宇多丸・R-指定・DJ松永『ミッドサマー』を語る

宇多丸・R-指定・DJ松永『ミッドサマー』を語る Creepy Nutsのオールナイトニッポン0

(DJ松永)だから見終わった後、なぜかわかんないけどすげえゲップが出たんだよ。

(R-指定)どういうことよ?

(宇多丸)胃酸が……だから「コポッ」でしょうね。

(DJ松永)だから「コポッ」ってなったんでしょうね。すごい気分が悪くなって。

(宇多丸)でもそれってすげえ超楽しんでいるっていうわけじゃん?

(R-指定)そうやん。大満足っていうことでしょ。

(宇多丸)ホラー映画とかさ、「全然怖くなかったっすよ」みたいなこと、言っているやつ、いるじゃない? バカが……怖えよ、バカ!

(R-指定)そうっすよ。怖いっすよ(笑)。

(DJ松永)えっ、ウタさんとかRとか、ホラー映画とかグロいのを見れる人じゃないですか。「怖い」とか「グロい」っていう感覚、あるんですか?

(宇多丸)違う、違う。だから見るんじゃん。

(R-指定)そう。だから、見る。怖いから見るのよ。

(DJ松永)どういうこと?

(宇多丸)怖いホラー映画を作る人も怖がりなんだと思いますよ。怖がりじゃなきゃ、怖いものを作れないじゃないですか。そんなの。

(DJ松永)ああ、そうか。何が怖いかっていう発想、想像力が働かないのか。そうか。

(宇多丸)「俺、怖くないから!」って言っているやつの作ったものとか、マジで怖くないと思うよ。

ホラー映画の面白さ

(DJ松永)そうか。何が怖いのかわからないわけですね。見て、何が面白いんですか? 俺、怖いから逃げたい、その映画を見たくないと思うんですよ。

(宇多丸)映画を見て「怖い、ひどい!」ってなって。「映画でよかった!」って(笑)。

(R-指定)フハハハハハハハハッ!

(DJ松永)「あぶねえ、あぶねえ! あ、これ映画だ、よかった!」って(笑)。

(R-指定)その、『カイジ』の利根川みたいな楽しみ方をしているんですよ。エグい目にあわせて、こっちは安全な場所にいるっていう(笑)。

(宇多丸)映画ってそういうことよ。皆さんね、これは基本的に映画なるものの真理として、絶対に遭いたくない目に疑似的にその登場人物に遭ってもらったりするものですよ。これ、ホラーに限らず……たとえば何でもいいですよ。ジェームズ・ボンド……なりたくねえよ! あんな、毎年のように危ない目に遭いたくないよ、そんなの! あと、世界を救う責任とか負いたくないから。

(DJ松永)ああ、なるほど!

(宇多丸)わからない。あと、『スター・ウォーズ』とかもさ、あの最後に1人残ってこの要塞を爆破する責任とか負いたくねえよ! ジェダイの伝統を俺1人に負わすな!

(R-指定)フハハハハハハハハッ!

(DJ松永)フハハハハハハハハッ! 本当に感情移入しすぎている(笑)。見ていて(笑)。

(宇多丸)とかさ。だいたい危ない目とかに遭ったり。嫌じゃないですか。

(DJ松永)なるほど。「身にふりかかりたくない!」って思いながら見ているんだ。

(宇多丸)恋愛とかだってそんな起伏がある恋愛とかしたくない。スッと行きたいよ。スッ、トンッ、ポンッ、コーン!って。

(R-指定)そういうのは別に映画を見ても……っていうことですもんね。ホンマにいろんなことがあって。

(DJ松永)なるほどね。疑似体験ね。

(宇多丸)そうそう。「こういう目には遭いたくないものだな」とか。もしくはいずれ自分の人生にも……すごい好きな倦怠夫婦物というジャンルがありますが。

(DJ松永)倦怠夫婦物ってなんですか?

倦怠夫婦物映画

(宇多丸)まあ、倦怠カップル物でもいいんですけども。要するに恋愛映画がその恋愛の成就をゴールに置くとしたら、でも実際の人生はその先じゃないですか。関係の維持とか関係が変化してきちゃうとか。で、そういうのを見て「いずれ、私の人生にもこういうことが起こるやもしれん」という。そういう時に対する備えでもあり、あとは人の振り見て我が振り直せですよね。「こういうことをしちゃいけないな」とか。そういうことを学んだりするわけですよ。

(R-指定)俺は本当にウタさんの映画評を聞いて、実際に恋愛をする前から聞いていたんで。それで、それこそ倦怠夫婦物じゃないけども『ブルーバレンタイン』というやつがあって。それを見て、全然童貞のくせに「こんなんやったら恋愛なんてせんでエエわ」と思っていたぐらい嫌な感じなんですよ。

(宇多丸)フフフ、耳年増すぎる(笑)。

(R-指定)でも、実際に恋愛してみて「おっ、これはあの映画のあれや! これはあれや!」みたいな感じで思い出したりしましたね。

(DJ松永)「これ、『ブルーバレンタイン』じゃん!」って実生活でなったりするの?

(R-指定)なった。「うわっ!」ってなった。

(宇多丸)でも、それこそ僕も全然男子校とかで。映画が好きで見ていたけども、後から「あの映画ってこういう気持ちのことを描こうとしてたのか!」みたいなのってわかったりすることもありますよね。まあ、もちろん実人生でいろいろと経験するのも大事ですけども。人生、そんな時間もなくて。何種類もできないじゃん? いろんな種類の人生とか、いろんな考え方の角度を学べるってのは……まあ映画に限らずですけど。小説とか音楽もそうかもしれませんけどね。そういうためにあるわけで。そこにいくと松永さんというのはこれはかなり薄っぺらと言わざるを得ないような……。

松永・R:フハハハハハハハハッ!

(宇多丸)言わざるを得ないのが現状という……。

(DJ松永)フフフ、現状ですよね(笑)。まあ、疑似体験していない。全くしていない。

(宇多丸)体験もしてなきゃ疑似体験もしていない!

(R-指定)本当、お前、何しとんねん?(笑)。

(DJ松永)俺、何してんの? 俺、ずっと24時間、自分と対峙していただけだ(笑)。

(宇多丸)自分を見つめる。

(R-指定)それはそれでストイックやけどな。

(DJ松永)本当に。そういう他の人生の想像力とか、働かないんですよねー。

(宇多丸)胸張って言うなよ(笑)。まあまあ、それもきっかけがあるといいよね。

(DJ松永)そうですよね。

<書き起こしおわり>

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