町山智浩 ドナルド・トランプ大統領の新型コロナウイルス感染を語る

町山智浩『トランピストはマスクをしない』を語る ラジオ

町山智浩さんが2020年10月2日配信の「町山智浩×水道橋博士×原カントくん 新刊『トランピストはマスクをしない』発売記念フリーオンライントーク」の中で、アメリカのドナルド・トランプ大統領が新型コロナウイルスの陽性反応が出た件について話していました。

(水道橋博士)改めて今日の趣旨自体はこの本ですね。

(原カントくん)『トランピストはマスクをしない』という……。

(水道橋博士)まさにタイムリーになりましたね。

(町山智浩)そうなんですよ。

(原カントくん)マスクをしないのはいいんですけど……っていう。

(水道橋博士)トランプ大統領が今日、陽性になったわけですからね。

(町山智浩)そうなんですよ。その前にホープ・ヒックスという彼の女性のスタッフが陽性反応が出たんで。で、いつもマスクをしないで非常に近い距離にいたんですよ。2人は。だから、「トランプはどうなる?」って言っていたらすぐに陽性反応が出たという風に彼自身がツイートをしたですよ。

(水道橋博士)「陽性反応に出て暫くの間、報道しなかった」みたいなのも出てましたけども?

(町山智浩)スタッフ間での陽性反応というのが一気に進んだんだと思います。で、近しいスタッフ内では全然マスクをしてないんですよね。

(水道橋博士)TV討論会の段階で、もう陽性なんですかね?

(町山智浩)そうでしょう。まあその時点でウイルスを持っていたと思われるので。だからバイデン候補も感染している可能性が高いですよね。

(原カントくん)そうですよね。結構面と向かって……。

(水道橋博士)お互い高齢だから非常に危ないですよね。

(町山智浩)非常に危ないと思います。ただ、トランプさんは元気だから。重症化はしないかも? でもバイデンさんはそんなに元気じゃないから、もし感染していたら重症化するかもしれないですね。

(水道橋博士)さっき、取材に答えておっしゃってましたけども。ボリス・ジョンソンも重症化したじゃないですか。だけど、ブラジルのボルソナーロは重症化しなかったですよね?

(町山智浩)まあ、年齢的にもね。

(水道橋博士)だけど、その後に復帰してボルソナーロの支持率って最高になるんですよね。だから、そっちのシナリオもあるのかな?っていう。

(町山智浩)うん。だから体調によると思いますよ。ボリス・ジョンソンの場合は重症化しただけじゃなくて、後遺症も酷くて。もうこれ以上、政務は続けられないかもしれないというような状態になってますからね。それで彼自身の政策が転換しましたからね。それまでコロナでもロックダウンしないみたいな態度だったのがね、入院してから……。

(水道橋博士)以前は「集団免疫をつける」みたいに言ってましたからね。

(町山智浩)そうそう。それでEUからの離脱に関しても、あれほど強硬派だったのがもうすごく軟らかくなって。下手すると、もうEU離脱がなくなるみたいな話にまで行ってますからね。だから、あれほど政策が完全に180度変わるというのはやっぱり、はっきり言うと弱気になったんでしょうね。

(水道橋博士)死生観が変わるんでしょうね。

(町山智浩)変わるんでしょうね。やっぱり「死ぬかもしれない」と思ったから。だから、わからないですね。トランプ大統領も今後、その症状によってどうなるかね。

(水道橋博士)前に言っていた漂白剤(消毒剤)の注射とか、やってほしいですけどね。自分で実験をしてみてもらいたいですね。

(町山智浩)あれ、アメリカでハワード・スターンっていうラジオのDJがいるんですけど。日本では昔、『プライベート・パーツ』っていう映画がやって、結構お客さんが入ったんだけども。

(町山智浩)そのハワード・スターンがトランプが「漂白剤を注射する」みたいなことを言った時に「やれ! やれ!」って言ってましたね。「トランプ支持者、みんなガンガン漂白剤を注射しろ!」とか言ってましたね。

(水道橋博士)抗マラリア薬のクロロキンとかはどうなんですかね? まだ使うんですかね? トランプもボルソナーロも「これで大丈夫だ」って言ってましたけども。

(町山智浩)トランプはずっと「あれが効く」って言っていたんですけども、臨床結果で「効かない」っていうのが出ちゃったんですよね。

(水道橋博士)ファウチもFDAも否定しましたもんね。あの時に。

(町山智浩)とにかく「安全なんだ。そんなに怖くないんだ」っていうことをメッセージとして出し続けないといけなかったので。やってましたよね。

(原カントくん)そう考えると今回、トランプさんが陽性になったっていうのは大統領選とってはネガティブな方向として捉えられているんですか? メディアでは。

アメリカ大統領選挙への影響

(町山智浩)いや、もうトランプの勝ちないだろうと……。というのは2つあって。ひとつはトランプ大統領ってそスイング・ステートという、日本では「激戦州」って言われますけども。スイング・ステートっていうのはスイングする……左右に振れる州。共和党、民主党っていうのが決まってない州。そこにトランプは徹底的に行って。それも田舎の方に行って集会をするということを繰り返していたんですよ。

(水道橋博士)町山さんの本を読んで初めて分かったんですけど。大統領は議会に出なくてもいいんですね。それは日本と違うところですね。

(町山智浩)大統領は議会に出なくてもいいんです。そうです。大統領は立法府(議会)から完全に独立した存在なんですよ。副大統領は違うんですよ。上院の方に出なきゃいけないんですけども。大統領は一切出ないんで。だから毎月最低1回はそういう集会を任期中にやり続けたんですよ。トランプ大統領って。おそらく大統領史上、最も地方の自分の支援者集会に出ていた人ですよ。

(水道橋博士)スイング・ステート、ほとんど田舎じゃないですか。田舎に向けてジェット機で行って、そういうことをやっていましたよね。

(町山智浩)すごい数でやるんですよ。もうほとんどそれ以外、何もしてないぐらいの数で。4年間、それをやったんですよ。で、それができなくなったっていうのは、彼の選挙のやり方というものがそれだから、集会に出れないというのはつらいと思いますよ。だって、彼は集会をやることで感染をしたようなものなので。彼が一番最初に集会をやったのって、6月なんですよ。今年、コロナに入って以降は。それで、まだ大量の人を集めることがアメリカ全体で一切禁じられているにも関わらず、集会を強行したんですよ。

(原カントくん)はいはい。写真で見ました。

(水道橋博士)オクラホマ州タルサ市で。

(町山智浩)そう。コンサートとか映画館もすべて閉まっていた時期なんですよ。あの時期って。で、とにかく人が絶対に集まっちゃいけないっていう形で国全体がやってる時にそれを強行突破して。まあ6000人しか集まらなかったんですけど、その時は10万人を集めようとしたんですよ。どうかしてるでしょうね? で、写真を見ると分かるんですけど、マスクを誰もしてないんですよ。それでソーシャルディスタンスも取っていないという。

(水道橋博士)もうあの時点でクラスターが発生してましたもんね?

(町山智浩)発生してました。で、テキサスがここでオクラホマってここなんですけども。このタルサっていう街で彼は集会を行ったんですね。

(水道橋博士)ドラマ『ウォッチメン』の解説の時に聞きましたけど。タルサの大虐殺っていう黒人が大虐殺された場所ですよね?

(町山智浩)そうそう。ここがタルサっていうところなんですけども。ここで、「Juneteenth」っていう、6月19日に毎年開かれている黒人奴隷解放記念日というのがありまして。その時に毎年、タルサの大虐殺の追悼式をやってるんですよ。その日にトランプ集会をぶつけてきたんですよ。

(水道橋博士)それは自覚的なんですか?

(町山智浩)いや、それはわからない。というのは、トランプの集会っていうのをやるとかならず「White Supremacist(白人至上主義者)」がそのへんの周辺からブワーッと車に乗って集まってくるんですよ。で、黒人虐殺の追悼集会に白人至上主義者を大量に集めるということはどう考えても嫌がらせじゃないですか。だからもう大変なことになって。「なんてやつだ!」ってことになったら、トランプ大統領が「いや、俺は知らなかった。その件、何も知らなかった。1人、シークレットサービスに黒人がいて。彼から『やめてください』って言われたんだ」っていう風に言ったんですよ。

これでだから彼は「知らなかったんだよ。わざとじゃないよ」ってことを言おうとしたんですけど……逆方向で。「こんな大事なことを知らなかったのか!」っていう。そっちも問題になるという事態になったんですけど。結局、集会は翌日に延ばしたんですよ。6月19日から20日に。で、そしたら思ったよりも人は集まらなかったんですけども。でも、とにかくその後にそのタルサ地域で感染者が爆発したんですよ。

(水道橋博士)オクラハマ州知事もなっていましたね。

(町山智浩)そう。オクラホマ州知事がその集会に行ってたんですけど、陽性が出ちゃったんですよ。

(水道橋博士)あと、元大統領候補も。

(町山智浩)そう。ハーマン・ケインっていう元大統領候補で黒人のピザ屋の経営者がいたんですけど。彼はすごくトランプ大統領が好きで。ずっと集会とかにマメに出ていたんで。彼、そこに行ったんですよ。それで集会に行って、そこで感染して、亡くなりました。

(原カントくん)あら! お亡くなりに……。

(町山智浩)だからトランプの熱心な支持者をトランプは殺しちゃったことになるんですよ。

(水道橋博士)でも逆に言えば今までならなかったのが不思議ですよね。

(町山智浩)そう。だから今まで何でかからなかったんだろう?って言われてるんですよね。で、今までにシークレットサービスもかかっているんですよ。で、「どうしてトランプだけマスクしないでかからないんだろう?」って言われてたんですが、それをトランプ大統領は「クロロキンを飲んでるからだ」ってずっと言ってたんですけど、関係なかったですね。やっぱりかかりましたね。

(原カントくん)そのトランプさんが今、陽性になったけども、体調は元気なわけですよね? おそらく、今は。

(町山智浩)まだそうみたいですね。

(原カントくん)その元気さみたいなのをアピールしていくみたいな、そういうのはないのかなとちょっと思ったんですけども。

(町山智浩)あると思いますよ。

(原カントくん)「俺はコロナにかかっても元気なんだ!」みたいなね。

元気さをアピールする?

(町山智浩)あると思いますよ。だからそれこそZOOMとかで彼の……ホワイトハウスの中からいろんな中継をこれからしていくことになると思いますけど。逆に言うと、もしそれをしなかったら、重症化してるってことですよね。

(原カントくん)そうですね。

(町山智浩)あと、側近がたぶんPPEっていうものすごい防護服を着てコンピューターの設定とかをすることになると思うんですけども。逆に元気でZOOMが自由につながるとなると、しつこく配信をする可能性はありますけどね。

(水道橋博士)だってTwitterなんかも異常ですもんね。

(町山智浩)ツイートの数がものすごく異常なんですが。今、言われているのは「トランプってTwitter、自分でしているのかしていないのか、わからない」っていう。だってディベートの最中にものすごい数のツイートをしていたから。あれ、手が両方とも話をする壇上に乗っていたので。その最中にツイートをしていたから、誰がツイートをしているんだ?っていう風になりましたよ。これはわからない。

(水道橋博士)ホリエモンがテレビに出ながらツイートしているのとは違いますからね。

(町山智浩)ホリエモンはこうやっているじゃないですか。トランプ、手を両方ともテーブルの上に乗っていたから。わからないですよね。あのツイート、結構謎ですよ。

<書き起こしおわり>

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