのかな?って。
(DJ YANATAKE)『We Paid』とかね(笑)。
(渡辺志保)EST Geeとかが出てくるのかなって思ったら、そんなことはなくて。しっかり作り込んでいましたね。『The Bigger Picture』をね。で、なんとこれまでにBlack Lives Matterとか、あとはウィメンズ・マーチを率いていたタミカ・マロリーさんがスピーチで登場して。「バイデン大統領、我々はジャスティスを欲しているんです」という呼びかけもあったし。その後、リル・ベイビーと同じアトランタの御大、キラー・マイクが! キラー・マイクが出た瞬間、私は涙を抑えきれませんでした。いやー、すごいいいパフォーマンスでしたね。最後にはラン・ザ・ジュエルズのハンドサインをキラー・マイクさんがしていらっしゃって。本当に本当にリル・ベイビー、大きなステージだなっていう風に思いましたね。
Lil Baby『The Bigger Picture』
(DJ YANATAKE)なんかやっぱりBlack Lives Matterがもちろん背景にあってさ、こういうパフォーマンスになって。H.E.R.とかもその曲が主要部門の賞を取るってことになったわけですけど。やっぱりアメリカ……別に日本もかならずしもそうじゃなきゃいけないっていうわけじゃないですけど。本当に国民とか全世界が注目するようなさ、国のビッグイベントでここまで政治的なメッセージというか。なんか、いわば警官が悪者に見えちゃうっていうかさ。そういうのを……。
(渡辺志保)堂々とパフォーマンスするっていう。
(DJ YANATAKE)ちゃんとメッセージとして伝わるものができているのはすごいなと思ったし。ちょっと始まる前に志保と話してたんですけど。たとえば、グラミーの委員会の方々とか。たとえば日本でもグラミー賞を楽しみにしてる人たちって、ひょっとしたら年齢層が高いのかもしれないけど。「あんたたちが好きだったロックのスピリッツみたいのをこのリル・ベイビーのパフォーマンスに感じませんか?」みたいなね。
(渡辺志保)本当、感じてほしいですよね。だからそういうことを伝える仕事っていうのは、やっぱり高橋芳朗さんにすべてお願いしたいなという風に今日、生中継を見ながら。
(DJ YANATAKE)全部ヨシくんにね。
(渡辺志保)全部ヨシさんにお願いしたいなと思いますので。でもね、そういった意味でも今年のグラミーはまあ、ぶっちゃけ縮小版っていうのがもう大前提ではないですか。コロナの時代における。だから、「ああ、これが精一杯なのか。ちょっと寂しい」みたいな気持ちももちろんあったけども。でも、誰がトロフィーを取ったかということに関しては、いつも通りに楽しませてもらったかなっていう感じもしますね。メーガン・ザ・スタリオンがね、最優秀新人賞を取れてよかったなと思いますし。
(渡辺志保)ちなみにこの裏では今、オスカーのノミネート作品も発表されているみたいで。『マ・レイニーのブラックボトム』のヘアメイクの女性が黒人女性初でヘアメイクアップアーティストとしてオスカーにノミネートされたっていうニュースをさっき見たばかりで。こっちもこっちで楽しみだなという風に思ってます。
(DJ YANATAKE)でも、ザ・ウィークエンドの件しかり。このグラミーを仕切っている方がインタビューに答えたみたいで。「そういう意見には耳を傾けて今後、もっとそういうことを乗り越えて、うまくやっていかなきゃいけない」みたいな意見も出てるみたいなのでね。もっとみんなが気持ちよくね、ワッと受賞した方がお祝いされるような場にますますなっていってほしいなっていう風に思いますよね。
(渡辺志保)ちなみに去年のグラミー賞、ビリー・アイリッシュが5冠達成とかしたグラミー賞って、過去最低の視聴率だったんですって。で、たぶん今年はそれを更に下回ることはほぼ間違いないだろうっていうのは開催前から言われていたことなので。本当にそれこそ、司会のトレバー・ノアとかめちゃめちゃハズレくじを引いたみたいな感じかもしれないけども。たぶん来年もトレバー・ノアが司会のじゃないかなって思いますので。ちょっとね、トレバー・ノア、もうちょっと彼らしさを楽しみたかったなっていうところもありますので。そういった意味でも来年も既に楽しみかなっていう風に思いますね。
(DJ YANATAKE)あと、ヒップホップの番組なんで。ベスト・ラップアルバムをね、ナズが。25年やって初めて取ったっていう。結構、今回はコンシャス系のアルバムが急にノミネーションされて。
(渡辺志保)しかも、ノミネートされたアルバムは全部男性のアルバムで。かつ、全員がインディペンデントの作品なんですね。なんかそれって史上初らしくて。だから私が前に読んだ、そのノミネートが発表された段階で読んだ記事だと、インディペンデントな黒人男性のアルバムがこういう風にノミネートされるっていうのは、またそれはそれでいいことなんじゃないかという意見もありました。
(DJ YANATAKE)で、おじさん的にはですね、ナズの25年やって初めて取れたみたいのもいいんですけども。アイス・Tがボディーカウントっていうメタルバンドをやっているんですけども。ベスト・メタルパフォーマンスを……まさか30年越しに初のグラミーを受賞するっていうね(笑)。
(渡辺志保)アイス・Tさん、おめでとうございます。なにがあるかわからないですね。
(DJ YANATAKE)アイス・Tさん、このたびは本当におめでとうございます!
Body Count Wins Best Metal Performance
<書き起こしおわり>