町山智浩 クリストファー・ノーラン『インターステラー』を語る

町山智浩 クリストファー・ノーラン『インターステラー』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』でクリストファー・ノーラン監督の最新作『インターステラー』について解説。監督に直接インタビューした際に聞いた話などをしていました。

(赤江珠緒)今日の本題、行きましょう。

(町山智浩)ええと、今週はですね、11月22日。もうすぐ公開のですね、超大作で『インターステラー』っていう映画を紹介します。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)これね、監督に会ってきましたよ。監督はですね、バットマンのダークナイトとかですね、インセプション。ディカプリオが人の夢の中にどんどん入っていくっていう映画ですね。

(赤江珠緒)渡辺謙さんとね。

(町山智浩)そうそうそう。あれの監督のクリストファー・ノーランに会ってきましたんで、その話をします。で、一応たぶんね、このインターステラー、まあ今年最大のSF大作っていう感じなんですね。で、話は地球滅亡に近づいていて、それを救うためにですね、銀河を超える旅に出る宇宙パイロットの話です。まあ、宇宙戦艦ヤマトみたいなもんですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、『インターステラー』というのはですね、これは『星間航法』。恒星間航行という意味なんですけど。これ、漢字だとわかるんですけど、言葉で言うとわからないですけど。要するに太陽がありますよね。太陽っていうのは星ですけど、別の星まで何光年も離れているわけですよ。で、そこに行くためには光のスピードで行っても何年もかかるんですけども。それを飛んで行くことを『インターステラードライブ(interstellar drive)』っていうんですよ。で、要するに普通のロケットでは行けないわけですね。何十年もかかるから。何百年とか何万年もかかるから。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、それを可能にすることができた世界の話なんですよ。話はですね、地球滅亡までのカウントダウンが始まってるんですね。この映画では。どういう滅亡か?っていうと、砂嵐で滅亡しそうになってるんですよ。地球が。

(赤江珠緒)砂嵐で?

砂嵐で地球が滅亡寸前に

(町山智浩)砂嵐で。もう昼も太陽が見えないぐらい砂嵐が舞っていてですね。農業がまずダメになって、食糧危機になっているんですね。で、空気も汚れていて子どもたちとかみんな喘息になっているんですよ。こんな状態だから宇宙開発とか宇宙ロケットとかNASAとか、そんなものをやっている場合じゃないよっていう感じになっちゃってるんですね。

(赤江珠緒)はいはいはい。

(町山智浩)で、この映画の主人公はですね、クーパーという男でですね。宇宙パイロットを目指していたんですけども、宇宙ロケット計画が全部なくなっちゃったんで。もうそれどころじゃなくて食糧危機だからっていうことでもって農業やってるんですね。田舎に帰って。トウモロコシ農家をやってるんですよ。で、奥さんを亡くして小学生の息子さんと娘を抱えてがんばっているお父さんなんですけど。演じるのは、マシュー・マコノヒーですね。

(山里亮太)おっ!

(町山智浩)去年、『ダラス・バイヤーズクラブ』っていう映画でエイズでガリガリに痩せた・・・自分で痩せてですね、アカデミー賞をとった人ですね。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)この人はまあ、アカデミー賞とるまではですね、男脱ぎ俳優でしたけどね。

(赤江・山里)男脱ぎ俳優!?

(山里亮太)そうだ。ムッキムキだったんですよね。

(町山智浩)そうそう。男性ストリッパーやって、いつもこの6つに割れた腹筋とか締まったお尻のえくぼを見せるのが仕事だった人ですけど。

(山里亮太)っていう役が多かった(笑)。

(町山智浩)仕事じゃねーか、それは(笑)。今回は、宇宙パイロットの役なんですよ。はい。

(赤江珠緒)あ、でもまだ痩せてますね。

(町山智浩)でもちょっとリアルに太ってきましたよ。アメリカの田舎のおっさんっていうと、やっぱり太ってないとおかしいんで。ビール飲んでるから。いつも。

(赤江珠緒)なるほど。

(町山智浩)でね、この砂嵐っていうのは実際にあったことなんですよ。アメリカでね、1930年代にダストボウルっつって、ものすごい砂嵐が起こったんですよ。何年にもわたって。で、日本の総面積よりも大きい地域がその砂嵐でもうグチャグチャになっちゃった時があるんですね。農業できなくなっちゃって。

(赤江珠緒)えっ、そうなんですね。

(町山智浩)昼も真っ暗になって。それはね、農地を異常に増やしたんだけども、それを維持できなくて放ったらかしにしたんで。表土がむき出しの状態になっていたんで、その土が全部砂になって舞い上がっちゃったんですよ。

(赤江珠緒)あ、その人間が開発した結果。

(町山智浩)そうなんですよ。それが1930年代に起こって大変な事態にアメリカがなったんですけど。国が滅ぶ寸前ぐらいまで行くような。で、それが世界規模で起こっているっていうのがこのインターステラーの世界なんですね。

(山里亮太)はいはい。

(町山智浩)で、これじゃあ地球が滅びちゃうと。ところがその時にですね、土星。土星ってありますよね?星が。輪っかがあるところ。そこの近くにですよ、『ワームホール』というものが発見されるんですよ。これ、ワームホールの『ワーム』っていうのは『ミミズ』っていう意味ですけど。ミミズとか、虫食いですね。リンゴに虫が食ってると、穴が空いてるじゃないですか。そういう風に宇宙に穴が空いてるんですよ。

(山里亮太)ほう。

(町山智浩)で、リンゴに虫が食ってずーっと反対側に出ちゃった状態で、そこの穴に飛び込むと、その何百光年も離れた別の銀河系に抜けているらしいんですよ。

(山里亮太)ちょっとワープ的な感じですか?

(町山智浩)そうそう。ワープみたいなもんで。一言でいうと、ドラえもんのどこでもドアですね。

(山里亮太)あー、なるほど。はいはい。

(町山智浩)どこでもドアなんだけど、行き先は1箇所だけのどこでもドアなんですよ。

(赤江珠緒)そういう入り口が見つかった。

(町山智浩)はい。で、そこを抜けると別の銀河系に行けるから、そこに行ったら地球みたいな星があるかもしれないと。

(山里亮太)なるほど。新しく住めるところが。

(町山智浩)そうなんですよ。で、要するに地球が滅びる前に移民しようと。で、その人が住める惑星を探してくるっていう探検隊をですね、結成することになって。そのクーパー、主人公が宇宙パイロットとして選ばれるんですよ。それでもう、大喜びですよね。そりゃね。

(赤江珠緒)まあ、元々ね。

(町山智浩)ね。宇宙パイロットになる夢は叶えられて、しかも人類を救うっていうものすごい使命ですよ。ところがもう、娘泣いてるんですよ。お母さんいなくて、お父さんしかいないんですよ。娘、まだ小学生なんですよ。8才ぐらいなんですよ。で、『ずっと私のためにいてくれるって言ったのに、嘘じゃないの!』と。

(赤江珠緒)まあ、でも切羽詰まってるからね。地球が。

(町山智浩)そう。でも行ったら2度と帰ってこれないかもしれないわけですよ。なにがあるかわからないから。で、娘は要するに、『私とお兄ちゃんを置いて、お父さんは自分の夢を選ぶの?』っていう風に、すごいキツイことを言ってくるわけですよ。

(赤江珠緒)むむむ・・・うーん。

(町山智浩)で、『でも・・・』っていう感じで泣いている娘を置いて宇宙に行っちゃうんですよ。このパイロットは。で、行ったら行ったでですね、そこになにが待っていたか?っていうと、数百光年先の銀河系になにが待っていたか?っていうと、これね、巨大なブラックホールが待ってたんですね。

(赤江珠緒)えっ!?

(町山智浩)で、そのブラックホールっていうのはものすごい巨大なんですけども。そこの近くに行くと、時間の流れが遅くなるらしいんですよ。なんていうか、重力のせいで時間が遅れるらしいんですね。たとえば1時間ぐらいブラックホールの近くにいただけで、ブラックホール以外の宇宙全体では何十年も経ってるんですよ。

(赤江・山里)ええっ!?

(赤江珠緒)ちょっと浦島太郎のように。

(町山智浩)浦島太郎なんですよ。ってことは、娘に『ぜったい帰ってくるよ』って出たんですね。泣いている娘に『ぜったいお父さん、帰ってくるから!約束守るから!』って言ったんだけど、この約束は守れそうになくなるわけですよ。で、何年も先になるとか、何十年も先になるだけならいいけれど、下手すると娘の方が先に齢取って死んじゃうかもしれないんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)どんどん娘の年が父親の年を追い越そうとするんですよ。そのブラックホールに近づいている間。で、それどころか何十年もたっちゃうっていうことは、地球も滅亡しちゃうわけですよ。

(赤江珠緒)そうですよね。

(山里亮太)カウントダウン、始まってますからね。

(町山智浩)そうなんです。だから、この宇宙パイロットクーパーは、父と娘の約束と、人類を救うっていう約束を守れるんだろうか?っていう話なんですね。このインターステラーっていうのは。

(赤江珠緒)なるほど。

(町山智浩)でね、この映画ね、まずすごいのはこの映画の制作者、プロデューサーがですね、キップ・ソーンっていう人なんですけど。この人ね、宇宙物理学者なんですよ。宇宙物理学者が映画の制作をしてるんですね。博士なんですけど。で、この映画の中で出てくるブラックホールっていうのは、いまの最新のブラックホール理論に従って作られたブラックホールなんですね。

(赤江・山里)ふーん。

(町山智浩)いままでのブラックホールだと、なんて言うかお風呂の栓を抜いたみたいな感じで表現されることが多かったんですけど。

(山里亮太)グルグルグルグル、渦みたいに。

(町山智浩)そう。これね、ブラックホールの周りにね、この映画では光の輪がついてるんですよ。最新の研究だと、ブラックホールの周りには吸い込まれていった他の星のガスが輪になっているってことが言われてるんですね。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)それがね、表現されるんでね。それはすごいんですけど。あとね、もうひとつね、ちょっと別の方向にあってですね。これね、『2001年宇宙の旅』っていうね、映画史上最高のSF映画と言われている映画があるんですね。1968年に作られたスタンリー・キューブリック監督の映画なんですけども。それに対する挑戦なんですよ。この映画は。

(赤江珠緒)えっ?どのへんがですか?

(町山智浩)2001年宇宙の旅って聞いたこと、あります?

(赤江珠緒)はい。

(山里亮太)聞いたこと、あります。

(町山智浩)ねえ。要するに科学者とかの力を結集して。その当時ね。最新の科学技術でもう本当に現実に可能なぐらいの宇宙の旅行とかそういったものを映像化しのたが2001年宇宙の旅っていう映画なんですけども。それ、話がね、そっくりなんですよ。インターステラーと。

(山里亮太)あら?

(町山智浩)それはね、1968年なのでその頃、世界の核戦争の危機があったんですけど。その時に木星に地球人類のロケットが行くと、そこにワープ装置があるっていう話なんですよね。だから話がすごくよく似てて。そのワープ装置自体は、すごく高度に進化した宇宙人が作ったものなんですけども。そこにパイロットが飛び込むっていうのが2001年宇宙の旅なんで。基本的にはそれが元になっているんですね。今回の話は。

(山里亮太)へー。

(町山智浩)ただ、ちょっと変なのは、そこに入ってくるのがですね、『北の国から』みたいな話が入ってくるわけですよ(笑)。

(赤江珠緒)えっ?そこに?

(町山智浩)要するに、この人農家をやっているわけですよ。田舎に帰って。主人公は。

(赤江・山里)あー、はいはい。

(町山智浩)それで娘との・・・父と子と。あと、お兄ちゃんがいるんで。息子と娘とお父さんの話なんですよ。

(赤江珠緒)そうだ。五郎さんだ。

(町山智浩)あと、北の国からは田中邦衛なんでマシュー・マコノヒーとだいぶ違うんですけども。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)相当違うような気がしますけども(笑)。言ってて『失敗した』って思いました、僕(笑)。だいぶ違いすぎました。はい。あの、もっと近いものがありました。『フィールド・オブ・ドリームス』って映画ですね。これ、1989年の映画で。ケビン・コスナー主演なんですけども。この人は父親と喧嘩して、家を飛び出した息子なんですね。ケビン・コスナーは。で、結婚して家族を持って、トウモロコシ農家を始めるっていう話なんですよ。

(山里亮太)ふん。

(町山智浩)ただ、父と和解したかったんだけど、和解しないまま父は死んでしまったという話で。だから、元にしてますね。このインターステラーのクーパーがトウモロコシ農家で。その娘と・・・娘を置いて出て行って、娘からお父さん憎まれちゃうんですよ。『私を捨てた!宇宙に行っちゃった!』ってことで。で、和解したいんですよ。お父さんは。娘と。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)でも、銀河の彼方で何百光年も離れているんですよ。

(赤江珠緒)すごいですね。なんか宇宙の壮大さとなんかちょっと牧歌的な家族の問題が・・・

(町山智浩)そう。だから田中邦衛と蛍ちゃんみたいな話が(笑)。絡んで。そこがいい感じなんですよ。宇宙だけじゃなくて。

(山里亮太)田中邦衛さんがブラックホールの横にいるところ、想像つかないですからね(笑)。

(町山智浩)田中邦衛さん、ブラックホールに捕まっちゃって、『ほぉー!』とか言ってるんですよ。あの顔で。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)ねえ。これは関係ないけど、アニメで『ONE PIECE』って見ていたら、田中邦衛がいっぱい出てくるんですね。あれね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)あれ、田中邦衛がお金払ってるんでしょうかね?よくわかんないですけど。ONE PIECEは。

(山里亮太)モチーフにしてね、作ってるんですよね。あれ。

(町山智浩)本当にとんでもないですけど。それはいいんですが。で、あのフィールド・オブ・ドリームスはお父さんと和解したいと思いながらトウモロコシ農家をやっていると、天の声が聞こえてくるんですよね。で、『野球場を作れ』って言われるんですよ。で、みんなの反対を押し切ってトウモロコシ畑に野球場を作るっていう話なんですけども。この映画でも野球場が出てくるんですよ。トウモロコシ畑の中に。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)インターステラーの中にも(笑)。

(山里亮太)出しよう、あります?この話の流れで。

(町山智浩)まあ、見るとわかるんですけど。あっ!っていう感じなんですけど。だからね、『ああ、フィールド・オブ・ドリームス+2001年宇宙の旅ってこれ、すごいな!』って思いましたけど。はい。あとね、この映画ね、すごく見るとね、僕は懐かしかったんですよ。っていうのはね、2001年宇宙の旅に非常によく似てるんですね。画面が。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)どうしてか?っていうと、いまの映画に見えないんですよ。60年代に作られたSF映画みたいに見えるんですね。インターステラーっていう映画が。

(赤江珠緒)あら、なんででしょう?

(町山智浩)これね、いまの映画っていうのはデジタルカメラで撮影したり、コンピュータグラフィックスでコンピュータの中で作っているんですね。ほとんど。特撮シーンとか。宇宙船のシーンとかは。最近の映画。でも、この映画は違って。昔のその45・6年前の2001年宇宙の旅と同じような撮り方をしてるんですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)要するに、ミニチュアとか実物大の宇宙船を作って、それをアナログのフィルムで撮影してるんですね。昔は。

(赤江珠緒)CGとかあんまり使ってないんですか?

(町山智浩)使ってない。一切CGなんてないですから!その時代は。

(赤江珠緒)一切なし?はー。

(町山智浩)なしなんですよ。で、このインターステラーも出来るだけCGを使わないで、本当にモデルを作って、模型とかを作って、70ミリフィルムで実際に撮影してるんです。で、ものすごくお金が逆にかかっちゃうんですね。その方が。CGよりも。だからね、このクリストファー・ノーランにインタビューしたら、『やっぱり子どもの頃に見た映画っていうのはフィルムで撮られてたから、そっちの方がリアルだと思うんだ』って言うんですよ。で、『CGだとどうしてもゲームみたいでインチキ臭くて。俺、嫌いなんだ』って言ってましたよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)でね、この人本当にそれが嫌いな人なんですよ。で、他の映画ね、思い出すとわかるんですけど。『ダークナイト』っていう映画ありましたね。見てます?あれ。

(山里亮太)ダークナイト、僕見ました。

(町山智浩)ジョーカーが悪いことをいっぱいするんですけど。悪人がね。で、ジョーカーが病院を爆破するシーン、あるじゃないですか。あれ、本当に病院を爆破してるんですよ。木っ端微塵に。本物を。

(山里亮太)作ってるんだ、わざわざ。

(町山智浩)一発撮りなんですよ。あれ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)で、あと巨大なトレーラーが逆立ちするシーンがあるじゃないですか。あれも本当にトレーラーを実物大のやつを持ち上げて撮ってるんですよ。この人ね、クリストファー・ノーランっていうのは全部本当にやるのが大好きなんですよ。

(赤江珠緒)いや、すごいなー。

(町山智浩)で、『インセプション』っていう映画の中で、夢の中で、町の中で機関車が暴走するっていうシーンがあるんですね。貨物列車みたいなのが。あれも本当に町の中で貨物列車を暴走させてるんですよ。車輪のところにタイヤかなんかつけて。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)で、『ダークナイト・ライジング』の冒頭では、輸送機をヘリコプターで吊り下げるっていうものすごい危険なシーンを本当にやってるんですよね。逆さ吊りにしちゃうんですよ。だからね、これは、このクリストファー・ノーランはアメリカの西部警察だなと思いましたね。

(山里亮太)(笑)。もうドッタンバッタン、ドッカンバッカン。

(町山智浩)西部警察、毎週やってましたから。そのレベルのことを。日本のがすごい!っていう感じもしますけど(笑)。でね、今回はそういうことをやっているんで、実は金がすごく、逆にかかってるっていうところがすごいな!と思いましたね。でね、『なんでそんなにその60年代の宇宙SF映画みたいなものに対する、ここまで金をかけて、オマージュみたいなものを捧げるのか?』っていう風に聞いたらですね・・・あと、飛んで行くロケットがですね、アポロみたいな3段ロケットなんですよ。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)したら、『その時代、要するにアポロ計画とかやっていて、人類が宇宙を夢見ていた時代が大好きなんだよ!』って言うんですよ。監督が。彼は70年代生まれなんで、リアルタイムじゃないんですけども。で、大人になったら宇宙に行けるもんだと思っていたと。したら、もうみんな宇宙開発を止めちゃったじゃないか!と。どうしちゃったんだよ?って。だからこの映画の中で、『宇宙開発なんてバカバカしい』っていうことになって、パイロットが宇宙に行けなくなっちゃう話ですよね。インターステラーっていうのは。

(山里亮太)そうかそうか。はい。

(町山智浩)まったくいまの、現在の状況に近いんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。縮小傾向にありますもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。それであと、みんな宇宙に興味を失っちゃっているじゃないですか。クリストファー・ノーラン監督が言うには、『いま、科学技術は本当に進んだけれども、スマホとかネットとかコンピュータとか、そっちの方ばっかりじゃないか。進んでいる科学技術は。それ、内向きだろう。あまりにも。本当にみんな下を見て、スマホをずっとやってるじゃないか。黙って。どうしたんだよ!?これで人類、どうなるんだよ!?』って言うんですよ。ノーラン監督は。

(赤江・山里)ほー!

(山里亮太)空を見ろよ!と。

(町山智浩)で、インセプションっていう映画はなんだったか?っていうと、他人の心の深層心理の奥深くにどんどん入っていくっていう話だったんですね。ディカプリオが。で、入って行くと、いちばん底には本当に荒涼としたものしかないんですよ。で、そこにとらわれちゃうんですね。ディカプリオは。あれは、『心の内側にばっかり入っていくばっかりじゃ、先には進めないよ、人間!』っていうことを言いたかったんですって。クリストファー・ノーラン監督は。

(赤江珠緒)なるほどー!

(町山智浩)で、今回は『人間、内側とか下とかばっかり見てないで、外を見ろよ!外に出ろよ!』と。『上を見ろ!空を見ろ!星を見ろ!宇宙を見ろ!』。それを言いたかったんだと。

(赤江珠緒)あ、じゃあメッセージとしては統一性があるんですね。

(町山智浩)あるんですよ。で、『そうしなければ人類は進化しないじゃないか。スマホやっていたって進化しないだろ、人類は。宇宙へ出ろよ!』と。だからこの映画っていうのは、最後の方でわかるんですが、隠されたテーマは『人類の進化』なんですよ。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)だから、北の国から人類の進化へっていうすごい世界になって。北の国からに似てないです、すいません。似てませんでした。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)いま、いろんなのがごっちゃになってきちゃった(笑)。

(町山智浩)ごっちゃになってきました?はい。だからね、もう本当に素晴らしい映画なんですけども。まあ、マシュー・マコノヒーが脱がないのが唯一の問題ですかね。

(赤江珠緒)いやいや、脱がなくていいでしょ。この場合ね。

(町山智浩)宇宙服着るんだから。脱ぐシーンがあっていいんですよ。

(赤江珠緒)いやいやいや、あれは逆に着こまなくちゃいけないですから。宇宙は。

(山里亮太)町山さんね、もう男の裸のシーンが説明できなかった時に悔やむの、町山さん・・・そんな悔やまなくていいですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)だって土星に行く時、人工冬眠してるから。その時は服を脱いでいるんだから。宇宙服に着替えるシーンがあってもいいんですけどね。なぜやらないのか!?と思いましたけどね。

(山里亮太)そこはなくても伝わる。

(赤江珠緒)そこまでは求めなくてもいいと思います(笑)。

(町山智浩)いやー、本当それだけちゃんとやっておくべきだと思いましたね。はい。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)ということで、インターステラーです。

(赤江珠緒)日本では11月22日公開ということですね。はい。

<書き起こしおわり>

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