石山蓮華と町山智浩『福田村事件』の性愛描写を語る

石山蓮華と町山智浩『福田村事件』の性愛描写を語る こねくと

石山蓮華さんと町山智浩さんが2023年9月19日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で『福田村事件』を見た感想を、特に性愛描写について話していました。

(町山智浩)石山さん、お帰りなさい。

(石山蓮華)どうも、ありがとうございます。ご無沙汰しておりました。

(町山智浩)お体の具合はどうですか?

(石山蓮華)もうバチバチに、ピンピンでございます!

(町山智浩)ああ、よかったです。

(石山蓮華)ありがとうございます。で、『福田村事件』も見てまいりまして。

(町山智浩)結構、きついですよね?

(石山蓮華)そうですね。

(でか美ちゃん)私はこの前、話させてもらったんで。ちょっとね、蓮華ちゃんの感想も聞きたい。

(石山蓮華)日曜日に池袋の劇場で見てきたんですけれど。もう会場、パンパンでした。本当に満席で。で、なんかすごく今、見れて。その自分自身の中にもある加害性っていうことに作品を通じて向き合うっていうのも本当に大事だなと思うし。でも、ちょっと気になったのが、やっぱりその性愛描写にまつわるところがちょっと、なんだろうな? ベタっていうか。

今、見るにはベタな性愛描写

(町山智浩)あれはね、シナリオを書いた人がですね、井浦新さんが演じていたインテリのその自分の政治的な無力性みたいなものをね、性的な無力性と重ねるというシナリオにしてるんで。まあ、なんというか昔、そういう時代もあったんですよ。要するに、性的なパワーと政治的なパワーというものが同じものとして扱われてた時代があってですね。そういうものを引きずってる世代の人がシナリオを書いているので。

なんかちょっと令和の今、見るには懐かしい感じというか。上の世代の方が書いたシナリオだなっていうこととか。あと、やっぱり濡れ場みたいなシーンで女優さんの顔は映るけど、男性の方は伏せられる、みたいなところも「ふふーん」って思っちゃったりして。

(町山智浩)僕だったら、もう東出さんをガツンと撮りますけどね!

(石山蓮華)そうですよね!(笑)。

(でか美ちゃん)いや、でも両方を映してほしいですよね。その感情が見たいですからね。

(町山智浩)お尻の方から、こう……ねえ。

(石山蓮華)でも、それぐらい東出さんの演じていたあの役、本当に素晴らしかった。

(町山智浩)東出さんのね、あの日に焼けた背中とお尻に玉の汗が浮かんでるところをがっちり撮っていたら、お客さんが10倍入ってたと思います!

(石山蓮華)だってあの東出さんの金太郎スタイル的な衣装。

(町山智浩)腹掛けみたいな(笑)。

印象的な東出昌大

(石山蓮華)女優さんの肌をちょっと出すんだったら、東出さんのそっちをファサってやるっていうのも、ありなんじゃないか?って。

(町山智浩)こういう映画はとにかくね、そういう政治的なこととかね差別に対して関心のある人しか来ないという……本当はね、その差別的な人が来てほしいわけですよ。

(でか美ちゃん)そうですね。見てほしい人にちょっと届きづらいというか。

(町山智浩)そうそう。ネットでね、ひどいことを書いてるような人が「でも俺、東出のケツが見たいっ!」って言って映画館に押し寄せるっていうね(笑)。

(でか美ちゃん)そこの集客力ね(笑)。東出さんのとんでもないパワーで。

(町山智浩)そういうところがほしいなと思いましたね。

(でか美ちゃん)たしかに。

(町山智浩)そういうの、大事なんですよ。エッチなところっていうのは……昔はね、難しい映画ほどエッチだったんです。

(石山蓮華)なるほどな!

(でか美ちゃん)メッセージ性を届けるためのフックとして?

昔は難しい映画ほどエッチだった

(町山智浩)そう。でもね、「俺、ちょっと難しい映画を勉強しに行くんだ」って言いながら、実はそうじゃない方を見に行ってたりするんで。そのへんは、戦略とかいろんなものがあるんで一概にね、性と政治というものを結びつけた時代というのは……あれは商売だったのかな?っていうのもね、いろいろあるんですよ。

(石山蓮華)たしかに。こういう恋愛模様が描かれるからこそ、広く届くっていうのはもちろんあるよなとは思いますね。

(町山智浩)まあ、いろいろあるんです。全然なかったらね、お客さんが来ないわけでね。「なんでこんなに必要以上にいい男が全部揃ってるんだ!」っていうね。

(石山蓮華)俳優さんがみんなよくて。私が今回、一番いいなって思ったシーンは、その小舟の上に乗った自分の妻と東出さんを見る井浦新さんのあの顔。なんかね、ちょっと何とも言えない……。

(でか美ちゃん)虚無に近いような。ちょっと感情の見えるような。

(石山蓮華)でもなんか、傷ついた男性っていうのを見るの、私は好きだなって。映画の中でですよ。もちろん。

(町山智浩)そっちで燃える人だ(笑)。

(でか美ちゃん)でも、ちょっとわかる。グッと来ますよね。

(石山蓮華)でもちょっと、その間抜けに見えるようなところも私はあって。「フフッ」って笑っちゃったり。

(町山智浩)でも、あれもいい男ばっかり何人も揃えてね。それで水道橋博士が1人でマイナスしてバランスを取ろうとしてるっていうのも……。

(でか美ちゃん)博士もいい男ですよ!

(石山蓮華)すごいよかったですよ! 存在感が素晴らしかったですね。

(町山智浩)なんていうか、本当に悪い……ものすごく差別的な人っていうのは実は全然出てこないっていうところもね、狙ったところだと思いますね。

(石山蓮華)そうなんですよ。だからこそ、自分も他人事じゃないなと思える映画でした。

(町山智浩)ありがとうございます(笑)。水道橋博士も喜んでいると思います。

<書き起こしおわり>

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