R-指定とDJ松永 Creepy Nuts『メジャーデビュー指南』を語る

R-指定とDJ松永 Creepy Nuts『メジャーデビュー指南』を語る サウンドクリエイターズ・ファイル

R-指定さんとDJ松永さんが2020年9月13日放送のNHK FM『サウンドクリエイターズ・ファイル』の中でCreepy Nuts『シラフで酔狂』について話していました。

(R-指定)で、その後、我々は紆余曲折を経まくってからメジャーデビューをするんですけども。

(DJ松永)紆余曲折……もうだいぶ端折ったね(笑)。

(R-指定)いや、これを話しだしたら……。

(DJ松永)まあ、全部話したらキリがないっていうところはあるよね。まあ、このタイミングでメジャーデビューするか(笑)。しちゃおう。

(R-指定)でも、最初から俺はメジャーで活躍みたいなところは全然思ってたんですよ。ラップを始めた時から。というか、元々売れようと思っていたというか、ラップ好きでやってたんですけど。やっぱり、やるからにはそりゃあてっぺんじゃないけど。そういうところを目指したいなっていうのはどこかにはあったたんですけど。で、たぶんね、売れなくなってもラップだけは続けてるやろうな。松永さんもDJを続けてるやろうなっていうのは大前提としてあるんですけど。

たぶん松永さんと組みだした時に俺が「めっちゃこの人、信用できるな」と思ったのが、ちゃんと「売れたい」っていうような意志が感じられたみたいな。そこがやっぱり「ああ、この人はちゃんと上を目指してるわ」みたいな。やっぱり当時って、ヒップホップに全く夢も希望もないぐらいの冬の時代やったから。なんかもう「売れる」っていうことを言う時点でありえへんかったし。まず、わかってもらえるやつだけわかる音楽をどれだけ作るかっていう勝負みたいになっていたから。

(DJ松永)そうだね。売れよと思う志すら、若干ちょっと何だろうな? かっこよくないかも、みたいな感じの空気だったよね。

(R-指定)そういう時代やったけども。「いやいや、それはもっとデカいところに届けていきたい」みたいのがしっかりあったっていうのがね、お互いやりやすかったですよね。

(DJ松永)まあでもね、メジャーデビューするわけですけれども。そんなにスムーズにメジャーデビューできたわけじゃなかったですからね。

(R-指定)ありましたね……。

(DJ松永)まあ、我々を拾ってくれたソニー様からメジャーデビューシングル『高校デビュー、大学デビュー、全部失敗したけどメジャーデビュー。』という……「ここでついに俺ら、成功だぜ!」っていうタイトルを付けたんですけれども。あの……いろいろトラブルがあって発売延期等々を。

(R-指定)だからメジャーデビューもちょっと失敗するっていう。

(DJ松永)そうそう。その発売延期もね、単純に日程が延びただけではなく、多大な金額の損害をソニーに与えています。まあ、それはどうしたかと言うと、ヒップホップは「サンプリング」っていう作曲方法が王道なんですけれども。既存の曲を用いて、それを切り刻んだりして引用したりとかして新しく作り上げるっていう。で、その王道方法でメジャーデビュー曲を作ったんですけれども。

メジャーだから、その楽曲のクリアランス、使用元に許諾を取りますっていうことで進めてたんですけれども……まあ結構前の段階で申請はしたんですけれども、発売日が近づいて。どんどん近づいても近づいても全く許可が下りず。どんどん切羽詰まっていって。「これはもうダメだ!(バーン!)」ってやって発売延期になったんですけども。ちなみに全部、レコーディングは終わっていたわけですよ

(R-指定)そうなんですよ。

サンプリング許諾問題で発売延期

(DJ松永)そのレコーディングっていうのは、やっぱりメジャーデビューだから大きい花火を打ち上げようと思って。もう都内で一番大きいスタジオを抑えて。実際に演奏するミュージシャンたちは全員がレジェンドの人たち。それをパンパンに……都内の大きいスタジオにパンパンになるぐらい大御所ミュージシャンを入れて。かなり大きな……超たくさん楽器の鳴っている曲だから。

レコーディングにめっちゃめちゃ金をかけたんですよ。それで、満を持して作った曲がクリアランスをとれずに発売延期。ということは、それは結局、お蔵入りになってしまったんですよ。発売延期しても許諾が取れず。なんで、また1からトラックを作り直して。またミュージシャンの人を呼んでレコーディングスタジオを押さえて作ったんですけれども。結構、冷や汗が出るぐらいの損害をソニーは被ったらしく。

(R-指定)ソニー的にはあれやろうな。「ミスった」って思ったやろうな。

(DJ松永)「ミスった。こいつらじゃなかったな……」って。「ヒップホップというアットホームじゃなかったな……」って思わせたかもしれないですね。

(R-指定)「やってもうたー!」って。

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(DJ松永)そうそう。でも、まあそういうのも経て、いろいろ……牛歩ではありますが、目の前のフェイズを頑張っていっていい曲を作ってポンポンポンってやってきたら、まあまあ、うん。今は返したかな? その借金も……。

(R-指定)どうやろう?

(DJ松永)いや、返してるでしょう?

(R-指定)返してるか。じゃあ、そんな思い出のね、メジャーデビュー曲を聞いてもらいましょうか。Creepy Nutsで『メジャーデビュー指南』。

Creepy Nuts『メジャーデビュー指南』

(R-指定)お送りしたのはCreepy Nuts『メジャーデビュー指南』でした。ヒップホップは自分を大きく見せる音楽でもあるし、ボースティングする曲でもあるし。もう1個の側面として成り上がりな音楽なわけですよ。で、まあ俺たちの先輩にもAK-69さんっていうラッパーの人がいますけども。その人は名古屋を代表する人ですけども。すごいラグジュアリーな曲を若手時代から歌っていて。その「成功」っていうイメージに今の自分を追いつかせるっていう活動をずっとしているんですよね。そういう意味ではこの『メジャーデビュー指南』、わけのわからん曲やけど。そこはちゃんとできているな。

(DJ松永)たしかに。

(R-指定)大口を叩いたことに自分を追いつかせていくみたいな。

(DJ松永)いや、本当ですね。そう思うと……この曲、ちょっとAKさんっぽかったかもね。

(R-指定)かっけーな。

(DJ松永)ちょっとかっこいいよね。

(R-指定)かもな。

(DJ松永)かっこいいかもね。この曲、「全くそんなことない」って思っていたけどね(笑)。一聴してAKさんらしさは全くなかったけど(笑)。

(R-指定)一聴しての成り上がりイズムは全くないけども。実はそうなっているっていうのがなかなかいいですね。

(DJ松永)いいですね。

<書き起こしおわり>

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