(角田龍平)それはわかります。だからはあまりにも敵が見えないから、敵じゃない人までね、なんか疑心暗鬼にかられてしまったりする部分とかが残念ながらあって。この番組でもいつもディレクターにストップウォッチを渡してもらうんですけど、そのストップウォッチを僕ね、除菌シートで拭いてしまったりとかしていて。だから普通の日常の時にそれをやったら、本当に失礼なやつじゃないですか。でもそういうことをしているぐらい、僕も警戒心があって。でもね、それをした方がいいかもしれないし……だからすごいそのへんのなんというか、距離のとり方が難しくて。
(杉作J太郎)そうですよね。そして自分がそれに今、侵されているかどうかも分からない病気じゃないですか。発症をしないから。たとえばそれで……たくさんそういう方がいらっしゃると思うんですけど。家族にご病気の人がいたりとかね、それとか友達の家族にご病気の人がいたりとか。たとえば、自分がもしかしたら今、かかってる可能性もあるとかなりますとね、これは本当に僕、悪魔みたいな病気だなと思ったんですよ。
一番最初に聞いた時にね。だから人を……本当に今、角田さんがおっしゃったみたいにね、自分も含めてだけど自分以外の他の人が全部敵に見えるようなね。それで、その正体はわからなくて。いやー、これはもうね、えらいものが流行ってしまった。だから結局、人のことを憎んだりとかしちゃうんですよね。いわゆる、「そこから病気が出た」とか「そのあたりの地区から出たじゃないか」とかになると、その方に行くのが嫌になるとかね。
(角田龍平)そういう方向に行っちゃってますもんね。
(杉作J太郎)今、完全にもう……だから人間が人間を嫌うっていうかね。人と人との絆を断ち切っていく病気だから。
人と人との絆を断ち切っていく病気
(角田龍平)そうなんですよ。今日、昼に娘を連れて自転車でサイクリングしてたんですけど。それでま、あるところで「ちょっと歩いてみようか」って言って降りて。一緒に手をつないで歩いてたんですけれども。十分に距離を取った、親子でマスクしてはる人が前方から歩いてきた時に、私の3歳の娘が「人、怖い」って言ったんですね。で、別にそんな……まあコロナのテレビをやってるのを一緒に見たりする時もありますけど。娘に言ってるわけでもなく、ただ大人が買い物に行ってレジに並んでる時、「後ろのおばちゃんがえらい詰めてきたわ」みたいなことを夫婦で言っていたりするんですよね。だからそういうのを3歳でも聞いてるのか、「人が怖い」って言いだした時に、「これはどうしたらいいものか……」と。
(杉作J太郎)いやー、これね、本当の長期化を……まあ、今もうすでに長期化してるって言っていいと思いますけど。全く新しい世の中にたぶんなっていくんだと思うんですよ。で、それってやっぱり人間と人間との関係がすごく希薄な時代が訪れようとしてますよね。
(角田龍平)物理的に距離が開いたままになっちゃうのがね、これ以上続くとそうなっちゃいますよね。
(杉作J太郎)だから昔、アリスのコンサートとかで「ハンド・イン・ハンド」とかって言って。谷村新司さんが「みんなで手をつなごう」なんて。それで本当にコツコツコツコツやってきたことがね、今は全部できなくなってますからね。
(角田龍平)そうですもんね。
(杉作J太郎)あとは宇宙人を呼ぶ時とかにほら、「ベントラ、ベントラ」とかさ。
(角田龍平)そうですよね。円になって(笑)。
(杉作J太郎)それとか、コックリさんなんかもやりにくくなりますよね?
(角田龍平)やりにくくなりますよね(笑)。そういう弊害も起こっているでしょうね。
(杉作J太郎)うーん。だから……このまま続いたらこれ、どうなるか? たとえば、ほら。飲食店なんかでも、食堂なんかもテーブルとか椅子をもう半分、潰してるもんね。
(角田龍平)ああ、今日も持ち出しての、見かけましたね。
(杉作J太郎)そうでしょう。だから隣のテーブルを全部潰したりしますよね。だから市松模様っていうか、白黒で言ったら白のところに全部人を入れないように……みたいな。互い違いに。だから、これはね、世の中全体が……まあ、収束はするとは思うんですよ。いつの日かね。ただ、それまでのこの時間の中で何かが芽生えてしまってるような気がして、僕は本当に怖いですね。あとはね、僕はやっぱり今回のことで思ったのは、「やっぱり一番怖いのは人間だな」って僕、そういう風に思うけど。この病気で始まって僕、一番最初に怖いなと思ったのは「何でもない」って言う人が怖かったですね。
(角田龍平)ああーっ。
「何でもない」って言う人が怖い
(杉作J太郎)だって「どう考えたって、何でもなくはないだろう?」と思ってね。だって年配の人なんかすぐ亡くなったりしてしまうんですよ。疾患のある人とか、年配の人とか。「それを『何でもない』って言い切れるお前はすでに人間関係が希薄だろう?」みたいなね。だから、「新型コロナによって」ではなくて、もともと希薄な、ある意味コロナみたいな存在が育ち始めていたのかもしれないぐらいに思いましたよ、僕は。だって「お年寄りが死ぬ」とか言っても「何でもないよ」みたいな感じの人、いますからね。
(角田龍平)だからそういうのがこのコロナをきっかけに顕在化しちゃったみたいな?
(杉作J太郎)うん。だからこういう時に「何でもない」っていう風に言う人ってね、本当に僕は厄介だなと思いました。たとえば……あんまりい嫌な話をどんどん言うことがないとは思うけど。たとえば、戦争が始まるとかね。そういう時もそうだと思うんですよ。やっぱり「なんてことはないじゃないか」っていうことでどんどんどんどん行っちゃうんだと思うんですよね。
「大したことはないじゃないか」でどんどんどんどん……それで気がついたらもう戦争が始まっていた、みたいなね。それでたとえば、もう戦争だけに限らないけど。大災害が起きる時って絶対に僕、それがあると思うんですよ。すごい用心して結局無事に済んだならそれでいいと思うんだけど。たとえば災害が起きても「何でもないよ」とかね。映画の『八甲田山』なんてのもそうだったけども。やっぱり「何でもないよ」ってことはないと思うんですよ、本当にね。
(角田龍平)どんなパニック映画でも「何でもない」って言う人が最初に現われますもんね。
(杉作J太郎)現われます。それで若干、そう言ってる人ってかっこいいですよね。その瞬間はね。なんか他の人より賢く見えるですよ。それで僕や角田さんみたいに「コロナ怖い!」とかって言っていると、「よっぽどちんちくりんな人生を送ってきたんでしょうね」みたいなね。「いやー、今まで何もない人生を送ってきたんでしょうね」みたいな。いや、僕は全く逆だと思いますよ。海千山千みたいなところを歩いてきてる人ほど、怖がっていると思います。僕は。
(角田龍平)うーん。私もね、自分の人生経験は別に豊富ではないですけれども。
(杉作J太郎)いやいや、角田さんは豊富だと思いますよ。そりゃあ辛い思いもされているしね。
(角田龍平)ただその、43年間の人生で今、最大の危機が訪れたっていうのは思ってますね。
(杉作J太郎)そうでしょう。これはだって、だから僕はね、ラジオはまだね、結構やっていますよ。ラジオ局、ラジオ番組なんかでも警鐘を鳴らすような……そういうアタックとかジングルとかもありますしね。やっていますけども。ニュースなんかもう結構こまめにやってますけど。僕はやっぱり今、一番どうなってるんだろう?って思うのは、やっぱりテレビのバラエティーとかね。まあ今、さすがに減ってきてるとは思いますけど。2月、3月ぐらい……特に3月になってもまだ、普通のバラエティー番組を平気でやってましたからね。
(角田龍平)やっていましたね。
(杉作J太郎)そして僕は本当に大変な事態なんだから、それを踏まえた上で笑ったり、明るくやっていきましょうっていうのなら僕はありだと思うんだけども。それを「何もなかった」みたいな感じでね、「それを忘れさせてくれよ。笑わせてくれよ」みたいな。たとえばそういう聴取者の方もいらっしゃると思うんですよ。でも僕はやっぱりね、その方にももう1回、ちょっと考えてもらいたいと思うんですよね。あなたはタフだからそれでいいかもしれないけど、世の中には……ラジオ聞いてる方の中にはお年寄りの方もいればね、疾患を持っている人もいて。大変に怖がっている人とか、辛い思いをされてる人がいるはずなので。
(角田龍平)そうですよね。
(杉作J太郎)さらに言えば……だって他の病気で倒れてる人の場合はリスクがね、より高いって言うじゃないですか。だから他の病気で療養中の方なんかも聞かれてると思うので。これをね、何もなかったことにして「笑いだけを」って言われてもね、それは無理だろうっていうね。
<書き起こしおわり>