杉作J太郎と吉田豪 昭和のスター・山城新伍を語る

杉作J太郎と吉田豪 昭和のスター・山城新伍を語る JFN

杉作J太郎さんと吉田豪さんがJFN『スキマから聴こえてくるラジオ』に出演。昭和のスター、山城新伍さんについて話していました。

(杉作J太郎)『スキマから聴こえてくるラジオ』。今日は私、杉作J太郎と……。

(吉田豪)吉田豪が昭和のスターをテーマにお届けしています。時間がすぎるのは早いもので、最後の1人となっちゃいましたね。Jさん、最後はあの方がいいんじゃないですかね。

(杉作J太郎)うん。山城新伍さん。

(吉田豪)はいはい。最近なんかJさん、「新伍さんに対して世間が誤解している」みたいなことを言っていましたよね。

(杉作J太郎)あの、誤解ではないのかもしれないんだけど、あまりにも1つの方向だけの新伍さんの話しかいまね、みんながしなくなっているから。「いや、そうじゃないんじゃないかな?」っていうのをかなり気合いを入れてね、書かせていただきました。

(吉田豪)『不良番長 浪漫アルバム』で。

『不良番長 浪漫アルバム』

(杉作J太郎)はい。これは相当気合いをいれて作った本なんで。ぜひ読んでいただきたいですが。

(吉田豪)簡単に言うと、どういうことですか?

(杉作J太郎)簡単に言うと、山城新伍さんはやっぱり映画が大好きなんですよね。

(吉田豪)映画は異常に好きで、本も出していますからね。監督もして。

(杉作J太郎)映画が好きっていうことは観客が好きであり、見に来るお客さん、人が好きなんですよね。で、みんなに喜んでもらうためにはどうすればいいか? みたいなことをずーっと考え続けてきた方なんで。あの、その山城新伍さんが一方からだけの見方で、ちょっとあまりにも悪く言われているとね、僕はちょっと納得がいかなくてね。

(吉田豪)まあ、悪く言う人を僕もたしかに直接会ったこともありますけど。

(杉作J太郎)それがね、たぶん悪く言っていたのも、僕も聞いたことがあるんですよ。実は渋谷の喫茶店でね、昼間お茶をしていたら、近所の薄暗い喫茶店でしたけど。女の子5、6人がね、新伍さんの悪口を言っているんですよ。

(吉田豪)ええっ?(笑)。女子5、6人でその話題になりますかね?

(杉作J太郎)あのね、共演してたっぽいんだよ。さっきまで。おそらく、渋谷のビデオスタジオ。あそこで。そして、「絶対にもう仕事したくない」とか言ってるんですよ。「なに、あの人?」みたいに言っているんですよ。でも、その子たちの話す雰囲気から言って、「お前らが悪かったんだろ?」って僕は思ったんですよ。

(吉田豪)うん。

(杉作J太郎)で、新伍さんがそれをたぶん注意したんだろうけど、それをたぶん、「最悪だ!」って言っているわけ。で、新伍さんのことで文句を言う人っていうのは思い出してみるとね、みんなやっぱり現場で厳しくされた人たちなんですよ。僕はね、新伍さんはやっぱりものを作るのが好きだから。ちょっと心得違いというか、ちょっとおかしいことをしている人にそれは注意というか厳しく言っただけで、その人の人格を否定したわけでもなければね、その人をいじめたわけでもないんじゃないかな? とは僕は思いますけどね。

(吉田豪)僕は「本当に大好きなんですよ」って言って会いに行ったら、ものすごいいい人でしたけどね(笑)。

(杉作J太郎)そうでしょう?

(吉田豪)そこからはサービスしかしてくれない感じの。

(杉作J太郎)うーん。僕も一度だけお会いすることができましたけど。全然そういう感じの人じゃなかった。伝わってくるのは、芸能・芸術がね、もう大好きだっていうのは伝わってきましたけど。

(吉田豪)あと、根のインテリジェンスな部分と。

(杉作J太郎)そうですね。それと、差別とかそういうのが嫌いな人でしたね。だから、人をいじめるとかいうのはね、僕はピンと来ないんですよね。ええ。うーん。まあ新伍さんはでも映画俳優、芸能人として、まあ独特な方でしたね。

(吉田豪)特異なキャラクターですよね。

(杉作J太郎)ええ。映画というのは基本的に台本があって。その台本を再現していく。人によっては一字一句変えただけでも監督なんか怒りますけども。新伍さんはたぶんね、日本で最もアドリブを……あと、その場で思いついたこととか、「こうした方がいいだろう」とか、「ここでこれ言ったら、この人は怒るだろうな」とか。そういうのを映画の中でやったナンバーワンが日本では新伍さんでしょうね。で、二位が松田優作でしょうね。

(吉田豪)ああー、はいはいはい。

(杉作J太郎)で、2人とも映画大好きなのよ。

(吉田豪)ですね。

日本映画のアドリブナンバーワン

(杉作J太郎)映画が大好きな人だからこそ、できることで。その証拠にね、新伍さんとか優作さんがアドリブで、たとえばね、これは優作さんですけど。平泉成と共演をしていて、役の通りに話さなきゃいけないんだけど、会った瞬間に「あれ? あんた、平泉さん?」とか言っちゃうわけですね。

(吉田豪)やってましたね。

(杉作J太郎)それはね、パッと挟むんだけど。山城さんも随分、「あんた、○○?」っていうのを入れてくるの。あのね、リズムがかえって良くなっているんですよ。僕、元の台本とかも見ましたけど、新伍さんがひとつ入れることでね、リズムがさらによくなっている。だから、映画が好きな人だからこそできる……それで、内容も崩していないわけです。好きすぎてできてしまうことだから。あれはやっぱり、よく映画を理解していない人がやると大失敗すると思いますね。

(吉田豪)うんうん。

(杉作J太郎)だから、理解をしている人がやっているから、それをね、フィルムに残っているわけで。あれ、つまんなくなっていたらカットされて、削られて終わりですから。新伍さんのあのアドリブは一見の価値があると思いますね。

(吉田豪)あの軽さを持っている役者さんってあまりいない気がしますよね。

(杉作J太郎)うん。ないと思います。それはね、新伍さんは元々京都で時代劇をちゃんとやっていたから。

(吉田豪)ちゃんとやっていた人ですよ。

(杉作J太郎)この時代劇の芝居っていうのはどっちかって言うと型通りで、ちょっと古いんですよね。どうしても。で、新伍さんはもしかするとね、その古い感じを払拭するために、わざとというか、軽い感じの……で、古いタッチの時代劇スターの方々はね、新伍さんよりも売れていた人とか、新伍さんよりもスターがたくさんいたんですよ。昔は。でも、みんないなくなっているんですよ。結局。だから新伍さん自体も、実際問題京都でちょっと落ちてくるんですよね。どんどん。現代劇とかが増えて。

(吉田豪)はいはい。

(杉作J太郎)そこで新伍さんが東京に来て、出たのが『不良番長』シリーズでね。そこから新伍さんの軽いタッチが始まるわけですよ。新伍さんのひとつの生き残るための作戦としてね、軽い感じと女性のネタ。

(吉田豪)はいはい。チョメチョメトーク系のね。

(杉作J太郎)それを入れてきたんじゃないか? とは思いますけどね。

(吉田豪)それがテレビの司会者として成功する道にもつながっていくと。

(杉作J太郎)そうですね。女性相手にね、いやらしい話をたくさん生放送でしていくわけなんですが、これもね、僕は音源をいくつか当時のを持っているんですけどね。聞くとね、かなりの内容のことを生放送でしゃべっているんですよ。潮が吹くとかね。直接的なセックスの話をずいぶんするんだけど、それがね、そんなにいやらしく聞こえないんですよ。なぜかと言うとね、ところどころに今度は逆なんですよ。時代劇で会得した古い感じのしゃべり方を途中途中で渋く挟み込んでいくわけですよ。すると、ただのエロい人には聞こえないわけですよ。

(吉田豪)そういう時は軽さでは押さないっていうことですね。

(杉作J太郎)若干の重さを出してくるわけですよ。「君たちは文化がわかっていないね」みたいな。

(吉田豪)ああ、はいはいはい。ありますね(笑)。

(杉作J太郎)それが入ってくるわけですよ。だからいままでにたどってきた道を全部、捨てないまま上手く使いながら、常に新しい世界を作ってきた。それが僕は山城新伍さんだと思うんですけどね。

(吉田豪)あの、勝新太郎&若山富三郎兄弟について書いた『おこりんぼさびしんぼ』っていう素晴らしい本があって。僕が文庫化に協力とかもしたんですけども。

『おこりんぼさびしんぼ』

(杉作J太郎)うんうん。

(吉田豪)あれがだから、この兄弟がだんだん現代と合わなくなっていく寂しさについて書いた本だったんですけど。それを書いた山城さんもだんだん現代と合わなくなっていってっていう……。

(杉作J太郎)うーん、本当ですね。うーん。

(吉田豪)ねえ。ちょっといろいろ寂しい気がしましたね。

(杉作J太郎)うーん。昭和という時代は光り輝いていたけど、その光り輝かせていたけど、気がついたら周りが別の光で満ちてきていたんだと思います。それは。それと、なんか光り方も変わってくるし、活動の仕方も変わってくるしっていうことでね。スターがゆえの寂しさは、スターだった方にはあると思いますね。

(吉田豪)うんうん。

(杉作J太郎)スターじゃなければね、時代時代に合わせていけばいいんだけど。やはりスターは、自分から時代に合わせていくわけにはいきませんからね。うーん。だから晩年、梅宮さんにも会わなかったっていう話じゃないですか。あんだけ仲が良くてね。だって、みなさんそうですよね。美空(ひばり)さんなんかも最後は寂しかった。みんなに囲まれて、みんなに祝福されていなくなるっていうことはスターの場合、逆にないんじゃないですかね。

(吉田豪)ただ新伍さんね、誰とも会わなくなった頃も川上麻衣子とだけは会っていたのがちょっとね、その女好き感が残っていて。「いいぞ!」と思いましたけどね(笑)。

(杉作J太郎)(笑)

(吉田豪)「ピンポイントでそこか!」っていう(笑)。はい。そんな感じで1曲、聞いてもらいますかね。Jさん、曲紹介をお願いします。

(杉作J太郎)はい。山城新伍さんの監督作品『せんせい』の主題歌です。上田正樹さんで『望郷』。

<書き起こしおわり>

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