小堺一機さんが2020年5月24日放送のTBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』に出演。勝アカデミー在籍時に勝新太郎さんご本人から聞いた黒澤明監督の映画『影武者』降板の理由について話していました。
(太田光)そこからでも、勝新太郎さんのところに行くっていうのがまたね。
(田中裕二)それが意外だったんですよね。このプロフィールで。
(小堺一機)だから『ぎんざNOW!』がね、終わっちゃって。その頃、僕はプロでも何でもないじゃない。学生でしょう? で、あるディレクターさん預かりみたいな感じで、そこからギャラをもらったりしていたんですよ。それで、終わっちゃったから。でも、なんとなく今、辞めると……まあ学生時代の思い出として始めたんだけど今、辞めちゃうとなんか後悔しそうな気がして。で、将来会社に普通に入っても、酒を飲むと「昔、俺テレビ出てたんだ」ってわけのわかんないことを言い出すジジイになるんじゃないかって。それで「ああ、小堺さん、またテレビの話を始めたよ……」って。
(田中裕二)フフフ(笑)。
(小堺一機)で、親に「とりあえず3年だけやらせてください」って言ったんですけど。それでそれまで明るかった親が俺がテレビに出た時にシーンとしちゃってね。それで「3年だけ、ちょっと見せてくれ」って言って、「じゃあ、やってみろ」って言われて。そこからズルズルと今まで来ております。
(太田光)それで勝さんを訪ねて?
勝アカデミー入り
(小堺一機)それで終わっちゃったんだけど、でもなんかしてないと……バイトして、イベントの司会とか、そういうのはやっていたんですけども。それ以外に何もしていないとやっぱり、実家だしね。体裁が悪いでしょう? だから「なんか勉強してる」っていうふりじゃないけども。どこかに入ろうと……そしたら勝さんの勝アカデミーの募集があったんですよ。で、ちょうど映画『影武者』をやるんで。それをやるにあたって後進も育てたいっていう風に勝さんが思っている。それで学校を作るっていうことで。「ああ、俺は俳優座とか文学座はたぶん受からないけど、勝さんは面白いから受けてみよう」って思って受けて。そしたら、受かっちゃった。
(太田光)じゃあ『影武者』騒動の時は間近にいたんだ。見てたんだ!
(小堺一機)いたの。どうして辞めたのか、教えてくれた。
(田中裕二)へー! すごい!
(小堺一機)それで朝、新聞を見て。勝さんが黒澤明さんとぶつかって辞めちゃったって。もうみんな「ええーっ!」って言っていて。で、その頃まだ勝さんはね、ちょこちょこ学校に来てたんですよ。学校自体がないから山野ホールの教室を空いている時に借りていて。で、勝さんが来るということで。それでルー大柴も同級生で。
(太田光)しかしルーさんもなんでまた勝さんのところにいたんだろう?(笑)。
(小堺一機)(モノマネで)「わっかんないんだよ、俺も……」。それで、みんなが「今日、勝さんが来る日だね。話、するかな?」って言っていて。みんな「しないよ。俺たちみたいなペーペーになんか、しないよ」って言っていて。それで俺は「いや、勝さんって絶対にね、下だ上だっていうことはなくて、ここを盛り上げようとする人だから。きっと俺たちにも話すよ」って言って。
それで「本当だな? 本当だな?」ってなって。「どっちにする?」ってなって、やったんだね。そしたら、勝さんが来て。最初は普通の芸談っていうの? (モノマネで)「芝居っていうのは……」って言っていたんだけど、そのうちに(モノマネで)「なんか……違う話が聞きてえっていう顔してんな?」って。
(太田光)ああっ、わかっていてね!
(小堺一機)そう言うのよ。それでみんな「ああっ!」って思ってね。(モノマネで)「じゃあ、なんで俺が『影武者』を降りたか、わかるか?」って……だってさ、コッポラが来ていて、スピルバーグが来ていて。「世界配給は僕らがやりますから、撮ってください」って……もうすごいことだったわけよ。それで変な話、勝プロにだってすごいインカムが来るわけじゃないですか。それを辞めちゃったなんて、どういうことなんだろう?って。それでみんな「あの、お芝居のポリシーが合わなかったんですか?」とかって言ったら(モノマネで)「うん……違うよ。そんなんじゃないんだよ。俺は、俺は武田信玄の扮装をずっとしていた」って。黒澤さんって扮装をずっとさせるじゃないですか。
(太田光)ずっと勝さんもこだわって?
(小堺一機)だから要するにトレーディングウェアなんかで稽古しないんですよ。黒澤さんも。役者だったら本当に刺して……ってしていて。その時に、ビデオテープを撮っていたとかっていうことが元なんだけども。「私が撮るんだから。それは監督が2人いることになるから、勝さんは辞めてくれ」って黒澤さんが言ったら、勝さんが「いや、これは自分用だから撮らせてくれ」って。そうなったんで……まあ、他にもあるんでしょうけども。で、勝さんが「俺は私服だったら謝っていた」って言うんですよ。
(太田光)ああ、そうか。「信玄だから」っていうことなんだ。
(小堺一機)「俺は信玄なんだ。武田信玄に黒澤明がなにを言う?」って言っていて(笑)。
(太田光)すげえ! かっこいい!
(田中裕二)なるほど!(笑)。
「武田信玄は謝らない」
(小堺一機)それでみんな「はーっ!」って思ったけど、帰りの酒場で「ちょっとおかしくねえか?」ってなって(笑)。
(太田光)フハハハハハハハハッ!
(小堺一機)自分だってスタッフもいれば、会社のそれを盛りたてている人も……もちろん、そういうタイプの人だしね。で、仲代達矢さんにも聞いたんです。仲代さんと勝さんも仲がいいんですよ。
(太田光)仲いいんですよね。だって仲代さんが勝さんの仲裁に入ろうとしたんですもんね?
(小堺一機)そういうこと。で、勝さんも仲代さんに聞いたんだって。これは仲代さんから聞いたんだけども。「どうしたらいいんだ?」って言ったら「駒になれよ。(監督の)駒になるんだ。勝さんがそういうタイプの人じゃないことは知っているけども。『こうもできる、こうもできる』って……」って。「それで『うん』って言っていたんだけどね」って。もう、天才同士だから……。
(太田光)両雄並び立たずというかね。
(小堺一機)見たかったっていうのはあるけどね。
(太田光)見たかったけどお、それを言われると仲代さんが辛いというか。
(小堺一機)仲代さんにも失礼なんだけども。でも、ある種そういうことですごい伝説を残してくれましたよね。
(太田光)たしかにね。だから、本当にでも勝さんも当時、当時、それこそ『座頭市』で自分も監督もやってましたから。そういうのもあってお互いにだから……もうちょっと、だからお互いが折れればね。
(小堺一機)この頃、いろんなSNSを見ると、それについて書いている人がいて。「今だから言えるけど、本当に2人のどっちかがちょっとずつ譲歩すればよかったのかもしれない。今だから言えるけど……」みたいに書いてあってね。
(太田光)まあね。あの時に俺がいれば……。
(田中裕二)お前はまだそのへんのハナタレ小僧だろうがよ!
(太田光)フハハハハハハハハッ!
(小堺一機)「まあまあまあ……」ってね(笑)。でもまあ、いろいろと聞きましたよ。後ろに立っている小姓さんとかの役で勝アカの仲間がバイトで行っていて。だから、ここではちょっと怖くて言えないこともあるけど(笑)。
(太田光)そうですか!
(田中裕二)いろいろと見ているんですね。
(小堺一機)リアルな話をね。萩原さんの件とかね。
(太田光)ああ、そうなんだ!
<書き起こしおわり>