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町山智浩『TENET テネット』を語る

町山智浩『TENET テネット』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2020年9月8日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でクリストファー・ノーランの最新作『TENET テネット』を紹介していました。

(町山智浩)やっとこの週末にですね、アメリカも映画館が開き始めました。

(山里亮太)よかった!

(町山智浩)6ヶ月ぶりです。映画評論家として食っていくのは本当に大変な状態になっていたわけですけれども。で、会計事務所がありまして。ハリウッドの映画会社とかの会計を全部、司ってるところがありまして。そこが今年の見通しを出したんですけども……例年に比べてま66パーセント減ということですね。もう1/3しか利益を上げられないだろうという。

(赤江珠緒)そうでしょうね。

(町山智浩)やっぱり夏休みがね、儲けは一番大きいので。それはブロックバスターって言われる超大作が次々と公開されて、みんな家族で見に行くんですけど、それが1個もなかった状態ですからね。ドライブインシアターだけは開いてたんですけど。車の中だから感染しないんでね。それでやっと今週、少しずつ開くということで始まったのが最初の超大作で。『TENET テネット』っていう映画で。今日、紹介するんですけども。これはワーナー映画が200億円かけた超超超大作なんですよ。

(赤江珠緒)そんなに?

(町山智浩)でもね、なかなか公開できなかったのは200億円もかかっているとね、これは全世界で600億円稼がないと採算が取れないんですよ。

(赤江珠緒)制作費の3倍ぐらい稼がなきゃダメなんですか?

(町山智浩)3倍です。だいたい3倍なんですよ。だからアメリカで劇場が開かない状態ではできないっていうことで、ずっと粘ってたんですけども。とうとうやっとアメリカの劇場が開き始めて。ただね、ニューヨークとカリフォルニアはまだ開いてないんですよ。

(赤江珠緒)わー。ニューヨークが開いていないのは厳しいですね。

(町山智浩)ニューヨークとカリフォルニアって人口がものすごいから、ものすごいビジネスなんですけど。映画館は。でも、そこはなしでもうとにかくやるしかないよってことで始めましたね。で、逆にね、もう映画館は諦めたっていう映画会社もあって。それはディズニーなんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)ディズニーはね、アメリカでの劇場公開を諦めました。『ムーラン』という映画です。元は中国を舞台にしたアニメの実写化なんですけども。それも200億円かかってるですよ。

(山里亮太)『TENET テネット』と同じく。

(町山智浩)そう。でもね、もうこれ以上は引っ張れない。ディズニーはね、ものすごく経済的にまずくなっていて。というのはディズニーってやっぱりその収益の多くがテーマパークなんですよ。で、テーマパークを開けられなくて。あまりにも苦しいからフロリダで感染が拡大している中でテーマパーク、ディズニーワールドを開けたりしてるんですけども。それでも、どこも開いてないから苦しくて。これ以上、収入がない状態を続けられないんで、ディズニーが持ってるディズニープラスという配信があるんですけれども。オンラインで見れるストリーミングのやつが。そこで『ムーラン』を3ヶ月間見放題で30ドルで配信開始しました。

(赤江珠緒)そうですか……。

(町山智浩)やっぱりね、家族連れで来る映画なんで、感染する可能性があるとやっぱり映画館に足を運ばないだろうっていう判断なんですよね。あと、もうひとつは中国で……中国で作られた映画で、『ムーラン』は中国政府の全面協力で撮っているんで。それで中国で公開すれば……今月の11日から公開なんですけども。7万スクリーンで公開するっていうことなので。それでなんとか採算を取ろうっていうことみたいですね。

(赤江珠緒)そうですか。うん。

(町山智浩)で、『TENET テネット』の方は逆にそれができなかったんですよ。というのは、この作品を作ったのがクリストファー・ノーランという監督なんですが。この人は「絶対に配信するな!」って言ったんですよ。この人の映画は、この『TENET テネット』もそうなんですけども。IMAXというすごい特殊な巨大スクリーンで上映するためのデカいフィルムで撮影する映画を撮る人なんですよ。この人は。もう何十メートルもある巨大スクリーンで見るために作ってるんで。

それをちっちゃいパソコンとか家のテレビで見られたら困るっていうことで。「絶対に劇場でしかやらない!」って言ってたんで、なかなか公開できなかったんですよ。で、とうとう……要するに、そこですごく今回ね、「ハリウッド映画はどうなるだろう?」って言われていて。おそらく、こういう形でスクリーンで見なければならない超大作以外はほとんど滅びるじゃないかって言われてるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

映画館の危機

(町山智浩)今、家のテレビがみんな大きくなってるでしょう? 最近、テレビが安いから。それこそ2、3万円でデカいスクリーンのテレビを買えちゃいますからね。で、それだったら「すごい超大作でなければ自宅で見てもいいか」っていう人は増えるだろうという。で、この6ヶ月間の間にものすごく配信で見る人が増えたんですよね。世界中で。家から出られないから。だから、普通の人間ドラマレベルだったら、まあ家で見る人の方が多いだろうと。そうすると、いわゆるミニシアターとかは潰れますよ、これ。

(赤江珠緒)そうですね。本当に……。

(山里亮太)ミニシアターが潰れることって町山さんにこちらでご説明いただいていたけども。本当に名作っていうのはミニシアターからスタートして。すごいいろんな作品が出てきたりしていて。映画自体がそういういい映画が出にくい状況にないっていくということですね?

(町山智浩)そうなんです。だからどうしても大スクリーンで見なければならないっていうもの以外は、やっぱり感染の危険があるから、みんなわざわざ映画館には行かないだろうと。そうすると、まあ自主制作のインディペンデント映画とか、ちっちゃいレベルのその低予算映画とかが行き場を失っていくだろうと思われるんですよ。だから今、「映画」という文化自体がどうなるか?っていう大変な岐路にあるです。

(赤江珠緒)そうですね。かなり瀬戸際まで来ちゃってますね。

(町山智浩)はい。すごい時代になっていて。で、『TENET テネット』はとにかく大スクリーンで見なければ意味がないっていう映画なのでなんとかなるんですけども。今後、そういう超大作以外は本当に映画館から消えてしまうんじゃないかっていう事態ですけどもね。で、『TENET テネット』は日本では9月18日から公開で。これに結構もう映画界の未来がかかってるという状態ですね。はい。で、どういう映画かと言いますと、『TENET テネット』っていうのは秘密組織の名前です。はい。

世界を救うための秘密組織なんですよ。で、主人公はCIAのスパイなんですけれども、このテネットっていう組織に「優秀だから」っていうことでスカウトされるんですね。リクルートされます。で、「何をするの?」って言うと、「君の使命は地球を救うことだ。近い将来、第三次世界大戦よりももっとひどいことで地球が滅びるんだ。それを防ぐのが目的なんだ」と言われるんですよ。「なんでそんなことが起こるって知っているの?」って聞くと、「未来からあるものが届いてるからだ」って言われるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それは、銃弾なんですよ。「この銃弾は未来から来たものだ」という。

(赤江珠緒)う、うん?

(町山智浩)おかしいでしょう? 「これは未来から過去に向かってきたものなんだ」って言われるんですよ。銃弾が。「これを撃ってみろ」って言われるんですよ。でも、銃の弾倉に弾が入ってない状態で「あそこを狙って撃て」って言われるんですよ。「入ってないじゃないか」「いいから、やれ」って言われて。それで撃ったつもりになると、的の方から弾が逆に後ろ向きで飛んできて、銃口に刺さって弾倉に収まるんですよ。

(赤江珠緒)はー! うんうん。

(町山智浩)弾丸が銃に吸い込まれていくんです。

(赤江珠緒)フィルムを逆回転させた時みたいな映像になるわけですね。

(町山智浩)そうなんです。それで「ええっ?」って驚いていると、「この弾丸は時間を遡ってるんだ」と言われるんですよ。で。「これを使って時間を逆転させる装置が未来にはあるんだ。それを使って地球を滅ぼそうとしてるやつがいるんだ」という。で、それを追っかけるっていう話なんですよ。で、追っかけるんですが。その敵はロシアのギャングなんですけれども。彼は時間を引っくり返す、反転させる装置を使って逃げていったりするんですよ。で、その地球を滅ぼすもの……アルゴリズムというものがあって。それを巡って、その悪党と追いかけっこするという映画が『TENET テネット』なんですよね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だから、たとえばカーチェイスなんかだと時間が逆行してる人と、逆行してないでまっすぐに進んでいる人同士のカーチェイスになったりするので、もうわけがわからないんですよ。

(赤江珠緒)どうなるんだろう。本当に。

(町山智浩)後ろ向きに自動車が走ってくるんですよ。で、普通はぶつかってクラッシュするんですけども、クラッシュした状態からクルクルッと元に戻って走っていくんですよ。よくわからないんですけども。もう何もかもが逆なので。そういうね、とんでもない変な映画なんですよね。で、これはね、クリストファー・ノーランっていうこの映画を作った監督が、こういう映画ばっかり作ってる人なんですよ。

この人が一番最初に注目されたのは2000年に撮った『メメント』という映画なんですけども。低予算で撮ったんですが。それは、奥さん殺された男が、その殺した犯人を探すという話なんですけれども。時間は全部逆に進むんですよ、それは。というのは、その主人公は10分ぐらいごとに記憶を失っちゃうんで、覚えてないんですね。10分前のことは。

で、今現在のことからその10分前、10分前、10分前、10分前……って戻っていくんですよ。それで最後にその奥さんが死んだ真相にたどり着くまでの話なんですよ。『メメント』っていうのは。それは完全な逆回転……逆回転じゃないんですけど。ちょっと前に進んでは戻り、ちょっと前に進んでは戻りっていう非常に奇妙な映画なんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)それで、どうしてか?っていうと、このクリストファー・ノーランという人は本を読んだり雑誌を読んだりする時に後ろから読むそうなんですよ。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ! へー!

本や雑誌を後ろから読むクリストファー・ノーラン

(町山智浩)漫画とかも逆から読む。そうすると、結果を先に知って。「どうしてそうなったのか?っていう興味で読んでいくと、全てがミステリーになるから」っていう。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)そう。普通のお話でも、たとえば誰かが最後に離婚しましたとか、結婚しましたって話で。そこから読み始めると、「なんで離婚したんだろう?」っていうミステリーになるじゃないですか。

(山里亮太)ああ、たしかに。見方はそうなる。

(町山智浩)ねえ。だから逆から読むっていう、非常に奇妙な人なんですよ。この監督は。で、他にも変な映画ばっかり撮っていて。たとえば『インセプション』っていう映画を撮っているんですけども。これは産業スパイの話なんですね。レオナルド・ディカプリオが産業スパイ役で。ただ、産業スパイっていうのは人の物を盗むんですけど、この人は盗むんじゃなくて、記憶を植えつけに行くんですよ。その企業の取引に有利な気持ちみたいなものを植え付けに行くんですよ。人の心の中に。それはね、人が寝ている時に夢の中に入るんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それも、人の夢の中に入るんじゃなくて、夢をこっちで作っておいて、そっちには相手の気持ちを引きずり込んで、ニセの夢の中でその彼の心の一番奥底に入っていくっていうすごい変な映画なんですよ。

(赤江珠緒)はー! 複雑ですけど。なるほど、面白い。変わって行きますよ。そうなると、物語がね。格段に。

(町山智浩)しかも、夢の中っていうのは時間がものすごく早く進むんですよ。これ、夢を見てさ、パッと起きると夢の中でものすごい時間が経っていて。朝起きて、学校に行って……とか、すごい夢を見るんですけど。それでパッと起きると1分ぐらいしか経っていないとか、よくあるでしょう?

(山里亮太)ああ、はいはい。

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