上田誠と佐久間宣行 ヨーロッパ企画の舞台の作り方を語る

上田誠と佐久間宣行 ヨーロッパ企画の舞台の作り方を語る 佐久間宣行のオールナイトニッポン0

劇団ヨーロッパ企画の代表、上田誠さんが2020年1月15日放送のニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』に出演。佐久間さんとヨーロッパ企画の舞台の作り方について話していました。

(佐久間宣行)あの、上田さんってなんて言うんだろう? まあ、SFから作る場合もあるし、なんかいろんな作り方をすると思うんですけども。企画っていうか、「さあ、舞台を作ろう」っていう時は何から始めるんですか?

(上田誠)たとえば、さっき出た『ビルのゲーツ』っていうお話であれば……だいたい僕は絵から考えますね。舞台って基本的にロングショット一発みたいなものなので。やっぱりその一枚絵でずっと2時間ぐらい持たせなきゃいけないので。

(佐久間宣行)「セットも込みにした」っていうことですよね?

まずは絵から考える

(上田誠)そうです。なのでそれがまず面白い絵面というのが思い浮かばないとダメで。なので、その『ビルのゲーツ』の時はデカいゲートがあって。カードをピッとかざす。ゲートが開く。全員ぞろぞろ入っていく。っていうのが舞台上で行われたら面白いんじゃないかな?っていう。その絵1枚から考えるような……。

(佐久間宣行)まあでも、脚本家の人とか映画監督の人も言いますもんね。シーンから……「このシーンだけ思いつく」っていう。

(上田誠)そうですね。で、たぶんでも劇作家の方は真面目な話、割とセリフからとか言葉から考える方が多いと思うんですけど、僕は割とビジュアル派で。元々本当にファミコンとゲームが好きだったこともあって。ゲームって割と……たとえば『スーパーマリオ』とかって見ていて割と舞台っぽいっていうか。なんでしょうね? あんまり言葉を使わずにいろんなことが表現されている。

たとえばですけど、マリオが舞台で言うと舞台下手にいて、それで上手側を向いて立っているっていう時点で「ああ、これは右に進むゲームなんだ」っていうことが物語られるとか。そういう、舞台をゲームとして考えた時にいろいろと、セリフに頼らずにやれる表現みたいなことがあって。だから割とゲーム的な発想で絵から考えて。それで後でセリフを付けていくという、そういうような順番です。

(佐久間宣行)なるほど、なるほど。じゃあもう、1枚絵が浮かんで、ルールを先に考えて。後でその動きがついたらセリフがくっついてくるとか?

(上田誠)そうですね。だからセリフを書くの僕、すごい遅いんですよ。

(佐久間宣行)ちなみにニッポン放送とやる『たけしの挑戦状ビヨンド』が4月にありますけども。今はどういう状態なんですか?

(上田誠)行数で言うとゼロ行ですね(笑)。

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ! 「なんとなく見えてはいるけど」っていう?

(上田誠)イメージとしては主演がキングコング西野さんなんですけども。「西野さんがクソゲーに翻弄される」っていう絵は見えているんですよ。

(佐久間宣行)ああ、絵は見えているんですね。でも、西野がクソゲー『たけしの挑戦状』に翻弄される絵は、めちゃくちゃ面白そうですね(笑)。

(上田誠)そうですね(笑)。その絵が見えたら、そこから順番に作っていくっていうような作り方ですね。

(佐久間宣行)俺はちょっと1個、これ演劇の人に聞いてみたいことがあって。今、ゼロ行だとするじゃないですか。たとえばこれ、ケラさんとかもが3時間の舞台があって。出演者って先に決まってるじゃないですか。配役はどこで決めるのか? もしくは「あれ、ヤベえ! こいつ、出てきてねえな?」みたいなの、ないですか?

(上田誠)それは結構演劇において割と現実的な問題で。そうなんですよ。決まるのは、まずやっぱり最初に劇場が決まって。次に次のタイトルが決まったり出演者が決まって。舞台美術が決まって、最後に台本っていうような順番でできていくので。たしかにキャスティングする時に誰がどの役とかって全然決まってないまま……。

劇場、タイトル、出演者、美術、台本の順

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ! そうですよね? 俺、それね、演劇の人にあんまり聞けないから聞いたことなかったんですよ。

(上田誠)だからね、いつもどうやってキャスティング決めてるんですか?って。客演さんとかを呼んだりとか。でも、それも雰囲気というか……。

(佐久間宣行)勘?

(上田誠)「その時、一緒に遊びたい人たち」みたいな感じでまずキャスティングをする。僕の場合はですよ。

(佐久間宣行)ああ、はいはい。

(上田誠)もちろん今回、『たけしの挑戦状ビヨンド』の場合ははなんとなくそのゲームを……『たけしの挑戦状』というゲームやるんだろう。じゃあ、そのゲームをやる主人公は……みたいになんとなく決まっているポジションもあるんですけど。でも全部は決まりきってないです。

キャストに役をつけるのは後回し

(佐久間宣行)ああ、やっぱりそうですよね。俺、なんか誰とは言えないけど。「ある舞台で3時間ぐらいの舞台。12月、1月が稽古だっていう風に聞いていたんだけども、12月は1個も稽古もなかったんですよ。俺、後半1時間しか出てこなかったのが今、発覚したんです」って言っていて。要は12月がただ休みだった役者さんとかの話を聞くから。それは、そうか。そういうことかっていうの、あるよなと思って。

(上田誠)それはでも相当、その作・演出の方はハートが強いというか。

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ! 先に気を使っちゃう?

(上田誠)僕の場合はやっぱりあんまりごちゃごちゃ言わない役者さんは後に出すという……。

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ! 聞きたくなかったようなルール(笑)。

(上田誠)やっぱりそれはね、ちょっとあります。

(佐久間宣行)出さないと文句言われそうなやつは先に出すんですね?

(上田誠)やっぱりね、稽古をしてると自分のことが手いっぱいなんでいろいろとありますけど。待機してるとやっぱりいろいろ見えてくるじゃないですか。そうするとやっぱりいろいろ言いたくなるので。やっぱり早めに出すにこしたことはないというか。

(佐久間宣行)ああ、口うるさいやつは早めに出すに限るっていう。フハハハハハハハハッ!

(上田誠)あと、まあなるべく舞台にも多く出すということですね。

(佐久間宣行)ああ、俯瞰で見させないっていうことですね?(笑)。

(上田誠)そうですね。僕の劇、だからすごい人数が多く出てるシーンが多くて。

(佐久間宣行)ああ、出てる、出てる! 結構舞台上に集団でいますよね。

(上田誠)そうなんです。それはちょっと理由として、僕が群像劇が好きっていうのもあるんですけども。たとえば2人のシーンとかを作る時に、稽古場では2人が稽古をしているわけです。で、残り8人ぐらいが見てる。その状況がなんか耐えられない……(笑)。

(佐久間宣行)フフフ、劇団員に外から見ていてほしくないから、もう舞台に上げちゃうっていうことですね?(笑)。

(上田誠)そうです。その方が気分的にみんな舞台にいるんで……っていうので。なんか割とその稽古場の運営によって配役がもちろん決まっていったり、登場人物も決まっていったりとかありますね。

(佐久間宣行)上田さんはだいたい書くとしたらコメディじゃないですか。で、これはいろんな人の作り方があると思うんですけども。ある人は書いて送って、稽古を勝手にしといてもらって。ある程度出来上がったら見に行って「違うな」って言って直すっていうタイプの人も聞いたことがあるんですよ。

(上田誠)それは禁じ手ですけど、よくある手ですね。

(佐久間宣行)それはよくある手。やっぱりあるんですね。それはもう本が間に合わないから、ある程度送って、役者中心に稽古をやっといてもらってっていう。そういう人と、あとは本をある程度全部仕上げて。それで見て、書き直すっていう人とかもいるんですけども。上田さんはどういう感じなんですか?

(上田誠)僕はもう劇団をやってて長いというのもあるんですけど。20年ぐらいやってるんで。だいたい……まあ正直な話、台本を渡してから仕上がるまでがどんどん早くなっているんですよ。芝居が出来上がるまでが。もちろん時間があるにこしたことはないんですけど。それより台本が無い平場の状態でいろいろ探ってる方が楽しいんで。だからだいたい最初には僕がプロットっていって箱書きみたいな。「だいたいここでこの人が出てきてこういうことをしゃべる」ぐらいの内容は持っていって。それをまず役者さんに見せて。それで要は台本ない状態でエチュードっていって。

(佐久間宣行)即興演技ですね。

(上田誠)はい。それをやっている時間が結構長くて。

台本がない状態で即興。そこから生まれるものを拾う

(佐久間宣行)えっ? ヨーロッパ企画って俺、なんかもう本当にがっちり上田さんの設計図通りにみんなやってるタイプのお芝居だと思ってました。

(上田誠)もちろん最終的にはそこに落としこむし、台本も全部セリフも書くんですけど。ただその前は僕が大まかに作ったルールの下に役者さんが遊ぶ中でいろいろと生まれてくるものを拾うっていう時間が、結構稽古の前半はずっとそうですね。

(佐久間宣行)へー!

(上田誠)で、後半は本当にだから……それで言うと、台本がない状態で通し稽古とか僕らはやるっていうか(笑)。

(佐久間宣行)「台本がない状態で通し稽古」?

(上田誠)これ、異常なことなんであんまり……(笑)。

(佐久間宣行)それは頭のおかしい劇団ですよ?

(上田誠)これはあんまり褒められたことではないです(笑)。

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ! えっ、即興でやるっていうこと?

(上田誠)そうです、そうです。だから、流れは決まっているっていう。

(佐久間宣行)へー!

(CM明け)

(佐久間宣行)上田さん、さっき「フリースタイルで通し稽古やる」と聞いたんですけども。「これ、ヤベえな、もう間に合わねえな。一番の大ピンチ!」みたいなのはあるんですか? それが一番あった時っていうのは?

(上田誠)「ヤバさ」にもいろいろ種類があって。なんですかね? だいたいの構成は決まってるけどセリフを書くのが後ろ倒しになっているっていうののヤバさと、本当にいろいろ決まってないヤバさも当然あるわけで。その後者の方になったのはね、結構ヤバかったのは『建てましにつぐ建てましポルカ』っていう……。

『建てましにつぐ建てましポルカ』のピンチ


(佐久間宣行)はいはい。僕も見ました。どんどんと王宮が迷宮みたいになっているお芝居ですね。

(上田誠)そうですね。迷路コメディっていう。迷路のような宮殿の中で貴族が迷うという、そういうお芝居ですね。で、それが迷路みたいな舞台装置をまず作ってから、中のお話を考えるっていう順番で劇を作ったんですけども、これがつらくて。

(佐久間宣行)フハハハハハハハハッ!

(上田誠)要は迷路のような舞台なので、基本的にそこにいる理由もないし、人がその舞台上になかなか留まってくれないんですね。というので、こうプロットを組む時間をずっとこう……「ここから人を出したら……でも、そうするとここから人が出てこれない」とかっていうパズルを解いて解いて解けないうちに、結構ギリギリになってしまって。本番の本当に何日前とかになって。それで劇団員に泣きつきましてですね。それで何とか一応、劇ができる算段はついたんですけど、あとここから1からセリフを書かなきゃいけないっていう……(笑)。

(佐久間宣行)フフフ、すげえな(笑)。

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました