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町山智浩『プロミシング・ヤング・ウーマン』を語る

町山智浩『プロミシング・ヤング・ウーマン』を語るたまむすび
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町山智浩さんが2021年2月9日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』を紹介していました。

(町山智浩)それで、アカデミー賞で僕、ずっと授賞式の中継をやっているじゃないですか。解説を。それも、授賞式が2ヶ月、延びたんですよ。4月25日に延びたんですけどもね。来年、どうなるかも全然わからないっていう状態で。それで今日、アカデミーが近づいているので、そろそろ候補作を紹介していかなきゃいけないですが。それで今日、紹介するのは作品賞、主演女優賞、監督賞、脚本賞にノミネートされるだろうと言われている作品で。日本公開は決まっているんですけど、公開日がまだ決まっていない作品なんですが。『プロミシング・ヤング・ウーマン』というタイトルの映画を紹介します。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)『プロミシング・ヤング・ウーマン』ってね、聞き慣れない言葉なんですけど。これは「将来有望なえ若い女性」っていう意味ですね。で、これはまず、医学部に入って非常に成績優秀で将来有望な若き女性だった人が主人公で。キャシーという女性ですが。ある事があって、大学を中退しちゃうんですよ。そこから7年経って現在、30歳になった時の話なんですね。で、彼女は今も仕事はちゃんとしたフルタイムの仕事がなくて。コーヒーショップで最近賃金で働きながら親と同居しているという状態で。親は「なんであんなにね優秀だったのに医大をやめちゃったの?」って聞くんですけど。

(赤江珠緒)まあ、そうなりますよね。

(町山智浩)でも、その理由を言わないんですよ。で、ブスッとコーヒーショップで働いているんですけども。夜になるとそのキャシーさんはものすごい濃い化粧して、胸の谷間とか太ももが見える、ものすごい露出度の高い服を着て。それで、バーを回っているんですよ。で、バーでベロベロに酔っ払って、お股とかを開いてデレッとしているんですね。「ああ、よ、よっぱらっちゃったー」みたいなことを言っているわけですよ。

そうすると、そこにいた男が……まあ、彼女は美人だから。足もきれいだし。「お嬢さん、具合が悪いみたいなので僕が自宅まで送りますよ」って言ってタクシーに乗せてくれるんですけども。キャシーさんが「ああー、あたしねー」とか言っているから自分のアパートの部屋とかホテルに連れ込んじゃうんですよ。

(赤江珠緒)ああー、うん。

(町山智浩)でね、「苦しいかい?」とか言って。「じゃあ、ちょっと服を緩めようね」とか言って脱がしていくんですよ。で、「介抱しようか」とか言って、さすったりしているんですよ。そうすると彼女は「なにしてんの?」って言うんです。それで彼が「介抱しているんだけど?」「私はね、『なにをしているのか?』って聞いてるんだよっ!」って言うんですよ。彼女、シラフなんですよ。

(赤江珠緒)えっ、酔ってないの?

(町山智浩)酔ってない。酔ったふりなんです。彼女はそうやって、デートレイプに持ち込もうとする男たちを懲らしめてるんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!

(町山智浩)彼女、仕置人なんですよ。それを毎回やっているんです。そういう話なんですね。それで、なんで彼女がそんなことをしているかというと、医大を中退した理由というのが彼女、キャシーの幼なじみのニーナという女性が医大で成績優秀だったんですけれども。同じ学生たちに酔わされて、レイプされたということがあって。学生寮に連れ込まれて、男たちがいる中でレイプされて。

で、それを大学に訴えたんだけれども、大学側が「レイプだとは言えない。女性も酔っていたんだから」っていう風に言って。それでもみ消されてしまって、その女性は自殺してしまった。それで、このキャシーさんが復讐をしたいんだけれども、その犯人はイギリスに行っちゃったんですね。逃げちゃった。だから復讐できないから、近所のデートレイプ野郎どもを懲らしめているんですね。で、そこにその犯人が帰ってくるんですよ。

(山里亮太)ああ、そのイギリスに行っていた?

(町山智浩)そう。その犯人の男が帰ってきて、結婚をしようとしてるんですよ。さあ、どうする?っていう話が『プロミシング・ヤング・ウーマン』っていう話なんですね。で、その犯人だけじゃなくて、それに加担したやつらがいっぱいいるわけですよ。まず、その寮で目撃してた男たち。それと、レイプをもみ消した大学の学長。それから相手の男側の弁護士ですね。こういった人たちを全部チェックして、1人ずつ手帳につけて。その1人ずつに復讐をしていくんですよ。

(赤江珠緒)おおーっ!

(町山智浩)これね、元々の映画というか、すごく有名な話があるんですけど。『黒衣の花嫁』という小説があるんですよ。日本でもね、ドラマとかになったりして。アメリカとかフランスとか各地で映画になっている、すごい有名な話なんですけど。それはあの結婚式の日、当日に結婚式場で、教会の屋外で指輪を交換してる時に、花婿がいきなり銃弾を受けて死んじゃうんですよ。

で、その花嫁がいきなり未亡人になってしまって。なんで撃たれたのかを調べていくと、実は近所の部屋の中で男たちが5人、銃をいじっていて。ふざけているうちに撃って、花婿を殺しちゃったということがわかるんですね。で、その花嫁が夫の復讐のためにその1人1人を見つけては……まあ美人なので。誘惑して殺していくって話がその『黒衣の花嫁』という非常に有名な話なんですけども。

普通、花嫁って白無垢というか。白い衣装なんですけども、「黒衣」なんですね。喪服だから。で、それの親友がレイプされた版なんですね。この話は。ただ、この映画はそう聞くとすごい怖い話のように聞こえるじゃないですか。でも、コメディですよ、これ。

(赤江珠緒)えっ、これ、コメディの要素、あります?

(町山智浩)ダークコメディなんですよ。男たちを懲らしめていくのを痛快なように見せていくんです。だからさっき言ったのも、脱がされているんだけども、急にシラフになって。「あんた、なにやってんのよ?」とか言うと男は「えっ? えっ?」みたいな感じになったりとか。そういうところはすごく、スケベな男とか悪いやつらを懲らしめる痛快さをすごく強調して撮っているんですよ。それでこれ、監督はね、女性なんですけれども。この人が言っているのは「この映画はキャンディーだ。ポップなキャンディーで見た目もかわいくて、楽しい感じなんだ」っていう。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)ミュージカルシーンもありますよ。途中で。楽しく踊るシーンも。「でも、そのキャンディーの中には毒が入っているのよ」っていう風に監督は言っているんですね。

(赤江珠緒)はー!

ポップでかわいい毒入りキャンディー

(町山智浩)でね、この監督は面白い人で。エメラルド・フェネルさんっていう人なんですけども。この人、現役の女優さんで。今、Netflixでものすごい当たってる『ザ・クラウン』っちえうドラマシリーズがあるんですよ。これ、イギリスの王室のスキャンダルを徹底的にひどく描いている問題作なんですけれども。そこでチャールズ皇太子の浮気相手だったカミラさんの役をやってるんですよ。この監督は。そういう人気ドラマの女優でありながら、監督としてもシナリオライターとしても活躍してて。もうひとつのイギリスのテレビシリーズで、これも日本で見れるですけど。

『キリング・イヴ Killing Eve』』っていうシリーズがあるんですよ。これもすごいんですけど。イギリスの諜報部にいる女性の情報員がヨーロッパ中を荒らしまわる連続殺人鬼を捕まえようとするっていうすごい話なんですけども。それのエグゼクティブプロデューサーもやってるんですね。この監督は。すごい才能のある人なんですけども。

で、この人がこの話を書いた理由について「すごく怒りがあるんだ。こういうデートレイプとかがひどいから」っていうんですね。それで、デートレイプって捕まえにくいんですよね。日本もアメリカもそうなんですけれども、レイプに関しては抵抗した形跡がないとレイプにならない場合が多いんですよ。

で、酔っ払ってる状態だと抵抗できないですから。物的証拠が残らないんですよ。要するに、傷とかそういったものが。「だから、そうしたデートレイプが蔓延している状況にものすごい怒りがあるんだ。でも、女の人って『怒っちゃいけない』って言われてるでしょう?」っていう。最近もほら、オリンピックの……。

(赤江珠緒)日本でもいろいろと話題になってますけど。

(町山智浩)ねえ。森喜朗東京オリンピック組織委員会委員長が「女の人が会議でいっぱいしゃべるんだけど、わきまえてほしい」みたいな話をしていて。だから、「なぜ女はわきまえなくてはいけないのか? なぜ女は怒ってはいけないのか?」っていう話なんですね、これは。だからこの映画の中で主人公のキャシーが車で後ろから煽られるんですけども。そうすると、いきなりタイヤレンチを持ち出して相手の車をめちゃめちゃにしたりするんですけども。

(山里亮太)気持ちいい(笑)。

(町山智浩)それとか、ブスッとして歩いていると通りすがりの男とかが「なんだよ、笑えばいいのに」とか言ってきて。「なんで笑わなきゃいけねえんだよ?」って言うんですよ。「なんでお前のために笑わなきゃいけねえんだよ?」って言うんですけども。そういうことろで……そういうシーンって見ていると、笑っちゃうでしょう? 「アハハッ!」っていう感じ、そういう痛快さでできていて面白いんですが。

また、この主演の女優さんがキャリー・マリガンっていう人なんですね。この人ね、2009年……だから11年ちょっと前にですね、『17歳の肖像』っていう映画で女子高生の役をやっていた人なんですよ。すごいかわいらしい感じだったんですけども。まあ現在、35歳で。そういうかわいらしい外見だから男は騙されて。さっき言ったみたいに。うっかりお仕置きされてしまうわけですけど。で、そのへんもすごく面白いんですけども。やっぱりね、アメリカ……これ、イギリスの監督と主演女優で撮っているんですけども。アメリカとイギリスでこれが作られた理由っていうのは、やっぱり状況が非常に良くないってことですよね。

(赤江珠緒)と、言いますと?

(町山智浩)というのは、トランプ前大統領が2018年に最高裁判事に任命したブレット・カバノーっていう人がいるんですよ。で、この人が実は大学時代に自分の学生寮に女性を連れ込んでレイプしようとしていたんですよ。

(赤江珠緒)えっ、最高裁判事が?

(町山智浩)最高裁判事がですよ。そう。で、その被害者が出てきて、それを訴えて、議会で証言するという事態があったんですよ。でもそれはやっぱりあまりにも昔のことなんで、結局そのカバノーさんは任命されちゃったんですね。

(町山智浩)それに対してトランプ大統領が「いい加減なことを言ってるな」って言ったんですよ。「そんな昔のことを持ち出して……その時に言えばよかったじゃないか」とか言うんですけども。

(赤江珠緒)うわあ……。

(町山智浩)ほとんどのレイプの被害者たちは言えないままなんで、その被害を言うだけでもすごい時間がかかるものなんですよ。だからもう、そんな失礼なことを言ってるそのトランプ大統領自身もね、26人以上の女性からセクハラで訴えられていて。

(赤江珠緒)めちゃくちゃですね。

26人以上の女性からセクハラで訴えられる

(町山智浩)すごいでしょう? で、どんなセクハラだと思います? 壁に押しつけて、スカートの中に手を突っ込んで股間を触っているんですよ。トランプ大統領、ほとんどの場合。で、これはたぶんね、大統領だった時には不起訴特権があったんですけども。だからついこの間まで、不起訴特権があったんですが、今はそれがなくなってしまったので一気に裁判、行きますよ。これは。

で、1人の女性は試着室で立ったままレイプされています。で、その彼女はその時の服を持っているんで、DNA鑑定を今、求めているんですよ。トランプ前大統領、それでDNAが一致すると証明されたら、アメリカ史上初のレイピストの大統領になりますね。

(赤江珠緒)犯罪者ですよ。本当に。

(町山智浩)その裁判はこれから始まるんですよ。そういう状況があるのでこういう映画が作られなきゃならなかったのだなということがわかるんですけども。やっぱりね、見ていると、たとえばその大学の学長が優秀な医大生を守るために、それを裁判にさせないようにするために、訴えようとしている女性に対してこういう風に言うんですね。「有望な学生の将来をあなたは潰せるの?」みたいなことを言うんですよ。

これ、おかしいですよね? どう考えても言ってることはおかしいんですが、そういうこってよく言われるんですよ。女性に対して。赤江さんはご存知ないかもしれないですけども、女性が警察にこういうことを訴えるとかならず、「これによって相手の男性の人生は破壊されるんだけど、その覚悟はありますか?」とかって言うんですよね。最低ですよ、警察。

(赤江珠緒)「こっちはもう人生、破壊されているんですけど?」っていうね。

(町山智浩)そうなんですよ。だからこれ、セリフに結構よくあることを拾ってきていて、すごいリアルなんですけど。まあ、いろいろとリサーチをしているんで。で、この彼女、キャシーさんの復讐のターゲットはね、男だけじゃないんですよ。女もいて。それは学生の時にそのレイプ事件が起きた時、「彼女にも落ち度があるわ」って言っていた女なんですよ。

(赤江珠緒)ああーっ!

(町山智浩)そう。で、「女って嘘をつくからね」とか言ってた女なんですよ。

(赤江珠緒)そういうの、なんかありますね。現実にもそういうことが。

(町山智浩)自民党の杉田水脈参議院議員が言ったことと同じなんですよ。「これ、どうしてアメリカの人が知っているの?」って思いましたよ。

(赤江珠緒)そうでした……。

(町山智浩)まあ、同じようなことを言う人がいるっていうことですよね。で、「男の前で酔っ払って泥酔したその女が悪いのよ」とか言うんですよ。その彼女に対するお仕置きというのが、それを全くそのまま返してやるっていうことなんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)まあ、どんなものかはご覧になってのお楽しみということですが。

(赤江珠緒)すごい強烈なんですけど。またコメディに……?

(町山智浩)そこがすごい。あのね、暗い告発するような映画にしないで、笑えて楽しくてスカッとしてゾッとさせる。それで、怒りも伝わってくるっていう。

(赤江珠緒)それはでも、すごい手法ですね。そこまで、この題材を消化できているとしたらね。

(町山智浩)この怒りを伝えるためには、笑いと痛快さが必要なんですよ。楽しさが。そうしなければ、世間一般には伝わらないじゃないですか。

(赤江珠緒)なるほど。

(町山智浩)という、すごい技の作品なので、アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞だろうと言われてるんですけども。で、日本でも……まあ、コロナ次第ですが。公開される予定です。

(赤江珠緒)公開は決定していますが、ただ公開日は未定という。『プロミシング・ヤング・ウーマン』、今日はご紹介いただきました。これは見たいですね。

(町山智浩)面白かったです。

(赤江珠緒)町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

『プロミシング・ヤング・ウーマン』予告

<書き起こしおわり>

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