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町山智浩『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』を語る

町山智浩『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2020年10月27日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』を紹介していました。

(町山智浩)今日はアメリカで今、すごい大変な話題になっていて。日本でアマゾンプライムで見れるようになった、配信が始まったばかりの映画を紹介します。タイトルが長くて。『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』という……頭に全然入ってこないんですけども(笑)。『続・ボラット』っていうのがまあ、一番分かりやすいタイトルですね。短くして。これはね、『ボラット』という映画が14年前にありまして。コメディ映画で。それの14年ぶりの続編なんですよ。

これはね、ユダヤ系のイギリス人のコメディアンのサシャ・バロン・コーエンという人がボラットという人のふりをするんですね。ボラットというのはカザフスタンから来た国営テレビのレポーターという設定で。アメリカに来て普通の人たちにインタビューをしてまわるんですけど。あと有名人にもね。その時、「これはカザフスタンでしか放送されませんよ」って嘘をつくんですよ。で、リリースっていうんですけども。その映像使用許可にサインさせちゃうんですよ。で、ひどいことをやらせたり、ひどいことを言わせて、それを映画として全世界で公開してしまったのが『ボラット』なんですよ。

(赤江珠緒)すごいことやりますねー!

(町山智浩)これ、ご覧になっています?

(山里亮太)今回の『続・ボラット』見ましたよ。

(町山智浩)あ、見ました? どうでした?

(山里亮太)いや、もうめちゃくちゃ……あれ、だから登場人物がいろいろと虚実といいますか。作り込んでいるのと、実際の映像が混ざっているから。「あれ? これ、実際の映像で本当にこんなことやったら大問題だろう?」っていうところばっかりじゃないですか。

(町山智浩)そうそう。あれ、ドラマが軸にあって、その中にドキュメンタリーで、普通の人たちをだまして撮っているところが挟まってくるので。虚実の皮膜が面白いんですよ。

(山里亮太)「これはさすがに『虚』の方で、実際にやったらダメだろう?」っていう方が実は「実」の方だったっていう(笑)。

(町山智浩)そうそう(笑)。

(山里亮太)「これ、そっくりさんとかでやっているんじゃないの? 大丈夫なの、これ?」っていうのだらけですよね。

(町山智浩)すごいんです(笑)。

(赤江珠緒)またキツめのギャグが満載と言いますか(笑)。

(町山智浩)そうですね。これ、日本で見た時はモザイクになっているんじゃないですか?

(赤江珠緒)ああ、あれ、モザイクじゃない部分もあるのか?

(町山智浩)アメリカの方で見れるのは全部、ちんちんとかまんまんとか丸見えですよ、もう。グッチャングッチャンの内容になっていますよ、これ。

(赤江珠緒)ああ、そうですか!

(山里亮太)思い当たるところは何箇所かあるんですよ。モザイクが入っているって思ったところは全部、あれむき出しなんですか?

(町山智浩)そうなんです。だからボケボケでなんだかわからないかもしれないですけども。日本だと。

(山里亮太)そしたらもう本当にめちゃくちゃ……(笑)。

(町山智浩)ひどい内容ですけどもね。

(山里亮太)だってカザフスタンっていう国に対しての偏った情報(笑)。

(町山智浩)そうそう(笑)。ものすごく貧乏な軍事独裁政権の国っていう風になっているんだけど、そんなことはないんですよね(笑)。

(山里亮太)そうですよね(笑)。

(赤江珠緒)もう極端な風刺になってますもんね。

(町山智浩)これね、カザフスタンの政府は怒ったりしているんですよ。一作目の時に。

(赤江珠緒)それはそうでしょうね(笑)。

(町山智浩)でもね、カザフスタン政府の要人の娘さんが「こんなことで怒ったら大人げないからやめなさい」って言って、怒らなかったんですよ。抗議を取り消したんですね。

(赤江珠緒)ああ、よかった。

(町山智浩)で、前作の時、とにかくひどかったのは差別的な内容がすごくて。アメリカ人の人に対して「実はカザフスタンでは女性とかユダヤ人を差別してるんだけど。やっぱり差別した方がいいですよね?」っていう風に言うんですよ。そうすると、「どうせカザフスタンでしか放送されてない」と思ったアメリカ人たちが「うんうん、僕もね、女はもっと差別した方がいいと思うよ」とか言っちゃうんですよ。それを撮って、全世界に流されるからたまったもんじゃないわけですけど。そういうことをね、今回はもっとひどくやっているんですよね(笑)。

(赤江珠緒)そうですね、うん(笑)。

(町山智浩)で、ユダヤ人のホロコーストって、ドイツによる虐殺があったんですけども。それも徹底的にギャグにしてきますからね。でも、この人、サシャ・バロン・コーエン自身はユダヤ人なんですよ。これはだから、もうぎりぎりを越えちゃってるんですけどね。内容が。

(山里亮太)そのホロコーストを使ったジョークみたいなのが狂気的なところがありますよね?

(町山智浩)すごかったですよ。だって本当にホロコーストの犠牲になりそうになって、ナチの収容所に入られたユダヤ人のおばさんに、ユダヤ人のイメージで……鼻がとがっていて、お金を持っていてっていうような格好をして会いに行くんですよ。サシャ・バロン・コーエンが。そうすると、そのおばさんが「あのね、ユダヤ人っていうのはそんなに怖いものじゃないのよ。私を見てごらんなさい。怖い? 私には大変なことがあったの。ホロコーストで殺されそうになったのよ」って言うんですよ。「それがギャグになるの?」と思うじゃない? でも、ちゃんとなってるんですよ、これが(笑)。

(赤江珠緒)そうなんですよね(笑)。

(町山智浩)しかもそこのところが心温まる展開にもなってるんですよ。そんな内容で心が温まって、しかも笑えるってすごくない、これ?

(赤江珠緒)たしかに。あの娘さんとのやり取りもね、最初は「おいおいおい……」っていう感じだったのがウルッと来そうになって。心を通わせていく感じとかね。

(町山智浩)そうなんですよ。これね、今回はボラットの娘さんが出てくるんですよね。それはボラットが10年前の作品があまりにも大ヒットしちゃったから、アメリカでみんなボラットのことを言ってるんですよ。

(山里亮太)ああ、なるほど!

(町山智浩)だから、もうドッキリはできないんですよ。彼もね、「ドッキリができないから『ボラット』の二作目はできないな」ってずっと言ってたんですけども、「娘」っていうものを罠として使うというね……(笑)。

(赤江珠緒)本当に(笑)。

(町山智浩)これね、カザフスタンがアメリカのトランプ政権と仲良くしたいからっていうことで、その娘さんを貢物として捧げに行くという使命をボラットが負うんですよね。

(赤江珠緒)もうとんでもない設定なんですよね。そもそもが(笑)。

(町山智浩)ひどいんですよ。で、カザフスタンでは女の人はみんな檻に入れられて、家畜として使われてるっていうひどい話になっていて(笑)。で、トランプ政権に気に入られるように金髪のセクシー美女に娘を改造するっていう話なんですよ。それでペンス副大統領のところに行って……あれは共和党の特に保守的な人たちが集まってお金集めをする、保守的政治家のエリートたちが集まるまコンベンションがあってですね。そこにペンス副大統領がいるからっていうことで、金髪美女に育て上げた自分の娘をそこに連れていって。それでボラットが「女をやるよ!」って言うんですよ。

(赤江珠緒)あのシーンは本当にその会場に連れて行っているっていうことですよね?

(町山智浩)そうなんですよ。しかも、マイク・ペンス副大統領のことをずっと「ペニス副大統領! ペニスさん!」って呼んでいるんですよ(笑)。

マイク・ペンス副大統領に娘を貢ぐ

(山里亮太)実際にだからね。そういうシーンを作ったんじゃなくて。

(町山智浩)そう。あれね、逮捕されるところだったらしいですよ。

(赤江珠緒)そうでしょうね!

(町山智浩)はい。でもね、一作目では10回以上逮捕されてるんですよ。もうね、最初から弁護士も最初から用意していて。一晩、留置所に泊まってはその翌日、出してもらうっていうのを繰り返しながら撮影していたんですよ。でもね、今回は「共和党のその会合で逮捕されそうになったことよりも怖かった」っていう風に彼が言ってるのは、トランプを支持する銃を持って武装をしている人たち。そういう人たちの中に入っていくところだったらしいんですよね。で、彼らは銃で武装してるんですけど、それより怖かったことというのが、その撮影ってコロナが始まってから撮影をしているんですよ。

(山里亮太)ああ、そうですよね。ストーリーが。

(町山智浩)それでみんな、コロナのせいでシャットダウンをしているような状況なのに、トランプ支持者の人たちはマスクをしないんですよね。で、ソーシャルディスタンスも守らない。トランプさんが守らないから。トランプさん、マスクもしないからみんな、それを見習ってマスクもしないんですけども。その人たちの中に入っていって、ボラットは彼らと生活をするんですよ。「それが一番怖かった」っていう風にサシャ・バロン・コーエンは言っていますね。「命がけだった」って。

(赤江珠緒)はー! なるほど! だから命がけで相当な信念を持って、むちゃくちゃなギャグをやるっていうことですね(笑)。

(山里亮太)だってあの集会に行ってますもんね?

(町山智浩)そう。僕も同じような集会に行きましたけど、僕はマスクをしていましたからね。トランプ支持者の人たちが集会をしていくところに彼はマスクなしで入っていって。しかも、なんかもうめちゃくちゃ密着しているんですよ。僕はちゃんとソーシャルディスタンスを取りましたけども。彼ら、マスクをしていないから。

(山里亮太)町山さんもあの会場に行ったんですか?

(町山智浩)僕はああいうところにいろいろと行っています。トランプ支持者の会合に。ただ、僕は絶対に距離を置いていますよ。

(山里亮太)町山さん、あのシーンには出くわしていないでしょう?

(町山智浩)あのシーンには出くわしていないです。あれはテキサスで撮っているんですよ。僕は近所の方でやっているところでしたけども。だからね、どういう命がけなんだ?っていう感じですけども。

(赤江珠緒)そう。そのベクトルの向け方が(笑)。

(町山智浩)しかも、最後の方では超大物、ニューヨーク市長だったジュリアーニさんが出てくるんですよ。で、ペンスさんは貢ぎ物の娘を引き取ってくれなかったから、ジュリアーニさんに娘を捧げようとするんですね。で、ジュリアーニって今、すごく問題になっていて。彼は今、トランプ大統領の個人弁護士をしてるんですよ。それで去年、トランプ大統領が弾劾されそうになったのって覚えてますね? 議会によって「トランプ大統領がウクライナに対して圧力をかけた。それが職権濫用である」っていうことで。大統領として不適格だから辞めさせるための弾劾裁判になって。結局上院を共和党が支配してるんで、トランプ大統領を無罪にしたんですけども。あれの裏で動いていた人がジュリアーニさんなんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)というのは、なぜトランプ大統領がウクライナに圧力をかけようとしていたか?っていうと、ウクライナでトランプ大統領と大統領選で戦っている民主党のジョー・バイデン候補。彼がオバマ政権で副大統領だった時、バイデンさんの息子さんがウクライナのガス会社の役員をしていたんですね。それで「なにか汚職とか汚いことをしているに違いない」って考えて、トランプ大統領がウクライナの大統領に「何億ドルかのお金の支援をするから、その代わりジョー・バイデンの息子の犯罪の尻尾をつかんでくれ」っていう風に圧力をかけていて。そのために弾劾をされそうになったんですよね。

(山里亮太)ああ、はい。

(町山智浩)で、トランプに雇われてその裏調査をしていたのがジュリアーニさんなんですよ。それでこの間……先々週ぐらいにまたジュリアーニさんがなにかを掴んできて。それがアメリカのタブロイド紙……夕刊フジみたいな新聞にその情報が出たんですけども。それは「ジョー・バイデンさんの息子がウクライナの企業のためにジョー・バイデンさんと会わせるような斡旋をしたというEメールが発見された」という記事が出まして。そのメールっていうのはジュリアーニさんが見つけてきたものなんですよ。

(町山智浩)で、トランプ大統領は討論会とかでバイデンさんに対して「お前、ウクライナでお前の息子はなんか汚いことをしてるぞ!」って言っていたんですね。その討論会の翌日にこの『続・ボラット』がアメリカで配信されたんですよ。

(山里亮太)おおーっ!

(町山智浩)それで「ジュリアーニっていう人は信用できるのか?」っていうことになっていたところに、このボラットがジュリアーニを引っかけた映画がその討論会の翌日に公開されたんですよ。

(赤江珠緒)すごいな!

(町山智浩)すごいことになっていて。で、どうなっていたのか?っていうと、ボラットの娘がテレビレポーターっていうふりをして。正式にジュリアーニさんにインタビューを申し込んで。それでホテルの部屋で2人だけでインタビューをする間、なんかちょっと「ジュリアーニさん、好き」みたいな雰囲気をなんとなく匂わせるんですよ。その娘が。それで……っていうことで。それでジュリアーニさんがとうとうやっちゃったんですね。やらかしちゃったんですよ。

(山里亮太)お色気ドッキリ。

(町山智浩)そう。これって残酷だよね。

(山里亮太)それを本物でやっているから……。

(町山智浩)そう。大変なことになってますから。

(山里亮太)だってそんな企画意図なんて絶対に言ったら成立しないもんね。もちろん、言っていないけど。

(町山智浩)でもこれさ、プロのスパイがやることと同じですよ。

(赤江珠緒)ハニートラップですもんね。

(町山智浩)そう。プロのスパイもこういうことをやるから。すごいことをしているんですよ、これ。

(山里亮太)それを映画に。

(赤江珠緒)そして上映する。

大統領選討論会の翌日に公開

(町山智浩)それをその大統領選挙の直前に公開して。で、もちろんトランプ大統領はこれに対してめちゃくちゃ怒っていて。「サシャ・バロン・コーエンっていうのは芸人としては全然面白くない!」っていうよくわからない攻撃をしていますね、今(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!

(山里亮太)そこを怒るの?(笑)。

(町山智浩)そこなんですよ。「面白くない」っていう攻撃をしているの(笑)。

(山里亮太)「面白い・面白くない」っていうのは別に言われたところで、ねえ(笑)。

(町山智浩)そうそう。それでサシャ・バロン・コーエンの方も「あんたの言うことは面白くない!」って反論していて。よくわからない戦いになっていて。面白いか、面白くないかっていう(笑)。

(山里亮太)でもすごいのは「あんなもん、嘘っぱちだ」とか「全部、仕組まれたものだ」っていう風に否定するっていうことができないから。だからもう面白い・面白くないしか言わないですね?

(町山智浩)だってあれ、映っちゃっているんだもん。

(山里亮太)ですよね。

(町山智浩)うん。まあ、言わないですけど。ジュリアーニさん、はっきり言うと相手の同意を取らないボディータッチが映っちゃっているんですよ。あれ、言い訳ができないんですよ。

(赤江珠緒)ねえ……。で、それが映画として成立するっていうのが日本ではちょっと考えられないですよね。

(山里亮太)普通、公開は止められますよね?

(町山智浩)だって日本の映画人はこんなこと、できないでしょう?

(山里亮太)無理だと思います。

(町山智浩)ねえ。だって大統領の顧問弁護士ですよ? あと副大統領ですよ?

(山里亮太)許可が出ないでしょう。

(町山智浩)日本って……まあ安倍総理が病気で総理大臣を辞めた時にね、「その病気が本当なのかどうか、医師の診断書を出してほしい」っていうことを言うだけで「不謹慎だ!」って言われるんですよ。もう病気、治っちゃっているのにね。こんなこと、できないですよ。

(赤江珠緒)できないです。あれは。

(山里亮太)本当にこの人しか作れないんじゃない? サシャ・バロン・コーエンしか。

(赤江珠緒)だから考えられない展開になるから。そういう意味で前代未聞な映画でしたね。

(町山智浩)もう大論争を呼んでいるのがこの『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』です。これ、とんでもない映画ですけど、Amazonで見れます。ただ、父と娘の話として泣けるんですよ。

(赤江珠緒)そうなんですよね(笑)。

(町山智浩)ほのぼのと泣きました、僕は(笑)。

(山里亮太)俺は動揺でちょっと泣くまでは至らなかったですけども(笑)。

(赤江珠緒)でもちょっといい話になってきているところが、「あれ?」みたいな(笑)。

(町山智浩)「これ、いいのかよ?」っていうところなんですけども。でも、このサシャ・バロン・コーエンっていう人はケンブリッジ大学を出ている実はインテリだったりするんですよ。

(赤江珠緒)そうなんでしょうね。だからいろんな計算ずくの、ねえ。

(町山智浩)バカじゃないんですよ。

(山里亮太)これ、アメリカにマークされて危険な目に遭うっていうようなこととか、ないんですか?

(町山智浩)でもコメディアンがおちょくったからって、政府とか権力が圧力をかけたりしたら、それこそバカげているから。それはできないでしょうけどね。しかも最後にトム・ハンクスも出てくるんですけども。トム・ハンクスが出てくるのはあれ、トム・ハンクスが実際にコロナにかかっちゃったからなんですけどね。このオチがすごいんですよね。今回の『続・ボラット』は。もうすごいオチで。びっくりしましたけども。

(赤江珠緒)ねえ(笑)。本当に。

(山里亮太)あれはちゃんと出演依頼して出てもらっているんですかね?

(町山智浩)そうですね。

(山里亮太)ということですよね。その役ですもんね?

(町山智浩)そう。まあ、言えないですけども。このコロナの正体に迫る、恐るべきオチがつきますけども(笑)。というのが『続・ボラット』なので。ぜひご覧いただきたいと思います。

<書き起こしおわり>

町山智浩『続・ボラット』解説動画

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