(R-指定)でも、これはホンマに勇気づけられるっていうか。で、この時ぐらいから……いつぐらいからライムスターってライブが自分たちの武器というか。俺、見ましたよ。最近ののそのぴあでの連載も。47都道府県のいろいろなところでのも。あれもめちゃめちゃ勉強になりましたから。だから、そんだけライブがいかにヒップホップアーティスト……まあアーティストのみならず、音楽やってる人も。ライブの重要性みたいなのとか、ライムスターにとってのライブの位置付けみたいなところをちょっと聞きたいなっていう。
(宇多丸)でもまあ、リリースがポンポンできる状況じゃないし。今みたいに曲を作ればとりあえず発表するとかも当時はできないですから。まあ、ライブしか場がないのはみんな同じことだし。あと、やっぱり何度も言いますけども。やっぱりペイジャーに勝たないと。
(R-指定)なるほど。うわっ、すげえな!
マイクロフォン・ペイジャーへの対抗意識
宇多丸・Creepy Nuts・サ上 RHYMESTER『ユニフォーマーズ宣言』を語る https://t.co/apAW4qUFcd
(宇多丸)俺たちなりにやっぱり「でも、自分たちはこうだから」っていう。要するにペイジャーみたいにはできないし。それも違うっていう感じで。たぶんそういうシーンに対して…— みやーんZZ (@miyearnzz) April 11, 2020
(宇多丸)ペイジャーに勝つというか、回答をしないと……っていう。だから、彼らと同じことをするんじゃなくて、彼らに対して反論するでもいいんだけども。とにかくペイジャーに回答をしなきゃいけないから。だから彼らをギャフンと言わせるために本当に工夫するし。だからもう本当に、あのスラムダンクディスコっていうムロくんが開いていたパーティーに俺ら、出て。キミドリがいて、ECDがいて。ユウちゃんもいて。後のSHAKKAZOMBIEチームもいたし。LAMP EYEチームもいたりとか。SOUL SCREAMもいたし、メローイエローも来て……みたいな。
(DJ松永)うわっ、もう全員じゃないですか。すごいな……。
(宇多丸)東京のそういう人はもうみんないて。だからもう客なんかいないんだよ。
(DJ松永)ええっ、そんなメンバーがいるのに、客はいないんですか?
(宇多丸)客はいたとしても、後のオースミみたいな。
(DJ松永)目立つなー!
(サイプレス上野)デカいなー!
(宇多丸)で、そのオースミくん。まだSHAKKAZOMBIEっていう名前がつく前のオースミからもらったデモテープ、まだきっちりと取ってありますからね! で、やっぱりお互い、仲がいいんだよ。一緒に飲んだり、メシを食いに行ったりとかもするんだけども。でも、やっぱりライブというか、そこで「今月、やつらはどう来るのか?」みたいな。だからそれこそ、ルーパーの家で。これはもう対ペイジャーっていうだけじゃなくて、対EAST ENDも俺ら、もうすごいお互いにバチバチで。だってリハで手の内を見せたくないから、わざと違うリハをやったり……。
(DJ松永)カマしあい。最高!
(宇多丸)わざと全然違う曲をやって。「こんなもんか」って思わせておいて。それで本番で前回、EAST ENDがやった曲のアンサーソングみたいなのを急にやり出すとか。
(サイプレス上野)うわっ、ヤバいなー。最高だなー!
(DJ松永)ヒリヒリするな、それ。
(宇多丸)それで、たとえばライブルーティンを作っていく。だから「この(レコードの)2枚使いであの曲をこういう風にやればいいんじゃないか?」とか。
(DJ松永)それはマジで磨かれますね。
(宇多丸)磨かれる。だから僕らだけじゃなくて、お互いにそこで切磋琢磨していた時代でございまして。で、そうこうするうちにそこにキングドラやBUDDHA BRANDがドーンとやってきて。
(サイプレス上野)外来種としてね。
(DJ松永)その時、ライブで一番ヤバいなと思ったのは誰ですか?
(宇多丸)やっぱりでも当時のTwigyのもう神がかり的な……。
(DJ松永)そうなんだ。Twigyさんだ!
(サイプレス上野)やっぱり違った感じですか?
(宇多丸)いや、もうもうもう……神がかり的ですよ。
(R-指定)それは、言うたらライムスターのライブってホンマに工夫して、いろいろと構成を練ったりとか。お客さんとのコミュニケーションとかっていうところの上手さとかってホンマにあると思うんですけども。やっぱりTwigyさんはまた別のタイプっていうことですか?
(宇多丸)でもTwigyなりにやっぱり……だから詳しくは以前、メローイエローのK.I.Nちゃんとやった、少なくとも日本で最初にトップオブザヘッドのフリースタイルを客前ではじめてやったのはK.I.Nだっていうやつで。で、K.I.NちゃんはTwigyがステージングのやつでトップオブザヘッドっぽいことを試みようとしているっていうのを見て。それでK.I.Nちゃんは前からそれをやろうとしていて。Twigyのそれにかぶせて始めたっていうのがそのスラムダンクディスコでトップオブザヘッドのフリースタイルが始まった瞬間で。
(サイプレス上野)それが生まれた瞬間。
(宇多丸)それで俺も言われて「ああ、そうだ」って思ったんだけども。Twigyがステージを指して「ここの四角がナントカで……」って始めたのね。というような。だから、それぞれのやり方で。
フリースタイルラップ誕生の瞬間
K.I.Nと宇多丸 日本のフリースタイルラップバトル誕生の瞬間を語る https://t.co/DdymSG0qKG
(K.I.N)実はその時にTWIGYがマイクを持ってフリースタイルっぽいことをやっていたんですよ。でも、「ステージが四角、四角、四角……」みたいな。— みやーんZZ (@miyearnzz) April 11, 2020
(DJ松永)すごいな……。
(宇多丸)で、一方でPHフロンは「俺はフリースタイルなんて認めねえ」みたいな感じでフリースタイルをしていて。そこではじめて「ああ、会話が成り立った!」っていうか。「はじめてラップでやり取りができたじゃん!」みたいな。だから、バトル的なピリピリはしているんだけども、でも同時に超うれしいみたいな。
(サイプレス上野)ああ、「生まれた!」みたいな。
(宇多丸)そう。「うわっ、今、なにかが……」って。「俺たち、仲間でずっとライブを一緒にやってきたけども、はじめて会話ができている!」みたいな。で、それが次の世代のRINOぐらいになるともう普通に即興やります、みたいな。
(DJ松永)ああ、RINOさんはちょっと次の世代みたいな?
(宇多丸)そうだね。RINOはちょっと若い。
(DJ松永)Twigyさんの方が全然上で?
(宇多丸)そうそう。それでやっぱりRINOが出てきた時に「うわっ、新世代!」っつって。
(DJ松永)ええーっ! RINOさんが新世代っていう?
(宇多丸)まあ、それで毎回言ってますけども。「オワタ……」っつって。「オワタ、オワタ。もうこんなのが出てきたら……かっこいいし、上手いし、オワタ……」って。
(DJ松永)へー! もうその時からあるんですね。
1992年からオワコン
(宇多丸)ありますよ。言っておくけど俺はもう92年ぐらいからオワタなんだよ。92年ぐらいから俺はオワコンなんだよ!
(R-指定)でもそれをね、「オワタ、オワタ」って言いながらサバイブしてきたわけじゃないですか。そこがウタさんなんですよ。
(宇多丸)だからしょうがないんだよ。天才とか才能のある人は次から次へと出てくるから、しょうがないんだよ。なあ、わかってんだろ! 92年からオワコンなんだよっ!
(R-指定)怒っている(笑)。もう神話みたいな話やな。これ、誰か文献まとめなアカンぞ。ホンマに。
(DJ松永)本当に。石版に刻もう! 巻物とかに。じゃあ、これもいい話が聞けたところで、続きに行きましょう。
<書き起こしおわり>