町山智浩と宇多丸『フォードvsフェラーリ』を語る

町山智浩『フォードvsフェラーリ』を語る アフター6ジャンクション

町山智浩さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。宇多丸さんと2020年に公開される映画をトーク。『フォードvsフェラーリ』について話していました。

(宇多丸)はい、今夜は2020年一発目の特集ですからね。「2020年、俺たちの楽しみな映画はこれだ!」特集ということで今年、楽しみな映画や注目の映画、期待の映画などなどをシュワっとする、気持ちが高揚するこんな飲み物(ビール)なんかを飲みながらお送りしたいなと。ということでゲストは映画評論家、町山智浩さんですよろしくお願いします。

(町山智浩)よろしくお願いします。

(宇多丸)もう仮面ライダーTシャツを着こなして(笑)。

(町山智浩)いいでしょう、これ?

(日比麻音子)めちゃくちゃいいですね、それ!

(町山智浩)はい。新宿西口、吉田商店のロックTシャツ屋で買ったんですけども。

(宇多丸)めっちゃそれ、プリントも完全に初代のを……。

(町山智浩)これ、オフィシャルなの。

(宇多丸)ああ、オフィシャルなんだ!

(町山智浩)よくわかりましたね。これ、初代仮面ライダーはこの鼻のところあg銀色じゃないんですよ。これが最初の仮面ライダーで、ホラーだったんですよね。最初、仮面ライダーは。で、途中からアクションになったけど。

(宇多丸)怪奇色が強かった。藤岡弘さんが怪我をする前のね。まあ、でもそれが怪我の功名というか、それで2号ライダーというのが出て、それが今に至る流れになるという……。

(町山智浩)シリーズ物でだんだんとキャラクターが変わっていくっていうのは藤岡弘さんが怪我をしたからなんです。

(宇多丸)ある意味、世界の潮流を先取りした藤岡弘さん。

(町山智浩)だから、偶然なんですよね。1号、2号って。仮面ライダーシリーズって今もずっと続いてるけど、最初はそういう予定はなかったんですよ。

(宇多丸)で、複数のライダーが集合とかね、ああいう熱くなるのも全部ね、まさに怪我の功名という。

(町山智浩)原作の方もそれに合わせて変えたんだよね。仮面ライダーって。途中で2号が出てくるでしょう?

(宇多丸)しかも原作マンガはまたもうすごいね……。

(町山智浩)13人の仮面ライダーが出てくるんだよ!

(宇多丸)あ、「本題に行け」と(笑)。

(町山智浩)すいません(笑)。ここで仮面ライダーを熱く語るのに何の意味があるのか?っていう(笑)。まあ、オヤジだからすいません。

(宇多丸)ということで、まずは町山さんの今年、ちょっと楽しみなというか、おすすめ作品、「このあたりがいいよ」っていうのを教えていただくところから行こうかなと。まずは何に行きましょうか?

(町山智浩)まず、いちばん近いのは『フォードvsフェラーリ』で。これはもう僕、見てるんですけど。はっきり言ってこれは2019年のアメリカ映画で最高によかった! トップです!

2019年のアメリカ映画で最高によかった

(宇多丸)おおー、そう来ますか!

(町山智浩)全世界だとはそうじゃないけど。アメリカ映画の中では最高だったですね。

町山智浩『フォードvsフェラーリ』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『フォードvsフェラーリ』を紹介していました。 (赤江珠緒)この時間は映画評論家・町山智浩さんの「アメリカ流れ者」。今日はカリフォルニア州バークレーのご自宅からです。もしもし、町山さん? (...

(宇多丸)へー! なるほど。これ、ジェームズ・マンゴールドですもんね。監督は。

(町山智浩)そうなんですよ。彼の映画があって男対男の、なんか友情を交えた対決っていうのを……。

(宇多丸)『3時10分、決断のとき』とか。

(町山智浩)そうそう。まあ、はっきり言って近いんですよ。だからまあ、わかるでしょう? これは結局、フォードがスポーツカーをずっと出してなくて、「大衆車」って言われてたいんで「スポーツカーを出さないと」っていうことでスポーツカーを出そうとするんですね。ムスタングを。でも、その頃はフォードの格は低くなっちゃっていたから。「オヤジの車だろう?」って言われてるから。「じゃあ、レースで勝たなきゃ!」と思って、まずフェラーリを買収しようとするんですけども。フェラーリからはバカにされちゃうんですよ。「フォードなんてダセえな」みたいなことを言われてコケにされたんで。

「じゃあ、レースでフェラーリに勝ってやろう!」っていうことでフォードはフェラーリに立ち向かうんですけど。その時に雇われた2人の男というのがキャロル・シェルビーっていう、シェルビーコブラを作ったエンジニアで元レーサーの人で。それをマット・デイモンが演じているんですけども。それと、まあバットマンですよ。クリスチャン・ベール。彼はレーサーのケン・マイルズっていうイギリスの男を演じていて。

そのならず者2人っていうか、2人ともそれぞれが一匹狼なんですよ。それをフォードという非常に……フォードというのは大量生産の会社なんで、とにかく優等生で世間に逆らわない人たちを集めて会社を作ってやってるところなんで、まったく体質的に合わないんですよ。で、その一匹狼2人がフォードと対立しながらフェラーリとの絶対に勝てない戦いに挑んでいくという話なんですよ。

(宇多丸)はい。まあ2人の男が出てきて。たとえば『3時10分、決断のとき』だとイケてる男と実直な男みたいなのがあるじゃないですか。そういう対比もあるわけですか?

(町山智浩)今回は2人ともアウトローなんですよ。で、上の真面目なフォードがそれに圧力をかけてコントロールをしようとするんだけど、2人ともじゃじゃ馬だからダメで。で、なにかと手が出て喧嘩になるみたいな話で。もうはっきり言って少年チャンピオンみたいな世界ですよ(笑)。

(宇多丸)殴り合ってウヒヒ……みたいなね。

(町山智浩)殴り合って「俺たちはダチだぜ!」っていう。

(宇多丸)殴り合ってビールみたいなことやってましたもんね(笑)。

見えないアクセルを踏んでしまう

(町山智浩)まあバカな、子供のまま大人になっちゃった人たちがレースに挑むっていう話なんですけど。まあ本当の話なのでね。レースというのはル・マン24時間耐久レースなんですよ。で、ル・マン24時間というのはテクニックだけじゃなくて、車の耐久性とかいろんなものが全部総合的に合わさって初めて勝てるというものなんですよね。で、映画館で見ていたんですけども、もう見えないアクセルを踏んじゃうんですよ。手がこうなってハンドル操作しちゃう!

(宇多丸)フフフ、見ている方が(笑)。

(日比麻音子)すごい!

(町山智浩)で、グーッとアクセルを、ないんだけども足が踏み込んじゃうみたいな。

(日比麻音子)へー! もう体験している感じ?

(町山智浩)そうそうそうそう。もう最後は……ああ、言えないけど(笑)。「いやー!」みたいな感じですよ。もう僕、トロント映画祭で全員がプロの映画評論家ばっかりの席で見て。それでみんな、これだもん。「イエーッ!」みたいな感じで。

(宇多丸)へー! もう海千山千の映画評論家たちが。

海千山千の映画評論家たちが興奮

(町山智浩)もう世界の映画批評家が批評をすることを忘れてましたよ。その瞬間に。「やったぜ!」っていう。そういう熱い映画でしたね。

(宇多丸)あの、なんかレース、モータースポーツをテーマにした映画では初めてアカデミー賞の作品賞にノミネートとか、たしかそんな感じでしたよね?

(町山智浩)そうそう。それでアメリカでも大ヒットなんだよね。興行的にも。で、アクションがすごくて、CGを使ってないんですよ。背景だけはCGを使ってるんだけど、車のクラッシュは本当にやってるんですよね。たぶんこれ、メイキングがYouTubeに上がってるから見ると、まあかなりひどいことになっていますよ(笑)。やっぱり本当にやらないとできないっていうことですね。で、これはもう1月10日から。もうこれは絶対におすすめ! めっちゃ熱い映画ですよ!

(宇多丸)めちゃくちゃ楽しみ!

(日比麻音子)絶対に行く!

(宇多丸)いいですね。『フォードvsフェラーリ』、1月10日公開をおすすめいただきました。

<書き起こしおわり>

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