みうらじゅんと安住紳一郎 他人写真集を語る

みうらじゅんと安住紳一郎 他人写真集を語る 安住紳一郎の日曜天国

みうらじゅんさんが2020年6月14日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中で安住紳一郎さんと「他人写真集」について話していました。

(安住紳一郎)さて、みうらじゅんさんに今日お話しいただくテーマは「62歳のマイブーム」。一気に紹介します。62歳のマイブーム、その1。他人写真集。その2、金粉。その3、ワニグッズ。以上の3つです。本当に……毎度毎度いろいろ新しいワードが出てきますけども(笑)。

(みうらじゅん)新しくはないんですけども。他人の写真が家にやたらあることに気が付いたんですよ。他の家もそうじゃないですか。自分の写真ならまだしも、他人を撮って焼き増し……まだあの頃、僕の頃はフィルムでしたから。焼き増すのが邪魔くさいから、その人にあげてないんですよ。で、まあその現物あげればいいんだけど、それもなんかタイミングを逸して、ずっと残ったままの飲み屋での写真なんですよ。

それ、僕はいつも飲み屋とかどこにでもカメラを40年以上ずっと持ってますから。当時は一眼レフを持ってましたんで。飲み屋に行くにも。で、一眼レフを持って、いい調子になりだすとシャッターチャンスだと思うんでしょうね。自分も酔ってますから。「これはシャッターチャンスだ!」って。ケツが出たとか。なんか出たりすると、ついやっぱり……まあピューリッツァー賞的に撮るんですよ、俺。当然、股間も撮ったりしていたんで。昔の飲み屋は結構、出てる場合が多かったんで。で、それをやっぱりDPEに出すと、当時のDPEの人はいちいちチェックしてね。

(安住紳一郎)そうですよね。公序良俗に反するものはプリントできませんなんて。黒く塗られたりしてね。

(みうらじゅん)でも僕はそこを……まあ常習犯というか、そこのDPEでおなじみだったんで。「ああ、みうらさん。今回ちょっと何枚か、現像できないのがありますけれども、修正しておきましたので」って言われて。その方、ホワイトでね、他の部分を消してプリントしてくれてたんですよ。そんな写真、いらないじゃないですか。今、僕の手元に。

(中澤有美子)本当だ(笑)。

(安住紳一郎)まあ他人で、ちょっと疎遠になってる人も?

(みうらじゅん)そうですね。もう誰のチンかわかんないやつまでいるわけですよ。その写真もしょうがないからアルバムっていうか、入れるアルバム。貼るやつじゃなくて。あそこにバーッと入れといたんですけど。どうしようかなと思って。で、それにタイトルがないから、もうひとつなんか意味ないなとは前から気が付いていて。仕事場の本棚のところにもう何冊にもなってるんですよ。他人写真集。

で、そこにタイトルっていうか、背表紙にところに「他人写真集」ってこの間、書いてみたんですよ。そうやったらなんかグッと価値が出たような……。で、横には「俺写真集」っていうのはありますし。「ああ、これが対になってこそ思い出なんだ」っていうことが成立したんですよ。

(安住紳一郎)自分の目で見たものと向こうから見たもので?

他人写真集と俺写真集

(みうらじゅん)そうです、そうです。だから先ほど言った走馬灯も、都合よく自分が映るわけじゃないっていうことはだいたいちょっと予想してるんですよ。自分の目で見たものが思い出になるわけだから、他人写真集は貴重なんですよ。それを見て「ああ、この時、大騒ぎしたな」とか言って他人を見て我を思うみたいな……。

(安住紳一郎)ああーっ!

(みうらじゅん)今、いい話に持っていこうとしてるだけなので。あれなんですけども。

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ!

(みうらじゅん)うん。「他人写真集」というネーミングを考えたってことですよね。

(安住紳一郎)そうですよね。みうらさん、たまにぶっつけ本番でいいことを言おうとチャレンジしていますよね?(笑)。

(みうらじゅん)はい。割とね、ぶっつけ本番でいいことを言ったようなことになって。その後、もうすぐに原稿に書くことがあるんですよ。安住さんの番組、これ結構多くて。随分助かってますよね。

(中澤有美子)ひらめいて(笑)。

(安住紳一郎)今、途中からだってなんか急に背筋が伸びて。なんか神の啓示があったみたいに。「自分の目で見たものが思い出じゃないですか?」みたいな(笑)。

(みうらじゅん)そうそう。今ね、だいぶアクリルに飛沫を飛ばしましたよ。だいぶ、ええ。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)他人写真集かー。たしかに。

(みうらじゅん)タイトルさえ入れれば、皆さんも、困ってる人も、何か意味があるような気がしてくるから。

(安住紳一郎)「自分が写ってない写真はいらない」っていうね、そういう整理の仕方になるんですけど。あとね、やっぱりこう自分が写っていてもそこに何か違う、全く知らない人が写っていて。それが妙になんか意味あるものに見えてきたりとか。それが思い出の核になったりとかする時も……。

(みうらじゅん)でも、ひとつだけ問題は、他人をどこまで入れるかなんですよ。「俺、他人だったんだ」って後に言われる友達もいると思うので。でも大きく含めて「自分じゃない」っていう意味だから。まあ当然、親も他人写真集の方にいれてありますから。

(安住紳一郎)そうですか(笑)。他人写真集……これ、展覧会できそうですよね。

他人写真展

(みうらじゅん)これね、昔に俺、やろうと思って。ビームスっていうところに展覧会場ができた時に「他人写真展をやりたい」って言ったら「とりあえずその他人に承諾を得た方がいいんじゃないですか?」って言われて。「そうだよな」と思って聞いたら、「いや、何を言ってるんだ?」って。

当然、飲み屋だから連れてきたお姉ちゃんとかも写ってるんですよ。それはやっぱりマズいというになって。芸能人でもないのに言うんですよ。おかしな話ですけどね。だからとりあえずその展覧会をやった時は、開催の1時間前まで一応開けとくっていうことで。「剥がしたければ本人が剥がしに行く」っていうシステムにしようってなったんですけども……できなかったですね。それ。

(安住紳一郎)「見られたくない人は剥がしなさい」っていう?

(みうらじゅん)そうですね。朝の9時ぐらいから始めようかなと思って。展覧会を。

(安住紳一郎)フフフ(笑)。

<書き起こしおわり>

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