宇多丸と藤津亮太 アニメ『映像研には手を出すな!』を語る

宇多丸と藤津亮太 アニメ『映像研には手を出すな!』を語る アフター6ジャンクション

藤津亮太さんが2020年1月28日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。宇多丸さん、宇垣美里さんとアニメ『映像研には手を出すな!』について話していました。
(宇多丸)さあ、そしてついにやってきました。「あれはまだか? あれはまだか?」っていうね(笑)。

(宇垣美里)フフフ(笑)。

(藤津亮太)Twitterとかでもすごい圧を感じるという(笑)。それで最後がですね、『映像研には手を出すな!』ですね。

(宇垣美里)そうでしょう、そうでしょう(笑)。ということで、あらすじをご紹介します。高校1年生の浅草みどりは「アニメーションは設定が命」と力説するほどのアニメ好き。スケッチブックにさまざまなアイデアを書きためられながらも、アニメ制作への一歩を踏み出せずにいました。そんな浅草の才能にプロデューサー気質の金森さやかはいち早く気づいていた。さらに同級生でカリスマ読者モデルの水崎ツバメが実はアニメーター志望であることが判明。3人は脳内にある最強の世界を表現すべく、映像研を設立することに。

(宇多丸)はい。ということで話題沸騰と言いましょうか。

(藤津亮太)そうですね。大童澄瞳さん原作で湯浅政明監督が監督をしてるという。それで湯浅監督自身も原作を読んで「ああ、これやりたいな」と思って手を挙げてた。そしたら「他のところが権利を取っていますよ」っていうことだったんですが、ぐるっと回って湯浅さんが監督をすることになったという、そういう奇跡のような流れがあったそうなんですけれども。この作品、今あらすじの紹介がありましたけど、アニメを作る話なんですけども。

女子高校生がアニメを作る話なんですが、別に業界物っぽいとか青春物とかではなく、要は絵で世界を描き出す、その楽しさというか喜びについての作品なんですよね。初期衝動……だから絵を描き始めた誰もが持ってる初期衝動みたいなものをすごく大事にしてる作品で。なので見てるとね、アニメ論みたいなところがあるんですね。キャラクターが語る。「絵で世界を描く」ってどういうことかと言うと、たとえばその1本の線にも全部意味があるってことなんですよね。

「絵で世界を描く」

たとえば1本線を足したことで服が厚みを持って見えるとか。あるいはシュッと鉛筆で書くと細い線から太い線に変わったりしますよね。鉛筆だと。そうすると顎の丸みの下の影の部分……つまり顎が一体感を持って丸まっているように見えたりっていうのがアニメの線の面白さなんですけれど。そういうディティールにこだわることを積み重ねてアニメの世界を作り出そうというのがこの浅草というキャラクターと、それからアニメーターでいうと水崎。この2人のキャラクターで。

それで面白いのはこの暴走しがちな絵描き2人に対し、めちゃくちゃプロデューサー気質で「それでいったい締め切りに間に合うんですか?」とかいうことを言う金森がいるというところが……。

(宇多丸)うんうん、たしかに。

(藤津亮太)ここで3人が絵描きだったらまた間違った作品になったと思うんですけども。

(宇多丸)クリエイター気質だけだとね。

(藤津亮太)そう。クリエイター気質を最大限、その魅力を謳い上げつつ、こっち側に1人、まあ2対1なんですけども、理性を働かせて見る人がいるっていうところがこの作品の面白さになっているんですね。

クリエイター2人とプロデューサー1人

(宇多丸)そこもだからメタアニメっていうかさね。なんていうか「夢だけじゃできねえぞ」っていうさ。「ちゃんと締切も予算も必要だぞ」っていう。

(藤津亮太)そう。完成させるためには実は情熱だけではダメだと。

(宇多丸)それで本当にしかもメタアニメ的なあれで。まあ皆さんご存知の、あの国民的アニメーション監督のとある作品を思わせる作品が出てきて。

(藤津亮太)思わせる。ここで出てくるのは『残され島のコナン』という作品ですけども。まあ、ほぼほぼ『◯◯コナン』に……名探偵じゃない方のコナンにそっくりな絵だったんですけども。やっぱり、あの引用されたコナンもそうなんですけど、アニメーションの魅力……その物が動いて重さが伝わるとか、軽さが伝わるとか、風が伝わるとか。そういうことっていうのがすごくやっぱりできている作品なのでみんな大好きなんですけど。それがそのまま、あの3人の作るアニメにも反映されていて、こだわりところがある。

たとえば風車が回るところで「風ってどうやったら見えるんだ? 風車が回ってるだけでは風は見えないんじゃないか?」っていうことで、そこからイメージシーンになって。実際は水しぶきを絡めていくみたいな感じになっいくんですけど。そういう風にしてその表現の面白さみたいなものをを描いているところが非常に面白いところですね。ちなみにそういうイメージシーンになって、自分たちが書いたアニメの世界が実体化してる時は効果音が全部、浅草の声なんですよね。

(宇多丸)要は頭の中で作っている感じ。

(藤津亮太)頭の中で。いわゆる「ブンドド」って言われる「ブーン!」ってやっている感じでエンジンの音とか、水しぶきの「ザバーッ!」っていう音も全部本人の声だっていうところも面白いですね。

(宇多丸)そこを水彩画タッチというか、タッチが変わるじゃないですか。だからこれもね、テレビシリーズで……「えっ、これ毎回、このスケールでやるの? 大変じゃないの、これ?」みたいなね。

(宇垣美里)ねえ!

(藤津亮太)あれは本当、僕も特報でね、そのシーンが出てきた時に「あっ、全部水彩になっている!」っていうのは結構驚きましたね。

(宇多丸)『となりの山田くん』じゃないけどさ。ああいう『かぐや姫の物語』みたいなことを毎週やって……っていうね。しかもこれが手作り感覚でもあるという。

(藤津亮太)そうなんですよね。なのでやっぱりアニメーションは人間が作るものだ。人間のイマジネーションが作るものだっていうのがすごく伝わってくるのが面白い話ですよね。うん。

(宇多丸)僕はやっぱりその線の1個とか、ちょっとした表現の1個に魂が宿るんだというところがちゃんとやって。すごい、超グッときます。毎回。すごく本当にアニメーションの根源的な喜びというか。感じると思います。ということで話題沸騰。あとね、chelmicoの連中の主題歌もね! 合っていると思いますよ!

(宇垣美里)アハハハハハハハハッ! どういう……?(笑)。

『映像研には手を出すな!』OP動画

(藤津亮太)オープニングが割と書いてある絵の枚数で言うと意外にシンプルなんですけれど、センスで見せるみたいなところがすごく面白くて。湯浅監督のオープニングだと『四畳半神話大系』もやっぱり絵の数は決して多くないんだけど、センスで見せる感じがあって。「あ、ちょっと共通点があるな」なんて思いましたね。

(宇多丸)さすが湯浅さんですね。

(宇垣美里)こちらの作品、『映像研には手を出すな!』はNHK総合テレビにて毎週日曜日24時10分から。そしてFODでも配信中なんですが、これは嬉しいことにですね、2月2日(日)には第1話から第4話を連続再放送してくれるということで。

(宇多丸)見逃した人もここから追いつけるという。

(宇垣美里)NHK総合テレビで午後4時15分から再放送されるということです。

(宇多丸)いやー、めっちゃ面白いし。あと、あの彼女たちが住んでいるあの街とか団地とか。それ自体もすごい楽しくて。

(藤津亮太)あれはやっぱりあれですよね。建物の面白さっていうか、架空の面白さですね。変なところに階段があったり、変なところに川が流れていたりとかね。で、あの立体感がある面白さっていうのもアニメならではだなと思って。世界を描くという意味だと、単に作っているアニメだけではなくて、あの世界そのものが面白いアニメと絵になってるんですよね。

(宇多丸)いや、だから本当に全場面わくわくするし、楽しいし、アホだし。もうしょうがないなっていうね。最高です!

<書き起こしおわり>

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