町山智浩『ザ・ハント』を語る

町山智浩『ザ・ハント』を語る たまむすび

町山智浩さんが2020年10月27日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ザ・ハント』を紹介していました。

(町山智浩)それともう1本、今週末。10月30日から公開される映画で『ザ・ハント』という映画があるんですよ。これもねトランプ大統領に怒られてアメリカで公開ができなくなっちゃった、公開中止になっちゃった映画なんです。

(赤江珠緒)いろいろとあるんですね。うん。

(町山智浩)いろいろとあるんです。それで結局、公開が延びちゃって。コロナの中でひっそりと公開されたんですけど。それが日本で10月30日から公開されるんですが。これがどういう話かというと、トランプ支持者の12人の男女が突然、拉致されて。誘拐されて。気が付くと、森の中で目を覚ますんですよ。で、そこに武器が並んでいるんですよ。銃とかナイフとか。「この中から好きなものを持って逃げなさい。あなたたちを人間狩りするから」っていう、人間狩りゲームの標的にされるっていう話なんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(山里亮太)トランプ支持者が?

トランプ支持者たちが人間狩りの標的に

(町山智浩)「トランプ支持者」って言葉では言っていないんですけども、明らかにトランプ支持者なんですね。で、こういう映画が公開されるって聞いたトランプ大統領は怒り狂って。「こんな映画、公開するんじゃねえ!」って言ったんで公開ができなくなっちゃったんですよ。ただね、この映画はコメディなんですよ。

(赤江珠緒)コメディ?

(町山智浩)コメディなんです、これ。ブラックジョークというやつですよ。これはね、トランプ大統領を支持する人たちの間に「Qアノン」という人たちがいるんですね。で、これは大変な問題になっていて。トランプ支持者の37パーセントがQアノンというものを信じている人たちなんですが。これはね、「民主党の政治家とユダヤ系の国際資本の大金持ちたちが闇のネットワークで繋がっていて。子供たちを誘拐して、悪魔のいけにえにしたり、その血を吸ったりしている」っていう陰謀論があるんですよ。

(赤江珠緒)嘘でしょう? 今の時代にそんな陰謀論が?

(町山智浩)それを信じて。「ピザ屋、ピザレストランで子供たちを誘拐している」っていう風にその陰謀論の中に書かれていて。それを信じた銃を持ったアメリカ人がピザ屋を銃で襲ったりしてるんですよ。アメリカでは。で、この陰謀論は本当にトランプ支持者の37パーセントが信じてるんですよ。それで討論会の前にあった市民集会、対話集会でも、そのNBCのアナウンサーが「今、Qアノンと言われる人たちはトランプ大統領のことを信じてるですが、ちゃんと否定してもらえませんか?」ってトランプ大統領に迫ったんですけど、トランプさんはそれを否定しなかったんです。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)で、ヒラリーさんが子供の血を飲んでたりするようなコラージュがネットに出回っていて。TwitterとかFacebookは「Qアノン」というものが書かれているのを全部削除するっていうことになっているんですね。実際に非常に危険なことが起ったので。

(赤江珠緒)そうでしょうね。そんな、ドラキュラとかの時代じゃないんだから。

(町山智浩)そうそう。これは要するに、中世からあるユダヤ差別が今、こういう形になっているだけなんですけども。で、この『ザ・ハント』っていう映画は「それが本当だったらどうなるか?」っていう映画なんですよ(笑)。

(赤江珠緒)これまたキツい……。

(町山智浩)それをふざけて、「なんてバカげた陰謀だろうね」ってバカにする形を取っているんですね。でも、ひねりすぎちゃっていてよくわかんないっていう……(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!

(町山智浩)すごいバカげた話になっていて。要するに、リベラルなインテリたちが右翼的な田舎の人たちを殺して遊んでるっていう話なんですよ。で、これをどう考えて見たらいいのか、分からないんですよ。非常に見て困る映画なんで(笑)。でも、これがアメリカなんだなって思いますね。さっきの『続・ボラット』もそうですけども、もうひねりすぎちゃっていて笑うに笑えないようなこととか、もうギリギリのことをやっていて。もうトランプを批判しているのか、批判していないのか、それすらもわからない展開じゃないですか。どちらも。

町山智浩『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』を語る
町山智浩さんが2020年10月27日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』を紹介していました。Wawaweewa! #Borat’s tomatoes are cer...

(赤江珠緒)そうか……。

(町山智浩)そうそう。『ボラット』ってトランプさんを支持してるような、銃を持っている変な人たちが出てくるんですが。その人たち、見た目は変だけど、実は心の優しい人たちだっていうことも描くんですよ。

(赤江珠緒)もうなんか、とにかく混沌としている状況の中で、なにがなんだかわからなくなってくるっていう。

(町山智浩)そう。「右が左かでぴっちりと分けられると思うなよ、てめえ!」っていう、すごい映画を作っちゃんですよ。

(赤江珠緒)そうかー。町山さん、時間が来ちゃったので今日はこの2本にしましょう。

(町山智浩)『ザ・ハント』は10月30日からTOHOシネマズで公開です。

『ザ・ハント』予告編

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました