町山智浩『アップロード~デジタルなあの世へようこそ~』を語る

町山智浩『アップロード~デジタルなあの世へようこそ~』を語る たまむすび

(町山智浩)そう。具体的には「あの世」じゃなくて「あの世とこの世の間」ですよね。でも、体は壊れちゃっているんですよ。死んだ場合、体は壊れているから、心だけはバーチャルの世界の中に入っているんですけども。データがアップされているんですけども。お葬式をやる時はインタラクティブにですね、自分のお葬式の出席者とかを見れるんですよ。これね、嫌ですよ。お互いに。

(山里亮太)嫌ですよね。

(外山惠理)たとえば、この世で車椅子だった人はそのままだっていうことですか? 歩けるようになったするとかじゃないんですね?

(町山智浩)いや、それは全然できます。この主人公の友達の軍人は戦争で両足を失ったんで、自殺してあの世で足もある状態で自由にやってるっていう設定です。あとね、イケメンにしたりとか、若くしたりもできるんですよ。

(外山惠理)なんでもありなんだ。

(山里亮太)でも、それもお金ですよね?

全ては金次第

(町山智浩)お金があればね(笑)。あと、服もやっぱりあの世で買うんですけど。これもお金がかかってるんですよ(笑)。だから金を取ろうと思えばいくらでも取れるわけだから。

(外山惠理)結局お金持ちがなんでも得をする。お金持ちが楽しいわけですよね?

(町山智浩)そう。大富豪が死んでここで自由にやってるという姿も出てきます。でもね、オンラインゲームって結構そうで。武器とか装備とか、お金で買うんですよね。

(山里亮太)課金をして。

(町山智浩)そう。課金して。どんどんどんどんお金を注ぎ込む人がいるんですけども。現実ではボロボロの服を着てるのに、ゲーム中ではお金をかけてものすごい服を着ていたりするんですよ。そうそういう世界ですよ、これ。これね、コメディなんですけどいろんなことを考えさせられるんですよ。だってこれ、データを……まあ今現在、研究されているアップロードって要する脳の中のいろんな考えとか心とか記憶とかをデータ化するっていうことじゃないですか。これをコンピューターに入れるっていうのは、2つに増やしちゃうことにならないのか?っていうことなんですね。

(外山惠理)うんうん。なるほど。

(町山智浩)それは複製に近いわけで、まず下手をすると心のコピーができちゃうわけですよ。元の方の脳を潰さなければね。でも、潰さなくてもアップロードすることはできるわけですから。心が2つに分かれてしまう。この中では闇市が出てくるんですけど。ブラックマーケットがあって、そこではセレブの意識が売られてたりするんですよ。記憶とか。だから「あの芸能人の記憶がほしい!」っていうと、自分の好きなアイドルとかがシャワーを浴びていたりするのを買えるんですよ。その部分だけデータで。その自分の好きなアイドルが誰か彼氏とエッチしてるところの記憶を買ったりとかしてるんですよ。

(外山惠理)はー! 怖い……。

(町山智浩)あと、霊魂とは何か?っていう問題もあって。このヒロインのノラのお父さんは「アップロードしたくない」って言ってるんですよ。彼は霊魂を信じてるから。「死んだら本当のあの世に行って亡くなったカミさんに会いたい」って言ってるんですよ。「だからアップロードしないでくれ」って言ってるんですけど。人間っていうのはデータだけのものなのか? それとも霊魂、つまり「ゴースト」とか「スピリット」と言われているものはあるのか?っていう問題もあるんですよね。これ、実はね、バカバカしいギャグが多くて笑わせるんですけども。でも、すごくいろんなことを考えさせるんですよ。

(外山惠理)うん。考えちゃう。

(町山智浩)あと、そのバーチャルリアリティーの中でずっと保存されて生き続けてる人で一番悲しいのは、自分のことを思い出したり、お墓に来てくれる人がどんどん減っちゃうっていう話で。

(山里亮太)そうですね。

(町山智浩)そう。だんだん忘れられていくっていうね。それ、怖いっていう。「それだったら、もうこんな風に生かしてくれないで、本当に殺してくれ!」って言う人も出てきたりするんですけど。そういうね、ちょっと馬鹿馬鹿しいようでね、すごく考えさせられて。しかも、それが実現に向かっているというね、恐ろしい話がこの『アップロード』です。

(山里亮太)これ、ノンフィクションになる日が来るかもしれないっていう。

(外山惠理)ねえ。来るかもしれない。

(町山智浩)2045年って言っていますからね。これはもうすでにアマゾンプライムビデオで配信が始まっています。

『アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~』予告編

(外山惠理)ああーっ! また入っちゃうかもあら。アマゾンプライムビデオで配信中ですね。

(町山智浩)はい。1話30分です。

(山里亮太)見てみよう。

(外山惠理)ありがとうございました、町山さん。

(町山智浩)はい。どうもでした。

<書き起こしおわり>

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