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町山智浩 映画『WAVES/ウェイブス』を語る

町山智浩 映画『WAVES/ウェイブス』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2020年6月9日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『WAVES/ウェイブス』を紹介していました。

(町山智浩)で、今日紹介する映画も実はそういう話なんですよね。『WAVES/ウェイブス』というタイトルの映画です。これはですね、4月に公開予定だったんですけどちょっとコロナで延びまして。7月10日に公開されます。これね、去年僕は見たんですけど。去年見た映画の中でも最も美しい映画のうちのひとつでした。

(山里亮太)美しい?

(町山智浩)フロリダを舞台にしていて。フロリダの素晴らしい青い空と青い海と、非常にそのフロリダの人たちってそのラテン系の人たち……キューバ系の人とかが多いんで。街とか服装とかが赤や青や黄色の色使いが非常に鮮やかなんですね。町とかが服装とかもう本当にものごく美しい映像にものすごく美しい音楽がかかる、本当にね素晴らしい素晴らしい映画でした。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ただね、ものすごく重い監督の経験が刻み込まれてる映画でもあったんですよ。で、この監督は前に紹介したことが。この監督の前の作品は『イット・カムズ・アット・ナイト』っていう映画なんですけど。それがね、パンデミックでものすごく感染性の強い病気が世界中に広がって、ほとんどの人類が滅亡して。山の中に感染を避けて住んでいる親子の話だったんですよ。

(赤江珠緒)ええっ! そうか……。

町山智浩『イット・カムズ・アット・ナイト』『ヘレディタリー/継承』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『イット・カムズ・アット・ナイト』『ヘレディタリー/継承』を紹介していました。

(町山智浩)そう。だから監督に僕、インタビューで話した時に「あなたの映画と同じになっちゃったね」って話をしたら「いやー、狙ったわけじゃないんだけど」って言ってましたけど。はい。それがものすごく怖いホラー映画になってるんですよ。その感染を怖がってる親子のところに別の親子がやってきて……という話でね。で、この監督はトレイ・エドワード・シュルツという監督で、1988年生まれの結構若い監督なんですけども。その怖い怖いパンデミックホラーから、その次のこの『WAVES/ウェイブス』っていう映画はものすごく美しいフロリダの青春ミュージカルになってるんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(山里亮太)ミュージカル?

(町山智浩)ミュージカルなんですよ。で、「WAVES」っていうのは「波」なんですね。人生には波があるって言うじゃないですか。その波なんですけど、最初はね、波に乗ってる状態なんですよ。主人公が。主人公はタイラーっていう高校生で、アフリカ系の黒人の高校生なんですけども。とにかく顔も良くて、勉強もできて、クラスで一番人気があって。親もお金持ちで……大金持ちなんですね。親は不動産デベロッパーをやっていて。で、スポーツ選手でレスリング部のエースで。ピアノも弾けて。

(山里亮太)無敵……。

(町山智浩)無敵なんですよ。恋人はね、ラテン系なんですけど学校で一番の美女なんですよ。

(山里亮太)ほー! 全てを手にしてる感じが。

高校の人気者とその父親

(町山智浩)そう。全てを手にしてるっていう感じで、まさに主人公が波に乗ってる状態から始まるんですけど。ただ、実は彼はひとつ隠してることがあって。試合中にレスリングで肩を壊しちゃってるんですね。で、ただそれが言えないんですよ。お父さんがものすごい主人公に過度に期待をかけてるんで。このお父さんがね、とにかくエリートで。黒人だけれどもビジネスで大成功してね。で、しかもレスリングの選手でもあったんですよね。それで息子にレスリングを仕掛けてくるんですけれども、それも容赦なくやってきて。「お前はまだ鍛え方が足りねえ!」とか言ったりしている親なんですね。で、これがね、『THIS IS US/ディス・イズ・アス』で黒人の3人兄弟のうちの1人のランダルを演じたスターリング・K・ブラウンさんが演じているんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうですか! ランダルが?

(町山智浩)はい。彼は『THIS IS US/ディス・イズ・アス』でも完璧主義者で。ビジネスもできる。体もめちゃくちゃ鍛えてて。

(赤江珠緒)たしかにそうだ。ルームランナーですごい走っているシーンがありました。

(町山智浩)ものすごい体、しててるでしょう? で、とにかくもう子供にも勉強をびっちり教えて……っていうもう超完璧主義者のエリートじゃないですか。全くそのままなんですよ。『THIS IS US/ディス・イズ・アス』と。だからすごいプレッシャーを主人公にかけてくるんですね。で、だから肩を壊しても言えないから、こっそりオピオイドっていう薬を飲んじゃうですよ。

(赤江珠緒)えっ、それはどういう薬なんですか?

(町山智浩)オピオイドっていうのはアメリカで一番問題なんですけど。オピオイド……「オピウム(Opium)」って「アヘン」っていうことなんですね。ヘロインみたいなもんなんですけども。アメリカの医薬品業界はそれを認可しちゃったんですよ。で、スポーツ選手とか老人が関節炎の痛み止めに飲んでるんですけども。それでものすごく大量にアヘン中毒者がアメリカ中に増えて。今までと違って、そのヘロインを打ったりする人じゃなくて、スポーツ選手の高校生、大学生と関節炎の老人の間でアヘン中毒が急激に増えて大問題になっていて。トランプ大統領も「これは緊急事態である」と宣言した病気の原因になっている薬がオピオイドっていうんですね。日本でも売り始めてますけども。それを飲んでいるうちにだんだん、まあはっきり言ってヤク中になっちゃうんですよ。その主人公の高校生が。

(赤江珠緒)怖いですね……。

(町山智浩)で、ヘロイン中毒になるとものすごくイライラするじゃないですか。

(赤江珠緒)いや……そうなんですか?

(町山智浩)まあ、すごく暴力的になってくるんですよ。「じゃないですか」って言ってもわかるわけがないんですけども(笑)。まあ、暴力的になってくるんですけど。それで大変なことになっていって、その人生の波のもう最悪の波が襲ってくるというのがこの『WAVES/ウェイブス』っていう映画の前半なんですよ。

(山里亮太)前半?

(町山智浩)前半なんですよ。で、この映画がすごいのは、ほとんどセリフがないんですよ。あまりセリフがなくて、画面を色で表現するんですよ。その恐ろしい心理状態であるとか、地獄になっていく感じとかを。だんだんと赤が増えていったりね。そういう形で……それで、この中間で完全にこの主人公は崩壊して。そこから主人公の妹の話になるんですよ。ところが、妹はお兄さんがすごい高校でスーパースターだったから、全く影が薄かったんですね。

誰にも相手にされなくて、友達もロクにいなかったんですけども。そのお兄さんが大変なことになってしまって……まあヤク中でね。それでそれが学校中に知れ渡って、友達が一切いなくなっちゃんですよ。で、居場所がなくなっちゃうんですけど、そしたらそれをどういう風に表現するかというと、その建物の中とかテーブルとか全てを青で統一するんですよ。だからブルーな感じっていう。

(赤江珠緒)へー!

色で主人公たちの心理状態を表現する

(町山智浩)この映画、すごくて。色で主人公たちの心理状態を表現してるんですけれども。で、そのどん底にある妹が、ある青年……ルーカス・ヘッジズくん演じる天使のようなハンサムな彼に優しくされて、そこから立ち直ろうとするという話が後半なんですね。ただこれ、このトレイ・エドワード・シュルツ監督にインタビューしたら言ってたのは「これは全部本当の話なんだ」って言うんですよね。「レスリングのコーチだった父親にものすごく厳しく鍛えられて、追い詰められたっていうのは自分自身のことだ」って言ってましたね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、彼はものすごくそれで……まあ、そのお父さんは自分のお母さんが再婚した人なんですけども。ただ、義理の父親になるんですけれども、ものすごく鍛えられて。で、レスリングをやらされたですが、上手くいかなくて。で、父親のプレッシャーでおかしくなっちゃったっていう体験を元にして前半部を書いたという風に言ってるんですね。で、後半は彼の恋人のことなんですって。その妹を主人公にしてるのは。だからこれ、すごくハードで激烈な話になってるんですけど。「リアルなのは本人たちの実体験だからだ」って言ってるんですね。ただ、すごく面白いのはそれを、こういう映画だとすごくセリフで……まあ日本の映画なんか特にそうですけど。セリフでいっぱい言うじゃないですか。

(赤江珠緒)うんうん。説明するというか。

(町山智浩)でも本当にね、極限までセリフがない映画なんですよ。

(赤江珠緒)それででも成立するんですね。色で心理状態を表す?

(町山智浩)色で表現して。すごいなと思いましたね。

(赤江珠緒)見ている方は違和感なくその色が変わっていくのとかについて行けるんですか?

(町山智浩)やっぱり表情とかもありますけど。でも、ついて行けますね。そのへんですごく冒険をしてる映画なんですが。この妹がね、その彼氏によって救われるんですけども。ルーカス・ヘッジズくんっていう、まあ最近すごくいい役ばっかりやってる人なんですけどもね。ところが彼にも実は問題があって。「実の父親が今、死にかけてるんだ。彼はアルコール中毒で体を壊して今、死にかけていて。実はほとんど育ててもらっていないんだ。ただ『死にそうだ』ってことを知ったんだけど、どうしたらいいだろう?」ってその妹に相談するんですよ。

(赤江珠緒)うん。

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